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クリームパンとお客さん?

いつもご愛読ありがとうございます。


みなさんはどんなパンが好きですか?

私はクリームパンが1番好きなのであちこち食べ比べしてます。

パン屋巡りって楽しいですよね☆


 シャッターを開け、店から出て見渡すと目の前に広がるのは見た事の無い街並み。


我が城『ベーカリー・コムギ』は少し郊外にあり、いつもなら目の前にある

駐車場には車が一台も無く、もちろんお客様達の列も無い。


 もしかしたら見間違いではないかと期待しながら、目を擦り何度も確認するが、どうやらやはり見間違いではないようだ。

 眼前に広がる光景も、何がどうなってこうなったわからない、この現状も現実らしい。この受け入れがたい事実を認識するにつれ、胸の鼓動がバクバクと速くなっているのがわかる。



(ど……どうなっているんだ⁉


おおおちつけ、落ち着けオレ。

まずは深呼吸して―――………ふぅ。


これはきっと夢だ。

もしくは……いや、やはり夢なはずだ。

ひとまずシャッターは閉めよう。

――なんだかすごい注目されているからな)


そう、店先には人だかりが出来ている。

不審がり、警戒の眼差しを向けながら何事かと騒ぎを聞き付けたり、足をとめた行き交う人々か野次馬的に集まっているのだ。

そんな彼らの視線を感じつつ、それを遮る意味でもとシャッターを締める。


――ガラガラガラ、ピしゃん!閉店‼


「ふぅ……。

オレも疲れてるんだろうな。

かれこれ18歳の頃から約15年、ほぼ休みなく働いてきたからな……。

仕事一筋のおかげで店を開けるまでになれたけど、いまだに独身だし……。

とりあえず仕込みは一回止めて、色々確認するとするか」


『ぐぅ~……』


(なんか腹が減ったな……とりあえず『ダメパン』を喰うか)


 毎日パン屋では必ずロスが出る。

正直これは頭が痛い問題だ。


商品である以上、焼き上がったパン達は見た目が揃ってないといけないし、生焼けだったり、焦げすぎてもいけない。

そしてパンの生地の中では焼き上がるまで酵母が生きており、目に見えない酵母も生物である以上、出来上がるまで温度や湿度に左右されてしまう。

必然的に売れ残り以外にロスが出るのだ。

それらを総じてオレは残念ながら売れないダメなパン、略してダメパンと呼んでいる。



もぐもぐもぐ……ごっくん。



うん、美味い!

我ながらやはり自慢のクリームパンは美味い!


 今オレが食べたのはクリームパン。

これでもかとボリュームたっぷりにクリームを包んだ、うちの店自慢、人気商品の1つだ。

こだわりにこだわった、しっとり口溶けの良いブリオッシュと呼ばれる生地とさらりと舌の上で溶ける上品な甘さのカスタードクリーム。

ブリオッシュは生地に砂糖やバターが多い分、少し焦げ色がつきやすいワガママな生地ヤツだが、オレはこいつが大好きだ!

 

 噛むとなめらかに口の中で一体になるカスタードクリームと生地、ゆっくりと歯、舌、口内、のどを刺激しながら腹の中へ飲み込まれていく。

口溶けと喉ごしの良さがカスタードクリームパンの美味しさを決める重要な要素だ。



さて――……腹もふくれて落ち着いたところで冷静に考えよう。


シャッターを開けたら違う世界。

――そんなことは、まさかあるはずがない。

漫画や小説じゃあるまいし!

開けたらいつもの常連さんたちが待ってくれているはず。

……よーし、気を取り直して開店だ‼


意を決してシャッターに手を掛ける。

先程のは疲れが見せた幻覚、そうに違いない。

今夜は早く寝よう、さぁ今日も仕事頑張るぞ!



ガラガラガラ!


「いらっしゃいませ!

ベーカリー・コムギ、開店いたしまーす!」


いつものように元気良く、気持ち良くお客様を迎えるために開店の挨拶をする。



――が。

やはり先程と同じ見た事の無い街並み。


違っているのは、目の前に鎧を着たブロンド美人が仁王立ちしている事だ。

 まるでモデルかと思うほどにスラリとしたプロポーション。

腰には長剣を携え、鎧は防御より機動性が重視されているのか、動きやすそうに急所を防護する程度の装いだ。

風にそよぎ、太陽に照らされキラキラと輝くのは、肩まであるハーフアップアレンジに纏めた黄金色の長髪。吸い込まれそうな程、綺麗な翡翠色の目を血走らせ美人が店前に立っている。


外国の人かな?

時折来るけど、こんな朝から来るお客様は珍しい。


「おっ。

お客さんがやっときたな。

いやぁ……安心した‼」


「オキャクサン?

何を言っているかわかりませんがこれは一体なんですか⁇

誰の断りを得てここにいるのですか⁉」


「え、うちはもう何年も前からここで店をやってますよ?

となりの佐々木さんや向かいのお肉屋さんに聞いてくださいよ」


「ササキサン?

肉屋?そんなものはありませんよ。

さっきから一体何を言っているんですか⁉」


「そんな馬鹿な……これはやっぱり夢なのか……?

さっきの景色のままだし――……」


女騎士さんの後ろには先程の街並みと先程の人だかり。

どうやらこの女騎士さんも騒ぎを聞き付けて来たらしい。

警戒感を露にし強張る女を余所に、変わらぬ景色を見た瞬間、身体中の力が抜け、「はぁあ〜……」とため息をつきながらオレは膝を落とす。


 目の前で脱力する様子を見ていた女騎士さんが

「貴方、さっきからかなり怪しいですね?

一体何が起きているのか聴取しますので、ちょっと詰所まで同行願います」

と言うなりオレの腕をむんずと掴み、連行しようとする。

見た目によらず、すごい力だ。


「イヤだ、留守番も立たせずに店を放置するなんて!」


だがオレとていきなりしょっぴかれるなんてたまったもんじゃない。

むしろ、オレの方が話を聞きたいのに。

片腕は女騎士に、もう片腕は店の柱を必死に掴み、明確に拒否の態度を示す。


「いいから来なさい!早く‼」


「い・や・だー‼」

 やっと建てた自慢の大切なみせなんだ。

なにがなんでも失いたくない。

今これが夢の中の出来事でも危険にはさらしたくない‼

涙目になりつつ、精一杯抵抗する。


「はあ……ちょっと話を聞くだけです、何も泣かなくてもいいでしょう。

なんだか私が悪いみたいじゃないですか」


「悪いよ!いきなり人の城にイチャモンつけるし、オレを連れていこうとするし!」


「そう言われましても、それが私の職業ジョブと任務なのですから仕方ありません」


「俺だって職業は『パン職人』だ、ちゃんと仕事だもんね!!」


子供のような言い合いになる。



「――パン職人?そんな職業は聞いたことありませんが……?」


「……は?そんなわけないだろ」


互いに、「何言ってんの?」と唖然とした顔になる。

パン職人がない世界なんてありえない、オレはそう思っていたがどうやら認識が甘かったようだ。



「いや、パンなんて誰でも作れるじゃないですか、なんなら子供でも作れます。そんな職人なんて高尚な物じゃ………」

 


「パン屋さんをバカにするんじゃない‼」

「続きが気になるな」と思っていただけましたら、

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