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魔物狩りとあんぱん

いつもご愛読ありがとうございます。


パン屋さんの苦労や仕事の大変さや掛ける熱量が伝わればいいなと思いながら書いてます。

なかなか大変なお仕事なんですよ。

「ほ、本当か⁉

 魔石とやらがあれば大事な食材達が助かるんだな⁉」


「は、はい……⁉たぶん、ですけど……」


「どうすればいいんだ!

 魔石について教えてくれ‼」


「教えます!教えますから、そんなに強く揺さぶらないで……うっぷ……」


 ガクンガクンと彼女の肩を揺さぶる手を止める。

 そうは言っても、いてもたってもいられない。

 逸るこの気持ちを抑えながら彼女の息が整うのを待つ。


「ご、ごほん。魔石を手に入れる方法は買うか採取するかの2つでして――」


「よし、じゃあ早速いこう!」


「へ……え⁉どこにですか」


「もちろん、魔石を買いに!」


「え、あ……ちょ……む、無理ですよ⁉」


「え、なんで……?」


「高くて買えないからです‼」


「………なんだって?」


「だから。高くて買えないんですよ。

 超がつく程、高級品なので……」


「いくら?」


「1億ジュエル、地方の領主なら城が建てられるくらいです」


「城が建つ⁉魔石ってそんな高いの⁉」


「はい、流通数が少ない稀少な品ですから。

 買う以外だと、あとは採取するしかありません。

 ですが、人には行けない過酷な環境や場所にあると聞きます……」


 やはり八方塞がりじゃないか!

 困った……どうしよう……。

 しかし考えている間に食材たちは痛んでいく――……仕方がない!

 潔く発想を切り替えよう。


「……わかった、じゃあ1億を手っ取り早く稼ぐにはどうしたらいい?」


「全然わかってないじゃないですか!そもそもそんな手段はありません‼」


「ないの⁉なにかあるでしょ⁇」


「そうは言っても……うーん……」


 真剣に彼女は考える。

正直彼女の反応に少なからず期待を抱く。

 なぜなら、彼女が《《悩んでいるから》》だ。

本当に手段が無ければ、仁辺もなく諦めを促すはず。

 しかし、手段があるからこそ彼女は逡巡しているのだ。

 そして。

 彼女がようやく絞り出した言葉で期待の予感は確信に変わった。


「1つだけ手段があります。

 ただし非常に危険なのでオススメはできません。

 間違いなく、命懸けになります。

 ……それでもいいですか?」


 責任を伴う慎重な発言。

 彼女は真摯な眼差しで、オレの覚悟を問うている。


「大丈夫だ、早く教えてくれないか?」

「魔物狩りです」

「……魔物狩り?というか『魔物』って――なに?」

「それも知らないんですか?

 魔物というのは魔力を宿している動物や植物の総称で、人々の生活に欠かせない物ですよ」

「そんな大事な物を狩っちゃまずいんじゃないの?」

「ですが、特に強い魔力を持ち害を与える物は排除対象になってます。それらは『魔獣』と区分けされ、強さに応じたランクや賞金が決められています。

対象が強かったり厄介であればあるほど報酬が高額になるんです」


「なるほど。

 で、どこで、何を倒せば1億もらえるんだ⁉」


魔物についてはわかった。

ならば次は対象目標を決めねばならない。


「本気……なんですね、わかりました」


 本気だとも‼

 可愛い食材達のため、パンのためだ‼

 なんでもこい‼‼


「1億なら……ドラゴンですね」


「へ?」


「ごめん、聞き間違いじゃないよね?

 今……ドラゴンって言った?」


「はい。確かにドラゴンと言いましたよ。

 1億となればドラゴンクラスの難易度になりますね」


 ど、ドラゴンだとぉぉぉぉぉぉ⁉

 ファンタジーな生物まであるのかあああ⁉⁉⁉


 ドラゴンってあれだろ、それってあのファンタジーによく出てくるアレだよな?火を吹いたり飛んだりするヤツ!

そんなのをパン職人のオレが倒すって……⁉


 むりむりむり‼

 やっぱりこれ夢じゃないかしら……。

 そうだ、夢だ。

 これは夢なんだわ……オホホホホ……‼

 

――バシン!


「しっかりしてください!」


 余りに想像を越えた話の連続で錯乱してしまったが、女騎士さんから頬に強烈なビンタを食らう。

 うぅむ……痛い。この状況はやはり現実らしい。


「で、そのドラゴンはどこにいてどうやれば倒せるとかわかってるのかな?攻略法とか」


 ゲームとかなら攻略法あるだろ、ファンタジーならそうゆうのもあるはずだ‼


「攻略法なんて聞いた事ないですよ……そんなのあったらみんなが倒せちゃいますよ。

 聞いた話では国境になっている山脈のどこかに生息しているらしいんですけど、詳しい場所まではちょっと……」


 情報が不足しているままじゃ何も身動きが取れない。なんとか情報を集めたいな。


「誰か知らないのか、一刻の猶予もないんだ!」


「う〜ん……あ、商会ならわかるかもしれません。」


「商会?」


「はい、そこではあらゆる品物が取引されています。もちろん情報も、です。

 きっとそこにならドラゴンに関する情報もあるかもしれません」


「よし!じゃすぐ、そこへいこう!

 ――あっ、どうせ売れないかもしれないし、このパン達をお土産に持っていこう。

 君もごめんね、色々教えてくれてありがとう。ちょっと希望が見えたよ。

 お礼にここにある好きなパンを、好きなだけ食べてくれ。

 つっても、あまり種類は無いけど……」


うちの取り扱い商品は50品。

定番から変わり種まで色々取り揃えてある。

捨てるくらいなら食べてもらった方がパンも喜ぶだろう。


「えっ!いいんですか?

 こんな、というより、食べられるんですか?

 キレイで可愛くて、食べるのがもったいない……」


「ハハハ!

 そりゃ嬉しいな、でも遠慮しないでよ。

 店番もいないし、これからオレが出掛けたら売れないしさ。全部その商会に持っていって捌くつもりだから」


「じゃ、じゃあ……これをいいですか?」


 躊躇いがちに恐る恐る彼女が指差したのは『あんぱん』だ。


「いいよ‼

 包むのに時間かかるからちょっとここに座って待っててくれな」



 〜女騎士〜


『あんぱん』?

 そういう名前なのでしょうか。

 食べられると聞きましたが……。


 柔らかい……。

 持った感触はズッシリして、でも触った感触はふわふわで……。

 あっ、ちょっと持った部分が凹んでしまいました。ん?凹んで薄くなったところから黒紫色のぶつぶつしたものが?なんでしょう?

 とりあえず口にしてみましょうか。


 くちどけのよい生地に、甘さの程よいこの黒紫色の中身……とても上品な甘さだけど、さらりと口の中で生地と溶け合い……あっ‼もうなくなってしまいました。

 こんなに美味しいものがあるなんて……。

 でも食べ終わってしまいました……。


「どう?美味しかったみたいだね?

 良かった!その顔が見れて嬉しいよ‼

 それに君みたいな美人の笑顔だ、作ったこっちもなんだか癒されるよ、ありがとう。

 遠慮せず、もっと食べていいよ。

 まだたくさんあるから」


「い、いいんですか?」


「ああ、そんな風に美味しそうに食べるんだ。悪い人じゃなさそうだ。

 お礼も兼ねてるんだし、どうぞどうぞ?」


 じゃっ……じゃあ!

 そう言って私はお言葉に甘えて、1つ……また1つ……と『あんぱん』全部で5つも食べてしまうのだった。

「続きが気になるな」と思っていただけましたら、

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