第14話 妹(魔王)は泣く
「我求めるは血塗られた刃、古き罪人に器を与え、その狂った欲望を以て、立ちはだかる愚者を切り伏せよ。Sランク闇・風・死霊・怨合成、四重深淵魔法《罪人の刃》!」
帝国 の 軍隊 は 全滅 した。
‥‥‥
‥‥
‥
魔王城にスパンと心地よい音が響いた。
俺がシラの頭を叩いた音だ。
「おい、なにをしてくれてんだ?」
「だって、戦略とか交渉とかめんどいんだもん」
上目遣いと涙目で言い訳をしてくる妹を、俺はもう一発叩く。
「う、う、うわ──ん!」
「泣いても無駄だ。シラが帝国軍を滅ぼしてくれたお陰で、皇国との交渉が出来なくなったんだぞ!せっかく俺やマリエが魔族に対して良いイメージを持たせようとしてたのに、トランプタワーのように崩れ落ちたんだ!」
「だって、だってぇ」
俺はまだ言い訳を続けるシラを、今この瞬間に作ったハリセンで叩く。
「ミ、ミラ様、もうよろしいかと」
「あ?」
もうよろしいかとだって?
よろしいわけないだろ!これで穏便に世界征服出来なくなったんだ。もう戦争は避けられないだろうし、勇者ってやつも異世界から召喚されたんだ。ストラとか言う氷魔法の使い手も一緒にいるらしいし、正直いって絶望的だ。
勇者が仮に俺たちを凌駕しうる存在なら、早めに世界を滅ぼさないとこっちが危ない。
「くそ、やっぱり魔王は世界を滅ぼさないといけないのか」
妹にそんなことをさせるのは兄として心が痛む。
シラだって元人間だ。こんなことをして良いはずがない。
「ミラ様・・・」
「──悪い。興奮していた」
部下にこれ以上みっともない姿は見せられないな。
俺はミラ・イース。魔王軍大臣だ。
上司としてこいつらに道を示さないとな。
「皆のもの!これより皇国を攻める!ただし、必要以上に殺戮をすると勇者の不興をかう、平和的にやる必要がある。だが、まずは力を見せつけて、話し合いを有利に示そうと思う。故に、軍の駐屯地を攻める!さあ行け、我らの力を見せつけてやるんだ!」
──はあ、戦争だな。