第2話 兄(大臣)の初仕事
「それじゃあお兄ちゃん、大臣として魔物たちに挨拶して。俺はミラ、共に王国を滅ぼそうぞ!的な感じで。」
大臣としての最初の仕事は挨拶だった。なんかカッコいい服を着せられてるし。そりゃそうか。どこのバイト先でも、最初の仕事は挨拶だったもんな。
そう思いながら広場を眺めることができるベランダに立った。
「貴様ら!俺はミラ、魔王シラの兄であり、貴様らの新たな上司だ!」
大臣ってこんなかんじでいいのか?何となく上から目線で話してみてるけど。
「フザケルナ!ニンゲンガジョウシナド、ミトメラレルカ!」
うわぁ、いきなりクレームだよ。なにか間違えたか?
「ほう、貴様は人間である俺の妹に仕えておきながら、俺を認めないのか?」
「マオウサマハ、ニンゲンニシテ、ワレワレマモノヲコエテイル!ダガオマエハドウダ。ドウミテモタダノニンゲンジャナイカ!」
そんなこと言われたら俺が大臣になるなんて無理じゃん。俺はただの平民だし。
「安心して、お兄ちゃん。この魔剣を使えば、他の大臣にも勝てるはずだよ。ほら、私のあとに続いて復唱して。俺を侮辱したな!この剣で倒してくれる!」
「俺を侮辱したな!この剣で倒してくれる!・・・え?」
しかしもう遅い。さっきから文句を言っていた魔物はキレている。
「イイダロウ!シタニオリテコイ!」
◇
シラに騙されて、魔物と戦うことになった。ただの平民が勝てるわけないだろ!
「大丈夫、この剣に任せれば必ず勝てる。」
はあ?どういうことだ?
「ハヤクシロニンゲン!コロシテヤル!」
「これからゴブリン隊隊長、グロルヒと、魔王さまの兄、ミラの試合を開始します。審判は暗黒竜隊隊長、シュバリエが務めさせていただきます。」
魔物にしては言葉がうまい魔物が審判を務めるようだ。
「それでは、始め!」
「コロシテヤルウウウウウウウウ!」
シラに言われるままに剣を抜くと、俺の視界に線が表示された。なんだこれ?
「お兄ちゃん!その線の通りに剣をふって!」
「はあ?!」
「シネエエエエエエエエ!」
もう考えてる暇はない。今はシラの言う通りにするしかない!
すると、肉を切る感覚が手に伝わった。
この状況を最も理解してないのは剣を振った本人だろう。間抜けな顔をしている。
「勝負有り!勝者、ミラ!」
「誰かグロルヒに治癒魔法をかけてやれ。魔王の命令だ。」