4-33 巨大砂漠百足の主
日の出の少し前、まだ明けきらぬうちに起床する。今日は草原にはいり、巨大砂漠百足の主を討伐する事になっている。
俺の起床に、ビビが反応する。
「おはよう、ございます。」
「うん、おはよう。」
軽く髪を撫でる。その感触を楽しむかのように、ビビが甘える。珍しい行動だが、多分寝ぼけているのだろう。
「今日はお早いのですね。」
「まあね、一応巨大魔獣、いや魔虫か?の討伐だからね。少しは早起きしないとね。身体を目覚めさせないと。」
「そうですね。では、私も起きます。」
「うん、一緒に鍛練するか。」
「はい。」
と言って、二人で小屋を出る。まだ日は登る前。少しだけ朝靄が立つ時間だ。
二人で、型をする。ゆっくりと確実に。シンクロするビビ。
彼女の衣服は基本露出が多い。今も、大事なところだけを隠しているだけに過ぎない。とてもセクシーだ。
だが今は、その素敵ボディーに見惚れる暇はない。目の前の依頼を完遂すべく、俺は身体を動かし目を覚まさせる。
「おはよう、早いわね。」
マリアも起きた。彼女も寝巻きはシャツ一枚。今はスカートをはいている。生足が綺麗です。
「む、いまスケベな顔をしたわね。」
「ははは、男の性だから、仕方ないね。」
頬をを膨らまし、マリアは所定の位置に着く。水鉄砲の練習だ。未だに三割の威力で練習しており、中々に慣れないようだ。ちょっと進みが悪いが、あまり急かしても逆効果だろう。そのまま見守る姿勢に入る。
それにしても、マリアの練習もかなりセクシーであり、チラチラとお尻や下着を見せつける。うん、眼福だよね。
ちらりと此方をみるマリア。視線を感じたのか、スカートの裾をおさえる。やはりミニスカートでは、心もとないよね。何となくわかる。
まあ、出掛けるときは、女性陣はキュロットだし、上着も着せるから、今の薄着はちょっと役得だ。因みにテラスは全裸で寝ています。彼女が一番セクシーだろう。そのまま外には出さないけどね。
鍛練を始め、汗が滝のように流れ落ちる。ビビも同様だ。身体が目覚めた証拠だ。
「では、今日も軽く流すか。」
「はい、お願いします。」
俺とビビは短棍を持って手合わせをする。今日は普通の早さで行っている。
ビビの突きや払いは中々に素早く、威力もある。ちゃんと下半身が安定しているからだろう。上達の早さに感服する。まさに戦闘民族。
だが、俺も負けてはいられない。チートは使わなくとも、ビビの相手をする。無数の攻撃をさばき、間髪入れずにビビに一撃。彼女もこれに反応する。
良いね。とても良い。
今や実力は同等まできたかもしれない。いや、彼女の本気を出せば、チート抜きの俺より強いだろう。
だからこそ、俺は必至になる。冷静になりながらも熱くなる頭を冷ます。そして、打開策を見いだすように攻撃をする。
無論それはビビも同じだろう。攻撃の種類を増やし、俺のスペースを削っていく。隙あらば、ピンポイントにそこを突く。これがまた鋭い一撃であり、なかなか捌くのに苦労する。
「ビビの才能には驚かされるよ。」
「いえ?まだまだです。教授お願いします。」
「よし、その意気だ。」
息を整え、鍛練を再開する。少しだけ没頭したせいか、朝食や、ブライアンの奉公に気がつかなかった。
「本日は凄いですね。私語とを忘れて見いってしまいました。」
「そうか?」
「はい、僕もあんな風に強くなりますか?」
「なれるさ。ちゃんと鍛練をすればな。」
「はい、頑張ります!」
ブライアンはレンとイトの元に戻る。世話の再開だ。確りと仕事をするのは、彼の良いところだ。
さて、マリアに呼ばれたし、朝食にしよう。
「おはよー。」
「テラス、おはよう。」
寝ぼけたテラスの頬にキスをする。顔を埋める彼女が可愛くて仕方がない。
「さ、ご飯だ。食べよう。」
「うん!」
「今日はお肉!確り食べましょう!」
「おお!では、いただきます。」
ビビがかなりのスピードで食べていく。かなりの量を作ったようだが、すぐになくなりそうだ。
さて俺も食べる。朝食は1日の鋭気。確りと食べて、確りと働こう。
★
ブライアンに行者を任せて出発する。途中でロイド男爵と文官を拾い、西の村へと向かう。荷台が狭くなったので、ビビが行者席に移動する。身体が固くなるブライアン。顔も赤い。緊張しているのだろう。
「?どうかされましたか?」
「い、いえ!」
ブライアンの緊張が増す。ビビが隣に座っただけなんだがな。やはり、若さかな?
「そんなに固くなっては、馬達が動揺します。」
「は、はい!」
なんだかね。ブライアンの緊張が解れるのは、時間がかかりそうだ。
さて、馬車の中でも話をする。
「快適だね、この馬車は。揺れが少ない。」
「改良したからな。」
「なら俺の馬車も改良してくれないか?尻が痛くなるんだ。頼むよ。」
「タダじゃないぞ?」
「勿論、対価は支払うさ。無料より高い物はないからね。」
飄々と話すロイド男爵。仕事が終わったら、ロイド男爵の馬車の改良に着手しても良いだろう。
大門を抜ける。向かうは西の村。直ぐに到着する距離だ。
★
西の村に到着し、下車する。レンとイトを厩舎に入れ休ませる。世話はブライアンに任せる。ここからは徒歩になる。
「それじゃあ、行ってくる。」
「吉報待っているよ。」
ロイド男爵の見送りを背に、俺達は草原に向かう。
草原に入り、緊張するマリア。いや、まだ早い。
「緊張するにはまだ早いぞ。」
「だ、だって!」
「まったく、テラス、お願いして良いか?」
「はーい。」
テラスがマリアの手を握る。それだけだが、マリアの緊張がみるみると解かれていくのがわかる。
「テラスちゃん、ありがとう。落ち着いたわ。」
「えへへ。」
いまだに手を握ったままだが、マリアの緊張が解かれたならば、それで良い。まだ目的地に着いていないのだから、余計な緊張は、体力の無駄だ。
気配察知。数人に囲まれる。草原小人だろう。
「アオバ一人の約束だが?」
「彼女らも連れていく。何か問題あるか?」
「まあ、良い。ついてこい。距離はあるから走れよ。」
ダンデの言葉に、俺はテラスを抱き抱える。ビビはマリアを背負う。
わざと気配を出すダンデ。その後ろをついて走る。集中を使っているので、見失う事はない。ビビも笑顔でついてくる。マリアは・・・、見なかった事にしよう。凄い表情になっていた。
草原をひたすらに走る。なにやら濃い空気が、辺りを包む。一面の草原。風に草が音を鳴らす。鼻を擽る薫りは、青々しく清々しい。
前にも見た光景だが、その雄大さに感嘆の息を漏らす。この雄大な大地を、彼等草原小人は守っているのだ。
丘の上で休憩に入る。ついてくる草原小人は息も絶え絶えに、へたりこむ。俺とビビ、ダンデも息は上がっていない。ましてやまだ余裕もある。
「まさかついて来られるとはな。」
「まだまだ余裕はあるぞ。ビビも同じだ。」
笑顔で会釈するビビ。ただね、
「もう少しゆっくりにして頂けると嬉しいんですけど?」
マリアはこの速度に恐怖したようだ。まだまだ甘い。
「次は俺がマリアを背負うか。ビビ、テラスを任せるぞ。」
「はい!お任せ下さい!」
「ビビ、お願いね。」
「えぇ~・・・。」
マリアはなんか嫌そうだ。失敬な。
「では、もう少し速度を上げる。ついてこいよ!」
「・・・!」
俺達ではなく、他の草原小人に言ったのだろう。今でも息が上がっているのに、更に速度を上げるとか、鬼だな。
また走り始める。道のない草原をひたすらに走る。マリアは俺にしがみつく。悲鳴を上げながら。そんなのはお構いなしに、俺はダンデの後ろをついていく。ビビも余裕だ。他の草原小人に脱落者がでそうだが、気にしない。
どのくらい疾走しただろうか?気がつけば、日は天辺に到着していた。
二度めの休憩に入る。沢山走ったのに、体力はまだまだ余裕だ。
「なかなかやるな。」
ダンデが言う。俺達がついてきたからか、誉め言葉を口にする。
「鍛えているからな。」
チートを使えばこれくらいは楽勝だ。ダンデとビビは多少息が上がっている。他の草原小人には、脱落者が出ているみたいなので、その到着を待つ事にした。
「折角だ、御昼にしよう。」
俺は無限保管から、弁当を取り出す。朝にマリアが作ったサンドイッチだ。ビビには追加の干し肉も出す。
「では、いただきます。」
俺達は悠々と食事をする。マリアの食欲が低下している様だが、これからが本番なのだから、確りと食べるように勧める。ビビは食欲旺盛。テラスもハムハムと食べている。
ダンデは草原小人を待っている。少しだけいらだちがあるのか、距離のある向こうをずっと見ている。
「食べないのか?」
「奴等が到着したらな。」
厳しさの中に優しさ、ダンデは確りと彼等を監督していた。
全員が到着をした時には、俺達の食事が終わっていた。
息も上がり、へたりこむ、または、寝そべる者。食事の余裕は無さそうだ。
「さて、あとどのくらいだ?」
「もう少しだ。あの丘の向こうが奴等の縄張りだ。」
「奴等?」
「ああ、奴等は群れを成している。」
あの草原小人が群れ、か。これは大変な事かもしれないな。
水分を補給し、息を整える草原小人。ダンデは干し肉を噛る。俺は集中を使い、丘を見る、と。
「砂漠、か?」
「見えるのか?」
「ああ、丘の裾野に砂漠がありそうだ。」
「更に侵食しているか。これは余裕は無さそうだ。」
「侵食しているのか?」
「ああ、前はあの丘の向こう側だったんだ。侵食の速度が上がっているかもしれん。」
「なら、急いだほうが良いな。」
「いや、応援を呼ぼう。これ以上は放置出来ん。」
唸るダンデ。確かに応援が必要な状況なのかもしれない。
「応援呼んで、期待は出来るのか?」
「戦力は必要だろう。」
あ、これは期待出来ない事案だ。応援呼んで、被害拡大は避けたいな。
「とりあえず、偵察は必要だろう。ビビ、行くよ。テラスとマリアは留守番だ。」
「うん。」
「わかったわ。」
快諾するテラスとマリア。ビビは尻尾を大きく降り、俺の会津を待つ。
「待て!危険だ!」
「偵察だけだよ。危なくなったら徹底するから。よし、ビビ行くよ!」
「はい!」
俺とビビは丘へと走っていった。




