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驚愕と報告⑦犯人ら

一瞬で空を染める赤。

鮮やかな赤を基調とした暖色、橙、朱、紅がグラデーションとなり視界一杯の空に広がってゆく。


「な、何事だ!―――……っ⁉」


視覚だけではない、見上げた空から轟く爆発音に今度は聴覚が驚かされる。


「一体……何が起きたのだ……」


天変地異か、それとも。

異変に不安を覚える皇帝。

しかしその想いを抱くのは彼だけではなかった。


◇◇◇


「馬鹿な⁉あれだけのナンバードを一掃するなんて、帝国騎士団に出来るはずがない。それに皇帝らのあの実力、一体どうなっているんだ!」

「……不明。情報にない」

「わからないで済むか!この失敗の責任は大きいぞ!?

魔物の手配、結界の解除にどれほど苦労したと思っておるのだ⁉」

「……」

「これでは混乱に乗じた皇帝の暗殺も帝都の破壊活動も出来んではないか!」

「……」


わからない。

確かに以前調査した時は《《計画通り》》帝国は死に体だった。なのに、皇帝だけじゃない騎士団の実力も、落ち着いてみれば街の様子まで変だ。


勤勉な国民性による、文化、経済、あらゆる面で大陸一の繁栄を誇る大国の姿を取り戻しつつ、いや。

街のあちらこちらに見える大規模な工事を見るに、さらに成長しようとしているのがわかる。

調査と計画から1年に満たない僅かな期間、どうやってこれだけ国力が回復したのだろうか……。


「ふん!暗殺業を生業とする鼠人一族最強『』の名を継ぐキサマを信じたのが間違いだったわ」

「そんな……」

「そうだろう?この光景、結果がそうではないか。

結界の綻びを見つけ、時間を掛け破壊し、危険なナンバードを使役する為に高価な魔道具を用意したにも関わらずこのザマなのだからな」

「……」


確かに失敗したのは事実。……落ち度があるのは認めよう。

しかし依頼人とはいえ、がなり声で一方的に責任を押し付けるこの男には不快感しかない。少なくとも帝国についての情報は《《彼等》》から提供されたのだから。


「……ちっ、やはり追手が来たか」


眼下に接近する斥候隊を見つける。

あり得ない魔物の出現、犯人がいると推察するのも当然だろう。

――あり得ないと言えば、あの空を覆う程のナンバードの群れを壊滅させた炎。


天を焦がし、紅に染める獄炎。

七大罪の名を冠する最上級魔法の1つ。


「まさか『憤怒メギド』……?

扱える者がいるとはベッカライ帝国、やはり一筋縄ではいかんか……」

「……撤退」

「この屈辱、必ずや晴らすぞ。……ちっ」


フードから覗く色黒肌の男は失敗の悔しさを隠さず、舌打ちをしながら身を翻しその場を後にする。黒装束に身を包んだ小柄な相棒ビジネスパートナーを置き去るように我先に。


「……あれは」


一族の名に賭けて二度と失敗はしたくない。

初めての失敗の景色を焼き付けるべく、ふと振り返った先。まだわずかに赤みを残す空に立つコック服の男。

両手には残火が見える。


炎のせいか、さっきまで暖かったはずの身体。

目にした途端、ぞくりと背筋が凍り、冷や汗が伝う。

生まれながらに様々な修羅場をくぐってきたからわかる。

全身から警戒のシグナルが最大音量で鳴り響く対象。


「……何者?――興味深い」


『暗殺者たるもの深く関心を抱くなかれ』


代々一族に伝わる教えの1つ。

暗殺しごとを淡々と冷徹にこなすため、先人と同じく疑う事なく忠実に従ってきた教訓。

だからこそ初めて興味を抱く相手から目が離せなかった。


◇◇◇


「やり過ぎたかな……。

神獣サンちゃんと戦った時の感覚でやったからかな……?もっと威力を抑えないと大惨事だな、こりゃ。

――ん?」 


今いる西地区上空から広大な帝都が一望出来る。

改めて見ると、機能的に区画され綺麗な街だ。

住民は避難しているはず、にも関わらず屋根の上に黒装束の人がこちらを見ている。


「逃げ遅れたのかな?

もしくは降りられないとか?城に戻る前に助けてあげるか」

「!」


すぅっと黒装束に近づくと驚いたのか、素早い――まるで忍者みたいなシュババッと効果音が出そうな動きで去ってしまった。


「そりゃ空から人が降りてきたら驚くよな……」


まぁあれだけ動けるなら大丈夫か。

他に逃げ遅れた人の気配も無いし、避難が無事に済んだんだろう。


「じゃ城に戻ろうかな……。あれ、パシェリさんどうしたんですか?」


隊の部下を引き連れ、息を切らしながら懸命に辺りを見渡すパシェリさんと鉢合わせする。


「コムギさん、この辺りに不審者がいませんでしたか⁉」

「不審者?いや、逃げ遅れたみたいな人はさっきいましたよ。なんか驚いたのかシュババッて行っちゃいましたけど」


「「「「そいつです!!」」」」

「おぉう!?」


斥候隊全員にツッコまれるとは。

あの黒装束が犯人……しまったな……。


「どんな奴でしたか?」

「黒装束で……小柄だったな。

それ以外はちょっとわからないな」

「そうですか……きっともう逃げているでしょうが念の為、警戒しておきましょう。

しかし奴らの狙いは一体なんだったのか。どうしてこんな事ができたのか、わからない事ばかりです」


わからない事ばかり。だが今はただ、再びこんな事が起きないようにと願うばかり。

オレはパシェリさん率いる斥候隊と、魔物を全て退治し、奇跡的な住民全員の無事を確認した皇帝、騎士団らと合流し共に城へ戻るのだった。

ご覧いただきありがとうございます。

ちょっと色々な設定を入れてみました。

ストーリーを少しずつ進めていきます。


感想、評価、ご指摘お待ちしております。

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