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助けた相手は、

「お、お怪我はありませんか!?」

先程挨拶をしたライエさんが血相を変えている。


声の行き先は、先程の若い騎士だ。おそらく成人したて。私達と同じ年くらいだろうか。

改めて見ると、まさに美男子というべき人物だ。

銀色の髪を長く伸ばしており、やや中性的な整った顔立ちをしている。中性的とは言ってもテオのように性別が分からないわけではなく、

「ルーク?」

テオに睨まれた。この双子は勘が鋭すぎる。

いやまあ、つまりだ。

なんというか、凛々しい表情と相まって、物語にでも出てきそうな、貴公子という言葉がぴったりの容姿だ。

ただ、背丈は低く小柄なテオと同じ程度。

単純に小柄なのか、もしかしたら雰囲気が大人びているだけで実際はもっと若いのかもしれない。


ライエさんの反応から、彼がただの騎士でないことが分かる。

「ああ、大丈夫だ。だから落ち着けライエ。」

彼はそう答えるとこちらに振り向き、口を開いた。

「まずは私からも助太刀に感謝を。特に、先程の魔法の盾は貴殿のものだろうか?」

「はい。その通りです。ですが、盾も構えていらっしゃったご様子。私の魔法など無用だったでしょう。」

「そうかもしれぬし、そうでないかもしれぬ。なら、助けられたのは事実だろう。どうか感謝を受け取って欲しい。」

「そういうことでしたから、謹んでお受け致します。ええと、」

彼は少なくとも貴族だろう。ミリア師匠に習った礼儀としては、貴族相手に畏まる時は最後に名前もいうべきらしいのだが、あいにく名前は分からない。

確かこちらから名乗るのもNGだったはず。

こんな場面だが、ミリア師匠の知識の幅には未だに驚かされるな。

「ああ、名乗ってもいなかったな。これはすまなかった。私の名は、レイ・ギ・ゼルバギウス。父はグラント王国で辺境伯を任せて頂いている。」

「感謝致します。レイ、さ、ま……」


……


レイ・ギ・ゼルバギウス。


その名を聞いた瞬間に思考が止まってしまった私を誰が責められるだろうか。

つまり彼は、私の、血の繋がった…


「ルーク?」

「!?」

ユニに脇を突かれる。

そうだ。私達の関係は貴族と平民。それ以外ではない以上、呆けている場合ではない。

「こ、これは失礼しました。私どもはこちらからルーク、ユニ、テオ、アイラと申します。冒険者をしておりまして、特にアイラ以外は元はガインの街で育ちました。先程は、まさかこのような土地でゼルバギウス家のお方にお会いすることになり驚いてしまいました。ご無礼をお許し下さい。」

そう頭を下げる。

「また、この顔は昔火傷を負いまして。仮面をつけたままで、ご無礼かとは思いますが、平にご容赦を。」

ところでアイラは緊張すると女性らしい言葉になるが、私の場合は慌てると口数が多くなってしまう癖がある。

「なるほど。仮面のことは承知した。安心してくれ。その程度で腹を立てるほど狭量ではないつもりだ。」

そう言って微笑む姿は、なるほど地元で聞いた将来の名君という評価を納得させるのに十分だった。

「それに、まさかこんなところで同郷の者に会い、命を助けられるとは。こちらこそ驚いた。これも女神アレクシア様のお導きかもしれないな。いや、本当に良いところに来てくれた。何か依頼の途中だったのか?」

「いえ、私達は今、旅をしている最中にございます。ヤタの町からソフィテウスに向かう途中、皆様と野盗どもが争うのが見え、急ぎ参りました。」

「なんと。それなら本当に偶然ではないか。これは女神に感謝せねばな。もちろん貴殿らにも。」

そうレイ様が言うと、

「おーい!」

と、こちらに向かってくる声が聞こえた。なんだか、聞き覚えがある気が。

「周囲の見回りをしてきましたぜ。周りはもう安全みたいです。ってお前たち」

「ご苦労。それになんだ知っているのか?アントン。」

レイ様の言葉から、やはり他人の空似ではないらしい。

そこにいたのはガインの街で冒険者をしていたアントンさんだった。今は他の騎士たちと同じ鎧を着ている。

「お久しぶりです、アントンさん。」

「やっぱりルーク達か!さっきは戦闘中で碌に確認出来なかったけど、そうじゃないかと思ってたんだ。レイ様。もう聞いたかも知れませんがこいつらルーク達は、ガインの街で冒険者をしてましてね。若いながら指折りの実力者ですよ。」

「なんと。ガインの街の冒険者とは聞いたが、あの街で認められているなら、相当な腕前ということだな。先程も素晴らしい戦いぶりだった。」

そういうと、レイ様はうむ、と大きく頷き、私達に向けて再度口を開いた。

「つかぬ事を聞くが、冒険者ということなら、我々の護衛を依頼できないか?」

「護衛ですか?」

「ああ。私達もソフィテウスに向かう途中でな。もちろん無理にとは言わないが、先に助けられたことと合わせて謝礼は十分に出すと約束しよう。」

「若様。勝手に決められては困ります。確かにルーク殿達の実力は見せてもらいましたが、初対面ではありませんか。それに冒険者ギルドを通さずに依頼などしても良いものか?」

そう口を挟んだのはライエさんだ。

雰囲気から、彼が騎士たちの取りまとめなのだろう。

ライエさんの疑問に答えたのはアントンさんだった。

「依頼なら大丈夫だぜ。この場合は緊急として後でギルドに報告すれば良い。」

元冒険者の彼が答える。というか、服装からおそらく元、だと思うが。

「それなら良かった。それにライエの言うように初対面だが、既に助けられた実績がある。ここで野盗に襲われたのだ。滅多にないことは分かっているが、実力者は多い方が、この先も安心だろう?」

「それはそうですが。分かりました。とはいえ、あくまでルーク殿が依頼を受けてくだされば、ですが。」

「それは当然だ。それで?どうだろうか?」

そうこちらに問いかける姿に、当然だが悪意は感じられない。


「少し仲間と相談をさせて頂きたいと思います。」


さて、本当にどうすれば良いのだろうか。


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