曖昧な灯り
唯一
使っている日だった
提灯のことだ
提灯を出して
灯りを付けるのが
役割なのである
中に蝋燭を立てて
それにライターで
カチッと火を付け
ゆっくりと丁寧に
あの形に戻して行く
曖昧な灯りを目印に
帰って来ると教えられたのは
小学生の頃だった
暗くなって眺めた提灯は
神秘的でいながら
何処か未定な感じがした
待っていても来なくて
何処かで
デートしているんじゃないか
なんて思ったけれど
うちの祖父さんには
嫁が二人居たな
祖母さんは二人だった
大人達は
触れなかったから
触れないことにしたけど
両手に花で
デートしているなら
羨ましいじゃないかと
少し思った
成長しても
変わらぬ日は
昔と今を曖昧にする
生死の境目が曖昧みたいに
何処か楽しげで
離れることが決まっているような
儚さがある
いつものように
花火が夜空に開き
音を山に響かせている
くだらぬ物が
何処にも無い
その曖昧な灯りには
何処にも無い