謁見の間にて
この国のトップ相手に商談、なんだか場違いな気がするけどこれしか手段がないなら仕方ないな。
「その相手はどこにいるんです?
約束とかも取り付ける必要あるんじゃ?」
「大丈夫です。
ほら、あそこにそびえ立つ城にトップの人はいますよ」
あれか、瓦屋根と鯱、明らかに見たことある日本の城郭そっくりだ。
そうなるときっと王様じゃなくて殿様なんだろうな。どんな人が殿様なんだろうか。
うちの王様がラフな感じだから、みんなあんな感じじゃないとは思いたいけど。
門の前に立つと、より城の巨大さが感じられる。
堂々とした、来るものを拒む頑丈かつ堅牢そうな門。そこに立つ門番にショーニさんが話しかけるとすぐにゴゴゴ、と重い音と共に門が開かれた。
門からしばらく道なりに進むと、和風庭園が広がっていた。詫び錆びの世界という詞がぴったりな華美さのない、厳格さと静謐さの中にある形式美というようなものが感じられる。
「静かで、なんだか落ち着きますね」
「そうですね。やはり緊張してますか?」
「しますよ、そりゃ。ショーニさんはしないんですか?」
「私もしますよ。でもそう見せないだけです。商人はナメられたら終わりですからね 」
なるほど、ショーニさんの余裕そうな落ち着きは経験値の差から来るものなのか。
ワフウの国では建物の中に入るにあたり靴を脱ぐ、久しぶりの感覚かもしれない。長い廊下を進み謁見の間に通される。畳張りの天井の高い空間だ。これまた久しぶりの正座でこの国の主導者たる人物を待つことに。
「正座がわかりますか、良かった」
「ええまあ、足がしびれないか心配はありますけど」
「我慢ですね、辛抱してください」
待っている間、果たして上手く行くのか、その心配がぐるぐると頭のなかで駆け巡る。
「殿様のおなーりー、、!!」
近習の声が響く。オレたちはその声を聞くなり平伏し、頭を下げる。
ドスドス、、
人が力強く歩く音がする。
「表をあげよ」
「「「はっ!」」」
その声に顔を上げて、声の主たる主導者を見る。
キリッとした細身な中年男性だ。
その顔には責任感とやる気に満ち溢れた威厳があった。しかしどこかで見たような、、、?
「久しぶりだな、ショーニよ」
「はい。ご無沙汰しております」
え!?ショーニさん知り合いなの??
だから余裕があったのか。
「『アイツ』はどうだ?上手くやれてるか?」
「そうですね、民と距離が近く、評判も概ね良いですよ」
「そうか、それは良かった。心配だったからな、無事に勤まるものかなと」
「役目が人をそれにふさわしいように成長させるのですよ」
「そうだな、わしもそうかもしれんしな」
『アイツ』?まさか??
、、我らの国王、イスト陛下のことです。とウルが耳打ちしてくれる。
「、、久しぶりだな、息災か」
「、、はい」
ウルと殿様が会話を交わす。
ここも知り合いか、なんだか疎外感が、、、
「勝手に飛び出し、もう何年になるか。
貴様は今何をしているのだ?
なぜここにいる?
よく顔を出せたな??」
すごい圧だ、、!
ビリビリと怒気を感じる。
なんでこんな空気になるんだ?
ウルが恐る恐る口を開く
「道を見つけました。我が進むべき道を。
こちらのコムギ様と共に歩み、自らを捧げる覚悟です。そしてそのためにこちらに参りました。
父上」
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