12話 異変②
ギルド長室を出て受け付けまで戻ったところでギルドカードの更新をしないといけないらしく、シーナさんにギルドカードを渡してしばし待つ。
3分後くらいにBランクになった俺のギルドカードと金貨50枚を持ったシーナさんが帰ってくる。
「ではこちら、報酬の金貨50枚とギルドカードです。」
「ありがとう」
俺はお礼を言ってそれらを受け取る。
その後に、また頬を赤らめたシーナさんが
「あの、さっきのことは忘れて下さいね?」
と、言ってきた。
そんなシーナさんがあまりにも可愛くてついイタズラをしてしまう。
「さっきのこと?なんのことかわからないなぁ……」
俺が笑いながらそう言うとさらに顔を赤くさせたシーナさんは頬を膨らませて
「もう!ハルトさんなんて知らないです!」
と、顔をプイッと背け怒ってしまったようだ
あんまりからかいすぎるとアレなので程々にして俺はしっかりと謝る
「ごめんな?からかい過ぎた。反応が面白かったからつい……」
「……それは反省してるんですか?」
ちらっとこっちを見ながらそう言ってくる
「反省はしてる」
後悔はしていないがな!
「次からはやめてくださいよ?」
「善処しよう」
やめるとは言ってないからな……またそのうちからかおう。
「それじゃあそろそろ帰るよ、またな」
「あっ、はい。また……」
そう挨拶を交わしながらギルドを出た。
その日は疲れていたこともあり、宿に戻ってすぐ寝てしまった……
△▽△▽△▽△
次の日——
俺は街全体に響き渡るような鐘の音で目を覚ました
外はまだ日が登っておらず、完全な暗闇とまでは行かないが明るくもない、薄暗い様子だった。
「……こんな時間からなんの騒ぎだ……」
そんな異様な雰囲気の中事情を知るために女将さんの所へ向かったが、そこには誰もいなかった。
仕方が無いのでギルドへ行こうと思い、一度部屋に戻って支度をする。
いつもの装備を身につけ、外へ出ると、外は人が溢れかえっていた。
その様子はどこか慌てたようで、大きな荷物を持って街の中心へ向かっているようだった。
流石に何があったのか気になったので急いでギルドへ向かった。
3分程でギルドに着いた訳だが、ギルド内には沢山の冒険者がいた。
「これは一体何があったんだ?」
受け付けへ向かい、シーナさんに聞いてみる。
「ハルトさん!!昨日ハルトさんに情報をもらって急いで森を調査していたところ、深部で魔物の大量発生が確認され、一斉にこの街に向かってきていることが判明したんです!それで街の人たちには避難してもらって、戦える人達が食い止めようと……」
それでみんな避難してたのか……
ということはあの鐘の音は危険を知らせる為のものか……にしても厄介だな。結局フラグ回収して、魔物行進が、起きてるわけだからな……
「俺に出来ることはないか?」
魔物行進を知る原因を作ったのは俺だ。結果的には襲撃される前に知れて良かったのかもしれない。だが、俺も一冒険者として戦うべきなんじゃないか?
それに、大量の魔物?俺にとってはいい経験値だ。
「ハルトさんの強さは知っています。今の戦闘員だけでは勝つことは出来ても多くの犠牲者を出してしまうでしょう。ですから……その犠牲者を減らす為にも、どうか、力を貸してください!」
「分かった。魔物はもう来てるのか?」
「あと1時間もすればこの街にたどり着くでしょう。」
思ったより猶予が無いな……
今から俺だけ先に行って数を減らすことも出来るが、俺一人じゃあそんなのたかが知れてるしな……
……それだけ大量の魔物が統率もなしにこの街に向かってこれるか?ゴブリンでさえ、王という存在が統率していたというのに。
「魔物の数は?」
「約5万から6万程との事です。」
だったら確実に何者かが魔物達を指揮してるな。
そいつさえ殺れば勝機はあるか……?
統率者を失った軍は途端に弱くなると聞いた事があるような無いような……
「情報助かる……じゃあ俺は先に魔物達を殲滅しに向かう。冒険者達を誰か指示するやつがいるんだろう?そいつに俺が先に数を減らしておくことを伝えといてくれ」
「1人で大丈夫なんですか……?」
「あぁ、俺は死なない。まだやらなきゃいけないことがあるからな」
そうだ。まだ静奈達を助けてない……
だから俺はこんな所で死ぬ訳にはいかないんだ。
問題起こしてくれた犯人ボコして俺の平穏を返してもらうぜ……
「じゃ、行ってくる」
こうしてギルドを飛び出した
△▽△▽△▽△
10分程走って、もう魔物達を目視出来る場所に来ていた。
魔物達がまだ森を抜けていないせいか、視界が悪く、この集団の全貌は見えていないが、近場で見えるだけでも相当な数がいるようだ
「これは大変だなぁ……」
数が多すぎて、一体一体能力を奪っている時間がないので殺れるだけ殺って、レベルを上げながらこれのボスの元へ向かおう
「来い。【神威】」
やることは決まった。後は実行に移すだけだ……
俺は敵をしっかりと確認し、神威を呼び出す。
またしても黒い穴が現れそこから神威を引き抜く。それと同時に爆風が吹き荒れ魔物達が俺に気づく
前列の方にいたのはゴブリンやオークといった低レベルな魔物達だった。
こいつらは個々の能力はそんなに高くないものの、連携がとても上手く、数が集まれば集まるほど強くなるような気がする。
現にゴブリンの一体がジャンプしながら俺に棍棒を振り下ろしている時に、その後ろと俺の両サイドから時間差を付けて別のゴブリン達が攻撃を仕掛けてきている
「さて、どうしたもんかなぁ……っと、ハァッ!」
取り敢えず刀に風魔法で風を纏い、それをかまいたちのように飛ばす。
飛ぶ斬撃。カッコイイよな!
「グギャァ!」
飛び上がったやつの後ろから走ってきてたゴブリンを倒して、俺は勇者の技を真似させてもらう。
「回転斬り!」
横に一回転しながら両サイドから来ていたゴブリンと飛び上がっていたゴブリンを切り倒す。
流石、リ○クの剣技は伊達じゃねぇぜ。
「ブヒィィィイイ!」
ゴブリンを倒したらすぐにオークが走ってきた。
なんか知らんけどめっちゃ怒ってる?ような気がする……理由は分からんけど。
「フッ!」
こいつは単体で突っ込んで来ただけだから振り下ろしてきた棍棒をいなしてから首を跳ねる。
そうしてる間にオーク達が俺の事を囲んでいたので、【神重圧】を発動させる。
今回は別に殺しても問題ない相手なので本気で威圧する。
「ブッ、ブヒィィ……」
それだけで俺を囲んでいたオーク達は絶命する。
レベル差は大して無かったが、ステータスが違いすぎた。
レベルが上がったのか、体が熱くなる感覚が出てきた。無意識にテンションも高くなる。
「オラァ!邪魔だ!退けよ雑魚どもが!」
囲んでいたオーク達を倒してから俺は魔物の群れの中へ突っ込む。
作戦が意味をなさないと理解したのか、魔物達は数で攻めてくる。
次から次へと迫り来る魔物達を斬り捨てながら森の奥へと走っていく
「グルルルァァァア!!」
魔物達を倒しながら先へ進んでいると、とんでも無く大きな叫び声が聞こえてくる。
……俺の直感が告げている。こいつが統率者だと。
リザードマンと呼ばれるような、人型の竜みたいなやつを火魔法で塵にしながらそんなことを考える。
もちろん走る足は少しも遅れていないが……
今更だが、森の奥の方へ来れば来るほど魔物は強くなっている。
最初の方はレベルが20とか30とかそのぐらいだったのに、今では70台が平均になり始めている。
俺の強みはレベルに対してステータスが高い事だと思う。だから自分よりレベルの高いヤツらとも渡り合っていけるし、なんならまだ圧倒してる。
「グルァ!」
リザードマンのすぐあとに、俺の真後ろ、完全な死角から狼型の魔物が攻撃してくるが、俺には空間魔法という便利なものがある為、不意打ちなどは効かないんだよな。
「——フッ!」
後ろから迫っていた狼型の魔物を振り向きざまに一太刀。頭を狙ったのでそれで絶命する。
「いい加減、めんどくせェんだよ!!」
あまりの数にイライラした俺は【神重圧】を範囲指定せずに使った。
すると、半径5メートルの距離にいた魔物達が一斉に絶命する。
邪魔者がいなくなったのでさっきの咆哮を上げたやつの元へ向かう。
△▽△▽△▽△
またしても魔物達に邪魔されながら5分程走り続けて、たどり着いた場所にいたのは、白銀色の鱗を持つドラゴンだった。
ついついネタに走ってしまったところがあります……
私にシリアスはまだ早かった。
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