最終魔法『世界再成』
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の意味を考えて見てください。 単なる区切りだとしたら
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これは必要無いはず……?
(ネタバレしていく投稿者の屑)
魔法。
この世ならざる、超常の業。
確かに、この世界に魔法は存在する。
確かに、この世界で魔法が使われた証拠はある。
数十年前には誰もが幻想だと決めつけて居た魔法。
確かにそれは、あったのだ。
あった。
……しかし、だからといって。
「俺も魔法が使える」なんて事はなく。
例えばこの国、日本では。 平成三十年現在、魔法が使える人は全人口一億人に比べ僅か一万人程だった。
これは、そんな世界の物語。
魔法が『存在した』平行世界での、ちょっとした事件である。
日本という国の何処か、都市部の一住宅で。
『生成、圧縮、解放、放射ーー』
そう言った少年の掌から蒼い光が現出し、魔力によって形成された弾丸が目の前の標的めがけてーー
「……なーんてな」
発射される事は、遂に無かった。
日本のとある都市。
一軒家に住む少年は、魔法使いを目指して居た。
その夢は数年前に捨てて、今は都市内トップクラスの進学校に通っている。
厨二病時代は魔法使いになると言って聞かなかった少年だが、夢が醒めると残って居たのは、圧倒的空虚。
何にもする気力がなかった俺は、そのくせ勉強だけはできたので、取り敢えず進学校に行く事にした。
両親と妹はアメリカにいる。 妹は凄まじいまでの天才で、魔法ではないが超能力の素質がある、らしい。 尤も、俺にはそんなものは何もないのだが。 世の中が不公平なのはいつものことである。
桜舞い散る四月。出会いの季節というが、少年には恋人もおらず、友人もいないし作る気もない。
「宿題、か。 五分で終わらせよう」
午前零時を回り、少年は自分が宿題をやり忘れていたことに気がついた。
高二に上がり、勉強も難しくなる。 ……と言われてはいるが、少年からすると厨二病時代に読んだ魔法書以上に難しい書物など存在しないのであった。 今までのテストは全て満点。 勿論、ノー勉。
常人の六倍のスピードで宿題をこなした少年は、ベットに行き就寝しようとして、辞めた。
「今日は、見れるだろうか」
ここの近くには魔法使いの養成学校がある。 日本に一万人強いると言われる魔法使い達の学校、全国に十校程しかない魔法学院が。
家を出て、歩く。
魔法学院には強力な結界が張り巡らされており、許可無き者は通過できない仕組みになっている。 重火器なども当然ながら使えず、そもそも領域内では発砲ができない。
何が言いたいかというと、近寄れないという事だ。 まぁ、地下にある時点で侵入もクソもないのだが。
「ここか」
取り敢えず、真上には来てみた。
学園がある地下の真上、つまり地上は公園になっていて、魔法が使えない人も普通に利用している。
「まぁ、ニ時までは待とうか」
魔法使いが動くのは、総じて夜らしい。
その姿を見れば殺されると言う噂を知って居ながらも、少年は知識欲を抑えきれない。
試行回数、丁度一千回目。
微かな地震を感じ取ったのは、さすがの執念といったところだろうか?
「ーー来たか?」
自然現象と考える方が無難だ。 しかし少年は、魔法によるものかもしれないと言う疑いを捨てきれない。
「待とう」
前にも、ここで見かけた気がする。
その記憶があるから、少年はこの場から立ち去るなどと言う考えを持たなかった。
突如、真下より轟音がした。 それは徐々に地上へ近づいて行き、
「ーーなっ」
正体不明の膨大な熱エネルギーが地下より噴出し、その真上にいた少年を焼き尽くした。
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「まずい!」
そう思った瞬間に、少年は全力で前方向に飛び出していた。 それだけでは飽き足らず、前転でさっきいた地点から何度も距離を取っていく。
その直後、膨大な熱エネルギーが地下より噴出し、その真上に居た少年……の残像を焼き尽くした。
アニメなどでよく見る、膨大なエネルギーの柱状噴出を、少年は死の危険とともにその体で味わったのだ。
「ははは、やっぱり魔法は、有るじゃないか」
今の現象を取り敢えず魔法のせいだと決めつけて、少年は乾いた笑いを浮かべた。
コンマ一秒でも遅ければ死んで居た。 ……と言うより、自分でもあんなに早く動けたのは予想外だった。
冷や汗を浮かべながら、少年は地面に開いた大穴を覗く。 暗闇しか映らないはずのそこには、二つの光が衝突している景色が見えた。
見ると、どうやら上に上がって来そうだ。
少し離れた場所、隠れられる場所から大穴を覗きながら、少年は二つの閃光が地上へ飛翔してくるのを待って居た。
運の良いことに、少年の願いは数分で成就した。
「あなたも随分やるじゃない。 褒めてあげるわ」
「それはどうも。 ですが生憎と、貴方のような人に褒められても嬉しくありませんね」
出て来たのは二人。 取り敢えず魔法使いと断定する。 二人はどうやら敵対状態にあるようだ。
「あら、そう?」
「えぇ、そうです」
ぶつかり合う閃光。 見れば二人は、剣を使っていた。 声質を鑑みると二人とも女性と推測できる。
それだけでは無く、ファンネル?ビット?とにかくそんなものを飛ばし合っている。 こちらまで飛んで来たので、全力で回避した。
何とか、見つからずには済んだようだ。 気配は限界まで殺している。 あとは見つからないことを祈りながら、ただただ戦闘の経過を見守るだけ。
「7本でよく対抗しますわね」
「数が多ければ良い、と言うわけではありませんよ」
片方は十三本、もう片方は七本の剣を展開している。 剣なのに接触時に爆発するのは、どういった原理なのだろうか?
「あら、そうですか。
それではこの数を、凌いで見せなさいな?」
天空に描かれる魔法陣。
魔法使いがどうやら、本気を出すようだ。
「ほう、やる気ですか。 ……では、私も」
大地に刻まれるルーン。
魔法使いの切り札が、披露されるらしい。
(正直、予想外だ)
ここまでのものが見れるとは思っていなかった少年は、しかしその危険性にいち早く気づいた。
走って加害範囲からの離脱は不可能。 おそらく二つの魔法は、この公園一帯を軽く吹き飛ばしてしまうだろう。 真夜中の公園に人などいるわけがないので、少女達はきっと気にしないはずだ。
となると、方法は一つ。
いや、これは最早選択肢に入るものではないが。
(あの大穴に、飛び込むしかない……!)
どう考えても、そちらの方が即死。
しかし、どの道ここにいても吹き飛ばされる。
そう思った頃には、少年は走り出していた。
先ほどの回避行動で、大穴付近までやって来たから簡単だ。 数秒かからず穴にはたどり着く。
迷ってる暇もなく、少年は大穴に飛び込んだ。
襲いかかる重力。
天使の助けなどありはしない。
待つのは当然、死のみであり、如何なる救いは少年には与えられない。
「……大丈夫、ですか?」
当然、落下死。
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ーーしたはずの少年は、名も知らぬ少女に抱きかかえられていた。
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「成る程、状況はわかりました。 国立魔法学院の生徒会長として、責任をもって対処いたします」
少年を助けたのは、目の前にある学園の生徒会長だったようだ。
「何だか、誰かを助けなきゃいけない気がしまして。全速力で飛んだら、ギリギリ間に合いました」
優しそうな美少女。
それが少年から見た、会長の第一印象だった。
「何故、助けてくれたのか」と言う少年の問いにそう答えた会長は、
「少し待っていてください。 あの二人を止めなくてはなりません」
そう言って、地上へ飛び立って行った。
さて、雑記帳を開いて記録(ry やめた。 どうにも危険な感じがする。
「さて、何もすることがない」
素数を数えながら、会長の帰りを待つ。
五分ほどで、会長は戻って来た。 さっきの二人を連れて。
「本当に、申し訳ございませんでした」
「いや、謝る事はない。 こちらが深夜にうろついていたのが悪いんだからな」
「ですが……!」
「再発防止に努めてくれ。 また何か起こると困る」
簡潔すぎる会話。
会長とは出来るだけ接触を避けるべきではないかと、本能が告げていた。
「そう、ですね……。 しかし、学園としてはこの事態を重く受け止めーー」
「……ん? どの事態を、だ?」
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とぼけてみせた、のではない。
少年は完全に、今までのことを忘れていた。
「ですから、生徒同士の死闘によりーー」
「地面に大穴が開いた、か? というか、大穴なんて何処にある」
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意味不明。 支離滅裂。
「何を、言っているのです……?」
「と言うか、すごいな魔法使いは。 地下から地上まで、何も壊さず移動して見せるなんて」
少年女たちは公園で話していて、どうやら会長は、自校の生徒同士の私闘で地面に大穴が開いたと錯覚しているらしい。
「ーーすみません、頭が混乱して来ました」
「一分間、黙考するといい。 きっと混乱は治る」
少年の言葉は正しく、直ぐに彼女の混乱は治った。
「失礼しました、私がどうかしていたようです」
「いや、大丈夫だ。 日頃の激務で疲れているのだろう? そう言う事が起こってもおかしくは無い」
「たしかに、ここ最近は不眠不休でしたが……。 いえ、何でもありません」
そういったことを、言われた事がなかったのか。
会長は少し不満げにしながらも、直ぐにそれを引っ込めた。
「そうか。 ……この事は、秘密にしておくべきだよな?」
一応、会長に確認を取る。
「……はい。 出来れば、口外を禁じさせて頂きたいです。 これは国家機密保護法第9条のーー」
「あぁ、知ってる。 分かってるさ。 伊達に魔法使い目指してたわけじゃ無いんだ」
「目指して、いた?」
会長が、頭の上にハテナマークを浮かべた。 後ろの二人といえば、片方は馬鹿にするように、もう片方は哀れむように、少年を見ている。
「厨二病、と言うやつさ。 才能もない平民が死に物狂いで努力した程度で手に入る力ならば苦労はしないんだがな」
「当たり前ですわ。 魔法の会得には何よりも血筋が重要。 魔法使いの子供以外は、魔法使いになどなれませんのよ」
「ごく稀に例外はいますが、そんな物は本当に希少です。 確率は天文学的数字になるでしょうね」
少年の独白に、二人が答える。
「そう、なんですか」
「あぁ、こればっかりは運だな」
羨望の眼差しを向けられた会長は、どうして良いかわからなくなっていた。
「魔法とかはかけなくて良いのか? ……と言っても、俺は感知なんてできないが」
「そうですね。 では、『契約』の魔法を」
会長がそう言った後、少年の目には蒼色の光が輝いた、様に見えた。
「これで、貴方は今夜起こった事、その全てを明日には忘れているでしょう。 代わりの記憶は脳が補完しますのでご心配なく」
「そうか。 もう、帰って良いか?」
「はい、結構です。 ……貴方たちも、行きますよ」
そうやって、会長たちに背を向ける少年。
「そう言えば」
ふと、少年を会長が呼び止めた。
「貴方の名前は、何と言うのですか」
たしかに、聞いていなかったそれ。
「何、名乗るほどの人間じゃ無いんでね。 しがない少年さ、俺は」
最後まで名乗らずに、彼はその場を立ち去ったのだった……。
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翌日。
授業を終え学校から帰ろうとした少年は、しかし奇妙かな。
「……お、お忙しいところ、失礼します」
初対面だが初対面じゃない様な気がする少女と、二度目の邂逅を果たしたのだった。
これは、普通な少年の物語。
魔法がある世界で繰り広げられる、ちょっとした事件の連続だ。
いっそのこと短編にして見た。
前作は申し訳ありませんが打ち切りとさせていただきました。 書いてて全然面白く無くなったので。
これは続くのだろうか?とりま一話書いたので許して。