含み
父上って、、殿様はウルの親父さんなのか。
ショーニさんとも知り合いだし、何かあったのだろうな、あまり深入りは出来ない空気だ。
「ふん、ここに足を踏み入れたということはよほどの覚悟があるのだと見るとしよう。
それほどの覚悟のもと、今日はどんな用向きだ?」
さらに凄みを増す威圧感、、!!
思わず尻込みしてしまうほどの重い空気がのし掛かる。だが言わねばならない、米粉が欲しいのだと。これほどの重圧の中で、慎重に検討すべき議題を挙げるなんて並大抵の心臓じゃ無理だと本能的に悟ってしまう。
ウルは完全にやられている、、。
ショーニさんはというとケロリとした顔で
「我が国の王、イストの名代として申し上げます。国交の樹立および米粉の取り扱いをお願いに参りました。
どうかご検討を。」
しん、、と静まり返る。
その言葉の重大さの表れだ。
今までの歴史を覆す提案。これを認めれば内外に大きな波紋が広がるだろう、その可能性はけして良いものだけではない。危険が増すことにもなるのだから。もしかしたら危険だけが増して良いことがないかもしれない。
あらゆる可能性を孕むこの提案。
さて殿様はどう見るのか。
少なくとも緊張の空気が緩む気配はない。
そして殿様がわすがに体勢を変えながら尋ねる。
「なぜだ?」
それはただの一言。
だが、あらゆる意図を明確にせよ、とその一言に国の主導者としての決断を下すためとの意志が集約されていた。それだけ密度のある一言だ。
生半可な答えでは決して許されないだろう。
ショーニさんはこの質問にどう応じる!?
「なぜ、か。
『全て』を『ここ』で申し上げて、本当によろしいのですか?」
なんだ、、?
挑発的で含みのある言い方だ。
複雑な事情があるといかにもな口ぶりで気になってしまう。
「ふふ、あいかわらずの食えないやつよな。
わかった、別に時間を取るとしよう。
今日はこれまでだな。
使者を出す、それまでは観光でもしていくといい。
ウルよ、この地に戻った貴様にはやるべきことがあるだろう。
忘れるな。」
「「「はっ」」」
三者三様の思いを抱え、謁見の時間は終わった。
思った以上に重大な話に巻き込まれたのだとあらためて自覚した。
「あー、、早く帰ってパンを作りたいな、、」
「ははは、店長は肝が太いのかわかりませんが、ぶれませんね。
その逞しさが時々羨ましいですよ、、」
暗く沈んだ、影のある笑顔で冗談をウルが言う。
羨ましい?
ウル、本当にどうしたんだ?
いつもご愛読ありがとうございます。
米粉と共にウルについてストーリーを展開させていきます。テンポよく描けるよう、がんばります。評価、感想、ブックマークもよろしければお願いいたします。