黒皇子のその後の歴史(読み飛ばし可)
こちらは以前後日譚5話のあとがきに掲載されていたものを別ページに管理したものです。
ジルクライドとアイシャの子供たちや晩年の二人の様子が簡単に書かれていますが、本編とはあまり関係ありませんので読み飛ばし可です。
こちらは後日譚5のあとがきに書いていたものです。
話の流れ的にあとがきを揃えたかったので別ページでの掲載となりました。
【その後の歴史などが書かれております】
ディザレック皇国第87代皇王ジルクライド・フェアクロフ・ディザレックはさまざまな逸話を残した王だ。
彼の最初の婚約者は婚姻半年前に病で亡くなっているが、属国から彼が自ら選んで連れてきた婚約者はのちに皇妃となり、王国が吸収合併される際に極力混乱を招かないように尽力した。もし彼女がいなければ王国の内乱、皇国への反発などどちらの国も疲弊しただろうと引退した宰相が語っている。
ジルクライド王は戦にも立ち、政治も行い、妻を溺愛し、ディザレック皇国の黄金期を作った王とも知られているが、珍しいことに皇国歴代の皇王につけられる二つ名が彼にはない。賢王とも剣王とも呼ばれた王の一番の功績は皇妃である女性を射止めたことだと本人自らが語ったことから、『皇王ジルクライドと皇妃アイシャ』と二人の名を並べるのが彼を称える言葉となっている。
2男2女に恵まれ、皇妃に似た長男は放蕩息子だったが大人になると外交を司り、のちに吸収する王国の不満を抑えて政務官としてよく治めた。
長女は皇王ジルクライドに似た苛烈な女性で、ディザレック皇国初の女性皇王として立つ。夫は宰相の息子で、皇妃アイシャ曰く「尻に敷かれている」らしい。「引きずられるようにして結婚していた」という逸話が残っているが、夫婦の仲は良かったようだ。
次女は両陛下のデザイナーだった男性と恋に落ち、25歳差という歳の差婚を果たした。彼女を貰い受けようとしていた貴族たちからの猛反発があったが、娶せようとしていた息子がほかの令嬢を孕ませたり、当主がなぜか借金を背負ったり、息子の相手が男性だとうわさが流れたりしているうちに、本人がさっさと結婚してしまったという。その騒ぎを納めていた当時の宰相は「血のつながりを如実に感じます」と遠くを見ながらつぶやいたらしい。
次男で四兄弟最後の一人はアラン・ダンヴィル公爵の長女に婿入りした。五大公爵の中でも最も傾いていた家に入ることで国のバランスを取ったのだと褒めたたえられていたが、実際は気の強い妻に罵倒されるのを好んでいたという話も伝わっていて、真偽は定かではない。
晩年のジルクライドとアイシャは仲良く離宮で過ごした。
「約束を果たしてくれてありがとう」
大切な妻や子、孫たちに看取られながらジルクライドが最後に言った言葉である。
その半年後、後を追うようにして亡くなったアイシャの手にはジルクライドが生涯外すことのなかった黒い手袋が握られていたのだった。