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残すはたった42キロ。  作者: 高梨恋夢
天才ルーキー達
1/7

愉快で最強ルーキー

「さぁ始まりました。福岡国際マラソン。今回注目なのがやはりカンザスプロジェクトの上村選手ですね。」

「そうですね。今話題の…」

このマラソンを見て俺は思った。日本人長距離界においてトップと戦うのは今となっては無理だと思っている人が多いと思う。しかし俺はこの上村選手の3位という結果、走りに希望を持ってしまった。


恋夢中学校、5月_。

部活入部の日はゴールデンウィーク終了後の今日。

関 龍之介〔セキリュウノスケ〕、157㎝、キツネ顔。

山中 浩二〔ヤマナカコウジ〕、156㎝、普通の顔。

今年の新入部員はこの2人。

普通の中学校では少ないだろう。しかしこの学校の長距離の新入部員は毎年2人と決まっているのだ不思議なことに。

初めての部活動ということで授業終わりにすかさず部室にダッシュする1人の男。

バンッ。

「今日からよろしくお願いしまーす」

扉を思いっきり開けて大きな声で挨拶をしたがまだ誰もいなかった。


しばらくすると

「やぁ、関くん。今日からよろしくね」

後ろからそう話しかけてきたのは2年生の西原 大輔〔ニシハラダイスケ〕先輩だ。全体的に細め背は154㎝程くらいだ。

西原先輩はそう言って自分の名前が書かれたロッカーに荷物を入れる。

「あー、そいえばまだロッカーないだろうから名前がないところにテキトーに入れてていいよ」

そう言われて取り敢えず荷物を入れて体操服に着替えた。

そうしているうちに次々と部員が入ってきた。関と同じ新入部員も。

「よろしく」

そう言って挨拶してきたのは山中。関に続き2人目の長距離。

それに続けて挨拶してきたのは河口 雅也〔カワグチマサヤ〕と惣代 鶏太〔ソウダイケイタ〕。

河口、163㎝、縦長い顔、目が細い。惣代、160㎝、鶏顔。

こうして今年の新入部員は全員集まった。


恋夢中学校、グランド_。

「気をつけー礼」

その号令の跡に一礼してお願いますの声がグランド中に聞こえる。

「はい、えーと今日から新入部員が入ってくるからきちんと教えてあげるようにしなさい」

と陸上部顧問の山田 秀子〔ヤマダヒデコ〕先生が言う。

この学校は今までに好成績を出した選手はいない。しかし挨拶や動きだけはきちんとしている。それもこの山田秀子の蛇のような鋭い目つきとオーラで部員たちは制圧されている。実際関たちも出会って数分しかたたないのにもう山田秀子先生の圧力に負けている。

また部員たちから秀子と呼ばれている。

関と山中は幸運なことに今年から副顧問になった平川〔ヒラカワ〕先生が長距離を担当することになったので少しだけ秀子の支配下から逃れられた。


「どうですか、長距離の部員は」

「結構いいですよ。今年は中国大会は確実に行けます」

「山中浩二ですか?」

「そうですね、それともう1人面白いのがいますよ」

と長距離の様子を見てみると新入部員関がいない。

「おーい、関はどうした」

「あ、水泳に行きました」

どうやら関は水泳もやっていたらしい。

成績は全国大会出場に山口県の代表にも選ばれているらしい。

(やっぱり山中浩二だけかな、今年は…)

そう思った平川先生であった。


5月31日、部室_。

「おい1年生、集まれ。」

そう言われて集まる1年生。

1年生を呼んだのは2年生の堀川 翼〔ホリカワツバサ〕だ。

「来週の土曜日、お前たちは中学初めての試合が控えている。そしてここ恋夢中は毎年1年生の中で男女1人ずつくじ引きで選ぶ…」

と堀川先輩は1年生に説明していく。

どうやらその選ばれた2人はその試合の日に1日デートをし試合に出なければならないらしい。選び方はくじ引きだそうだ。


説明を聞いてふと惣代が1時間前のことを思い出す。


「さぁ、みんなくじ引きするよー。せーっの。」

女子たちはみんな嬉しそうな顔をする。

そしてしばらく惣代が見ていると1人だけ暗い顔をしている奴を見つけた。

長距離のわりには太めの体型、徳重〔トクシゲ〕だった。


その時は何をしているのか分からなかった惣代だが今ようやく分かった。

みんなは女子1年のほとんどが可愛い子ばかりなので気合が入っている。

惣代は誰と一緒なのかはもう分かっている。

当たらないように願う惣代

「あたりの棒は先端が赤くなっている。ではいくぞせーっの。」

惣代の結果はと言うと、

(先端が赤い…)

思わずそう口に出しそうだったがあえて口に出さないように堪えた。

そしてこう言った

「よし。」


関はもちろん外れたみたいだ。

外れたからにはしょうがない

諦めて外れた棒を投げ捨てた。


「誰だ。当たったやつは」

「俺はダメだったわ」

山中、河口がそう答えた

「関はどうだったんだ」

「俺も外れだよ」

そう言って投げ捨てた棒を指差したが

指差した棒は先端が赤くなっていた。


「関があたりだな」

惣代がそう言った。






維新みらいふスタジアム_。

7時30分、集合ができ全員アップへと向かう。

そんな中2人だけが違う場所へて向かった。

「関はいいよなー」

「まさかあいつに当たるなんてな」

そう言うのは山中と河口だ。

しかし惣代はニヤニヤとしている。

「惣代どうした?」

「いや実はな…」

と山中たちに女子のあたりが徳重だった事を言う。

そしてそれを聞いた瞬間2人ともニヤケが止まらなくなった。

「まぁ、どんまいだな」

そう言ってアップに向かうのであった。


3日前のこと。

部室で着替えている女子たち。

そんな中、藤田 莉音〔フジタリオン〕に徳重が話しかける。

「あのさ私最近体調が悪くて今週末のデートに出れるかどうかわからないのよ」

「え、じゃ私に変わってよ」

話を割ってくる松岡 花梨〔マツオカカリン〕しかしそれをすぐさま断る徳重。

「莉音じゃなきゃ嫌だ」

「仕方がないな、この薬あげるならデートまでに治しな」

そう言って藤田は徳重に薬を渡す。

それを嫌そうに見つめる松岡。しかし藤田はそれを無視する。

「もしも、この薬でも治らなかったら莉音に権利を渡すね」

「それは期待できないね。だって効き目すごいもん」

ここまで説明していなかったがデート権は本人が体調不良、又は怪我等で行けれない場合のみ権利を本人が渡すことができる。

そして試合前日徳重は体調が回復したみたいだ。


ブルルルルル…

翌朝藤田の元に電話がかかってきた。


維新公園、プラネタリウム前_。

7時45分にここに集合と書かれている。

今の時刻7時40分、この公園は会場のすぐ近くにあるため車でにそんなに時間がかからないはずだ。

(おせぇーな)

そう思った時だった。

そこに藤田の姿が見えた。

藤田 莉音、身長156㎝、全体的に少し細め、鼻が高い。まぁ、可愛い方だ。

「えぇっとお前であってる?パートナーは」

「じゃ何しにここにきたと思う」

そうして2人はデートに行ったのである。

→番外編にて後日投稿


恋夢中、陣地_。

短距離が長距離よりも先にアップが終わり陣地へと戻ってきた。汗をかいた服を着替えて軽く股関節のストレッチを行う。惣代はトイレに向かっている。

すると着替え終わった女子たちが陣地に戻ってくる。惣代と女子がすれ違った時たしかにこう聞こえた。

「徳重は体調が治ったと思ったら本人がそれを喜びすぎて階段から落ちた。今日は怪我できていない」

惣代は少し漏らしてしまった…。


それから試合はどんどん進んでいく。それとともにデートもどんどん進んでいく。

「今頃何してっかなー関」

「まぁ、吠え面書いてることは間違いないな」

と山中と河口は笑いながらそう言うそれに合わせて惣代も苦笑いで返す。


15時20分、召集10分前_。

初めての試合で少し緊張する山中。

この大会は市の大会なので選手の人数は多くはないがやはり2、3年生の圧力が凄い。

1500mは基本小学生は走らないのでこの試合が初めてとなる。

色々なことがあって緊張している山中だがそこに関の姿が目に入ってきた。

デートから帰ってきたのだ。関はアップもしていないしかも相手は徳重で相当疲れているだろう。山中はそう思っていた。しかし関とともに姿を現したのは藤田だった。

藤田流 の姿を見た瞬間山中の緊張は消え去った。 しかしそれと引き換えに殺意が湧いた。

(惣代、殺す)

そうして召集が終わりスタート地点まで来たのであった。


組数は2組、山中と関は違う組だった。

スタート前の音楽が鳴り会場中に緊張が走る。1組目は関だ。

「オン、ユア、まーくん」

まるで狙ったのように思える言動。

しかしそんな事は集中している選手たちには関係なかった。

パンッ

スタートの合図がなって選手たちが走り出す。

関は積極的に先頭の方に行って走る。

関の走る姿はとても居心地が良くない。肩は上がり顔は横になっている。非常に変な走りだ。

しかしそれとは裏腹に関は先頭を保ち続けている。800m、1200m、ラスト250mまで来たところで3年生の襲撃が来た。志智 秀人〔シチヒデト〕先輩、山中 光一〔ヤマナカコウイチ〕先輩他2名ほどだろうか。

関は抜かれるだけ抜かれて何も対抗できていない。結局結果は4分40秒だった。

関の頭の中では後悔がいっぱいだった。

そして今後の課題等色々と見つかった。しかし頭の中と違って表情は明るい。関は陸上を楽しんでいる。


一方関と同じく後悔しているものが1人。

平川先生だ。この気温が高い中体操服で走らせた事。せめて仮のユニホームを着らせてあげたり良かったと。

この年以降ユニホームは貸すようにした平川先生。それとともに現1年生からの愚痴もそのたんびに聞く羽目になった。


1500m、結果_。

志智 秀人…4分30秒

山中 光一…4分33秒

山中 浩二…4分45秒





恋夢スイミングスクール_。

競泳もやっている関、このところ部活の後の練習でかなり疲れているようだ。



初めての試合があって2週間がたとうとする。

先週、県記録会があってベストを出した関と山中記録を言うと下記の通りだ。

関…4分35秒95、山中…4分39秒4

危うくラスト1周で山中に抜かれそうだった関、前回の反省を生かして流しの本数を増やしたのが助け舟となった。そう危なかった試合だったが来週には県選手権がある。

タイム的に言うと試合に向けて順調に進んでいる。しかし関、山中の県ランキングは4位と5位。その前には村上〔ムラカミ〕幹部(カンベ〕兎田〔トダ〕がいる。第1目標の中国大会に出るにはこの3人の中の1人を抜かさなければならない。

平川先生はそんな事を思いながら関たちに期待をしている。


しかしその期待と裏腹に関はある人を毎日からかっている。それが志智先輩だ。なぜそう言う風になったのかはわからない。

「囚われているぞ」

高跳びのマットに向かってそう言っている。

そこには寝っ転がった志智先輩がいる。

「おい、こらぶっ殺すぞ」

そう言って関を追いかけ回す志智先輩、すかさず逃げる関。追いつかないので志智先輩は関のバックを踏みつけていく。

そう関は毎日のように志智先輩をゴキブリ扱いしている。ちなみに囚われているとは志智先輩と言うとゴキブリがマットと言うホイホイに囚われたと言う意味だ。

そんなこんなで今日も一日が過ぎていく。


県選手権当日_。

県選手権となると前回みたいに一緒の枠組みではなく学年別で別れる。そしてこの試合で標準タイムをきると全国大会出場できるようになる。


まずは3000mからだ。志智先輩の記録は9分35秒、まぁなんとも言えないタイムだ。


そして1500m共通予選。

注目は岐大洋中の田中 大和〔タナカヤマト〕だ。昨日の3000mでも8分58秒13と全国標準を切っている。

パンッ

スタートしたみたいだ。

予選だからほとんどのものが余裕を持ってのゴール。しかしタイムは関たちと比べると当然速かった。先頭は4分14秒、田中大和も5位通過だったが21秒でゴールしている。その他結果が下記の通りだ


山中先輩11位25秒

志智先輩15位29秒


志智先輩は昨日の3000mの疲れが少し残っていたみたいだ。そして決勝は今日の午後からなので少し心配されるところだ。


1500mタイムレース_。

時刻は14時30分。

関が競技場の周りを走っていると後ろから兎田がやってきた。彼とは小学生の時からの友達だ。

「最近調子どう?」

「まぁ、上がって来てるよ、水泳も県代表選ばれたし」

ちょっとばかり自慢を入れてくる関。こう言う所が他人から嫌われやすい所なのだろうか。

「ランキング2位の幹部、絶対2人で抜かすぞ」

「おう、とりあえず前回の記録会は違う組だったから負けたけど今回は同じ組だからな絶対負けねぇー」

そう張り切る関、そして心の中では兎田も抜かす気満々でいる。


そして召集時間が来た。今回1年1500mは3組、前から持ちタイムが遅い順となっている。

関の組みには村上、幹部、兎田、山中がいてその5名が30秒台の者たちだ。


「よう、お前が関か」

そう話しかけてきたのは幹部だった。

「せいぜいペースメーカー頼むぜ」

そう笑いながら言って去って言った。

いきなり過ぎるので何も反応できなかった関

「君、ランシャツはちゃんとランパンに入れなさい」

そして係員の人に注意される幹部であった。


時刻は15時35分になった。

1組目、2組目が順々にスタートしていく。タイムはそこそこだ。そしてようやく3組目のスタートだ。

「オン、ユア、マーク」

この号令とともに選手たちに緊張が走る。

パンッ

スタートした。平川先生はすかさずストップウォッチでタイムを計測する。

最初の200mの入りは32秒。いい出だしだ。関はいつも通り先頭へ、山中は少し下がって様子を見ている。

1000m地点、先頭集団関、村上、幹部少し下がって兎田、山中。そして通過タイムが3分丁度。

そのまま順位は変わらず1200mまできた。そこで村上が上げるそれについて行く幹部、関そしていつのまにか追いついてきている兎田。

ラスト200m村上とはだいぶ差が開いてしまった。

勝負は幹部と関、兎田の2位争い。ラスト50m、3人の争いはまだ続いている。

しかしそこで3人が予想だにしなかった出来事が起こった。

サッ

一瞬のことだった。なんと山中が前にいるのだ。

そのまま試合は終わり順位は村上、山中、幹部、兎田、関となってしまった。さらにタイムはと言うと

村上25秒、山中28秒、幹部30秒、兎田30秒、関31秒だ。

村上、山中は大会新。

誰が予想しただろうか。これで中国大会参加資格をかけた戦いにもう1人、山中が加わった。

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