許嫁とただいま
許嫁?
まさか??
あの『ハナ』だというのか?
再会の喜びよりも、会ってはならぬ人に会ってしまったという残念な気持ちの方が今は強かった。
「その、、すまなかった。
いや、今でも迷惑をかけているのだろう。
ハナ、君に再会できたのは嬉しいが、君には君の今があるのだろう?私の事は忘れてくれ。」
では、と胸中の焦りを悟らせないようにその場を去るつもりだったが、ハナに腕を強く掴まれる。
強い眼差しで彼女は
「ハナには、、昔も今も変わりはありません。
あの時からずっと。
お待ちしてました。
これからもその日が来るまで待つつもりでおりました。
その願いが今日、いま叶い、私は胸がはち切れそうです、、!」
どれだけの月日、再会を待ち焦がれていたか、という真っ直ぐな恋慕の気持ちをぶつけた。
「ハナ、、」
「ウルさまは、今何をしてらっしゃいますの?
これまでの事も含めお話しとうございます!」
「いや、私は、、」
「立ち話はなんですね。
さあさあさあ、お屋敷に帰りましょう!
お義母様も首を長くしてお待ちしてましたのです。
んー今日はお赤飯ですね!!」
ふぅとウルは嘆息した。
「変わらないな」
昔から彼女は明るくまっすぐで押しが強い。
振り回されるわけではないが、そのまっすぐさが眩しく、時には羨ましくもあった。
彼女に何度救われてきたか、迷惑をかけてきたか、後ろめたさしかない自分がどの面下げて彼女に向き合うというのか。
ウルは屋敷に着くまでひたすらその事を自問自答していた。
「ただいま帰りました!」
「お帰りなさいませ、おや、こやつは、、?」
「こやつとは失礼な!!この屋敷と私の亭主となるウルさまですよ!」
「はっ、これは失礼いたしました。ご容赦を!!」
「い、いや、気にしないでくれ、、放蕩息子なので、、」
「さっ、ウルさま、お義母様のところへ参りましょう!」
「、、ああ」
板張りの廊下をギシギシと鳴らせながら屋敷の奥へ向かう。
「お義母様!」
「なんですか、騒々しい、、貴女はいつも元気で良い子ですがおしとやかさというものをですね、、」クドクド、、
変わらないな、母上の小言も。
だが安心した、お元気そうで。
、、少し痩せたか。
「ご覧ください、誰だかわかりますか!?」
「ん、、、っ!!?」
驚愕の表情で母上がこちらを見る。
まさか、、と信じられないというような涙を流しながら抱き締められる。
嗚咽を、歓喜の声を上げる母にただ、一言、言うために私はここにきた。
「ただいま」
いつもご愛読ありがとうございます。
ハナ、は英語で小麦粉を表すフラワーから取っています。ちなみに小麦粉と花それぞれのフラワーのスペルは違いますが、音は同じなんです。
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