日本のトップを狙う
ここまでで全中出場が決まったのは以下の通りだ
男子共通3000m
村中優、関、長岡
共通女子四種
西原〔サイハラ〕
そして今日、1500mがあるのだ。
恋夢中陣地_。
バナナをパクリパクリと食べる関。昨日全中出場が決まったことで少し余裕を持っている。
そんな関とは反対に山中は余裕はない。関が全中を決めた以上自分も行かなくてはならないというプレッシャーがかかる。山中はゼリーをジュージューと吸っていく。
山中の自己ベストは4分8秒50と丁度、標準記録と同じなのだ。少しでもベストを尽くせなかったら終わりと思っていいだろう。
山中はなくなったゼリーの容器のストローをジュ〜ジュ〜と鈍い音を鳴らせながら吸う。
20分後、兎田が来た。彼はこの春入院していたてろくに走れてないらしい。あまり今回は期待できなそうだ。しかし兎田は不死身の男、ここで終わるはずがないのだ。
関と兎田はふたりでしばらく話、関が山中の緊張をほぐそうと話に加わらせる。
これで山中も少しは楽になっただろう。
兎田と話が終わった後、関と山中はストレッチをする。1年を誘うのを忘れてはいない。きちんと2年生が指導する。今回は藤咲はでない。正直なところを言うと桐生じゃなくて藤咲が出ればいいと思うが平川先生は桐生は通信も出れないからここで出そうと言って出させた。
1年生との会話もちょくちょく挟みながらストレッチを行なっていく。
30分行った後、試合が昼過ぎぐらいなので昼食をとる。
そしてアップまで時間が過ぎて行ったのだ。
維新みらいふスタジアム、外周_。
1500mのアップを行う関たち恋夢中。
関は昨日の疲れがあるためジョグは少なめに行いそのかわり動き作りを重点的に行った。
動きは悪くないがやはり体が重い関。1500mも正直なところ全中出場を決めたいのだがと色々と考えている。
一方山中は、1年生と一緒にジョグをしている。ペースはもちろん山中に合わせてだ。全中出場を決める大会というのに1年生に合わせる余裕などない。
ジョグをしながらフォームを確認していく。
山中の癖は腕抱えてしまうところにある。ジョグでは判らないが全力で走る時に疲れてくると出てしまう癖だ。
山中は腕振りを真っ直ぐに振るように意識する。
1時25分_。
1年の1500mが始まる。
中多、桐生はバッチリアップをしているのでコンディションはいいだろう。この県選手権がこの夏の鍵となるので注目したいところだ。
1組目、2組目そして中多たちがいる3組目が終わる。結果は中多が5分5秒 桐生が5分32秒と残念な結果に終わった。今年の夏も関だけかな。そう思う山中、もちろん関も今年の夏も山中だけかなだと思っていた。
こうして2年の1500mが始まる。
山中と関は1組目だ。
いつも通りの音楽といつも通りの号令。
そして_____パンっ
スタートだ
山中のスタートダッシュは本当に凄い、先頭に出る。やはり関はスタートダッシュが遅れ中の方にいる。
中々前に出れない関諦め1周を通過する。タイムは62秒。
1周を通過すると流石にばらけて来た、関はその隙を逃さない。空かさず前に出る、そして山中の後ろに付くのだ。先頭集団は三木 雄太〔ミキユウタ〕福島 亮太郎〔フクシマリョウタロウ〕小田 聖駅〔ショウダセイエキ〕そして山中、関だ。2周目は2分7秒と少しペースが落ちた。
そこで山中は焦りペースを上げる。このままのペースで行っても標準記録は突破できるが心に余裕が無いのだろう、山中にはペースが落ちたことが問題なのだ。
あげて行った結果1000mの通過タイムは2分40秒。
山中は力んでいる。ペースを上げようとしても上がらない。そのまま関が山中の隣に来てやり。
「落ち着け、お前の目標は優勝じゃなくて標準記録突破だろ、先ずは安全にだ」
そう言ってやると山中は我に返り、抱えていた腕を1回下に下げフォームを整えた。
そしてそのままペースを落ち着かせていく。今のペースの乱れで付いていた奴らもバテているようだ。しかし差はあまりない。
ラスト1周となり山中はロングスパートをかける。それに付いていくその他諸々。関は体が重く付いていけるような状況ではなかった。それでもペースは上げ、なるべく差がつかないようにした。
ラスト200m、山中は更にギアを上げスパートをかけていく。もう山中について来ている奴はいない。
関は数秒遅れてだがラストスパートをかける。
福島、小田、三木と抜かしていく山中に続いてゴールした。
結果は以下の通りだ。
山中 4分1秒15CLR 関 4分5秒CLR 三木 4分8秒78 小田4分10秒02
福島4分13秒5……兎田4分45秒63
村上は共通の方に出ておりタイムが4分8秒21だった。
これで恋夢中から2人目の全中出場者山中が出てきた。
今回の県選手権で全中出場を決めた選手は以下の通りだ
男子
3000m
村中優、関、長岡
1500m
山中、関、村上
高跳び
山本、岩本
幅跳び
柄本
砲丸投
康長、河本
女子
100mh
西原
四種
西原
1500mは2年生が全員占めているという結果になった。そして山中はこの大会で中学2年歴代最高記録を出した。
関たちの調整は全中へ確実になった。
恋夢中、第3理科室_。
今日は部員全員がここに集まった。
取り敢えず、こないだの県選手権のビデオを見る。
しばらくして平川先生が来て。
「今日は通信に出場するものを決めようと思う」
通信陸上は基本標準記録を切った者だけが出れるのだが特別ルールとして1学校男女3人ずつ切ってなくても出れるのだ。
前回の県選手権を参考にして、今回は生徒が決める。
桐生は今回はやめてもらう。
藤咲、中多は確実であともう1人は原田とした。
女子の方は知らない、以前も言った通り名前を知らないからだ。
通信当日_。
あれから1週間後関と山中はナイターにでて2人ともベストを出した。
関は8分37秒、山中は8分56秒と山中は全中標準記録を突破した。
村中優、秀も出場しており2人もベストを出していた。優は40秒、秀は58秒。
そうして今日通信が始まった。
今回のスケジュールはこんな感じだ。
2年1500m
1年1500m
共通1500m
共通3000m
が初日
共通3000m
1年1500m
2年1500m
共通1500m
が2日目だ。
関、山中は2人とも1500mと3000mに出場する。
一次は1種目だけに絞ろうとはしたが2種目とも中国大会に出場したいと言うことで今回どちらとも出場することにした。
♦︎
中多は県選手権はダメだったもののこの1ヶ月半でかなり成長した。
1年1500mは15時にスタートだ。
朝の1次はアップは関先輩と同じだ。ジョグのスピードも慣れた。1㎞4分を切るペースで毎回アップをしているので下手したら軽めのペース走よりきついのだ。
そんな練習をしているとそりゃ、強くなるはずだ。
関と山中が先ず1500mの予選を行う。
もちろん2人とも予選は通過した。
タイムは23と22だ。そして戻ってくる。
「だいぶ楽に行けたな、」
「まぁー、そりゃーそうでしょ」
関先輩と山中先輩が笑顔で会話する。
今年の2年生は奇跡の世代と言われており、全国でも2年生は次々と歴代記録を塗り替えている。
その中の2人が目の前にいる。
強い学校が強いのは、速い選手にみんなが合わせていこうとしているうちに気付いたら自分も速くなっていたという現象が起こるためである。中多もその例外ではないだろう。
流しの1本1本を大切にして走る。
13時30分_。
藤咲と一緒にみらいふスタジアムの外周へ出る。
軽く体操をした後、動きづくりに入る。
調子はいい中多、まだベストは5分台なので予選の通過は難しい。なのでここでしっかりとアップをして確実に予選を通過できるようにしなければならない。
動きづくりが終わりジョグを入る。
そしてアップが終わり召集へと行く。
中多と藤咲は同じ組みで3組だ。
予選で皆んな分散していると思いがちだが、今回は速い者順だ。
中多たちがいる3組は5分切れるかからないかの奴が組みランキング1位だ。
男子1年1500m予選_。
1組目、2組目がが終わり中多たちの出番が来た。
中多は体を振るい最後に4回ジャンプする。
「はいそれでは、スタートラインに行ってください」
係員がそう言って皆んな誘導通り歩みを進める。
1本流しを入れももをパンパンと叩きスタートの準備完了だ。
1.2組を見る限り予選通過をするには50秒前半で行かなくてはならない。要するに中多は10秒以上のベストを出さなければならない。
「オン、ユア、マーク」
パンっ
そしてスタートする。
中多は順調に前について行く。そんなにペースは速くない、余裕の持てる走りができている。
そのまま、2周 3周と走っていきラスト100mで中多は仕掛ける。そして組みトップに立ちゴール。
結果は4分48秒‼︎
大ベストだ。こうして中多は予選を通過できたのであった。
♦︎
3000m予選
関、山中は先頭集団についていきそのままゴールし、予選は楽に行けた。
そして明日の決勝に臨む関たちであった。
維新みらいふスタジアム_。
藤咲、宮田以外全員予選を通過した恋夢中長距離。しかしその中で中多だけが全力でギリギリ通過したのだ。
♦︎
中多は関先輩と山中先輩と一緒にアップをする。昨日と同じ流れだ。予選を全力で走った中多はかなり疲労がたまっている。
しかし体の調子はいい、足はよく動きスムーズに前に進む感じがする。
アップが終わり恋夢中の陣地に戻る。そこには3年生と河口先輩しかいない。朝、関先輩が惣代先輩をバカにしていたのを思い出す。
予選を通過できなかった者やそもそも試合に出ていない者は補助員をやらされているのだ。
3年生は特別らしい。河口はドブにハマって足を怪我したらしい。作者曰く河口にふさわしい怪我の仕方だとかよくわからないことを言っていた。
こうして決勝が始まるまで適当に過ごしていた。
♦︎
1500m3000mを軽々と通過した、関と山中。ちなみに前回調子の悪かった兎田は今回もダメだった。
そして今回の目標は全中出場ではなく中国大会出場だ。中国大会出場を決めるには各種目3位以内が条件。
特に難しいのが2年1500m、村上.三木.福島.小田など4分1桁や10秒台の者がいる。今数えただけでも上の4人と幹部、山中を合わせ6人が3位を狙っているわけだ。これを聞いて関を忘れているぞと思っている者もいるだろう。そう今回1番楽なのは関なのだ。関は種目選択の時2年ではなく共通に出場すると言った。4分1桁が安定して来た関には敵なしという状況なのだ。
10時55分_。
3000m決勝が始まる。今回注意しないと行けないのは、この後1500mが、控えているということ。なので出来るだけ体力を温存しとかないいけない。
パンっ
選手が走り出した。
♦︎
中多は先輩の走りを見るために観客席の方に来ている。
そしてたった今3000mが始まった。
まず最初に、3年の国真〔クニマ〕が前に出る。その後ろに村中優.秀、関、山中が付いている。
その他の選手はもうどこに行ったかなど関係ない。そのくらい差があるのだ。
そのままの状態が1500mまで続く。とそこで山中が出る。ちなみに1500mの通過タイムは4分30秒だ。この時中多は通過タイムなのに自分の自己ベストよりもはるかに上回っている事に驚く。
山中が出てそこに関たちがつき、国真は離れる。
ここで4人の誰かと言うのが決まった。
中多は山中先輩を応援する。山中はそのままペースを上げどんどん関たちの集団との差を広げる。そしてラスト200mラストスパートをかける。
しかしこのラストスパートは中多が見る限りリラックスし、体が前傾に出ない。ラストスパートとは思えない形だった。
そしてそのままゴール。
中多はすかさず電光掲示板を見る
山中8分56秒78 CLR、村中秀8分59秒98、関9分3秒33、村中優9分5秒65、国真9分12秒46…
♦︎
今回山中が途中でペースを上げた理由は全中出場のためである。最初に今回の目標は中国大会と言ったがやはり全中は行きたいと思う者だ。思わず上げてしまったと言う。もちろん2位だった村中秀も全中出場を狙っていたがリスクがあったので、前に出るのを戸惑った。その結果、全中出場を決めることはできなかった。
時刻は14時、1500m決勝が始まる時間だ。今回は共通、2年、1年といつもとは逆の順番で進んでいく。
まずは共通から、恋夢中からは関がでる。
関の狙いはタイムだ。もう中国大会出場は1種決めているので行けることは確定だ。しかし1500mでも行きたい気持ちはある。なので今回争いが少ない共通を選んだのは中国大会出場を逃すリスクを少しでも低くするためだ。
「オン、ユア、マーク」
関の頭の中はいつもとは違った。
10日前_。
この日はジョグだった。関は山中と60分ジョグをすることにした。そして2人は会話をしながらジョギングをする。
「そいえばさ、何で山中ってスタートが上手いん?」
関はそう言う。
何故そう聞くかと言うと関は毎回スタートで失敗して余計な体力を使うのだ。だから前からスタートは直したかった、そこで山中に聞こうという魂胆に落ちたった。
「んー、音が鳴るのタイミングを覚えているから」
何と山中は審判の号令からピストルの音までの間を完全に覚え体に染み込ませているらしい。そしてそのタイミングは実際のタイミングとは0.1秒ほど早いのだがそこは皆がわからない範囲で調節しているらしい。
「馬鹿じゃん」
思わずそう口にしてしまった関。
しかし関はこれしかないと確信する。
それから登校_授業中_下校_食事_風呂とずっと耳にイヤホンをし、大会のスタートを聞いていた。
そして何と大会2日前で体に染み込ませることができた。山中でも2週間はかかったと言う。
そうして残り2日間少し微調整をして試合に臨んだ。