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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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5-2 ドワーフ国国王


薄暗い廊下を進み、大きな扉にたどり着いた。回りの物とは格段にレベルが違う扉。門番も二人いる。この扉の奥にドワーフ国の国王がいるのだろう。


俺は背筋を伸ばし、息を整える。テラス、ビビは相変わらずだが、マリアは顔色が悪い。馬車酔いなのか、緊張なのかはわからないが、マリアに声をかける。


「大丈夫か?」

「え、ええ。心配ないわ。」

「なら良い。」


俺は向きを扉に向ける。扉の前にいた門番が、その大きな扉をゆっくりと開ける。


「どうぞ、此方に。」


案内のムキムキの執事が、赤いカーペットの上を歩く。俺達はその後に続く。


「ここでお待ち下さい。」


執事がカーペットから外れ、脇に移動した。正面には空の王座。国王はまだいない。


俺達は片膝をつき、国王が現れるのを待った。


カツン、という足音が聞こえ、謁見場にいた皆が、頭を下げる。


「面を上げよ。」


その重低音の声色に、俺は顔を上げる。そこには、王座に座るドワーフの国王が鎮座していた。







見た目、ドワーフには見えなかった。座っていてもわかるその体躯は、高身長、鍛えられた筋肉、腹まで伸びた長い髭を携えていた。年齢的にも中年位。眼光鋭く此方を見下ろす。


「その者が、生命石を持ってきた者か。」


その声に俺が反応する。


「はい。交友関係にありますケルトより持って参りました。」

「ふむ。」


嘘はつかないよ。だってばれるもん。この場合は、正直に話したほうが得策だろう。


「大義である。では献上せよ。」

「はい。」


俺は、袋に入っている赤い石、生命石を執事に渡す。そのまま執事は国王に生命石を渡した。


「では、褒美を与える。何なりと申せ。」

「はい。では、この国の滞在許可を頂きたいです。」

「そんな事で良いのか?」

「はい。私はこのドワーフの国を見聞したく、ここまできました。ですので、滞在を許可して頂くだけで充分です。」

「ふむ。」

「申し上げますが、この生命石を見つけたのは、ケルト家に支える者でありまして、私は運んだだけに過ぎません。褒美をお考えならば、ケルト家とのより深い繁栄をお願い致します。」

「そうか。」


この発言に、回りに雑音が聞こえる。俺の手柄ではなく、ケルト家の手柄を主張し、あまつさえ国同士の政治に関与したからだ。だからと言って、嘘までつく必要はない。


「わかった。貴様の願い、聞き入れよう。」

「ありがとうございます。」

「ケルトの奴には後に手紙を送る。貴様等も滞在を許可しよう。詳しくは別の者が準備をする。遠慮なく希望を話せ。」

「はい。寛大なご配慮、ありがとうございます。」

「うむ。」


そう言って、王座から立ち上がる国王。俺は再び片膝をつく。皆も頭を下げる。


退室する国王。張り詰めた緊張が一気に緩む。


「では、私が皆様のお世話を致します。先ずは客室に戻りましょう。」

「はい、わかりました。」



俺達は謁見場を後にした。






「ふい~。」


俺はきつく締めた服を緩める。マリアも同じだ。いまだに城の中にいるのだが、緊張の糸が緩んでしまったのだ。こればかりは仕方がない。


執事が持ってきた水を一気に飲み干す。汗が今になって吹き出してきたからだ。


「大役お疲れ様でした。」


執事の言葉に、赤い石、生命石の運搬はかなりの所業だったのだろう。国王からも感謝されるし。


「いやなに、当然の事をしただけだ。」


俺は何もしていない。ただ運んだだけだ。


「国が一丸になって探していた生命石を見つけて頂いたのです。感謝の念が絶えません。」

「それはまず、王子様の全快してからにしましょう。」


俺の言葉に執事が目を見開く。目的は王子様の全快であり、生命石の発見ではない。


「そうでございますな。では、御用がある時は、何なりとお申し付け下さい。大体の物は揃えましょう。」


深々と礼をする執事。


「それは助かる。では、城の外に空き地が何処かにないか?ひろめの空き地なのだが。家が建てる位の。」

「空き地、ですか?大門の西側はまだ未開発ですので、空き地はあると思いますが、何をされるのですか?」


首を傾げる執事。俺達の希望を何に使うのかわからないからだろう。


「いやなに、大したことはないさ。マリア、動けるか?」

「ええ、大丈夫よ。」


先程よりは、顔色が戻ったマリア。移動も大丈夫だろう。


「んじゃ、その空き地に向かいますか。それと、今後この城に入るための通行書なんかはありますか?」

「はい、ではドワーフ国の紋章入りの書簡をお渡し致しますので、此方をお使い下さいませ。」

「ありがとう。大切に使わせて頂くよ。」


俺はその書簡を受け取り、テラス達を引き連れ、客室を離れる。執事には城の外までの案内をさせた。この広い城をただ歩いたら、迷子になってしまうからな。



そして、城の外に出る。レンとイトを連れてきてもらい、馬車に乗り込む。


「城の外は何かと不便もありましょう。御用がある場合は、私めに御連絡して下さいませ。」

「何から何までありがとう。何かあった場合はそうさせてもらうよ。」


一礼する執事と門番。俺はビビに合図し、大門の西に向かって発車した。








「錬金術師を呼べ!直ぐにでもエリクサーを作るのだ!」

「はっ!畏まりました。」


手を入った生命石を手に、ドワーフ国王が命令を出す。重度の病に伏せている王子を助けるためだ。

エリクサー、それは万病を治す不思議な薬。特別な材料が必要であり、生命石もその一つだ。


「生命石を持ってきたあ奴等は今何をしておる?」

「はい、城を出まして、大門の西に向かいました。」

「彼処はまだ未開発の地であったな。何をするつもりだ?」

「それは、わかりませぬ。」

「ふむ、監視はつけるべきか。ケルトに連なる者であっても、人は人。用心に越したことはないだろう。」

「では、いつものように。」

「うむ、誰かを奉公させよう。人選は任せる。」

「はい。畏まりました。」


ある一室に国王が入る。そこは王子の部屋。医師、執事、メイドと、頭を下げる。


「具合はどうだ?」

「変わりません。思わしくありません。」

「そうか。」


国王が息子の王子が寝るベッドに向かい、王子に語り始める。


「ギルガドグ。もう少しの辛抱だ。生命石は手に入った。後はエリクサーを作るだけだ。この病ももうすぐ治る。だがら、病に負けるでないぞ。」

「はい、父上。」


王子であるギルガドグは弱々しく国王の言葉に返事をする。息を鳴らし、苦しい呼吸を繰り返す。


「頑張るのだぞ。貴様を妻の後は追わせぬからな。」

「・・・はい。」

「後は、任せる。」

「はい。お任せ下さいませ。」



医師が答える。国王は部屋を後にする。後ろ髪を引かれる思いはあるだろうが、国王にはやらなければならないことが沢山ある。それを蔑ろにする事は出来ない。


「エリクサー完成を最優先で行え。」


この言葉に、後ろに控える者達が動き出した。



死なせはせん。絶対に死なせるものか!


拳を固く握り、国王は執務に戻るのだった。







西の空き地に到着した。流石に未開発の地だけあって、更地になっている。この地を拠点にするには些か都合が悪い。


急に小屋が出現し、そこに人が住むのだ。回りからは何と思われるか、想像に容易い。もう少し目立たない場所を探したいものだ。


西側を歩き、都合の良い場所を探す。そうすると、畑が見えてきた。小屋もある。この辺りなら、土地を借りても構わないだろう。


「この辺にするか?」

「はーい。」

「わかりました。」

「もう何処だって良いわよ。早く休みたいわ。」


無限保管から小屋を出す。回りの風景には馴染めない木造の建物。この辺りの家は、石作りが大半だった。もう正直、構わないだろう。


俺達が小屋と厩舎を出し、色々準備をしていると、一人のドワーフが此方に来た。


「ここは国が管理する土地だが、貴様達は何をやっているのか?」

「ああ、ここを暫く借りたいと思ってな。ちゃんと許可も得ている。問題はない。」


俺はそのドワーフに書簡を見せる。たちまちドワーフの顔色が変わり、俺達に対しての警戒心をと解いた。


「そうだったけ。許可をお持ちなら構わない。俺はバルバ。この辺りを管理する者だ。」

「ソーイチだ。此方は妻のテラス、ビビにマリアだ。」


ドワーフのバルバ。この西側の未開発の地の管理者のようだ。辺りは畑になっているが、代替えの地なのだろう。


「それで、この小屋はなんだ?木造の家なんて、直ぐに壊れそうだがな。」

「そうでもないさ。見た目はアレだが、中身は良いんだ。」

「まあいい。どうやって建てたかは知らないが、開発が決まったら撤去するからな。」

「その時は直ぐに撤去するさ。邪魔はしないからさ。」

「ならいい。俺はこの辺りで仕事をしているから、何かあったら声をかけてくれ。」

「そうさせてもらうよ。」


俺は厩舎にレンとイトを休ませ、世話を始める。テラスとビビは食事の準備を、マリアは今日は休みだ。ゆっくりと休んでもらいたい。


それにしても、ジオフロントか。なかなかに壮観だな。


神秘的な緑色の光に包まれているドワーフ国。光苔の光で回りを照らしているその光景に、俺は感動すらしていた。


今日は休みだ。ゆっくりと休んで明日から活動しよう。


レンとイトの世話も終わり、俺は風呂の準備をする。折角なので、紫水晶に吸わせた温泉を使おう。これで疲労を癒すのだ。


食事を済ませ、風呂に入る。一日の疲れを癒す。マリアがマッサージを所望したので、それに答える。


なかなかに色っぽい声を出すマリア。テラスとビビも羨ましそうに見ていたので、交代でマッサージをした。テラスとビビには必要ないが、それでもマッサージをする。


ちなみに、今日はお預けであり、テラスとビビから不評が出た。マリアが疲れているからな。今日はしっかりと休みたい。今日のところは勘弁して下さい。


皆で一緒に寝るためのベッドはケルトで購入していた。さて、柔らかい感触に包まれて、おやすみなさい。







「生命石が見つかったのか?」

「はい。国王は錬金術師を呼び出し、エリクサー完成の道程に入りました。」

「おもや、生命石がみつかるか。それで、完成の目処はたったのか?」

「いえ、まだ着手もしてはおりませんが、始まりましたら、完成には七日程になるでしょう。」

「ならば、やることは少しでも完成を遅らせる事だな。どんな手を使っても良い。邪魔をせよ。」

「了解致しました。」


一人、消える。


「このままいくかと思ったが、余計な邪魔が入ったな。だが計画に変更はない。このままギルガドグにはご退場してもらおう。」

「生命石を持ち込んだのは、ケルトに連なる者のようだ。」

「ちっ!忌々しいケルトめ!我等を傀儡にする元凶め!」

「まあよい。ギルガドグは風前の灯。少しでも完成の邪魔をしようではないか。」

「奴等はどうするのだ?この地に滞在するようだが?」

「放置で構わんだろう。ケルトの連なる者でも簡単に我々には辿り着けまい。」

「それもそうだな。」

「では、計画どうりに。」



闇の中で計画を進める男達は、静かに笑っていた。






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