4-34 巨大砂漠百足の主 その2
丘まで一気に駆け抜ける。なかなかにスピードを出したが、ビビはそれになんとか食らいつく。
ほんの数分で丘までたどり着いた。流石に速かったか、ビビは息を多少上げていたが、直ぐ様に息を整える。
「ここですか?」
「ここから、だね。」
そう、ここは砂漠の入り口。そこに立った。乾燥している風を感じる。少しだけ砂埃が舞う。
丘の上に登り、辺りを見回す。前に討伐した巨大砂漠百足の比ではない位の大きな砂漠が広がる。ここに、群れをなす巨大砂漠百足等が生息しているのだろう。
俺は、気配察知を行う。だが、いまいち反応しない。
うごいていない?ならば、侵入しておびき寄せるか?
「砂漠では足を取られるから、立ち回りは慎重に。震脚を多様しないこと、良いね?」
「はい、気をつけます。」
「良し!じゃあ行こうか。」
俺とビビは砂漠に侵入する。
サクサクと音を立てながら歩く。やはり、砂路は足を不安定にする。
ここは奴等の土俵だな。あまり深追いは出来ないな。やはり、誘き寄せてから始末するほうが良いかもな。
そうこう考えていると、地面から微かな地鳴り。奴等が此方の存在に気がついたようだ。
再び気配察知をする。
いるね、4、いや5匹はいるな。
砂の中を縦横無尽に動く奴等は、正確に此方の位置を把握したようだ。
突然、大きな地鳴りから、静まる砂地。そして一瞬の悪寒。
「ビビ!」
俺はビビを抱えて跳躍する。高さが足りないので、二段跳躍をする。
砂の波から、巨大砂漠百足が飛び出してきた。それも二匹。此方に大きな牙を向け、襲いかかってくる。
更に跳躍、距離をあける。十分な距離を空けたら、方向を変更。丘へと向かう。
今回は着地に余裕はない。自然落下のまま、丘へ着地する。ビビは俺に抱きつき、自然落下の衝撃に耐える。
向かってくる巨大砂漠百足。砂漠の上をうねるように、素早い速さで此方を襲ってくる。
「ビビ、一匹任せるぞ!」
「はい!」
俺は体制を整える。手に持つのは、黒石ナイフ。ビビも黒狼爪を持ち構える。
俺は巨大砂漠百足に向かって跳躍する。ビビはそのまま待機。
一匹をすり抜け、後ろの一匹に狙いを定める。
集中!空間を切断するイメージ。
巨大砂漠百足の脇をすり抜けながら、黒石ナイフを振るう。手応えがない。いや、十分だ。
黒石ナイフに切り裂かれた巨大砂漠百足は真っ二つになり、砂地でじたばたともがいている。間髪入れずに、俺は頭と胴体を切り離す。頭を失った胴体から、体液が溢れ出る。深い緑色のそれは、砂地に吸収される。
俺は咄嗟にビビをみる。
ビビは、十分に巨大砂漠百足を惹き付け、剛の一撃を頭に喰らわしていた。抉り貫通する頭は四散し、巨大砂漠百足を絶命させる。
流石ビビ。
続いて、俺は砂地に震脚をする。やはり砂地なので分散されてしまうが、餌としては十分だろう。
またしても、巨大砂漠百足が襲ってくる。同じようにビビの元に向かい、一匹は任せる。
俺は空中で方向を変え、空間切断で巨大砂漠百足を討伐する。ビビもまた、剛の一撃を喰らわせていた。
合計六匹は討伐しただろうか?死屍累々の巨大砂漠百足以外周辺は静かになった。俺はビビの元に戻る。
「終わりでしょうか?」
ビビが聞いてくる。まさか、そんなはずがない。
「雑魚は終わりかな。本命がまださ。」
そう、サイズ的には以前倒した巨大砂漠百足のサイズ、いや、少しだけ小さいか。子供としてならば、親が、主がいる筈だ。
静寂。
それを打ち破るかのような大きな地鳴り。砂地が波のように割れる。立ち上がる砂の柱。
目の前に現れたのは、三倍はあろうか?と思わせる巨大砂漠百足だった。
★
「本命の登場だな。」
「はい!」
それはとても大きく、脚の一つが俺ほどありそうな巨大な百足。身体を起こし、此方に照準を合わせる。
口から煙が溢れる。悪寒。俺は素早くビビを担ぎ上げその場を離れる。
主からの液体攻撃。丘の一帯に着弾したそれは、紫色をしており、草を腐らせた。
「毒液か、厄介だな。」
毒液を所有している主に、俺は近づけない。不用意に近づいたらそれの餌食となるだろう。
ならば
俺は、無限保管に収納していた弩を取り出し、照準を合わせる。
ボタンを押し、チャージする。フルチャージまで時間を稼ぐ。
だが、主は怒濤の攻撃を開始する。毒液を霧上に変え、範囲を広げる。草も、土も、砂も腐るその攻撃に、俺達は手出し出来ない。
ならば!
俺は上空に跳躍する。霧の当たらない範囲からの攻撃を試みる。主の後ろに回り込み、フルチャージの弩を放つ!
胴体を貫通し、大きな穴を開ける。
だが、その穴が、みるみるうちに塞がっていく。
まじか?!
俺は驚愕する。いや、塞がることではない。俺は見た。それを。
巨大砂漠百足の主の頭に何かが刺さっている。それは見たことある物。禍々しいそれ。それは、暗、が刺さっていた。
★
「ビビ!離れろ!」
俺は叫ぶ。その声に反応してか、ビビがその場から離れる。俺も十分に距離を放し、ビビの元に向かう。
「暗を見つけた。ビビは撤退しろ。」
「で、ですが!」
「駄目だ。あれはビビの手には負えない。」
「しかし!」
「ビビ!頼むから撤退してくれ。」
これ以上はビビに辛い目をさせたくない。また、あんな目に会わせたくない。あれは俺が相手をしなければならないのだ。
「は、はい、ですが、」
「わかっている。無理はしない。」
「はい・・・。」
ビビは俺にキスをする。安全を祈るかのように。
「必ず戻って下さい。」
「わかっている。」
ビビはここから撤退した。残るは俺一人。主と対峙する。
暗い霧を纏わせた主は、俺に容赦なく襲いかかってきた。
★
俺はチートを最大限に使うため空中にいる。主の攻撃をかわしながら、打開策を考える。
近づけば毒霧に、暗の攻撃。離れたら攻撃手段は弩のみ。効果は期待出来ない。
空間切断は近距離、近づく必要がある。なら、頭に弩、いや、あんなに動かれたら中々に当たらない。困ったな。
それでも、俺は打開策を考える。
弩の攻撃で何度か大穴を空けたが、暗の力で塞がる。近づく事は容易ではなく、毒霧と暗の霧がそれを阻む。
一瞬、ほんの少しでいい。動きを止めてくれれば・・・。
俺はその手段が見いだせなかった。
少しずつ、そう少しずつだが、じり貧になってきた。矢は後一本。これを外したら、突貫以外方法はない。
弩のチャージを開始する。狙いを定め、確実に頭を潰す事を考える。
襲いかかる毒霧と暗の霧を最小にかわす。服が溶け、精神的な痛みが襲う。そろそろ俺の限界も近い。
撤退?もう無理だ。ここで奴を仕留める!
俺は我が身を犠牲にし、狙いを定める。
そしてチャンスが訪れる。
一瞬だ。ほんの一瞬、主の身体の動きを止めた。
チャンス!!
俺は引き金を絞る。吸い込まれるように、矢が主の頭に向かい、その頭を爆発四散させた。
俺は回りをみた。すると、マリアがいた。ビビとテラスもいる。マリアの手には水鉄砲があり、震えている。
いや、先ずは暗が先だ。俺は主の頭を集中でみる。
再生を開始しているが、ペースは遅い。
今しかない!
俺は近距離に近づき、空間切断を開始する。バラバラに四散する主。毒霧と緑の液体をぶちまけながら、倒れこんだ。
暗の行方、空中に放り出された暗は、支えるものが無くなり、霧となり消えていった。
「やれやれ。」
俺はそのまま地上に戻る。すると、テラス達が駆け寄り、そのまま抱き締めてきた。
「大丈夫?」
「怪我は、怪我はありませんか?!」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!」
泣き出す三人。彼女等もまた、暗の恐怖を知っている。すまないと反省するが、気力を使い果たした俺はそのまま倒れこんでしまった。




