14話 終結
「はぁ?ダメに決まってんだろ何言ってんだお前は」
さっきまでバリバリの殺意を向けてきてたやつの発言とは思えねぇな……
《いやな、聞いてくれ。私は貴様のその強さと優しさに大変感服した。だから是非ともお供したい所存なんだが……》
なんつーか……嘘くせぇな……
「お前ほんとにそんなこと思ってる?適当に話作って言ってるだけとかじゃなくて?」
《あぁ、本当だとも。私悪いドラゴンじゃないよ!》
なんでこいつはそのネタを知ってるんだ……
「いやいや、なんか成り行きで反応しちゃったけど、そもそもお前のそのサイズでどうやって建物なり街なりに入ってくるんだよ……流石にそのサイズのままってのはだめだぞ?」
な?サイズ変更なんて無理だよな?諦めてお前は帰るべきだと思うぞ?
《その心配は不要!なぜなら、私には【質量変化】という素晴らしいスキルがあるからだ。これがあれば私は大きくもなれるし小さくもなれるという訳だ》
チッ!なかなかに良いスキルもってんじゃねぇか……
えー、でもなぁ……こいつ連れてったら絶対めんどくさい事になるしなぁ……
「だってお前連れてったら絶対面倒なことになるじゃん?だったら連れてかないのが正解かなぁって思うんだけどそこはどう思う?」
《え?あぁ、そこはまぁ別に……私が困るわけじゃないからどうでもいいかなぁって》
このクソドラゴンは……
自分が関係ないことはどうでもいいんか!お前のことについてこっちは面倒事になりそうなんだぞ!?
「分かった。お前の処分について決まった。連れては行かぬ、山へお帰り」
《ぬぁ!いいではないか!私を連れていけばいいこともあるぞ!?》
ほう……こいつを連れていくことで俺にメリットがあると?デメリットしかないような気がするが一応聞いてやるか
「例えば?」
《私は空が飛べる故、貴様を乗せて飛ぶことだって出来るわけだ。だから移動の時に私を使ってくれれば早く移動出来るぞ!》
うーん……確かになぁ……
移動が早くなるって言うのはメリットではあるけど、転移が使えるようになれば正直必要なくなる気がするんだよなぁ……
《そ、それにだ!私も一応戦える。貴様が倒すまでもない相手なら私が蹴散らそう!》
俺が考え込んでたのを、渋ってると勘違いしたのかドラゴンは更に続けてきた。
いや、それは俺的に迷惑だな。今回こいつみたいにめちゃめちゃ強い敵とかがいることが分かったからできるだけ俺も鍛えておきたいし……
まぁでも、そうだなぁ……
面倒ごとはあるが、こいつに乗ってけばいち早く静奈達を助けれると思うし、連れてく価値がないことも無いのかなぁ……
「まぁいいや、しょうがねぇから連れてってやるよ。その代わり俺の不利益になるような事をしたら何がなんでも殺すからな」
今回の戦闘で、こいつが粉塵爆発を知らなかったことから、現代科学は通用するんだろう。
だったら電磁加速砲やら、荷電粒子砲やら地球では出来なかったが魔法のある異世界なら出来そうな超兵器を練習しておくのもありかもしれない。
《ぬ?なにか嫌な予感がした気がするが、まぁいい!是非とも私を連れて行ってくれ!》
「連れていくのはいいとして、だったら早めにその【質量変化】とやらで小さくなってくれ」
いつまでもこんな所で話してる時間はないからな。
指揮者は倒したが、街の方がどうなったか分からない。さっさと戻りたいんだよ。
《あいわかった。しばし待て》
ドラゴンがそう言った瞬間、光に包まれて、どんどんサイズが小さくなっていく。
「おぉ、それが【質量変化】か、便利だな」
俺がそんな感想をこぼしてる間に、ドラゴンの体は某電気ネズミと同じくらいに小さくなった。
それと同時に光が収まり、最初よりも少し可愛くなったドラゴンがちょこんと座っていた。
《この位でどうだろうか?》
「ちょうどいいサイズじゃねぇの?知らんけども」
《そうか、まぁこの位で大丈夫だと思うんだがな》
平均的なドラゴンのサイズとか知らんから……
街にはいるのに大き過ぎなきゃ大丈夫だろ、とか思ってたくらいだし。
「まぁそれでいいよ、じゃあ街が心配だからさっさと戻るぞ。」
《【質量変化】に力を使ってしまったせいで飛べぬ。抱えて行って欲しい。》
あ?なんだこの駄ドラゴン。
自分で力使っといて飛べねぇとかふざけてんのか……
「知らん、俺は抱えてかねぇから勝手にくっついて来い」
《むぅ……反応が冷たいな、まぁ、それはこれからじっくりと温めていけばいいだろう。それはそうと、乗りやすそうな場所は肩が頭かの?》
そう言って、トコトコと近寄ってきて俺の足から登ってくる。
肩まで来て、座り心地を確かめているのかモゾモゾと動いては《うーん……こうでもない……》と呟いている。
肩はお気に召さなかったのか今度は頭に登ってくる。
さっきは服に爪を引っ掛けていたので痛くなかったが、今回は頭皮に爪が刺さって地味に痛い。
「おいコラてめぇ、痛てぇな……」
《ん?おお、爪が刺さっておったか、すまぬ。もう少し待ってくれ》
なんか小動物っぽくて可愛かったこともあり、少しだけ待ってやった。
ついに頭の上に登りきり、またしてもモゾモゾと動いて座り心地を確かめたあと、《ここだな……》と言って動きを止める。
「決まったか、じゃあ移動するからな」
《あい、よろしく頼んだ。》
そう言葉を交わして移動を開始する。
△▽△▽△▽△
ドラゴンは俺の頭にしがみついており、ちょっとやそっとじゃ振り落とされないようなので街まで走った。
街は魔物に囲まれていたが、冒険者やギルマスのウィルが、街の入口を死守していたので侵入はされていないようだった。
更に、統率者を失ったことで、魔物の統率が取れなくなり異種間で戦闘が起こっていた。
これもまた、街を守りやすくしていた要因なのかもしれない。
俺はそんな魔物に囲まれた街を、更に外側から眺めていた。
「意外とどうにかなりそうだな」
《私が魔物達を指揮してたから争いが起こらなかったものの、本来は中の悪い種族同士も混ざってるからな、内部争いが起こるのも自然な事よ》
「ほぉん、まぁどうでもいいんだけどな。さっさと壊滅させて俺は寝たい。お前との戦闘で血を流し過ぎたのか、フラフラしてんだよ……」
こいつに腕吹っ飛ばされてからずっと血が流れてたからなぁ……あれでよく死ななかったと自分を褒めてやりたい。
「あ、そうだ。後でお前のステータス見せろよ」
《ん?鑑定したのではなかったのか?》
「したけどほとんど見えなかったんだよ」
レベル差でな!
《そうか、いいぞ寝る前にでも見せてやろう》
なんでこいつこんなに喋り方が偉そうなんだよ
「あ、あともう一個……お前街に入ったら喋るなよ?変なドラゴン連れてる上に、そいつが喋るとかめんどくさい事になる未来しか見えないから」
なんかいい感じに鳴いといてくれればいいんだけどこいつにそれが出来るだろうか?
《あいわかった。こんな感じかの?》
「キュイ!キュィイイ!!」
「おお、いい感じだぞ、もうそれでいいよそれで鳴いててくれ。」
そんな話をしながら魔物達を後ろから斬り倒していく。
基本的に魔物同士で争ってるか、街の方に攻撃してるかなので俺は後ろから楽に倒すことが出来る。
中には気配に敏感なのか、俺の存在に気がついて攻撃してくるやつもいるが、それはまぁ極一部なのであまり気にならない
「ハァ!」
刀に風魔法を纏わせて、それを飛ばす。
飛ぶ斬撃。男のロマンだよな。
こうして魔物を倒しながら進んでいくと街の入口が見えた。
「おーい!ウィル!」
斬撃を飛ばして、魔物を蹴散らしながらそう叫ぶ。
「ん!?ハルト君!?なんでそんな方から出てきたんだ!?」
めちゃめちゃ驚かれた……
「今回のボス的なやつ倒したから後はここにいる魔物達を倒せば終わりだぞ」
俺がそう言うと、ウィルは一気に顔を明るくさせて
「聞け!皆の者!魔物達の指揮者は倒された!残るはここにいる魔物達だけだ!気張っていけよ!これが終わったらギルドで宴会だ!今回はタダにしてやる!!」
周りにいた冒険者達にそう叫ぶと、
「「「「うぉおおおお!!!!」」」」
と、叫び声が返ってくる。
それと同時に今まで以上の動きで魔物達を倒していく
「ハルト君。今回のことは助かった!君はこの街の英雄だよ!」
「あー、そういうのは要らないから。それよりも早く休みたい」
「そうか……あの、疲れてるところ悪いんだけど、その頭に乗ってる龍は?」
まためんどくさい質問を……
そんなこと考えてねぇんだけど、どうしようかなぁ……
「……拾った。」
いやぁ、苦しいか……この言い訳は苦しいか……
「そんな龍を拾うなんてことないと思うけど…… 」
「キュイ!キュイイ!キュ!」
こいつめちゃめちゃ鳴くじゃん。
頭の上でキュイキュイ言われてうるさいんだけど……
「まぁハルト君が言いたくないなら無理にとは言わないよ。」
「あっそう、じゃあ言いたくない」
「そうか、時間を取らせて悪かったね。ゆっくり休んでくれよ、英雄さん」
ウィルは俺をニヤニヤとした顔で見ながらそう言ってくる。
この後は取り敢えずギルドに行って、シーナさんに報告して、宿に戻って寝よう。
今回はまぁドラゴンが仲間?になりました。
ドラゴンの愛称なりも募集してたりするので良ければご意見下さい。
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