5-1 ドワーフ自治国
久しぶりの投稿です。ドワーフ編頑張ります。
険しい山道を進む。それは多少危険な道程だ。道幅がわりと細く、馬車2台がギリギリの道幅。そして片方は崖がある。落ちたらひとたまりもない。舗装は不十分であり、ガタガタと荷台を揺らす。
「ゆっくりで構わない。慎重に行こう。」
「はい、わかりました。レンとイトも緊張しているみたいですし。」
ここで崖崩れなんて起こったら、馬車なんてひとたまりもないな。
俺は行者をするビビに話しかける。なるべく崖から離れて先に進む。幸い、この道を進んでいるのは俺達しかいないようだ。交通規制、ではないが、出入国が厳しい状態を保っているのが幸いしている。
慎重に馬車を道の真ん中を走らせる。
荷台は俺の改良が施され乗り心地は改善されてはいるが、それでも揺れは大きい。マリアはこの揺れに酔ってしまったようだ。席で項垂れている。
「もう少しで到着だから、頑張ってくれ。」
「・・・。」
無言で手を少しだけ挙げて了承するマリア。顔色は真っ青になっているので、あまり余裕はないのだろう。
「テラス、マリアをお願いして良いか?」
「はーい。」
マリアの横に座るテラス。完全に体を預け、項垂れるマリア。
「だいじょうぶ?」
(コクコク)
無言だが、少しは気を紛らわしたのだろう。暫くは大丈夫か?
マリアの馬車酔いには悪いが先に進もう。
★
ドワーフ国の大門が見えてきた。立派な大門。遠目から見てもわかる、それは10メートルは越える大きい金属の門だ。
「見えてきたぞ。ドワーフの国だ。」
先に見える大門に、皆が声をあげる。いや、マリアは半分死んでいるが、それでも小窓から見える大門を見て、安心したようだ。
「ドワーフの国に着いたら、先ずは休もう。マリアの体調が心配だからな。」
「あ、り、が、と。」
いよいよ余裕は無さそうだ。それでも、マリアは馬車の揺れに必死で対抗している。
「もうすぐ到着します。」
ビビの言葉に、俺は背筋を伸ばす。ようやく来たドワーフの国だ。楽しみにしていたのだから、気が逸る。
馬車は閉じた大門の前に到着し、一時馬車を止めた。
大門前には、二人の門番がいた。二人とも短身長であり、身体が太い。髭を生やし、槍を携えていた。
これがドワーフか。おとぎ話と一緒だな。
二人の門番はこちらの馬車に近寄り、声をかける。
「許可証を。」
「ああ、これだ。それとこれも。」
俺は許可証をと赤い石が入った袋を見せる。ケルト家の紋章入りだ。信用はあるだろう。
「こ、これは!」
ん?なんだ?赤い石を見て驚いているな。
「す、直ぐにお通しします。」
「どうした?」
「い、いえ、なんでもありません。おい!直ぐに国王様に報告を!」
なんだなんだ?えらく騒がしくなったな?
「こちらはお返し致します。直ぐに国王様に謁見して下さい。」
「?わかった。」
「今、案内者を寄越しますので、暫くお待ち下さい。」
俺は門番の言われるままに、許可証と袋を受け取り、待つ事にする。
暫くして、身なりの良いドワーフが俺の馬車に近寄ってきた。着ている服で判断するが、多分王様に支えている者だろう。遅い駆け足で此方に向かってくる。
「お待たせして申し訳ありません。では案内をさせて頂きます。宜しいですか?」
「あ、ああ。」
身なりの良いドワーフは行者席に座る。それを見て、ビビが馬車を進ませる。
大門の脇にあった小門をくぐる。まあ、流石にこの大門は開けないよな。というか、これどうやってこの大門を開けるんだ?これだけの大物、重量もあるだろう。うん、わからないな。
俺達はドワーフ自治国に入国した。
★
山を切り崩し、ジオフロント(山内空洞化)で国を作っているドワーフ自治国。射し込む日の光は少なく、隙間から見える程度。だが内部はそれほど暗くない。至る所に街灯があるからだろう。それでも、内部は暗い部類になるだろう。
だが俺は、この光景をゆっくりと見る余裕がなかった。
主要の大道、国王の城に向かう道は、舗装がなく荒れている為、また縦に横にと馬車が揺れる。
案内をするドワーフが何やら慌てていて、しまいには手綱を握ってしまい、馬車の速度を上げていたためだ。
「もう少しゆっくりでお願い。」
「きゃっ!」
「これは、少し危ないですね。」
「し、死ぬ・・・。」
大道を一直線に進む。馬車内は阿鼻叫喚の有り様ではあったが、どうにかこうにか、ドワーフ自治国の城にたどり着いた。
「あ痛たた。」
「おしりがいたい。」
「危ない操車でしたね。」
「・・・・・・。」
たどり着いた城の中に入城する。マリアが足元をふらふらになりながら、俺達の後ろを歩く。本当に限界かもしれないな。
「急いでいる所悪いが、少し休憩を挟んでくれ。妻の体調が回復する位は待てるだろう?」
「あ、いや、ですが!」
「そちらにも都合はあるだろうが、こちらも来たばかりだ。それに、妻の一人が体調不良だ。暫くは休ませたい。」
「あ、は、はい。では、先ずはこちらへどうぞ。」
案内をするドワーフを圧しきり、何とか休憩を得られた。
案内をされた部屋は客室だろう。やはり王家。客室も豪華な装いをしていた。
マリアをベッドに寝かせる。運ばれた水を飲み、一息つく。
「ご、ごめんね。」
「いや、いいさ。俺も少しだけ区切りが欲しかったから。」
「なら、良いんだけど。」
「先ずは休め。回復したら、王家に挨拶だからな。」
「うえ、やだなぁ。」
この流れだと、王家、しかも王様に会う事になるだろう。慌ただしい状態での謁見なんてしたくない。それも本音だ。
それにしても暗いな。いや、国全体が暗い。
緑色に光る光灯があるが、光量は乏しい。もう少し明るさが欲しい所だ。
それにしても、この光灯はなんだろう?火でもないし?
俺は光灯を覗くと、光る苔を見つけた。
光苔か。だから暗いんだな。
ドワーフ国の灯りなのだろうその光苔は、至る所にあった。少しだけ慣れてくれば、この明るさも幻想的に思えてくる。
さて、と。
俺は考える。
兎に角、案内をしたドワーフのあの慌てよう。門番もそうだ。この赤い石が原因だろう。
俺達にはわからないが、国が周知しているこの石は何だ?ロイド男爵はマリアには見せない方が良い、と言っていた。気にはなるが、それには従おう。こういう時のあいつの言葉は信用した方が良い。なら、どうするか?
ここは素直に聞くのが一番だな。
部屋にいるドワーフのメイドに声をかける。
「少々聞きたいのだが、我々はどの様な扱いで、謁見になるのか?」
「え?あの、えっと?」
困惑するメイドは、俺の質問が意味不明のようだ。
「そんなに畏まらなくていい。」
「あ、はい。来賓なので、粗相がないようにと、言い付けられています。」
「それは何故?」
「あ、あの、言っている意味がわかりませんが?」
これじゃ駄目か。なら、俺は無限保管から赤い石を取り出し見せた。
「この石はわかるか?」
「そ、その赤い石?えっ?あ!は、はい!生命石です!そうでしたか!」
「ん?そうでした?」
この言葉に引っ掛かりを覚える。やはりこの赤い石が起因のようだが。生命石か。なんか不穏な名前だな。
「そうでしたか!これで王子様も回復なさる筈です。ありがとうございます!」
王子様の回復?ふむ、何やらきな臭くなってきたな。
「ん、それで王子の今の容態は?」
俺は話を合わせてみた。こういう場合は、話を合わせると、色々喋ってくれるからな。
「余りよくないようです。ですが、生命石さえあれば、王子の容態は快方に向かう事になるでしょう!本当にありがとうございます!」
深々と礼をするメイド。それに対して俺も言葉を合わせて答える。
「それは良かった。私も来た甲斐があるというものだ。」
メイドの話をまとめると、今、この国の王子は病に侵されている。それを回復させるためには、この赤い石、生命石が必要だ、と。皆がこれだけ慌てているとなると、大変貴重な代物に間違いないだろう。マリアには見せないほうが良いとまで言われていた物だからな。正体はわからないが。
色々思案していると、部屋にノックの音が響く。誰かが来たようだ。
「失礼します。奥方様の御加減は如何でしょうか?」
執事風の男性が入ってきた。俺より背は低いが、ドワーフにはない高い身長。だが、筋肉は隆々。燕尾服がはち切れるばかりの状態だ。
「あ、ああ。マリア、どうだ?」
「ええ、大分回復したわ。」
「そうですか。先程から国王様がお待ちです。謁見場にお越しいただいてもよろしいでしょうか?」
慌てているのがよくわかる。執事のドワーフは言葉とは裏腹に、早く国王の元に俺達を招きたいらしい。いやちがうか、この生命石が欲しいのだろう。
「マリアが大丈夫なら行くか。」
「はーい。」
「わかりました。」
「ふう。もう少しは休みたかったわ。」
マリアが愚痴を言いながらも、俺達の後ろに立った。
「では、ご案内致します。」
「よろしく頼む。」
「どうぞ、此方です。」
俺達は、執事の案内に従い、国王の待つ謁見場へと向かう。少しだけ早足で歩く執事に、慌てるなよ、と言ってやりたかった。
石作りの城の奥に向かう俺達。灯りは光苔の明るさだけ。薄暗い道を歩き、俺達は国王の待つ謁見場へとむかった。




