中国大会開幕‼︎
山中の携帯の命は残り数十分。
バスで過ごすには携帯が絶対に必要なものなんだ。
何故なら、バスの中では私語禁止。だからバスの中では寝るか本を読むか携帯を触るかの3択しかない。
何もせずに何時間もバスの中にいるのは死に近い行為なのだ。
隣の席には関がいる。もちろん関は携帯をいじっている。
山中も携帯を低電力モードにして携帯を触る。
20分後_。
山中は死が確定した。
携帯の画面が真っ暗になっている。
まだ着くまでに3時間半はかかる。これは絶体絶命。
そんな山中の姿を見て可哀想と思ったのか関が山中の肩を叩く。
それに反応し山中が関を見ると1冊の小説が前に現れた。
その小説のタイトルは
『最後にやっと好きになれた。』
これは大和と言う主人公の水泳青春ラブコメだ。
以前関からオススメされた小説で詳しくはこの画面から下にスライドしてタイトルをクリックしてくれと言っていた。更新は不定期だそうだ。
関は再び携帯を触り始める。
そうして関に助けられた山中であった。
岡山県、シティライトスタジアム_。
約4時間程でやっとこさ着いた。
流石岡山、山口とは競技場の大きさも街の雰囲気も全然違う。
そして関たちは円になって集合する。
今回、同行してきたのは秀子だ。
「今から各自で軽く練習してきなさい」
秀子はそう言って解散させる。
関と山中は長旅だったので少し体がだるかった。
それが表情に出たのか秀子がこちらに圧力をかけてくる。
「よし、走るか」山中がそう言い2人で走ることにした。
20分が経って関と山中は別れてジョグをすることにした。
そして3分程で関は河原〔カワハラ〕と田村〔タマラ〕に出会った。
河原 浩太郎〔カワハラコウタロウ〕身長158㎝、関と陸スポの同期。
田村 恋々〔タムラレンレン〕身長160㎝、のっぺりした顔。
2人とも100で中国大会に進んだ。
「調子はどうだ」
「あぁ、バッチリだよ」
「しかし通信の時は凄かったね、アップで1000m全力で走った後であの結果だったんだから」
「あいつはもう信用できんな」
そう3人はジョグをしながら会話をして行く。
そうしてシティライトスタジアムでの前日アップは終わった。
ホテル_。
少し街に外れたところにあるこのホテル。
中はそこそこ豪華だ。
最初に出迎えてくれたのは大きなシャンデリアと高価そうな絵画だった。
ロビーに集まる選手たちに先生たちは部屋の鍵を渡す。
部屋割りは以下の通りだ
605号室…元倉 致知、奈々
607号室…杉山、徳重
…
705号室…関、山中
706号室…兎田、入江
707号室…河原、田村、藤光
…
607号室の2人はリレーのメンバーだ。そして徳重と言うのはあの徳重の姉。
706号室の入江は2年生で兎田と同じ桜坂中だ。今回1500mの出場をする。
707号室の藤光は河原や田村と同じ100mの出場をする。
そして夜、関と山中が部屋でくつろいでいると兎田がやってきた。
「ねー、知ってる?ここの下の階は女子の階だよ」
そんな事は当然知っている関たち。
そのまま返事をする。
「男のロマンと言えば覗きそしてこの部屋は…」
と言いベッドとベッドの間にあった小さな棚を除ける。
するとその下に扉が。まるで漫画のようだ。
そう思う関と山中。ドヤ顔をする兎田。
そして関たちが止める間もなく兎田は扉を開ける。
扉の先にはただのコンクリート。
「なーんだ」
兎田はそう言い部屋を出て行く。
次の日_。
昨日は携帯をしていて睡眠があまり取れていない関。
中国大会前日で興奮し睡眠があまり取れていない山中。
2人が眠そうな顔で朝食を取りに行く。
朝食はバイキング制だ。
関はパンを2つとサラダそしてオレンジジュースを。
山中はパンを3つとサラダ、スクランブルエッグそしてオレンジジュースをとる。
他の人に比べあまり食べない2人。
睡眠も食事も取れていない2人を少し秀子は心配する。
そして秀子の隣の席でめちゃくちゃ食事を取っているのが河口。
河口は試合観戦のために岡山に来ていたのだがたまたま同じホテルにいたらしい。
秀子は内心ウザがっていた。
そして朝食を取り終えた関たちは今日の試合の準備をしバスに乗る。
今日は天気が悪くと言うか天気予報では台風と言っていたので試合が出来るか判らない状況だ。
雨が降っていないが風が少し強い。
最悪のコンディションだ。
そう思いながらも睡眠不足なので関と山中は寝始める。
気付いたらもう競技場についていた。
1年男子1500mは15時30分といつも通りだ。
そして今回のランキングは以下の通りだ
1位 角南〔スミナミ〕2位関 3位兎田 4位三浦〔ミウラ〕5位山中 6位加増〔カゾウ〕…
関たちの睡眠は午前中寝てたのでバッチリだ。
さぁ今歴史に残る戦いが始まる__。
13時30分_。
関はストレッチをしている。
今回注目すべき選手は2人。
1人目は三浦、小学男子1000mの中国チャンピオンだ。もちろん関は負けている相手。関の頭の中には危険という文字が常に浮かんでくるそう言った人物だ。
2人目は角南、今回のランキングで1位を獲得している彼だが全く聞いたことのない名前だ。中学に入り突然伸びる奴はいるがそう言った奴に限ってめちゃくちゃ速いのだ。
関は作戦と一緒にこのことも考えながら軽く体を動かしていた。
補助競技場_。
アップをしようと関、山中、兎田は補助競技場に来ている。行く途中に河口がTシャツを買ってニヤニヤとしていたが3人ともイラつきを抑えた。
まぁ、普通はイラついても仕方ないことだ。試合に出ない奴がその試合のTシャツを選手の前で買い呑気にしているんだから。特に河口が。
河口は何に対してもイラつき要素しかない作者はそう思ったのであった。
そうして関たちはアップを行う。
前回とは違いもう1000m全力などしない。
関は徐々に体を動かして行くイメージでアップを行った。
15時、召集時間_。
今回は中国大会と大きな大会だがタイムレースとなる。
まぁ、人数が県3名ずつだから2つに分けてもしょうがない。
雨が降ってきた。それもそのはずだろう、天気予報では今日は台風が接近してくるのだから。
レーンは以下の通り
5レーン 兎田
10レーン山中
11レーン三浦
14レーン関
15レーン角南
兎田画1人外れて外のレーンに皆んな集まっている感じだ。そして関のレーンは最も危険な存在と感じている角南、それに加え苦手な外側のレーンと最悪と言ってもいいだろう。
しかし関はそれをマイナス思考にはしていなかった。それもそのはずだ。今までの試合はデートした後に走る、1000m全力で走った後にさらに走るとこれよりも最悪な状況だったのだから。
関はポンポンと腿を叩く。
一方山中は少し不安を抱えている。通信から不調続きなのだ。どうも自分から前に出るのが怖くなる。そう思って前に出ずにいるとそのまま試合は終わり呆気ない試合となるのだ。そんな山中に中国大会というプレッシャーも加わる。先生も不安そうだった。
そして兎田は結構自信がありそうだ。小学の時から兎田の走りには安定性があった。いつまでも上位に居続ける不死身のランナーとも言われている。
そして河口。只今ホテルでのんびりしている。
試合開始_。
《1年男子1500mタイムレーススタートです。選手の紹介はスタート後に行います》
関、通信の時はこ等を聞いた瞬間緊張感が走ったが今回はない。そのかわりワクワクしている。
「オン、ユア、マーク」
パンっ
関はいつもと違い先頭には行かない。
(ペースが速い)
そう直感したからだ。
山中と兎田は先頭の三浦について行く。
関は後ろの集団だ。
そしてあっという間に1周を通過した。その時間わずか1分2秒。これはハイペースすぎる、しかし先頭の三浦は勿論、山中、兎田、角南の他に2人ついている。
これにも危機感を持ったのか関が少しペースを上げ追いつこうとする。差は縮まらない。
600mを通過してからやっとペースが落ち着いた。しかしついて行ったほとんどの者が息を切らしている。
関も少しずつ追いついてきている。
そして2周を通過した。通過タイム2分14秒。
そして1000mを通過した時、山中が落ちた。通過タイムは2分50秒。三浦はこのまま先頭のままで行きたいと思っているのだが、体が言うことを聞かない。徐々にペースが落ちて行く。そこで来たのが角南だ。凄いスピードだまるで100mを走っているよう、角南の周りで走っている者は皆そう感じた。そこに兎田がつく、それに続いてようやく追いついた関もつく。
しかし関は追いついたばかりで疲れている。
そして30秒ほどだろうか3週を通過した。
通過タイムは3分25秒。
もはや先頭は3人しかいない。少し離れて山中がいるがその差は5秒とこのスピードのままでは追いつきそうではない。
残りは200m関は特殊な呼吸法で少し余裕を持っていた。特殊な呼吸法とは水泳の練習の際よく使う呼吸法でロウソクの火を消すイメージで息を吐き、自然と一体化するイメージで吸うと言った呼吸法だ。
この呼吸法があったお陰で通信の時は乗り越えられた。
100mを通過した時関が仕掛ける。
が、そこで先頭を譲ろうとはしない角南。これこそまさに100mを全力で走る様だった。
13秒程だ、1500mのラスト100mの走りではない。そのまま1位角南、2位関、3位兎田という結果に終わった。
その他の結果タイムは以下の通り
角南4分15秒 関17秒 兎田20秒 三浦23秒 山中23秒…
この時上位3人が中学記録を持っている村中翔〔ムラナカカケル〕の大会記録を上回っていた。
村中 翔_。
松下東〔ショウカヒガシ〕中学校、身長162㎝。
野球だった彼は陸上(長距離)を始めた。
中2の時の選手権の記録は4分12秒で優勝したが共通でも2位になれたと言う素晴らしい記録を出した。ちなみにその時の共通の優勝は兎田の兄だった。
3000mは8分57秒で優勝さらに3 5 7 8位に2年生がいたと言うまさに維新革命の時代と言われていた。
3年生の中国大会の際3分58秒で大会記録さらにその種目は3 4位も山口で3000mも優勝はできなかったが2 3 4位を山口がとっていた。
全中ではトップと0.09秒差で2位となったがそれでも素晴らしい結果だったと言える。
そんな村中翔の大会記録を破ったこの上位3人。この時全国の陸上界が湧いた。
シティライトスタジアム_。
イライラの元凶河口がさっき行っていたショップに関、山中、兎田は行く。3人とも結果が良かったのでもうイライラはない。ショップにはTシャツは勿論手袋、バトン、ブーメラン、ジャベリックスロー等々色々あった。
Tシャツは日本地図が点が重なりあって描かれておりなんやら英語で書かれいる。
他にも種類はあったが3人はこれを買った。値段は1500円。1500mを走った3人にとってこのTシャツは何かありそうな気がした。
その後、3人は周りで遊び、表彰式を受けて別れた。
兎田は2年の入江に同行し、山中は取り敢えず山口の陣地に戻った。関は河原と出くわし一緒に帰ることにした。バスの移動といっても少し時間はかかる。なので2人は関がはまっていた映画TECTを見ることにした。
この映画は後日投稿される予定で魔法の世界を舞台にした物語だ。投稿をしたらまたこの物語で宣伝するだそうです。
そして2人はホテルに着いた。関は部屋に戻っても誰もいないので河原の部屋に行くことにした。河原の部屋には試合を終えて1人戻っているらしい。
河原の部屋は707号室だ。
河原が部屋の扉を開けて入ってみると
『うーたんも元気元気♪』
なんとそこには真顔で教育テレビを見ている中学生がいた。
思わず笑みをこぼしてしまった。
そうそこにいるのは河口だった。
本来なら藤光があるはずなのだがまぁ面白いからそこは気にしていない。
河口はこちらに気付いていない。そのまま関は動画を撮って黒歴史を残しておいた。まぁ存在自体が黒歴史なんだろうけど…。
これは決していじめではない。本人が自分から求めてきているのだ。
そうしてこの夏1番のスクープ動画が撮れたのだ。
バス_。
中国大会の2日目が終わり帰っている関たち。
皆疲れて寝ている。今回は充電がバッチリだと言って喜んでいた山中も寝ていた。
今回の大会の結果は男子総合2位、女子総合3位、総合2位となった山口。全体的には良かったのだが、1年の100mと四種がダメだった。
しかしいい思い出となったこの中国大会、また3人で行こうと山中、兎田と誓いあった。まぁ、しかしこの誓いは叶う事は無かったというのはまだ先の話となる。
夕食をとるため、サービスエリアに止まった。
時刻は21時。大会が終わったのが5時だったので後1時間30分程で着く予定だ。
「うわぁぁ最悪だぁぁ」
そう声がして行ってみるとそこには山中がいた。
話を聞いてみるとどうやら携帯の電源をつけっぱなしにしていて後13%となっているらしいなんて減りの早い事だ。関はそう思いながらも山中を慰める。そこに河口も入ってきたが関は追い払った。てかなんでここにいるのか分からない。何処までもムカつく奴だ。
夕食をとりおえ、バスで1時間ちょっと過ごしていたら新山口駅に着いた。
山中は途中携帯が強制シャットダウンしたがそのあとは寝ていて特に困ってはいなかった。
そうして関たちの楽しい楽しい中国大会は終わった。
恋夢中、部室_。
「おい、1年集まれ」
勿論堀川が言っている。
この台詞を何回聞いたのやら。
「お前ら後350文字しかない。ここで出来ること、なんでもいいからしろ」
なんて無茶な事を言うのだ。てっきり関は中国大会の結果を祝ってくれるのかと思っていた。山中も同様だ、少しばかり表情にそれが出ていたので関が山中の前に入った。
皆んなは考えているが何も出てこない。そうやって無言が続いていると関が口を動かした。
「惣代久しぶりの登場だ」
「あん?」
何故か片方の目を細めて怒った様な声で言ってくる惣代
「鶏のモノマネだ‼︎」
そう言うと惣代は怒って関を追いかけ回す。
それに合わせて関は
コケっコケコケ、コッケゴッコー
そうやっているうちにどんどんと文字数は減っていく。
とうとう関が惣代に捕まったところで文字数が切れてしまった。
惣代は関をボコボコに出来ずただ捕まえるだけになってしまったのであった。