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白い女  作者: 愛田美月
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第四章 母の影

 昼休憩だった。今日は雨が降っているため、昼ごはんは教室でとることになった。望は珍しく、父が作った弁当を持って来ていた。小学生以来かもしれない。中学に入ってからは、ずっと自分で弁当を作っていたから。そんな事を考えながら、父親作の玉子焼きを、ゆっくりとよく噛んで食べていた望に、一緒に食事をしている井上が声をかけた。

「なあ、吾桑はどう思う?」

「玉子焼きが、美味しいなって思ってるけど?」

 そう返すと、あからさまに溜息をつかれた。望は疲れたように肩を落とす井上から、その横で、紙パックのジュースを飲んでいる国立に視線を変えた。

「国立見て。井上もう弁当食べ終わってるよ」

 少しぼうっとしていた間に、井上の前に置かれた弁当箱が空になっていた。望は黒板の上にある、壁掛け時計を見た。食べ始めてから、十分くらいしかたっていない。望の弁当箱の倍はありそうな大きな弁当箱なのに。そう思って感心して出た言葉が、さっきの言葉なのだ。国立は望に苦笑を返した。

「見てたよ。食ってるところも、食い終わったところも。ちなみに、俺も食い終わった」

 そう言って国立は、弁当箱の入った袋を持ち上げた。

「ふーん。でも、今日は僕のお弁当あげないからね。今日は父さんが作ってくれたから」

 言いながら望は、弁当箱を手で隠すようにする。すると、国立が眼鏡の奥の目を見開いた。

「まじかよ。あのでかいなりで料理なんて作れるのか、おじさん。この、タコさんウインナーもおじさんが作ったって言うのかよ」

 望の弁当箱の中に入っているウインナーを指差しながら、国立が笑いを堪えているように見えるのは気のせいだろうか。

「なあ、俺の話は置き去りかよ」

 井上が怒ったように声を上げた。国立が、井上の肩に手をやる。

「しょうがないだろう。吾桑はまた聞いてなかったんだから」

「しょうがなくないだろ。人の話はきちんと聞くべきだ。ここは友達として、ちゃんと注意すべきだろ」

 真面目腐った顔で、井上が国立を見る。国立は肩を竦めた。

「聞えてたよ」

 望は、井上と国立に聞えるように声を上げた。井上が怪訝そうな表情になる。

「何が」

「井上と国立が話してたこと。アイドルのモモカちゃんと、ユイカちゃんはどっちが可愛いかでしょう。揉めてたよね。井上がモモカちゃん派で、国立がユイカちゃん派」

 残り一個になった玉子焼きを箸で割りながら言われた言葉に、二人は驚きを露にした。井上は睨むように望を見据える。

「じゃあ何でさっきの質問の答えが、玉子焼きの話になるんだよ」

「だって井上、吾桑はどう思うって聞いたから、そのとき思ってたことを言ったんだよ。この玉子焼き本当に美味しいんだよね。父さん玉子焼きだけは、作るの上手いんだよ。僕には出せない味だよ、うん」

「おい、おまえ今だけってとこ妙に強調しただろう」

 国立のつっこみを聞いているのかいないのか、望は最後に残った玉子焼きを口に入れて、ご馳走様でしたと手を合わせた。

 井上はもう怒る気力をなくしたのか、国立と顔を見合わせて溜息をついた。

「ちょっと、吾桑。あんた、ちゃんと松島先生のとこお礼いったの?」

 桐野の声が背後から聞こえ、望は顔を上向け、背を後ろへ逸らした。かろうじて、桐野の顔が見える。逆さだが。

「キモいからやめて」

 言われて、望は身体を起こした。改めてイスに座ったまま、後ろに身体を捻った。

「吾桑。松島先生にお礼いってないんでしょう? 私が付き合ってあげるから、行きましょう」

 言いながら、桐野は強引に望の腕を掴んでイスから立ち上がらせる。そのまま、教室の入り口へ向かって引き摺られるように歩くはめになった。望は国立と井上を振り返る。

「いってらっしゃーい」

 二人同時に口を開いて、手を振られた。井上も、国立もどこかにやけた表情をしている。なぜ二人がそんな表情をしているのか。望には理解出来なかった。




 一階の職員室に行ったが、松島先生はいなかった。ちょうど近くにいた担任に、松島先生は北校舎の四階にある国語準備室にいると教えてもらった。望たちは北校舎へ渡り、四階まで上がる。国語準備室と書かれたプレートのあるドアの前に立った。ドアをノックしてから、望はドアノブに手をかけた。

「失礼します」

 しばらく待ったが返事がなかったので、そっとドアを開く。

「誰もいないわね」

 望の後ろから部屋を覗き込んで、桐野が言った。桐野は望を押しのけるようにして部屋へ入ると、中を見回した。

「それにしてもきったない部屋ねぇ」

 望も部屋に入って、桐野の言葉に頷いた。確かに汚い。両脇の壁には棚が並べて置かれ、そこには資料集等の本が雑然と置かれていた。狭い準備室に無理やり真ん中に寄せ合うように置かれた机が五つ。机の上は例外なく散らかっていた。

「誰もいないし、教室戻ろうか」

「何言ってるのよ。少しくらい待ちましょうよ。誰もいない準備室に入れることなんて滅多にないんだし、それに、お礼を後にしたら、絶対に吾桑は忘れるもん。こういうことはさっさと済ませた方がいいの」

「……わかったよ」

 桐野には敵わない。桐野は望や国立と同じで、中学からの持ち上がり組みだ。しかも、中学三年間同じクラスで、高等部に入っても同じクラスになった。何だかんだと文句を言いながら人の世話をする桐野は、かなりの世話好きだと望は思っている。今回もその世話好きぶりを発揮しているのだろう。

 望がそんな事を考えている間に、桐野は一つ一つの机を興味深そうに見ていた。だが、一番奥の机の前に来たとき、何かに気づいたように立ち止まった。

「あ、ここが松島先生の机っぽいよ」

 そう言って、桐野は望を手招きする。

「どうして分かるの?」

 桐野の横へ立つと、桐野は机の上に放置された教科書を指差した。裏表紙に松島要一と書いてある。なるほどと頷いて机を眺めてみる。雑然とノートや本が置かれた机の上に半ば埋もれるように、写真が飾られているのが目に入った。そこには松島先生と、女性が並んで写っている。

「彼女かな」

 写真を見て思わず出た言葉に、桐野が反応を示した。

「ああ、学園長の娘でしょ。知らないの? 松島先生、もうすぐ学園長の娘さんと結婚するのよ。松島先生ってカッコいいから結構狙ってる生徒多かったのに。残念」

「へえ、そうなんだ」

 抑揚のない声で、望は相槌をうった。なるほど。やけに熱心にお礼に行こうと誘うわけだ。桐野はかっこいいという噂の先生を間近で見たかったに違いない。ただ、世話好き振りを発揮しただけではなかったのか。望がそう思った時だった。桐野が声を上げた。

「あれ、これ何かしら」

 名前の書かれた教科書の下から、新聞記事の切り抜きのようなものが見えていた。色が少し黄ばんでいるので、古いものだと思われる。桐野はそれを教科書の下から抜き取ると、記事に目を落とした。早い段階で、桐野の眉間に皺がよった。どんな記事なのだろう。望が興味を覚えたとき、桐野が望に話しかけた。

「ねえ、吾桑って、下の名前何だっけ」

「……酷い。中学三年間同じクラスだったのに、まだ覚えてないんだね」

 悲しげな表情をして見せると、桐野が言葉に詰まった。

「うっ、そ、そんな顔しなくてもいいじゃない」

「僕はちゃんと覚えてるのにー。酷いよ、理香子ちゃん」

 顔を手で覆って泣きまねをしてみせると、桐野に頭を叩かれた。顔を上げて桐野を見ると、顔を赤くして望を睨んでいた。

「ちょっと、勝手に下の名前呼ばないでよね。もう、何なのよ」

 桐野は言いながら、今度は望の肩を叩く。

「痛いなぁ。何も殴る事ないのに。理香子ちゃんってば、乱暴なんだから」

 叩かれた肩をなでながら、恨めしげに桐野を見やる。桐野は胸の前で握りこぶしを作って、望を睨んだ。望は桐野をからかうのをやめることにする。これ以上叩かれてはたまらない。

「望だよ。下の名前」

 そう言うと、桐野の表情が曇った。疑問に思う間もなく、桐野が望に新聞記事の切り抜きを差し出した。何気なく受け取った望に、桐野が言った。

「これ、この記事に載ってる親子って、あんたのことじゃない?」

 望は戸惑いながら、記事に目をやった。新聞に載るようなことしたことないけど。そう思いながら目にした記事の見出しに、息を飲んだ。

『親子轢き逃げ犯、自殺か? 崖から転落死』

 轢き逃げ事故の記事のようだった。だが、そんな事故と望にどんな関係があるというのか。そう思うが、望は心臓の鼓動が早まるのを感じた。

 ゆっくりと、目で記事を追う。

『八日未明。坂崎市の路上で、轢き逃げされた女性と子どもが発見された。発見されたのは、坂崎市在住の吾桑咲子さん(二十六)と息子の望くん(六)と判明。咲子さんは、重体。息子の望くんは全治三ヶ月の重傷を負った。坂崎署は、十三日。ひき逃げ事故の同日。崖から転落死した人物が乗っていたと思われる車両が、轢き逃げをした車両である可能性が極めて高いと発表。同署は、轢き逃げをした犯人が思い余って自殺したのではないかとの見方を強めている……』

「何、これ……」

 記事に目を落としたまま、呟いた。確かに、同じ名前だ。事故に遭った子どもの名前は吾桑望。望と同姓同名だ。この記事は十年前のものなのだろうか。そんな疑問が頭を過ぎる。新聞紙は確かに黄ばんいる。でも、そんなことあるわけがない。ただ、同じ名前だってだけだ。そう思うのに、どこか否定しきれない自分がいた。何かが引っかかる。そう、今朝方見たあの夢。豪雨の中に、一筋の光。その光を車のヘッドライトだと思ったのではなかったか? そして、その光の手前にあった黒い塊は、もしかしたら、轢かれた自分の母親だったのではないだろうか。

 望は無意識に口元に手をやっていた。だが、そんな事があればきっと憶えている。こんな事故なんて記憶にない。記憶にないのだ。

「あ、吾桑。大丈夫? 顔色悪いけど。また気分悪くなった? 倒れたりしないでよ」

 望の肩を掴んだ桐野が声を掛けた。望は我に返ったように、桐野を見る。

「ごめん。ビックリして、これ、僕のことなのかな」

「そ、そんなの分からないわよ。憶えてないの? 六歳くらいだったら、憶えてるでしょう」

 そんなこと言われても、分からない。混乱する望の耳に、ドアの開く音が聞えた。驚いて入り口に目を向けると、教師の松島が、驚いたようにこちらを見ていた。

「おまえたち、こんな所で何をやってるんだ」

 剣呑な表情で問う松島に、桐野が無理やり笑顔をつくってみせた。

「せ、先生を待ってたんです。私達」

 桐野が望に、そうだよねと同意を求めたが、望はそれに頷く事が出来なかった。手の中にある新聞記事のことが気になっていたのだ。望はまっすぐ、松島を見詰めた。

 望に見つめられた松島が、気おされたように一瞬目を逸らした。

 桐野は、望と松島を見比べた後、焦ったようにこう言った。

「あ、あの、先生。彼がその、えっと、お、お礼。そう、お礼を言いたくて。この間倒れた時、先生に保健室まで連れて行ってもらったお礼です。ほら吾桑。ちゃんとお礼言いなさいよ」

 強い力で、肩を叩かれ望は一瞬顔を顰めて桐野を見た。だが、桐野に文句を言うことなく、松島に向かって口を開いた。

「この間は、ありがとうございました」

 そう言って頭を下げる。松島は、その言葉に我に返ったように声を上げた。

「あ、ああ。身体の調子はどうなんだ?」

 心なしか松島の顔から血の気が引いているように見える。望の気のせいなのだろか。

「問題ありません。でも、気になる事があるんです。先生。先生と僕は以前どこかでお会いしたことがありますか?」

 望が昨日倒れる前に覚えた、既視感に似たあの感覚。いつかどこかで会っている。そんな気がするのに、思い出せない。また、頭が痛くなりそうだった。しかし、ここで倒れてしまっては、いつまでたっても聞けずじまいだ。

 松島は答えない。黙って、望を見ている。望は持っていた新聞記事の切り抜きを、松島に見せるように突き出した。

「これ、先生の机の上にありました。なんで、こんな記事が先生に机にあったんですか? これ、この記事に載ってる車に轢かれた子どもって、僕のことですよね」

 最後は口調が荒くなった。桐野は、望の腕を掴んで軽く引っ張った。

「やめなさいよ。吾桑。これじゃあ、お礼じゃなくて、喧嘩売ってるように聞こえるよ。相手は先生なんだから」

 小声で、嗜めるように言う桐野の腕を振り払って、望はまっすぐ松島を見詰める。松島は軽く息をつくと、望たちに向かって歩き出した。望はつい、後退りしようとしたが、桐野がいたため出来なかった。松島は、人の良さそうに見える笑みを浮かべ、望の前へ来ると、望が手にしていた新聞記事を取り上げた。

「勝手に人の机の上にあるものを触るのは、感心しないな」

 そう言いながら、二人を見る。

「す、すみません先生。最初にその記事見つけたの私なんです。つい、好奇心に負けて」

「僕は、そんなこと聞いてるんじゃありません。先生と僕の関係と、その事故のことが聞きたいんです」

 冷や汗をかいていた。なぜだか、松島が怖い。それでも、望は松島を睨むように見上げた。松島は苦笑を漏らした。

「そんな風に言うってことは、君は先生のこと、憶えてないんだね」

 望は素直に頷いた。記憶にはない。ただ、どこかで会っているような気がするだけだ。

「お、憶えていません。会ったことがあるんですか」

 松島は新聞記事を机の上に置くと口を開いた。

「いや、会ったといえるほど顔をあわせてない。君が憶えてないのも無理はないな。先生は、君のお母さんのお葬式に出席したんだ。……この記事、読んだんだな?」

 松島は視線を新聞の切り抜きにおいて問うた。松島の問いに、望は頷いた。それに頷き返して、松島は言った。

「この記事に書かれている、崖から転落した人物が乗っていた車……これは先生の車なんだ」

「え?」

 桐野が驚いた様に声を上げた。それを気にした風もなく、松島は淡々と続ける。

「君達親子をひき逃げしたのは、先生の友人だった……」

 桐野が息を飲んだ音が、望の耳に入った。やけにその音が近く感じたのは、桐野が望の腕を掴んだまま、望に身体を寄せいていたからだろう。望は、松島の言葉の続きを待った。

「先生は、友人に車を貸したんだよ。友人は車を返そうと、先生の家に来る途中で、君と君のお母さんを跳ねてしまった。小心な奴だったからな。その友人は、そのまま現場を立ち去って、自殺の名所って呼ばれている崖から飛び降りたんだ……」

「……」

 松島の告白に、望は何も言うことが出来なかった。どうしていいか分からない。何より、自分はなぜ、その事故のことを、そして、母親のことを忘れてしまっているのだろう。そんなことがあったなら、強く記憶に残っていていいはずなのに。父はこのことを言っていたのだろうか? 思い出さなくていい。そう言っていたのはこのことなのか? 思い出さなくていいわけないじゃないか。こんな大事なこと、忘れていたままでいいわけがないじゃないか。

「あの日、いや、そもそもアイツに車を貸さなければ、あんな事故は起きなかった。悔やんだよ。アイツに車を貸しさえしなければ、アイツの人生も、君達親子の人生も、もっと違った形になったんじゃないかって……」

 そう言って、うなだれた松島に、望ではなく桐野が声をかけた。

「先生。先生がそんな風に思うことないですよ。先生は悪くないです。そんな風に思うのはおかしいと思います。そうよね、吾桑」

 呼ばれて、望はいつの間にか俯けてしまっていた顔を上げた。

「そう、です。先生は悪くないです。教えてくださってありがとうございました」

 そう言って、望は力なく頭を下げた。

「僕、どうしてだか、事故の記憶がなくて、母親のことも、事故のことも全く憶えてないんです。どうしてだろう。酷い子どもですよね」

 つい、愚痴めいたことを言ってしまった。松島は、望の肩に手を置いて、口を開く。

「君が記憶喪失だと言うことは、君のお父さんから聞いていたよ。余程事故のことがショックだったんだな。気に病む必要はないよ、辛い事は忘れてしまった方がいい」

「でも、母親のことです」

 つい、また声を荒げてしまった。望は松島にすいませんと頭を下げてから、部屋を出て行こうとした。桐野が慌てて追いかける。

「ちょっと、吾桑」

 声を掛けられたからではないが、望はドアの前で立ち止まり、松島を振り返った。

「先生。僕とぶつかった後、なぜ、驚いた顔したんですか?」

 そう聞いたのは、不意に思い出したからだ。松島が驚いた顔をして、なぜここに、と言ったのを。松島は白い女が見えていたのではないかと思ったことを。

「それは、君がお母さんとそっくりだったからだよ」

 予想外のことを言われ、望は面食らった。松島は続ける。

「遺影に写っていた君のお母さんの顔と、君がそっくりだったんだ。それで、事故のことを思い出した。君の名前を聞いて、さっきの新聞で、あの事故に遭った子どもかどうか確かめようと思って、新聞記事を持ってきたんだ」

「白い女を、見たわけではなかったんですね……」

「白い女? 何だそれは」

 松島が訝しげな声を上げた。

「白いワンピースを着た女性が、見えるんです。僕の周りに、たまに現れるんですよ。信じてくれないかもしれませんが、見えるんです。先生が驚いた顔をして僕を見た時、僕の背後にその白い女が立ってたんです。でも、先生には見えなかったんですね」

 少し落胆し、望は松島に向かって頭を下げると、今度こそ踵を返して部屋を出て行った。松島の反応を見たいとは思わなかった。どうせ、頭がおかしい奴だと思われているに違いない。それでも良かった。ただ、なんとなく言いたかったのだ。あの白い女のことを。

 桐野が後ろから、待ちなさいよと言っている声が聞こえた。だが、立ち止まろうとはしなかった。頭の中がごちゃごちゃだ。白い女のこともそうだが、母親のことも、事故のことも。何も分からない。憶えていない。母親が死んでいたなんて。父が母のことを口にしないのは、余程酷い別れ方をしたからだと思っていた。きっと、どこかで母は生きていると、何となくそう思っていたのに。

 望はやるせない気分で、廊下を歩き続けた。

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