2話 融解
誤字脱字があればコメントで教えてください。
だんだん光が収まってきたのを感じた俺が目を開けると、そこはもう既に教室ではなかった。
辺り一面が薄暗い、曇り空のような色をした空間に不自然な机と椅子が並べられ、その椅子の一つに座りこちらを見つめる少年。
まずは何より情報が大切だと、どっかのお偉いさんが言っていたのを思い出し、その少年の方へと足を進めた。
近くに来るとよく分かるが、この少年、白髪で赤眼……
一体どこの厨二病患者だと言いたくなるような見た目をしていた。
まぁ、そんなことを考えていても仕方が無いので取り敢えずこの少年に質問をしてみることにした。
「あー、あの……こ、こんにちは?」
なんでちょっと吃ってんだよ……
コミュ障か!?そうだよ!
「あはは!こんにちは。新崎 晴斗君。」
そんな、1人で漫才みたいなやり取りを心の中でしていると目の前の少年は楽しそうに答えた。
いやそもそもなんで俺の名前知ってんだ?
「お?なんで名前知ってるんだって顔してるね?」
この人はエスパーなのかな?
いきなり心を読まれて戸惑う。
俺が返答に困っていると……
「あ、いいよいいよ。分かってるから。まずは自己紹介をしようか!僕の名前はアルス!アルって読んでくれても構わないよ!」
目の前の少年、基アルスはいかにも自分は敵ではないと訴えかけるようにあくまで友達であるように、フレンドリーに接してくる。
「まぁ、俺の名前は知っていた様だが一応な……俺の名前は新崎 晴斗。晴斗でいい。」
「うん!よろしくね晴斗!」
「さて、本題に移らせてもらうけどここは一体どこで他の奴らはどうしたんだ?」
これが本題だ。
正直、俺自身のことはどうだっていい。
静奈達さえ無事でいてくれればそれで……
「そうだねぇ、まず、ここはどこって質問に答えようか。ここは君たちがいた、地球では無い。まだ異世界ってわけでもないんだけど、まぁ、敢えて名前をつけるなら深層世界って所かな?」
深層世界ね……
地球じゃないってのとアルスの言ったまだ異世界じゃないという言葉。
ここから想定するに、俺達は今異世界に飛ばされてる途中で何故か俺だけこんな所に来たって感じか。
「で、次に他の人達だけど、多分今頃バルハルク帝国辺りに転移させられてるんじゃないかな?」
「バルハルク帝国?そこが本来俺も行くべきだった場所なのか?」
「そうだね、でも、転移の魔法に重ねがけされるように反発魔法が仕込まれててね、僕はそれに乗じて君をここに呼んだんだよ。」
その反発魔法とやらが何かはわからないが、つまりは俺だけ転移が失敗して、別の場所に飛ばされそうになっている所をアルスが拾ったって感じか?
「それで?俺をここに呼んだ理由は?ただ会話するためだけに呼んだわけじゃないんだろ?」
「当たり前じゃないか、結論から言うと、このまま他の人たちをほっといたら確実に君の妹や、クラスメイトは死ぬよ。」
「——ッ!」
静奈や美咲が死ぬ?なんでだ?
いや、帝国はなんのためにわざわざ異世界から人を召喚する必要があった?
そもそもアルスは俺にそんなことを伝えてなんのメリットがある?
分からない……判断材料が少なすぎる。
「お前のその言葉を信用していいのか……?」
「……僕を疑ってるのかい?」
「むしろ出会ってすぐなのにそこまで信じろって方が無理な話じゃないか?」
「まぁそうだね、でも君は信じる以外に選択肢があるのかな?」
選択肢が無いわけじゃない。だが、もしアルスの言っていることが事実だとしたら、俺はどうする力も持っていない。ならばここは信じるしかないだろう。
信じないで静奈達が手遅れになってしまったら、俺は自分自身が許せない……
「……どうすればいい?」
今の俺にはどうすることもできない。
だが、アルスは確かに言ったはずだ。『このままでは死ぬ』と
だったらこいつには静奈達を助ける術があるんじゃないか?
「僕と契約しよう。そうすれば君が守りたいものを守る力をあげよう!」
なんのためにアルスが俺と契約したいのかは分からない。
それでもそれ以外に道が残されていないというのなら——
「俺はあいつらを助ける為なら……悪魔にだって、邪神にだって魂を売ってやるよ!!」
そうだ。
俺にはそれだけの覚悟がある
俺の家族はもうあいつだけなんだ……
だから、あいつさえ救えるなら……
「俺と契約しろ!」
俺はなんだって出来る。
例えこれが原因で人でなくなったとしても。
「ふっ、あっははははは!いいねぇ!そういうの!分かったよ、君に力をあげよう!!この力は例え神すらも消し去ることができる力だ、だがそれだけ強大な力には当然代償も着いてくる。それが何なのかはボクには分からないけど、まぁ、精々頑張ることだね!」
代償だとかそんなもんはどうだっていい!
何を失ってもあいつさえ救えればそれでな。
「あぁ、代償なりなんなり好きにしてくれればいい。早くしようぜ」
もし手遅れになったら……
あいつが俺のせいで死んでしまっていたら……
どうしてもマイナスな事しか頭に浮かんで来ない。
「分かったよ……はい、これでいいよ!じゃあ頑張って!いろいろね」
いろいろ?
どういうこと——ッ!?
「あぁぁぁぁぁあああっ!!!」
右目が熱い
どうしようもなく痛い
なんだ、何が起きたんだ
……これが代償ってやつか!?
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
「がっ!あぁぁああぁ!」
…………
………
……
どのくらい経っただろうか……
1分?1時間?それとも1日だろうか……
永遠とも続く痛みが和らいできたからこそ思考が安定してきたが、さっきまではこんなことが考えられないほどに痛かった。
「もう治まったかい?」
まだ居たのか……
趣味の悪い、人の痛がってるところをこいつはずっと見てたってことじゃねぇか……
「あぁ……」
「それは良かった! 大分痛がってたね!大丈夫かい?」
「あれが大丈夫に見えるんだったらお前は眼科に行った方がいいと思う。そんなことよりどのくらい経った?」
「そんな事って……まぁいいや、そうだねぇ、君に力を与えてから約3分ってことろかな?」
まだそんだけしか経ってないのか
今から戻れば間に合うな
「よし分かった、さっさとそっちの世界に送ってくれ、時間が無いんだ」
「わかったよ、じゃあね!あっ、あと向こうの世界にはステータスっていう自分の能力値を確認出来るシステムがある。『ステータスオープン』と言えば確認出来るから着いたら確認しておくことをオススメするよ」
そういう大切そうなことは先に言えよ……
ステータスねぇ……
ゲームじゃあるまいし、なんで能力を確認出来るのかは気にしない方が懸命なんだろうか。
まぁいいや、じゃあな!
もう会うことは無いだろうが
静奈達を救ったらまた会ってやらんこともなくもないか……
べ、別にツンデレじゃねぇし……
こうして俺は異世界へと飛ばされた。
「頑張ってくれよ、君に死なれたら僕も困るんだからさ。」
長さはこの位で行きたいと思います
所々書き直しました。