4-35 主の討伐。そして、
柔らかい。いいにおい。たまらん。
俺は目を醒ました。テラスが膝枕をしてくれていた。丘の上。俺は寝そべっている。
「おはよう。」
「ん、ああ、おはよう。」
俺は身体を起こす。あちこち身体中に痛みがあるが、それでも身体を起こす。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫大丈夫。」
俺は空元気を出しながら、元気をアピールする。俺の目覚めに気がついたか、マリアが飛んで来た。
「言いたい事は、わかるわね?」
かなり怒っているマリアは、顔を赤くしている。
「いや、その、ごめん。」
「無理はしない!約束だったでしょ!」
「いやいや、無理は、したけど、何とかなっただろ?終わりよければ、だよ?」
「馬っ鹿!」
怒られた。まあ、仕方ないか。
マリアの説教タイムもさておき、俺はようやく現状を把握した。
巨大砂漠百足の討伐。それも主を含めてだ。そして暗の消去に成功させた。
それはいい。だが、疑問がある。何故、主を討伐の際に一瞬の隙が生まれたのか、だ。
マリアに聞いてみる。すると、
「あの百足って、水に弱い性質があるんだって。ダンデさんに聞いたのよ。それに、ビビさんが急に戻ってきたから、もしかしたらと思って。もう!偵察なら偵察らしく状況を報告しなさいよね!」
へい、ごもっともです。
それにしても、あの百足は水に弱かったのか。何となくわかるな。水を吸収する何かを産み出すし、環境に合わせた性質なんだろうな。
「私だって頑張ったんだからね!」
「あ?うん、ありがとう。」
「もう!無茶はしないでよね!」
マリアは勇気を出して、巨大砂漠百足、それも主に立ち向かった。テラスやビビもだ。俺一人で勝ち取った勝利ではない。
それに、マリアは初めて水鉄砲の十割を使ったようだ。あまりの反動に、少し手首を痛めたようだった。
「無茶はお互い様だな。」
「貴方よりはマシよ。」
マリアの怒りも収まったようだ。回りを見るが、ビビがいないが?
「ビビならあっちだよ。」
指を指すテラス。その先は砂漠がある場所だ。
「何をしに?」
「確認よ。群れを討伐したがどうか。」
だからか、ダンデや他の草原小人がいないのはその為か。
「なら、俺も行かなきゃな。やることがある。」
「そんなボロボロで何をするの?止めなさい!」
「無理はしないからさ。頼むよ。」
マリアは呆れて、俺の身体を支える。テラスも同じだ。
俺達は、砂漠に向かい歩き始めた。
★
そこには無惨な状況が広がる。巨大砂漠百足のね。それを草原小人達は運び出していた。
「目覚めたか勇者。」
「おいやめろ!いや、失敬。俺は勇者ではないよ。」
ダンデが俺を勇者と謳う。それを拒否しながら、話を進める。
「主の討伐は完了だ。感謝をする。」
「それが依頼だからな。完遂しただけだ。」
暗の事は黙っていた。彼に話しても信じてくれないだろうし。
「もう少し休んだらどうだ?身体はボロボロだろう?」
「いや、まだやることがある。」
俺は砂漠に入る。無限保管を使い、砂を吸い上げる。
ついでに、百足の亡骸、そして本命の紫水晶を吸い込んだ。この紫水晶があると、砂漠化は進むだろう。だからこそ取り除かなきゃならない。
多少の無理は承知の上だ。だが、今やらなくちゃならない。毒や腐敗の侵食も気になるから、これを取り除いておきたい。
時間はかかったが、砂漠の砂は全て吸い込んだ。大きな穴、いや、もう地形だろう。水が湧いているから、これもまた、大きな池になるだろう。
日も傾く。俺は動くことが出来なくなったので、そのまま夜営する事になった。
「貴様は一体何者なんだ?」
「単なる旅人さ。気にするな。」
「だがな、あれほどの相手に立ち向かうのは、容易ではないぞ。人はそれほど強者になるのか?」
「だから気にするな。」
俺は説明を拒んだ。彼に話してしまうのは、気が引けたからだ。
「そういえば、百足はどうするんだ?食料か?」
「ああ。あれ程の物があれば、暫くは安泰だな。」
やはり食料か。あまり食べたいと思わないがね。
「なら、途中まで運ぶのを手伝おう。そちらの村には入らないから安心しろ。」
「いや、此方から招待する。明日の日の出、村に向かおう。歓迎させてくれ。」
「良いのか?俺は人だぞ?」
「勇者に人は関係ない。人は信用しないが、お主は信用に値する。」
ん~、男のツンデレはいらないんだがな。まあいいや。招待には応じよう。
「わかった。では明日にお邪魔するよ。」
「うむ。」
こうして、俺は信用を勝ち取った。ただ、俺だけの信用だが、彼等の氷が溶ける一歩を感じずにはいられなかった。
★
日の出。目覚めの朝を迎える。身体は回復した。多分テラスの癒しのお陰だろう。いつもありがとう。
今日は、鍛練は軽くにする。ビビと一緒に型を始める。
マリアは料理の準備だ。いつも寝坊助のテラスも起きており、マリアを手伝う。
簡単なシチューが朝食だ。消化を考えたのかもしれない献立に、マリアに感謝する。
「では、いただきます。」
今日は大所帯の食事だ。草原小人も一緒に食卓を広げる。マリアの料理に絶賛する草原小人達。凄い勢いでなくなるシチューは、簡単に空になった。
「同胞が、すまん。」
「いいよ。気にするな。」
これも異種族交流だ。大した事じゃない。ビビが足りなそうだったので、干し肉を渡した。ゆっくりお食べ。
食事も終わり、移動する。向かう先は、草原小人の村だ。どんな村なのか、興味は尽きない。
洞窟がある。小さな穴。そこを通り抜けるという。
俺達は屈んで洞窟に入る。長い洞窟に、腰が痛くなる。首も痛い。
開けた場所に出る。そこは、草原の壁に囲われた、村だった。
ダンデの帰りに、皆が祝福する。だが、俺達を見るなり、隠れてしまった。
「大丈夫だ。心配いらない。」
ダンデの言葉に動揺が走る。やはり、日とへの信用は皆無なのかもしれない。
「ダンデ、よく戻った。だが、説明は必要だぞ。」
「わかっております、村長。」
その村長は、ダンデのことばを耳にする。
巨大砂漠百足の主の討伐。これが彼等にとって如何に難題だったか、それをいとも容易く討伐したかを語る。少しだけ大袈裟なのは何故だろう?
そして俺は無限保管から、百足を取り出す。量が量だ。大きさもある。場所を考えてから、取り出した。
驚愕する村の人達。突然の食料に、驚異の排除に、心が踊っていた。いや、実際に踊っている。テラスさん?踊らなくて良いよ?
「では、勇者よ、此方に。」
いやだから違うって!・・・もういいや。
その日は宴会が催された。
出される食事は不思議なものばかり。確かに百足料理とかだしてきたのだから、やはり食の文化は様々だ。
「不思議な味。」
「美味しいですよ。」
(不味いと言えない。)
テラス達もご相伴にあずかる。マリアは小食だった。まあ、顔を見ればわかるから何ともな。俺は美味しく頂いた。
出されたお茶が美味かった。これは日本茶の様な風味を出していた。欲しくなったので、少しだけ分けてもらった。
「村長。これ見て下さい。綺麗ですよ。」
一人の女性が村長になにかを渡す。それは、俺達が見たことある物。虹色の石だった。
「こ、これは?」
「百足の胃の中に入っていました。とても綺麗だったので、村長に見てもらいたくて。」
「まさか、それは!」
「うむ、間違いない。神の石。」
神の石?精霊の落とし物じゃないのか?
「これで、村の危機は救われたな。勇者には多大な感謝を。」
だーかーらー!
「神の石?何ですか、それ?」
「我々にはこの虹色の石を奉れば、平穏が約束される、という伝承があるのだ。不可思議な力を持つので、神の石と呼んでおる。」
ビビから聞いた話しとは、ちょっと違うな。やはり、文化の差なのかもしれない。似たような所はあるけどね。
「しかし、討伐されたのは勇者だな。」
「いや、それは貴殿方に譲ります。」
「し、しかし?」
「それは、土地に根付く物でしょうし、そうですね、友好の証にしましょう。うん、それが良い。」
俺は二つ持っているし、これ以上はもってもしょうがない。七つ集める訳でもないんだろ?
「あ、ありがとうございます!」
「いえ、良いんですよ。」
村長が泣きながら感謝をする。ダンデもひっきりなしに頭を下げる。ん、なんだかね、調子狂う。
「では、奉る準備もしよう。勇者殿、ゆっくり滞在なされよ。」
「いや、そろそろお暇します。待たせてる人もいますから。」
「そう、ですか。」
落ち込む村長。滞在は辛いかな。特にマリアが。
「では、土産を準備します。少々お待ち下さい。」
「では、お言葉に甘えます。」
村の人達に盛大に歓迎され、俺達は村を出る。
「人の村まで送ろう。」
「ありがとう、ダンデ。」
そして俺達は、西の村に戻るのだった。
★
西の村に戻り、ロイド男爵に経緯を話す。
「ん、君ならやってくれると信じていたよ。」
「はいはい。」
「それで、君達はどうするんだい?」
押し黙るダンデ。やはり、他の人は信用してはいないのだろう。
「我等はまだ人を信用出来ん。だが、信用に値する人もいると知らされた。ならば、歩み寄る価値もあるだろう。」
「うん、少しずつでも構わない。交流をもって、互いに進んでいこう。」
「不可侵の約束、忘れるな。これは譲らん。」
「わかった。細かい取り決めは、この西の村を使おう。その方がお互いに都合が良いだろう。」
「承知した。」
握手をするロイド男爵とダンデ。ようやく草原小人の件は完遂した。後の事はロイド男爵に任せよう。
「さ、帰るか。」
俺達は、ケルト市に戻る事にした。
勿論、ロイド男爵も連れてだ。
文官?そのまま西の村に駐留だよ。
★
さて、小屋に戻ってやることは、勿論、
「おふろー!」
「ですよねー。」
俺は風呂を沸かし、皆で浴びる。
一仕事終えた風呂は格別だ。更に魅力的な女性が俺に寄り添う。ならば、やることは一つだ。
「テラス。」
「うん。」
唇を重ねる。舌も絡ませる。何度も何度も。
「ビビ、マリア。」
「はい、貴方様。」
「ソーイチさん。」
今回は同時に愛した。愛された。包み込まれ昇天し、激しく愛して昇天させた。
今回は皆が積極的だ。特にテラスが。その拙さに何故か興奮してしまう。
何回愛したかわからない。そして満ち足りるこの感覚。幸福と言うのだろう。俺は優しさに包まれながら、瞼を閉じた。




