32話 迷宮攻略②
「んん……ん……」
目が覚めた。
まだ意識はしっかりと覚醒していないが、周りを見渡す。
薄暗く分かりずらいが、どうやらテントの中のようだ。
「何でだ……?」
突然のことに困惑する。
さっきまでは、あのデュラハンと戦ってたはずなんだが……
それに、動けないくらい身体にダメージを負っていたはずなのに、今では元気いっぱいなんだが……
このテントの中には、俺が寝ていた寝袋以外何も無かったので、とりあえず外に出てみることにする。
「お?目が覚めたのか?」
テントを出ると、すぐ近くで一人の女性が火をおこしていた。
「あ、あぁ……」
よく見ると、デュラハンと戦っていたあの広間だった。
俺が開けたクレーターなどは無くなっていたので、分かりずらいが、照明の位置などが、広間にそっくりだったのであの場所で間違いないだろう。
「いつまで突っ立ってんだ?こっちに来いよ。メシにしよう」
俺が辺りを見渡していると、女性はそんなことを言ってきた。
よく見ると火の上に鍋が吊るされており、中で何かが煮えているようだ。
「あんたは誰なんだ?ここにいたデュラハンはどうした?」
俺は女性に質問しながら、【鑑定】を発動した。
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name「レイス・フォーセシス」
Lv ーーー
種族【???】
HP:ーーー
MP:ーーー
STR:ーーー
DEX:ーーー
AGl:ーーー
INT:ーーー
LUK:ーーー
ATK:ーーー
DEF:ーーー
??
【??:???】
異能
【???】
スキル
【???】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なっ……」
名前以外分からないだと……
あのデュラハンと言い、どうなってんだよ……
それにこいつ異能の上に何か別のものがあるんだが……
「ん?今【鑑定】したか。何か分かったか?」
女性、レイスはニヤニヤとしながらそういう問いかけてくる。
何でバレた?
今まで【鑑定】したことを気づかれたことなんて一度もなかったのに……
「……いや、名前以外分からなかった」
どんな力を持っているかわからない以上、嘘をついても仕方ないと思ったので、俺は正直に言った。
「そうか、まぁそうだろうな」
レイスはうんうん、と頷きながらそう言ってくる。
「あぁ、さっきの質問に答えておこうか。と言っても鑑定したから名前は知ってると思うけど、私の名前はレイス。うーん……まぁ冒険者だな。それで、ここにいたデュラハン?だっけ?あいつは私が殺したよ。」
……は?
あのデュラハンを殺した?
見たところ無傷っぽいが、余裕であのデュラハンを殺せるだけの力をこいつは持ってるってことか?
「あのデュラハン、強くなかったか?」
「いや?多少はやるようだったけど、それだけだな。」
はは……どうやらほんとにやべぇやつっぽいな……
あの強さのデュラハンを、多少やる程度?
こいつ相当強いんだな……
とにかく座れ、と手招きしてきたので、俺は警戒なんかするのが馬鹿らしくなって、言われるがままに座った。
こいつが俺を殺そうとしてるならいつでも殺せたわけだからな。
俺が座ると、木の器をどこからか取りだして、鍋の中で煮ていたスープのようなものを取り分けてくれた。
またもや木でできたスプーンと一緒に渡されたので、それを食べる。
醤油ベースのスープに野菜やら肉やらが入れられた豪快なスープだった。
野菜や肉は切り方が雑で、大きいものもあったが、それでも何故か落ち着く味をしていた。
俺は食べながら色々な質問をしていった。
話を聞いた感じだと、どうやら俺はレイスに助けられたらしい。
俺が追い詰められて、いざ殺されそうになっていた所を、間に入ってデュラハンを真っ二つにしたとのことだ。
「いやぁ、まさか部屋に入ったら人が死にそうになってるんだもんよ。びっくりしたね」
「俺としては、あのデュラハンを真っ二つにできる奴がいることの方がびっくりだけどな」
食べ終わる頃にはそんな軽口を言えるほどに仲良くなっていた。
こいつからは何かしらの、人と仲良くなれるオーラ的なものが出ている気がする。
でなきゃ俺がこんなに早く他人と仲良くなれるわけがない。
【友好】とかそういうスキルがあったらきっとレベルMAXになっているだろう。
「ん、それでこれからハルトはどうするんだ?」
あぁ、そうか。
デュラハンが倒されたから、この部屋から出ることもできるし、静奈達の所に帰ることもできるのか……
リュースには死ぬなんて言ったが、なんか生きてるし……
この迷宮は最初の階でこんなに強い敵が出てくることが分かったから、二人は絶対に連れてこれないし……
リュースに一言入れてから、何とか一人で攻略するしかないか……
今攻略しなくても別にいいのか……?
いやいや……現にこの迷宮では俺よりも強い敵がいる訳だからな……
あいつらを守るためには強くならないと。
「俺は、仲間に一言かけてから攻略を続けようと思う」
「そうか……ふむ。」
俺が攻略を続けることを伝えると、何かを考え込んだ後に、こちらを見ながら頷いていた。
「ハルトよ。お前自分の得物は?」
「え?なんだよ突然」
「いいから答える!」
「えっと、分かんないかもしれないんだが、刀だ。」
突然そんな質問をされて、俺は困惑しながらも正直に答える。
この世界に刀が存在するのかどうかは分からないが、なければまぁそれはそれで別にいい。
「また扱いの難しいものを使うんだな」
「まぁ、昔ちょっとやってたからな……」
剣道だけど……
実際戦うと剣道の知識は役に立たないものの方が多い。
礼儀作法なんかは実践ではまず役に立たないし、足運びや構え方なんかは使うが……
「私が戦い方を教えてやるって言ったら受けるか?」
レイスはそんなことを言い始める。
「戦い方って……刀扱えるのか?」
「お?疑うのか?……ならば一度模擬戦でもしてみるか。もちろんステータスなんてものは使わずに、技術だけでの戦いだ。」
技術だけでの戦いか……
流石に真剣ではやらないだろうし、一度やって見るのも悪くはないのかもな……
「分かった。刃引きしてある刀を使うんだよな?」
「勿論だ。ハルトだって死にたくはないだろう?」
こいつ……
最初から自信満々じゃねぇか……
ぜってぇ泣かす!
「ほら、これを使え。」
レイスはそう言ってどこからか取り出した木刀を投げ渡してくる。
「おう」
おれはそれをキャッチして、軽く振って重さなどの確認をする。
重さもちょうどいいし、長さもピッタリだ。
むしろ俺のために作られたのではないかと錯覚するほど良く手に馴染む。
レイスはもう準備出来ているのか、木刀を正面に構えながらこちらを見ていた。
それを見て俺も刀を構え、目を閉じ、深呼吸する。
「すぅ……はぁ……」
目を開ける。
俺の意識は敵を倒すことだけを考え、感覚が研ぎ澄まされていくのが分かる。
「それじゃあいいか?」
「あぁ、いつでも」
「今からこのコインを上に投げるから、それが地面に落ちたら開始だ。」
「分かった」
レイスはコインを上に投げ、目を瞑る。
俺はその行動に若干驚きながらも、やることは変わらない、とさらに集中を高める。
——チャリン
「ふっ!」
コインが地面に落ちた瞬間、俺は素早くレイスに近づき、斬り掛かる。
俺の上からの斬り下しをレイスは目を開けることなく受け流す。
「ちっ……」
受け流されたその力を利用して、斬り上げに移行するも、何をやったのかよく分からないまま、俺は木刀を叩き落とされていた。
「へっ……?」
なんで叩き落とされたのか分からない。
見えなかった。
レイスが木刀で俺の木刀を撫でるように受け流した所までは見えた。
しかしそのあと、気がつけば叩き落とされていた。
「これで満足したか?」
レイスは目を開けてそんなことを言ってくる。
「もう一回いいか?」
模擬戦の結果が納得いかないわけじゃない。
どうして木刀が叩き落とされたのか知りたい。
この目で見て、あの技術を、モノにしたい。
俺の中にはそんな考えしかなかった。
「何度でも受けて立とう」
…………
………
……
「はぁ……はぁ……」
あれから何十回、何百回模擬戦をやったのだろう。
少なくとも木刀が5本折れるくらいには模擬戦をした。
「納得出来たか?」
俺は息も絶え絶えだと言うのに、レイスは涼しげな顔をしながらそんなことを聞いてくる。
「はぁ……はぁ……納得……出来ねぇ……訳が……ねぇだろ……」
こいつは強い。
ステータスだけでなく、技術も一流だと思う。
動きの全てに無駄がなかった。
ただ構えているだけに見えて隙がなかった。
どう攻めても勝てるビジョンが浮かばなかった。
「はぁ……今度はこっちからお願いする。俺に戦い方を教えてくれ。」
やっと呼吸が整ってきたので、俺はそう言ってレイスに頭を下げた。
「あぁ、任せろ。」
レイスはそう言って微笑んだ。
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