新入部員は役立たず?
4月11日に山口県春季記録会があったがそれには関たちは参加せずただみるだけとなった。結果は1500mに村上が出場しており3年生を抑えて4分13秒で1位となっていた。3000mでも2年生が1人いたが名前は判らない。対して速いタイムでもなかったので気にしてもいない。
5月7日、新入部員_。
今日から1年生が入部してくる。今年はやっと毎年2人を乗り越えて3人長距離に入ってきた。中多 龍馬〔ナカタリョウマ〕と藤咲 日奈鶴〔フジサキヒナツル〕そして桐生祥秀〔キリュウヨシヒデ〕だ。
そして今回、1年生に先輩が1人ずつ着くと言うことになり中多を関が、藤咲を山中が、そして桐生を西原が担当することになった。宮田は知らない。
そしてアップをするのだ。今まで行ってなかったが恋夢中のグランドは200mトラック(土)でアップの時の一周のタイムを52秒〜54秒くらいで行っている。遅い、一言で言うとそうだ。1㎞を4分25秒ほどで行くのは流石に遅すぎると感じた関。先頭を引っ張り責めて4分ペースへと持っていく。これがきっかけで恋夢中は強くなると言うのはまだ誰も知らない。
ペースを上げたことによって1年生がかなり疲れている。それもそのはずだ。小学生の頃、速かったたならまだしもこの3人はこのペースが全力に近いものだったからだ。
アップが終わった後、1年生は長距離女子の生田〔イクタ〕先輩のところに行きラダーやミニハードルをする。
そして市の大会が終わった。
1年生の結果は悪いしか言えない。
それもそのはずだ、1年生は走っていないのだから。関は平川先生の愚痴を言い続ける。
恋夢中、グランド_。
県選手権に向けて練習をしている関たち。やっとこさこっちの練習に参加してきた1年生。
体操、ジョグ、動き作り、ジョグをサッサと済ませて休憩する。関がメニューの書いてあるノートを開くと、1年生は1000mのTTだ。
期待ができるのは藤咲、彼は恋夢町の陸スポに入っていたからだ。次に中多、サッカーをやっていたので基礎体力はあるだろう。最後に桐生、期待というか心配だ。背は低く体は細い。この細いは肉がない細いだ。
そして関、山中、西原がそれぞれの担当のタイムを計る。結果が以下の通り
中多3分30秒、藤咲3分34秒、桐生4分15秒。
本当に全力か?そう疑いたくなるタイムだった。
まぁ、しかし今までまともに練習してなかったのだ。仕方がないと自分に言い聞かせる関。
こうして底辺からのスタートとなった1年生であった。
翌日。
今日はポイントの日だ。
内容は大体わかっている、インターバルだ。関はインターバルが大好きで特にショートインターバルとなるとテンションが上がる。何故かと言うとジョグが嫌いだからだ。基本的に長い時間を走るのを嫌いとする関。長距離選手において最悪だ。しかし長い距離は大丈夫なのだ。
そんな関はステップを踏みながら部室に行く。
ガラガラガラ
部室に入ると河口が何やら1年生に言っている。
「お前ら、恋夢中は県の中でも強豪校だ!シャキシャキと動け、そして俺みたいになれ!」
なんて奴だ。1年生も白い目をしている。
関は河口を好きなようにさせ、部活の準備に入る。
基本的に関は靴を履き替えるのが面倒なので登校してきたジョグシューをそのまま練習にも使う。
メラメラメラと練習メニューが書いてあるノートを開くと今日のメニューはやはりインターバルだった。
1000m×3本 リカバリー200m 200m×3本
A3分
B3分10秒
C3分15秒
D3分50秒
E4分10秒
まぁ、関と山中はAだ。そのままアップに行き軽く体を動かして2人でインターバルを行う。
宮田はCで行き。西原はサボって皆のタイムを計る。1年生はEで女子と一緒に行く。
関は西原にタイムを計られるのにイライラする。基本的に誰かにタイムを計られるのは嫌なのだ。
そして転がってきたテニスボール。関は思いっきり蹴ろうとしたが踏んでしまって転げそうになった。
それを笑う山中。2秒後に山中も転げそうになりそこから2人は走りながらちょっかいを掛け合った。
そして練習が終わったー。
関のスピードも戻ってきた。
ここで毎年恒例の恋夢中陸上部陸上競技大会が始まる。
チームは2つに分かれている。これは1年生の時にもう決められており変えることはできない。そしてそのチームがと言うと
白騎士団
牛森〔ウシモリ〕
原田〔ハラダ〕
惣代
河口
田中
藤咲
黒騎士団
宮田
堀川
西原
関
山中
塩尻
桐生
女子は名前を覚えていないので知らない。
しかしこれは男女別なので構わない。この大会の競技は100m、200m、400m、800m、1500m、3000m、全員駅伝(1人600m)だ。個人競技は1人1種しか出られない。
さぁそれではスタート‼︎
恋夢中、部室_。
陸上競技部の部室にはある隠し通路がある。赤のバトンを特定の場所に置くと扉は開かれるのだ。部員全員が入ると部屋は動き出す。
ゴゴゴゴゴ
6秒程だろうか部屋は止まる。そして扉が開いたと思ったらそこには青のタータンがあるではないか。
この空間を昔の先輩方は秀子の巣窟と呼んでいたらしい。この空間はまだ詳しいところまでは判らない。秀子がそこまでの了解を出していなかったからだ。
みんなはそれぞれの大会部屋へと移動し、種目を決める。そして掲示板に決まった者から名前が出されて行く
種目白騎士 黒騎士
100 惣代 塩尻
200 牛森 堀川
400 原田 西原
800 河口 宮田
1500 田中 山中
3000 藤咲 関
桐生はこの日来ておらず代わりに先週来ていなかった塩尻が入ることになった。塩尻は短距離の新入部員だ。
100m200mと短距離は白騎士の方が得点を勝手してしまった。
そしてつぎは800mだ。
河口対宮田。
「よーい、はいっ」
スタートした短距離の河口が最初は飛び出す。宮田先輩か追いかける。差は縮まるどころか少しずつ広がっている。500mを通過したところで宮田先輩が徐々に追いついてくる。そしてラスト100m、河口がまだ前にいる。ここで取られたら後がきつくなる。関たちの心拍数はマックスに到達しようとする。ラスト30m、20、河口がそこでガッツポーズをした、すると河口の姿が消えた。
と思ったがどうやらかけてしまったようだ。そのまま宮田先輩が抜き1位となったのだ。
次は山中の1500m。このタイムは勿論公式なタイムにはならないが測り方は試合と同じだ。ここでタイムを出せば自信を超えて確信が持てるようになる。
はいっ
その掛け声とともに山中が走り出す。いいスタートだ。
もう山中の中には田中の事など頭にない。そのまま200mを通過、タイムは30秒。
そして徐々に自分のペースへと戻して行って1000mの通過タイムが2分48秒順調に1000mを、通過したあとラスト100mとなるラストスパートをかけてゴール。
タイムは…
4分9秒75
ベストを更新した。
この圧倒的な走りには何も言葉を発せられない。
田中のタイムは5分8秒1まぁ、いいんじゃないか。
最初の100mまで山中についていたから今後が楽しみだ。
取り敢えず関はこのタイムに惑わされず3000mを望もうと集中している。3000mまであと30分。これは走者がベストを出したら良くも悪くもその雰囲気のまんま試合を行わせないと言うルールに基づいてだ。
よく判らないルールだが今回はそれに救われた。
30分後3000mのスタートだ。
すーっはーぁ。
関は大きく呼吸をする。
「よーい、はいっ」
3000mが始まった。取り敢えず先ずは突っ込む。
200mの通過31秒。早いと思われるタイムだが関にとっては予定通り。そのままリラックスしながらペースを整えていく。肩が力みがちなので時々肩を上下させながら腕を思いっきり後ろに下げて軽々と走っていく。1000mの通過タイムは2分53秒。最初の200mを上げたのでこのくらいは想定内だ。しかし思った以上に関の疲れがやばい。関特有の呼吸法で回復させていく。この呼吸の持つ時間は2分程度。あまり早く使いたくなかった関だがこの場合は仕方がない。ペースは落とさず走っていく。肩も少し力み始めた。そして2000m通過。タイムは5分55秒少しペースが落ちている。その分関は回復していた。残り2周のところでロングスパートをかける。息を大きく吸いリラックスさせながら体を斜め前にさせる。その姿はまるで狩をしているライオンのようだ。足が少し後ろに残っている。全体的なフォームとしては悪い。しかし関はこのペースを落とすことはない。
そして皆はここで気づくのだ藤咲の存在を。藤咲はトイレに行っており今来たとのこと。当然藤咲は失格となった。
こうしている間に関はラスト200m。
さらにギアを上げスパートをかけゴール。
この完璧な走りは山中もびっくりだ。
8分49秒98
こんな奴は見たことない。
最終的に勝ったのは黒騎士団だ。
こうして恋夢中陸上部陸上競技大会は終了した。
恋夢中、第3理科室_。
平川先生に呼ばれ関と山中が理科室に来た。
内容はこないだの大会のことだ。平川先生はこのグランドの事を知らず自分たちが勝手に使用したことに起こっているらしい。
それと同時に喜んでもいた。それは
「みんなこの映像を見て欲しい」
ぽちっ
テレビの電源をつけるとこの間の大会の映像が流れていた。
「あのグランドにはモニターがあったな、お前たちよくやったぞ!これで今年も全中に行ける」
そう言って関たちを撫でてくる。
気持ち悪い。関たちの感想はこれだけだ。
あの大会の後公式で2人ともベストを出した。
関は1500m4分9秒10 3000m8分50秒54
山中は1500m4分8秒5 3000m9分10秒78
2人ともどちらかの種目の全中標準記録をきった、このまま県選手権までにタイムを伸ばせると望ましい。
しかし最大の敵が現れる事を2人はまだ知らなかった。
5月20日、放課後_。
部員全員、部室に行かずグランドに集合している。
平川先生が来た後いつも通り号令かかける。
「えー、明日からテスト週間だ。これはお前たち次第だが、点数次第で補習が付く事になった」
この事を聞いてほとんどの者の表情が変わった。
関、山中は最近授業など練習に打ち込みすぎて寝てばっかりだった。更に具体的な点数を言われていないので勉強を死ぬほどせねばならないだろう。
翌日、テスト週間の為部活は休みだ。
関は陸上に専念する為通っていた塾をやめた。
今回それが仇となった。
関はテスト範囲が書かれた紙と各教科のワークを出し必死に暗記する。先ずは一通りワークを解く。そのあと間違えた問題を解いていく。
山中は一夜漬けだ。
6月8日、部室_。
テストの点数と順位が書かれた紙のコピーが張り出される。
関…450点11位
山中…450点11位
惣代…428点23位
河口…417点30位
藤咲…465点5位
中多…323点134位
塩尻…256点182位
桐生…232点205位
3年生の結果を見ようとするとそこには黒く隅で塗り潰されていた。まぁ、理由は言わなくても分かるだろう。
こうして関と山中は補習を免れた。
維新みらいふスタジアム_。
県選手権が始まった。
昨年と同じく1500m、3000mはタイムレースだ。
今回恋夢中から出るのはこいつらだ
3000m 関
1500m宮田、関、山中、田中、桐生
800m宮田
先ず最初に800mがお昼頃にある。
宮田先輩の結果は2分15秒だ。
もちろん予選落ちだ。800mは短いのですぐに終わってしまう。
そうして3000mが始まるのだ。
今回の試合は取らなければならない試合。前回8分50秒を出したので大丈夫だとは思うが少し心配だ。
17時30分_。
関は流しを1本入れスタート地点へといく。
たっーったータータータン
《男子共通3000mタイムレースのスタートです》
その声とともに関は2回、手をグーにして左胸を叩いた。
ふぅー、そして1呼吸おく。
「オン、ユア、マーク」
ピカッ
関はちゃんと見ていたピストルの先が光るのを。
それを見たと同時にスタートする。
パンっ
関がスタートした後音は鳴る。
スタートが苦手な関だが今回は上手くいった。
すぐさま、先頭に付く。
200mの通過タイムは32秒。これはごく普通の通過だ。
そのままペースはいつも通り落ち着く。
3年生と走るだけあって中々集団が崩れない。途中つまずくこともあった。
400mの通過タイムは67秒。ペースはもちろん一定のままだ。関は大きく腕を振り楽に前へ進もうとする。
1000mの通過タイムは2分55秒。
順調だこのまま1㎞3分ペースでいけば全中に行ける。
ここで集団のペースが上がる。先頭集団は4人。
関、村中 優〔ムラナカユウ〕秀〔シュウ〕長岡だ。
2年生は関1人。そして1500mを通過、タイムは4分24秒。ペースが早くなって来ている。そこで関が前に出る。少しダッシュをし集団と差をつける。そのままペースを上げていき2000m通過タイム5分51秒。ここで村中が関に追いつこうとする。関もなるべく追いつかれまいとペースを上げ2人の差はずっと同じままだ。
しかし流石3年生更にペースを上げ関に追いつく。
そして関の前に出た。関は付いていく、しかし苦しそうな表情をしている。関の足はもう限界を迎えていた。しかし関は根性でついてみせる。
残りラスト500m。村中優がスパートをかける。関が離れることはない。これはもう全中は確定し2人の勝負となった。関は肩が上がり力んでいる。残り200m、そこで関の耳に平川先生の声が聞こえた。頑張れなどではない。今の関の悪いところを次々と言っていく。関は腕を回しながらそれに合わせて2歩走った。そして思いっきり息を吐き、ラストスパートをかける。村中優と横に並んだ2人は交互に前を入れ替わりしている。
観客はその2人に視線を向ける。ラスト50m村中優がギアを上げた。流石に関も限界だ。
そのままゴールし結果は
優 8分42秒99 CLR
関 8分44秒1 CLR
長岡8分56秒57 CLR
秀8分59秒50
村中秀はおしくも全中標準記録をクリアすることはできなった。5位以降は9分10秒からだった、ちなみに2年生2位は盛重〔モリシゲ〕で9分37秒だった。
こうして恋夢中に先ずは1人関が全中出場が決まったのであった。