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夕暮れの真実
ずっと昔に書いた作品です。最初と最後での場面の全然違う感じ方に快感を得て頂けたらと思います。
ゆっくりと時間が流れる。空間を切り取ったかのようなその瞬間が、永遠にも感じられる。窓の外からは夕暮れの青紫色の空が、この部屋を覗く。足元の真っ白だった絨毯は、綺麗な真紅に染まる。それは未だかつて見たこともないほどの純粋な赤。その絨毯の上に立つ僕は有名な俳優にでもなったかのようだ。この部屋の数々のトロフィーや賞状も、それを後押ししている。もし、俳優ならここはひとつ、心を押し潰し、目の前の2つの死体を乗り越えて
「よくも、、、よくも、、、両親を!!」
なんて言いながら、それ、に向かっていけただろうと思う。しかし、これは紛れもなく現実であり目の前には両親の死体がある。これを超えていくことすら僕にはままならないのだ。受け入れられない。ましてや、それ、を認知することなんてできやしない。いるはずがないのだから。それは、存在しない。一般的には存在しないことになっている。あり得ない。この世界に、いるはずがないのだ。悪魔なんてものは。