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ノース山脈⑦空の旅

2日ぶりの更新です!

「むふー……!このサンドイッチなる物は本当に美味いな‼

最近起きてからまともな物を食べとらんかったから、より美味く感じるぞ‼


パンはふんわり、しっとり。

具材の風味も活かしつつ、互いが調和して旨さを引き立たせている。小さなサンドイッチだが、食べただけでも作った者が見事な腕前だとわかるぞ」


 上機嫌でサンドイッチを頬張る雷竜鳥サンダーバード

 なんだかんだでサンドイッチのほとんど平らげ、アタシの食べる分は死守した最後の1つだけ。せっかくコムギさんに作ってもらったのに……とほほ。


 ちなみに冷凍保存しておいたサンドイッチをどうしてサンダーバードが食べられたかと言うと、角から発する電気の力でサンドイッチの氷を解かし、ほかほかに温めていたからだ。

眼前で起きた現象がどういった理屈で起きているのかまるで理解出来ない。研究所で様々な研究に携わり、それなりに学を修めたと自負はあるのに。

 まさに魔法を超越した力――これが神獣たる所以なのかな?


「うーん、神獣というだけあって不思議な事が出来るんでありますね……」


この世界には電子レンジがないため、電流による粒子振動で水分加熱が起きるなんてピンとこないのも無理はない。


「ふぅ……さて。

腹も膨れた事だし、礼と詫びを兼ねてふもとまで送ってやろう。

――なにせ、わしもこれから忙しくなるのでな。いつまでも相手は出来ん。どこへ送ればよいのだ?」


 思いがけない提案に、ぱあっと表情が明るくなるリーン。だが、問題はコムギ達とどうしたら合流出来るか。

 様々な考えが頭をよぎり、提案を快諾しながらも、頭を悩ませる彼女。


「――……っ⁉」


 突然、サンダーバードが立ち上がり警戒の姿勢を取る。


「ど、どうしたんでありますか⁉」


「――何者かが近付いてくる」


「えっ――……⁇」


◇◇◇


 少し時は遡る。

 少女を探す男2人、コムギとパシェリ。

 地平の彼方では太陽が沈みゆき、空が青からオレンジ、さらには紫に変わりつつある。

2人は少しでも早く、出来れば夜になる前にリーンの行方へと繋がる手掛かりを見つけるべく必死の探索作業をしていた。


「何か見えました?」


「……」


「えっ、何か見えたんですか⁇」


「…………」


「――コムギさんっ‼⁉」


「は、はい。

ごめんなさい、パシェリさん。

何か言いましたか⁉」

「いや、何か見えたのか、と……」

「あぁ、残念ながら何も……」

「そうですか。

しかし、必ずどこかにはいるはずです。

方向は合っているんですから、どこかにあの巨体が隠れられる場所があるはずなんです。

それこそ、谷間や洞窟とか――」


今2人は針岩の峰に到着したので付近を懸命に探している。

古書の通り、この辺りのどこかにいると信じたい。


「くそ、せめてもっと時間や人手があれば……」


「この広大なノース山脈を探すんです、いくら時間や人手があっても足りませんよ。

それに《《こんな探し方》》はコムギさんしか出来ないですから」


「まぁ……確かに。

ところでパシェリさん、疲れたりキツくないですか?」

「大丈夫ですよ!

図らずもコムギ殿が見ている世界を見る事が出来て、むしろ感動してるくらいなんですから」

「はぁ、でも気持ち悪くなったら言ってくださいね、何かあってからじゃ遅いですから」

「お構いなく。思ったより快適です。

それに今はリーンを探す方が先です、《《この空の旅》》も良いですが、さすがに時間も迫ってますから」


 そう。

焦る2人は今、それなりの速さで空中を飛んでいる。

すっかり忘れていたコムギの能力【重量管理ボリューム】でパシェリを荷物ごと最大限まで軽くし、自らの腹にくくりつけながらぶら下げる形で【空調管理エアコン】により飛行するという能力の併用。上手くいくか不安だったがどうにか成功している。しかし念のため、パシェリ自体も落下防止用に腹を縄でぐるぐる巻きにされているので知らぬ誰かが見たら唖然とするに違いない。


 飛行しながらコムギは前を、パシェリは斥候任務で培った広い視野で横から後方を確認している。雷竜鳥サンダーバードが飛び去った方向をかろうじて視認していた2人は後を追いつつ、必死に目を凝らし針岩の峰の周りから探索しているのだが、一向に手掛かりが見付からない。

 洞窟や谷間はいくつか見つけるが、いずれも規模は小さく、とてもあの巨体が潜める程の大きさではなかった。


 2人の脳裏ではひたすらリーンを危ぶんでいる。

仮に今は生きているとしても、夜になれば手遅れになるかもしれない。いや、今この瞬間すら危険が迫っているのかもしれないのだから、急ぐに越したことはないのだ。

 危機感を募らせ、はやる気持ちをどうしても抑えきれない。だが残酷なまでに刻々と時間と景色だけが過ぎ去ってゆく。


「――‼⁉

コムギさん、あれは⁉」


 何かを見つけたらしいパシェリの叫ぶ声に空中で急停止する。彼が指差す方向にあるのはひっそりと鬱蒼と深く茂る森の木々に隠れる様に口を開けた穴。 

夕闇の影に紛れ、多少見辛いが確かにそこには洞窟がある。

 その穴の入口は今まで見た中で一番大きく、この離れた空中からでも巨体が潜んでいるであろう可能性を感じさせる。

「コムギさん、あそこかもしれません!」

「そうですね、すぐ行きましょう!

飛ばしますよっ――‼」


 2人は全速力で洞窟に向かい、少女リーンの生存に望みを掛ける。祈りにも似た願い、どうにか届くと信じて。


「無事でいてくれよ、リーン……‼」

ご覧いただきましてありがとうございます。


コロナ第二波……自衛とは言っても限界はあると思いますが、皆様お身体にはくれぐれも気をつけてくださいませ。


感想、評価、ご指摘お待ちしております!

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