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ダンジョンの中1

やや薄暗いが、それでも階段の登り降りには十分な光を背中に受けて私達は地下2階へと進んでいく。

なお、私達が選んだ階段の前には10と書かれてい?。

ハーシムさんの助言に従った結果だ。

今度も急な、しかも先程の石造りの階段と違い土を固めただけのそれを、慎重に降りていくこと5分ほどだろうか。

後ろからの光が少なくなってきたと思い始めた頃、前の方から光が漏れているのに気づいた。

「この光は。聞いてはいたが、下の階にも月光花はあるみたいだな。」

「うん。早く行こう。」

腰に下げた剣を撫でながら、ユニが言う。

試し切りがしたいのだろう。

実際この剣をハマトで購入してから、1度も実戦はない。

素振りには使っており、今では前の剣のように違和感なく振れるそうだ。

私ユニが言うならそうなのだろうが、私から見ても相変わらずの剣速でよく分からないのが正直なところなのだが。


そうこうするうちに階段が終わった。

「ここが2階?」

テオが弓と矢を持ちつつ、周りを見渡す。

そこは相変わらず広い空間だった。

違いとしては、広いといっても一階よりはだいぶ小さく、そして壁に無数の小さい穴が空いていることだろう。

まあ、小さいといっても日本なら体育館として十分に使える広さはあるのだが。

地図によれば2階はこれと同じような部屋がいくつかあるらしい。こうやって階を降りるごとに部屋が別れたり、たまに一緒になったりを繰り返すようだ。

「あれが、ダンジョンアント達の通り道かな?」

アイラが穴を指差しながら言う。

その指の先には、なるほど、猫が通れそうな大きさの穴がある。

「みたいだね。ただ、2階ではほとんどダンジョンアントは出てこないみたいだけど。」

とテオが答えている。

テオの言う通り、ダンジョンアントの出てくる気配はない。

ただ、存在自体は感じている。気配察知の魔法を使ったところ、少し奥まで行けばそこら中に何かの気配がある。

ここが蟻の巣であると理解すると同時に、あまりの気配に若干気持ち悪くなった。

ロックリザードの時とは理由が違うが、この魔法もそこまで万能ではないらしい。

「まあ、ここにいても仕方ない。奥に進もう。」

そうみんなを促した。

ここの階段にも番号が振られており、階での通し番号のようで、10から14までの4つの階段がある。


地下3階も似たようなものだった。

違いは更に部屋が小さくなった事と、ダンジョンアントの通り道が増えていることぐらいか。

そして遂に。


ダッ!ザクッ。


一瞬だった。

気付いた時にはユニが走り出し、壁の方に行ったと思えば剣を振り下ろす。

その足元には、聞いていた通り大人の猫程度の大きさ程の蟻が丁度真ん中で前後に分かれていた。

形もまたほぼ普通の蟻だが、日本で見かける種に比べると顎が大きいように思われる。


「流石だな、ユニ。」

「ん。ありがとう、ルーク。」

まあ、ユニからしてみればどうと言うこともないのだろうが。

今体験したわけだが、地下1階はほぼ何もなく、地下2階も滅多にダンジョンアントは出てこない。せいぜい月光花の餌になるための個体ぐらいであり、これらは手出し無用が原則だ。

理由は分かる。月光花が無くなれば面倒なことこの上ないからな。

そして地下3階にまで来れば、今のようにダンジョンアントが出てくる。とはいえここまで来る個体は若いのか小さい個体が多く、数も1匹かせいぜい数匹ずつしか出ないらしい。

その理由もよく分からないが、おそらくダンジョンアント達の生活圏が地下深くだからだろう。

なお、ダンジョンアントは年齢を重ねるほど大きく、更に体も硬くなっていくらしい。それに合わせて、利用価値も増え、買取額も高くなるとはギルドで聞いた話だ。

そんなわけで、3階からはギルドから許可を得た駆け出しの冒険者が、留まって蟻狩りをすることもあると聞いたが、この部屋には今日はいないらしい。


「ダンジョンアントも出てきたが、いつまでいても非効率だしな。下に進もう。」

「そうだね。ハーシムさんの言う地下5階って言うのも気になるし。」

素材を回収しながら問いかけると、テオから同意の声が返ってくる。

ユニとアイラも異論はないようだ。

私達は、階段を降りて先に進んだ。


地下4階。

そこに来て、明らかに今までとの違いが出てきた。

大きさに関しては、先程と同程度。天井に月光花が所狭しと生えており、壁側にはいくつもの小さい穴が空いてるのは相変わらずだ。

しかし、目線を下に向けると、そこには草が生えている。

今までは土がむき出しになっていたのに比べると、小さいようだが、随分と印象が変わるものだ。

緑のカーペットを敷き詰めたような光景に、ここがゴラン大草原という名前に相応しかったかつての時代を思う。

「これは、やっぱりダンジョンアントが植えたのかな。」

「それは分からないな。」

私とテオが草を見ながら話をする。

確かにミリア師匠から聞いた話では、ダンジョンアントはダンジョン内に森を作っているらしい。

おそらくだが、そこのタネがダンジョンアントの体についてここにも広まったのではないだろうか。

それにしても、と改めて草を見る。

緑をしていると言うことは、光合成をしていると言うことだろうか。あれは太陽光でなくてもいいのだったか。

余談になるが、生物由来の光は冷光とも呼ばれ熱を伴わない。月光花も同様で、ダンジョンの中は明るさの割にはひんやりとしている。


そんな光景を横目に、私達は下へと続く階段へと足を向けるのだった。


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