出港
パン作りと囚人の確保で、《パン職人》の実力がわかったと納得した殿様。
なにより御満悦なのはウルとショーニさんだ、どうやら彼らの中での評価がまた上がったような印象だが、、。
「さすが店長!!感服しました、一生ついていきます!」キラッキラの眼差しで好意を向けられると照れるしなんだか恥ずかしいな、、。
そんなオレたちを回りにいた家臣の人達が見ているが
「あれだけの戦力が海外にはあるのか、恐るべし」
ただのパン職人です。
「タダで助けたのではないのかもしれん、狙いはなんだ?」
米粉です。
「若様が師事しているということはいずれ我が国は外国に取り込まれてしまうのか、、」
そんな気は微塵もないです。
と全体的にかなり不安な見方をされているようだ。
「皆静まれ」
殿様が場を静める。
「心して皆聞け。
これから我が国は他国と段階的に友好を結び文化交流や技術提供、相互協力を取り付けていく。
我らのさらなる富国と発展のために!
なればこそ、こちらのコムギさまの様になるべく、努力を惜しまず、忠勤にはげめ、よいな!?」
「「「ははっ」」」
オレのようにって、、参考にならないと思うんですけど。
なにはともあれ、無事に万事解決して良かったな。あとは帰るだけか。
ま、目的も達したしそろそろ帰りたい頃だしな。
リッチも店も心配だし。
もう用はないのだ、と思うと帰りたい気持ちが強くなってくる。
あちらも自分にとっては異国とはいえ、恋しいな、、。
帰国の段取りをつけるにあたり、帰国の船便が出るまでオレたちはウルの通いの菓子店に寄ったり街中を散策したあと、ウルの実家で歓待を受けた。
ウルのお母さん、婚約者といろいろな話をした。
2人に「ありがとう、なんとお礼を申し上げたら、、」と謝辞を述べられたが、逆に恐縮してしまった。
2人にはお土産にと、米粉パンを持っていったが好評だったようだ。
「まあ、美味しい!」と2人共手放しで喜んで食べてくれた。良かった、こちらの人に受け入れてもらえるなら一層の安心感が湧いてくる。
「これがパンですか、いろいろな料理と合いそうですわね」鋭いな、この子。
「そうなんですよ、甘い菓子パンだけでなく、惣菜パンという食事の具材を活用したパンもありまして、、」とハナさんとパンや料理の談義で盛り上がった。かなりレパートリーがあるようでこちらとしてもついつい熱が入ってしまった。
こうゆう人が奥さんになるならウルは安心だな、正直ちょっと羨ましい。
そのウルはというとやり取りの様子を見て心なしかホッとしていたようだった。
そして、ワフウを離れる時間。
殿様以下、たくさんの人が見送りに港まで来てくれた。ウルのお母さん、ハナさんもいる。2人とも寂しそうな顔をしているが、これが今生の別れになる訳じゃない。これからは国交を結んだのだから少しずつ会いやすくなるはずだ。
「それではお気を付けてお帰りください、これからもよろしくお願いいたしますぞ」
「はい、必ずや王に此度の素晴らしい成果を報告致します」
代表2人が別れの挨拶を交わし、オレたちは一礼し船に乗り込む。
ピィーー!
船の汽笛が鳴る、出港の時間だ。
さあ、帰ろう。
懐かしの我が店、ベーカリー・コムギへ!
新しい米粉と共に!!
いつもご愛読ありがとうございます。
米粉編、いかがでしたでしょうか?いろいろ構想はあるのですがなかなか表現スキルがついてこずすみません、、。
さて次回からは新章になります。評価、感想もお待ちしておりますのでブックマークと合わせてよろしくお願いいたします。