秘密兵器
王様の皿に『メロンパン』が乗せられる。
「おお!これか、待ちかねたぞ!
よしではさっそく――」
「陛下、毒見を!」
「お前がまた全部食べたらどうする!
……ほら一口、これでどうだ」
もぐ……
「――はい、大丈夫です」
「よし!待たせおってからに!」
王様がナイフとフォークを器用に使い、一口大に切って食べる。
「――……‼
美味い……‼
なんなのだこれは……ケーキでもパンでもない。余も数多の菓子を食べてきたが、初めての味だ……⁉
外はまるでクッキーの様にサクサクと、中はふわりと軽く、異なる甘さと食感を調和させた見事な逸品――……‼。
皆も食べてみよ、この美味さを余は形容できぬ。ショー二、ええと……これは……何と言う食べ物なのだ……⁇」
「『メロンパン』でございます、陛下」
「『メロンパン』か。
これは何の材料から出来るのだ?
今までの中で一番の美味なる品だ、まるで検討がつかん」
フッ、と眼鏡の位置を正しつつ、満を持して答えをハッキリと告げる。
「カウカウの乳と、エッグバードのタマゴ、魔物の食材が使われております」
――ザワザワ……‼
告げられた予想外の一言に皆がざわつく。
「なんだと!
カウカウは王室牧場があるので余もわかるぞ。どちらも入手困難な高級品ではないか!
用意出来たというだけでも驚くのに、それらをこれほどの料理に昇華したのか……。
見事としか言いようがないぞ、ショーニ!」
「格別なお褒めの言葉、恐れ入ります。
それら全てこちらのコムギの手によるものでございます」
「そうか!
――コムギとやら、見事である‼」
「はっ、ありがとうございます!」
褒められているのはわかるがやっぱり緊張するな。こうゆう仰々しいやり取りは劇やテレビでしか見たこと無いからな。
「いやしかし……これは本当に見事な、美味な物だ……。
『メロンパン』と言ったか。
もう、無いのか?」
はい、王様からお代わり入りました。
公爵や回りの貴族達も驚愕と嬉々を浮かべた顔でもりもりと食べている。
どうなるかと思ったけど、良かった。
あの顔を見れば安心だ。
「陛下」
「まさか……もうないのか⁉」
王様がこの世の終わりを目にしたかの様に絶望的な表情をする。
そんなに気に入ったのか。
「ご安心ください、まだメロンパンのご用意はございます。
――よろしければさらに違った食べ方をお試し願いたいのですが……いかがでしょうか?」
「なに⁉まだ何かあるのか?
良い、許す!
早くせい!」
事前の打ち合わせ通り、ショーニさんが着々と進める。王様から許可を得られたので全員分の皿に、ショーニさんがメロンパンを補充し、横でオレが『それ』を各皿に盛り付ける。
盛り付けられた『謎の物体』を皆が不思議そうに眺める。反応から察するに見た事が無いのだろう。
――これならイケそうだ。
「ショー二よ、なにやらまた奇妙な物だが『これ』はなんだ?」
「こちらは『生クリーム』と申します」
そう、用意してきたのは『生クリーム』。
これがオレ達の秘密兵器なのだ!
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