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会議室にて

「一体どうしたんですか?

 そんなに血相変えて」

 部屋に入ってきたショーニさんの様子にビックリする。


「いえ、お願いしていた件に関わるのですが、その予定が前倒しになってしまいまして……とにかく一緒にきてください!

 あ、パンも一緒に‼」


「はあ……⁇」


 なんともよくわからない。

 依頼されたメロンパンを何かに活用する予定だったが、その予定が変わった、とか⁇


 メロンパンをガラガラと運びながら応接室から廊下を進み、さらに奥。

 初めて入るその部屋は会議室だった。

 机を「コの字」に囲み、ショーニさんを含め同じような高級そうな服装の人たちが全部9人揃っていた。



「ささ、コムギさんどうぞこちらへ」

 ショーニさんに案内され、その空いたコの字の真ん中に座る。

 ……なんか裁判みたいに、真ん中で注目されるスタイルはイヤだな。オレを見た会議室がにわかにざわつく。


「おい、あれが……?」

「本当なのか……?」


 なんなんだよ、気になるだろ!


 そしてショーニさんがちょうどオレの目の前、最奥に着席する。なんかいつも見てる姿より、威圧感というか迫力があるな。

 そして一声。


「では遅れてしまったが定例会議を始めよう」


 ざわついた場を締める様にショーニさんが切り出す。

 会議か……こうゆう場はいつも馴れない。

 店のミーティングはもっとフランクな雰囲気だし、こんな重苦しい雰囲気は経験値が低いから精神的にキツイ。


 内容がよくわからないが進行していく会議に耳を傾けていると、周りの人達が順番に売上やら何かの報告をしている。

 どうやら彼等は各地に点在する支店の代表達らしい。


 そして雰囲気から察するにショーニさんはそのトップにいるようだ。

 偉いっぽいのではなく、本当に偉かったのか。すみません。


 会議が進み、ショーニさんが今日1番の険しい表情と何かに挑む前の戦士のような鬼気迫る様子になる。同時に会議室そのものの空気が強張る。

 これからの話を聞き漏らさぬよう、耳を澄ませながら。


「では今日の核となる議題だ。

 数日前から市場と共有で管理しているカウカウとその他についての案件だ」


 再び場がシンッ……と静まり重苦しい雰囲気になる。


「皆もカウカウの価値は知っているだろう。

 どれだけの利益や社会的な意義があるか。

 希少な生乳だけでなく、さらにはその活用法まで。

 既に問い合わせが殺到しているのは、皆承知しているはずだ。

 先ほどの報告を合わせると、今年の我々の収益は前年の10倍になるのだ。

 これがどれだけの数字か、君らならわかるだろう……?


 さらに素晴らしいのは富の恩恵を独占するのではなく、共有するという発想だ。

 今回の牧場の運営管理にスラムの人々を雇用することにより、カウカウの飼育管理や飼い葉の調達などが非常に効率的に行われている。雇用、生産、利益という皆が幸せになる富の循環を生み出せたのは正に天恵と言わざるを得ない!


 この素晴らしい恩恵を我々に授けてくださったのは、こちらにいらっしゃるコムギ・ブラン氏。


 彼は我々にとって大恩人だ!


 コムギ殿。

 まずはこの場を借りて御礼申し上げます‼」


 立ち上がり、仰々しく、バッと深々としたお辞儀と挨拶をショーニさんがすると、他の人達もそれに続く。なんだか面映ゆいな。

 周りを一瞥すると続けてショーニさんが着席するよう促し、引き続き会議を進行していく。


「そして、彼がもたらしてくれる恩恵はこれだけに留まらない。

 我々商人にとって莫大な価値をさらに提供してくれる物を今日は紹介したい‼

 ――コムギさん、『そちらのもの』を配ってもよろしいでしょうか?」


「あ、はい。どうぞ」



 ――ふわっ……



 番重のフタを開け、解き放たれた甘い、雲のように軽く、鼻孔を抜け、本能をくすぐる優しい空気が重苦しい会議室に満ちていく。


「んんっ⁉」

「なんだこれは⁉⁉」

「この甘い香りは一体……⁇」


 口々に驚愕を露にしてその甘い香りの『主』を探す。眼鏡を光らせ、計算どおりと言わんばかりにニヤリと微笑んだショーニさんが『それ』をわざとらしく掲げ、皆に見せつける。



「これが我々にとって未知の可能性を示し、成功を約束するもの!


 見よ!

 これが魔物の材料を集約し誕生した、


『メロンパン』だ!」

紹介して欲しいパン、オススメのパン、ご指摘アドバイスなども、ございましたら感想欄で教えてくださいね!


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