13話 異変③
見た目は西洋風のドラゴンで、鱗はこの薄闇の中で自ら発光してるんじゃないかと見間違うほどに輝く白銀色。目は赤色でなんか周りにめちゃめちゃ小石が浮いてる。
今、俺の目の前にいるこの白銀色のドラゴンは絶対に俺よりも強い……
根拠は何も無いが、肌を刺すようなこの威圧感と目を合わせただけで死んでしまいそうな眼力。肉体的にも精神的にも俺の方が劣っている気がする。
このままじゃ殺される……
そう思った俺は直ぐに眼の能力を発動させる。
「奪い尽くせ!【強欲眼】!!」
いつもならこれで勝てていた……
今までこの能力で奪えない相手はいなかった。
それでも……このドラゴン相手には……
「クソが!【鑑定】!」
信じられない事実に、俺はドラゴンを鑑定する
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name「磁龍『ウロボロス』」
Lv 150
種族【龍種】
HP:???
MP:???
STR:???
DEX:???
AGl:???
INT:???
LUK:???
ATK:???
DEF:???
スキル
【???】【???】【???】【???】【???】
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なんだよ……これ……
レベルが高すぎるだろ……
それに能力が何一つ見えねぇし。分かることは相手が龍種で、なんか名前的にヤバそうってことくらいしか……
「クソ!【強欲眼】!!発動しろよ!【強欲眼】!」
なんでだ……【強欲眼】も【鑑定】と同じように、レベル依存の能力なのか……?
数レベル程度なら奪えても数十レベル上の相手には発動しないとか、そんな制限があるんだろうか……
畜生!今俺のレベルいくつだよ!ステータス!
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name「ハルト ニイザキ」
Lv 70
種族【ヒューマン】
HP:50,938,106
MP:34,615,219
STR:6,333,833
DEX:4,346,042
AGl:4,946,543
INT:3,284,758
LUK:1,469,850
ATK:9,260,126
DEF:5,568,918
異能
【神眼】【思想世界】【神重圧】
スキル
【刀剣術 Lv8】【計算 Lv7】【異言語マスター】
【鑑定】【偽装】【身体強化】【全属性魔法】【盗む】【変食】【分解】【空間魔法】【各武器使用技能補正】【大剣術 Lv7】【絶倫】【眷属化】【配下指揮】
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いやなんでこんなに能力値が上がってんだよ。気持ちわりぃよこんなん……
後々のステータスインフレ待ったナシじゃねぇか。
そんなことよりも俺とあのドラゴンのレベル差は80か……
自分のレベルよりも二倍以上のレベルの相手からは奪えないとか?いや、そんなこと言ったらLv 1の時にどうして二倍以上のレベルのビッグカウから奪えたのかって話になるな……
考えられるのはレベルが50以上離れてると奪えないとか、そんな感じのやつだろう。
まぁとにかくこのドラゴン相手には弱体化なしで戦う必要があるってことか。
「グルルルァァァ!!!」
ようやく俺の存在に気がついたのか、吠えて威嚇された。これだけで俺は足が震えて動けなくなってしまう。
い、いやね?怖いとかじゃないんですよ?ただの武者震いってやつだ、勘違いしないでよね!
こんなことなら【空間魔法】で転移とかも練習しておくべきだったな……
取り敢えず威圧されたらし返さないと出し……
「うぉおおおおお!!!」
吠えといた。【神重圧】を本気で乗せて吠えた。
足の震えは治まったが、これによってドラゴンが俺の事を敵と認識してしまったかもしれない。
《貴様、人間の身でそのような力……どうやって手に入れた……?》
……ん?シャベッタァァァァァァ!!!
このくだり前にもやったな……強い奴らは大抵喋れると思った方が良いなこれは。
「あー、それはあんまり言いたくないんで、というかなんで俺もこんなに強くなってんのか分かんねぇから言えないんで……」
ほんとにな、こっちが知りたいくらいだよ!
こんなにステータス高くなるか?普通。おかしいだろ!異常だよこんなの!
《ふむ……貴様は少しおかしな人間なのだな。まぁいい……私の名はウロボロス。磁龍と呼ばれるドラゴンだ》
ちゃんと自己紹介してくれる辺り、意外と常識的なのかもしれないな。
「自己紹介な……俺の名前はハルト。冒険者をやってる魔物の大量発生と街への襲撃を何とかするようにここに来た訳だが……」
《それは私の命令だ》
やっぱりかぁ……本当はこいつ良いドラゴンなんじゃ……?とかちょっと期待してたけど甘かったなぁ。
「なんでこんなことしてんの?」
《魔王がやれって言うから……》
なんだその言い方、子供か!
「なんだよその理由は!魔王が言ったらなんでもやるのか!お前に自分の意思は無いのか!」
《なんだ貴様!私にだって自分の意思くらいあるわ!噛み殺すぞ!》
めっちゃ怒ってるし……
これは下手したら死ぬんじゃね?
「てめぇをボコしてこんな事やめさせてやるよ!」
《言ったな小僧めが!消し飛ばしてくれるわ!》
先手必勝と俺はドラゴンに向かって走る。
ドラゴンはそれを見て前足を振り回してくる。
おかしなほど速いその攻撃を俺はギリギリで回避する。
あっぶねぇ……目で追いつけなかったんだけど……
ほとんど勘で避けたけど当たらなくて良かった。
俺が冷や汗をかいてその速さに戦慄していると、今度はこちらからと言わんばかりにその体躯に見合わぬ俊敏さで突撃してくる。
「くっ……」
ドラゴンの大きさも相まって避けきれないと判断した俺はダメージ覚悟でカウンターを狙う。
多分こいつの攻撃をもろに喰らえば手足の1、2本は失うだろうな。
と、そんなことを考えながら相手の動きを見る。
「グルァァア!」
またしても前足で攻撃してきたので、それを神威で受け流しながら腹の下に潜り込む。
そして、機動力を削ぐ為に後ろ足に斬撃を加えようとするも……
「くっ……チッ!」
鱗に阻まれて切れなかった。
今度は魔法も使い、刀を風魔法で鋭くし、切れ味をあげた上でもう一度カウンターを狙う。
しかし、ドラゴンは何故か動かない。
なにかしているんだろうが、それがなにか分からないので取り敢えず様子を見る。
すると、探知魔法に反応があった。
瞬間に避けたが物凄い速さで避けきれず、左手に当たってしまう。
「ぐぁぁぁああ!!!」
相当な威力があったのか、肘から下が切断され、吹き飛んで行った。
くっそ痛てぇし!今何が飛んできた!?全く見えなかったぞ!畜生が!
《今のを避けるか……確実に心臓を狙ったはずなんだがな……》
良かった……左手が使えなくなったのはまずいけど、死ぬよりは良い。
「そ、それにしても……今のは一体……なんなんだ……?」
俺は痛みを堪えながらそう質問する。自分の能力を自ら話すなんてことはしないだろうが、一応聞いてみる。
《あぁ、あれはなマグネタイトだ。もう分かってると思っていたが……私の名前、磁龍は磁力を操る龍からその名前に由来している。》
磁力ねぇ……
そんなのどう対処すりゃあいいんだよ……
あー、いや……勉強した気がするなぁ……なんだっけなぁ……もうちょいで出てきそうなんだけどなぁ……
「おわっ!……ちょっと待てってぇ!」
考えてる間にドラゴンが石を飛ばしてきた。
やべぇなぁ……左腕の痛みと攻撃を避けなきゃ行けないっつう緊張とで考えられないんだけど。
どうにか避けながら思い出さねぇとなぁ……
《むぅ……ちょこまかと逃げおって、鬱陶しいな!》
そうドラゴンが言った瞬間、ドラゴンの口に莫大なエネルギーが収束して行くのを感じた。
これはやばいんじゃね?食らったら瞬殺されるレベルの威力だよね、多分。
《私のブレスで消し飛べ!》
ドラゴンが叫んだと思ったらもう口からエネルギーが放出されていた
やばい!
そう思った瞬間に俺の体は横に飛んでいた。
咄嗟の行動ではあったものの、避けていなかったら骨も残らなかったな。
「熱いなぁ!」
すぐ横で膨大な熱量を持ったエネルギー玉が破裂し、そのまま地面と木を消し飛ばす。
《ぬ、避けたか……小賢しい。次は当てるぞ》
これ以上あれを打たれるのはまずい!
またしてもドラゴンの口にエネルギーが収束される。
「クソが!これでも食らっとけ!」
俺はドラゴンの口目掛けて地魔法で作りだした石の槍を飛ばす。魔法はイメージでなんでも出来る。便利よな。
「グルァ!」
ドラゴンは俺の石の槍でエネルギーが乱れたのか、暴発して口が大変なことになっていた。
《貴様ァ!絶対に殺す!》
そう言った瞬間、探知魔法に反応が現れる。
さっきの反省を活かし、現れた反応に対してアイテムボックスを使う。すると反応が消えると同時にアイテムボックス内にマグネタイトが増える
これは俺がまだどこから来るのか分かっているから出来ているが、反応できない速さや量で来られると一気に危なくなる。
それを気づかれる前にちゃんとした対処法を見つけないと……
「どうした?お得意の磁力はもう効かねぇぞ?他に攻撃手段はねぇのかよ」
その場しのぎのはったりを噛ます。
あー、なんかほんとにな思い出せそうなんだよなぁ。
……んー、なんだかなぁ……
するとドラゴンは自身の周りに沢山の魔法陣を展開させて、そこから色々な属性の魔法を出す。
俺も一応全属性が使えるので、ドラゴンが放ってきた属性に相性のいい属性をぶつけて相殺する。
向こうは一度に多くの数が放てるのに対して、こっちはそんな技術は無い。一つ一つ打ち込んで消さなければいけないので、だんだんと遅れてくる。
迎撃が追いつかなくなり、各種魔法が俺を襲う。
水は圧倒的な水圧で俺に切り傷を無数に入れ、さっきのお返しのつもりか、俺よりもサイズのでかい石の槍が俺の右太ももに突き刺さる。
光は凄い光量で俺を焼き、闇は視界を奪う。
ただ……ただ一つ……
このドラゴンが使ってない属性……
やっと思い出したぜ……磁力に対抗する方法。
「ははっ……はははは!あっはははは!!」
ようやくだ。
ようやくこいつに反撃出来る。
なんで忘れてたんだろうなぁ、磁力を無効にするには高い高熱を与えればいい……
『キュリー温度』つう、磁力を無くさせれる温度があるんだよ。この温度以上に素材を熱すると磁力が無くなるっていうな。
《なんだ貴様、ついに気でも狂ったか》
「いいや、こんなにボロボロになるまで思い出さねぇとは変な話しよな、と思ってな。」
《思い出す?なんだ?今までの思い出か?》
「あん?……違ぇよ……お前をボコす方法だよ!」
そう言った瞬間、俺は自分の周りに火魔法で炎を出す。この炎の温度は15000度を超えており、常に俺が風魔法で酸素を作りだし、大量に与えている。炎の色は綺麗な青色をしている。
鉄とかのキュリー温度が1300度くらいだったからこれだけあったら磁力は役に立たないだろう。
そう考えているとまたしても探知魔法に反応が現れたので、咄嗟にその場所に青色の炎を飛ばす。
すると、俺に向かって飛来していたものは炎の温度に耐えきれず磁力を失い、重力に従って地面に落ちる。
「お前はどうやってマグネタイトを作り出してんの?」
《何故貴様にそんなことを答えなければならない!》
「いや、言いたくないなら別にいいけど……」
俺は地魔法で鉄を抽出する。
そしてそれを、風魔法で粉末状にする。作った鉄粉を炎から離れたところに留めておく。
後はドラゴンの隙を見つけるだけだ
「さて、こっちは準備出来てるぜ……お前をボコす準備がなぁ!」
《ほざけ!確かにその青い炎は相当の熱を持っているが、それだけで私が倒せると思うなよ!》
「言ってろよ、そうやって油断してると後悔するからな」
「グラァァァアア!!」
俺がそう言うとドラゴンは咆哮をあげ、またしても口にエネルギーを収束し始める。
今がチャンスか!!
そう思った俺は留めておいた鉄粉をドラゴンの周りに撒き散らす。
そして俺はドラゴンから走って全力で距離を取った。
念の為、地魔法で自分の周りに壁を作り、ドラゴンの方へ、火の玉を飛ばす。すると……
——ドカァァァアン!!!
「グリュアァァァァァア!?!?」
物凄い爆風と熱風が同時に押し寄せ、俺が作りだした壁が砕け始める。
逐一それを修復しながら爆風が止むのを待つ。
俺が起こしたのは『粉塵爆発』
たしか、適量の可燃性粉塵が空気中に分散し、それが燃焼することで粒に引火を繰り返して起こる爆発だった気がする。
さっきのドラゴンの鳴き声的に、相当なダメージを受けたはず。
俺が逃げたと思って油断してたってのもあるからこれでダメージ受けてないとかはやめて欲しい。
爆風が止んだので壁を壊して外へ出る。
するとドラゴンがいた場所にはとてつもない大きさのクレーターが出来ていた。
その中心には所々鱗が取れて、ボロボロになったまま倒れるドラゴンがいた。
「……やったか!?」
そんなフラグを立ててみるもドラゴンが立ち上がる様子はない。
それでもまだ動いてはいることから生きてはいるんだろう。ドラゴンとはとんでもねぇ生物よな。
《……貴様、あの爆発は……どうやって起こした……》
「わざわざ教えるわけねぇだろ……」
ドラゴンが動かないのを確認して遠くに飛ばされていた俺の腕を回収する。
左腕をくっつけ、回復魔法で、神経と神経を繋げるようにイメージする。そうして腕を治している間に貫かれた右太ももも回復させる。
こんな所にドラゴンを倒しとくのも問題になりそうだからギリギリ動けるくらいにはこいつも回復させてやる。
すると……
《何故私まで回復してくれる……》
ドラゴンは不思議そうに尋ねてくる。
それに俺は素っ気なく
「こんな所でドラゴンが倒れてたら迷惑だろうが」
と、答えた。
《……私を倒せたのは貴様で二人目だ》
「ほぉ?1人目は?」
《魔王だ》
魔王ねぇ……
《魔王は純粋に魔法だけで私のことを赤子のようにあしらってきた。彼奴は化け物だぞ》
まじか……
このドラゴンですら死にそうになったっつうにこれを軽く倒すとかほんとに魔王だな。
「まぁいいや……これでお前も動けるだろ、さっさと帰ってくれねぇかな」
《……》
「なんで黙ってんだよ、動けねぇわけじゃ無いだろ、さっさと帰れよ、帰るとこねぇならどっか別のとこに取り敢えず移動しろよ、邪魔だから。」
《……》
いやほんとなんでこいつ黙ってんの?
こっちをチラチラ見ながらよぉ!こっち見んなよ!
そういうのはシーナさんとかがやるから可愛いんであってお前がやった所で怖ぇんだよ……
《私も貴様に着いてったらダメ?》
今回長くなってすいません……
戦闘シーンが下手なもんで、どうしても文字を多く使っちゃうんです!
最後のやつは
『ドラゴン が 仲間になりたそうに こちらを見ている』
『仲間にしますか?』『はい/いいえ』
みたいな状況ですかね。
続きは次回で……!
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