驚愕と報告⑧資金繰り
後に語られるナンバード襲撃事件。
被害は最小限で留めたものの、城を含む帝都内の建築物には衝突や攻撃によるおびただしい傷跡が至る所で散見される。
復興工事には相当の時間と金銭が掛かるそうだ。
「こりゃまたずいぶんとひどいな」
「ううむ、これだけの被害となると果たしてどれだけの予算が必要になるのか・・・見当もつかん」
予算、お金か・・・。
食糧難の次は復興工事。次から次から出てくる頭の痛い問題にさすがの皇帝も参っているようだ。執務室の机で頭を抱えている皇帝は冷静さを装っているのにどこか落ち着きがない。
「実際どれだけの資金が必要になりそうなんですか?」
「帝都全域の補修工事、結界の張り直し、防衛設備の拡充。
この城も多少なりとも補修せねばならないと考えると・・・・ざっとこんなもんだな」
手渡された書面には費用の概算が淀みなくさらさらと書いてある。
マイスさん、タイガー騎士団長、リーンとしげしげと眺めると。
「「「「なんですかこの額は!!」」」」
わけのわからないくらい庶民のオレには天文学的な額。
店を経営しているから数字はわかると自負しているが、しかしこれはいくらなんでも桁が多すぎてピンとこない。
「こんな額どこにあると思ってるんですか!?」
「まぁ待て。それをこれから考えるのだ。
ちなみにこれは住民の避難生活予算も兼ねての額。
削れるところは削り、人命とライフラインを最優先に工事を進めるつもりだ。
だがそれでもそれなりの額が必要、さてどうしたものか・・・」
う~ん、と頭を悩ませる一同。
食糧難解消に向けた経済政策に予算を割き、さぁこれから活動していこうとした矢先の出来事。家があっても食べ物がなければ餓死の危険性がある。食べ物があっても家がなければこれまた気温差や身の危険に晒され死亡要因足りうる。
両方あってこその人の営み。
どう工面するのが良いかと知恵を絞る。
「何か売れそうなものを売って工面するしかないんじゃないですか?
もしくはどこからか借金するか・・・」
「これだけの額を貸してくれるところなんてある筈がない。それに売却できる価値のある物・・・宝物庫にある先祖伝来の国宝やら何やらを売れば足しにはなるだろうが、焼け石に水。全く足りないだろうな、それでも……」
国宝を売る決断はまさに断腸の思い。
背に腹を変えられないこの状況、どうにかしないとならない焦りが視野を狭めているのかもしれない。
「国宝以外に売れるものはないんですか?」
「あとは直轄領の土地や国の研究所で持っている特許だな。しかしそれらを売ると国の基盤が揺らいでしまう。
根本的な解決にならないその場しのぎの解決策は出来る限りしたくないな」
「そうは言ってもこのままでは・・・」
理想はわかるが、そうも言ってられない現実に直面している。
三人寄れば文殊の知恵。
執務室には帝国の叡智が揃っている。
必ず何か解決策が見つけられるはずだ。
「――ちなみに」
「ん?」
「何が高く売れるんですか?いや、何が売れるかわからないんで……」
「土地や建物、貴重品、希少品だな。常識だろう?」
「そうじゃなくて具体的に……」
何を当たり前の事を、互いに呆気に取られながら意図していない答えの交錯に少し張り詰めた空気が緩む。
「市場で高値取引されるのは地域の名産品に工芸品、宝石、魔石、魔道具、魔剣、希少生物でしょうか」
にこやかに教えてくれるマイスさんも先程より肩から力が抜けたみたいだ。
「へえぇ、宝石、魔石か……ん?」
「どうしたでありますか?」
「……ある」
「え?」
「魔石だよ、ほら!こないだ沢山持って帰ってきたじゃない!!」
「「「「あ!」」」」
「あれだけあれば、かなりの額になるんじゃないかな?」
「それだ!」
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