期待と逃亡
ウルについて、聞かなければならない。
店長として、1人の人間として、何か力になってあげられることがあるかもしれない。
あんなに暗いウルを見たら放っておけない。
その気持ちを読み取られたのかな、ショーニさんがふぅっと息を吐き、
「それを聞いて、コムギさんはどうしたいんですか?」
とこちらの意思の強さも含めてだろう、確認してくる。
「わかりません。
ただ、彼にある背景やこれまでを知らないとこのまま先も一緒に働けないと思うんですよ、あんな親子の対面をみた以上、少なからずお互いギクシャクするでしょうしね。
そうゆうのはイヤなんでちゃんと把握出来ることは把握して、その上でどうしたら良いのかを考えたいんです。」
決意をしっかりと伝える。
彼を信じたい、これからのために、嘘偽りのない事実を知りたい。
強い意思を目に宿しているのか、ショーニさんは確かめるようにじっとオレを見つめた。
そして確認できたとの証拠だろうか。
ゆっくり言葉を選びながら語り始める。
「、、ウルは先程謁見した当主の次男です。
次期当主として、長男よりも期待をされていました。
それは厳しい英才教育を施されたそうですが、それをモノともせずに順調に成長していく彼はいわゆる傑物として周囲から次々と理想を押し付けられていくようになったらしいのです。
どれだけの高望みをしたのでしょうか、その期待が重すぎたのか嫌気が指したのか。
それとももう1人の後継者候補である慕う兄への気遣いからなのか、いつしか傑物と期待されていた姿は鳴りを潜め、遊び呆けたり悪さをするようになりまして。
それがあまりにも目につくため、ついには、お父君が勘当なさいました。
行き宛のなくなったウルを、たまたま行商でワフウに来ていた私が引き取ったというわけです。近況などについては手紙で当主に連絡を時々してありますけどね。
だからコムギさんのことも御存知ですよ」
そうだったのか、、。
期待からの重圧に耐えられなかった、か。
国の代表になりうる期待、想像できないけど相当なものだろうな。
本人が望むわけでなく、周囲から押し付けられるのだから、ウルからすればたまったものではないだろう。悪さはよくないが、周囲のせいにしたくなったり、ストレスを発散させないと耐えられなかったんだろうな。
ウルが帰る場所もここにはないのだと考えると
可哀想だ。せめて、オレたちと一緒にいるときがウルにとって安らいだり充実した時間であって欲しいと願うばかりだ。
そして、ショーニさんにふとした疑問をぶつける。
「勘当されているなら、ウルはどこに行ったんですか?」
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