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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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4-32 三者会談。

そして数日後、草原小人(グラスランナー)との会談日となる。着なれない正装に身を包み、小屋を出る。


「行ってらっしゃい。」

「ああ、行ってきます。」


俺はテラス達に出発の挨拶する。小屋の前では、ロイド男爵が待ち構えている。今日は、ロイド男爵の馬車での移動だ。文官も数名呼び寄せての会談に、俺は緊張を隠せなかった。


「そんなに固まるなよ。気楽にいこう。」

「お前は気楽過ぎると思うぞ。」


背中を叩くロイド男爵。彼女の接触には注意していた。だが、今回は吸収を使っていないようだ。ここで使われたら、後に響くからな。やはり、刃の空気は読む奴だ。


「それで、今回お姫様達は予定通りかい?」

「そう予定通り、ケルト侯爵邸のやっかいになるよ。小屋に閉じ籠るよりは、精神衛生的に良いだろうし。」

「君はまだ、警戒をほどかないのかい?警戒態勢にも程があるよ。」

「性分だ、気にするな。」


これは昨日の夜に決めた事だ。


草原小人との会談が何日かかるかわからない現状、小屋に放置はあまり好ましくないと判断した。

テラス達はそれを承諾した。もちろん、食事と温泉が目当てだろう。マリアも、ヒルリー婦人の相手は目を瞑ったようだ。

この決定をロイド男爵に話す。彼女は呆れた顔をしたが概ね合意した。その為、準備のために早々に帰宅した。予定していた草原小人との会談の流れを取り決める話は、明朝の馬車の中になったのは仕方ない。


出発する。テラス達が手を降り見送る。心配は尽きないが、今から重要な会談が始まるのだ。気を引き締めなければならない。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか。」

「どちらも出ないようにするのが仕事だろ?」

「ま、そうだけどね。」


馬車の中。文官を交えての会議をする。草原小人の要求の予想や、此方の主張、覚える事は沢山ある。


揺れる馬車の中で、俺は真剣に会議に没頭した。





草原小人との会談場所には、西の村の集会所が使われた。草原小人のパーソナルスペースを犯さずに、真剣に向き合える場所、といったら此所になった。あの茶番で取り決めた後、多少の交流があったようだが、やはり、彼等は俺達を草原には入れさせないようだ。


集会所には、俺達ケルト側、草原小人側、西の村側、と三卓会議となる。西の村が参入する事を聞いていない俺は驚いたが、ロイド男爵はそれを知っていたのだろう。さも当然のように了承した。


悪い予感がする。


俺は、この会談が長くなりそうな予感がした。人を信じない草原小人、エクシリオスと溝が出来た西の村、そしてケルト側の思惑。三者三様だろう。


緊張が高まる。西の村の代表の村長も、顔の表情は硬い。草原小人はダンデを筆頭に数名連れてきた。此方からも緊張が伝わる。



パンッ!


ロイド男爵が手を叩く。皆がそちらに目線をずらす。


「さて、始めましょう。黙っていても何も変わりませんから。」


この他人事より、三者会談が始まった。





草原小人側の主張。

草原の不可侵。これだけだ。彼等にもプライドがあるのか、共存は選ばなかった。


西の村の主張。

減税と草原小人との確立。概ね予想通りだ。ケルト市を信じられないのは、エクシリオス教のせいでもあるし、冒険者ギルドも係わっている。なかなかこの氷は溶けないだろう。


ケルト市の主張。

西の村減税は容認。自衛の推進。草原小人とは不可侵は可能な限りするが、約束は出来ない。但し、交流を持って、繁栄の力になる。である。草原小人には厳しい条件を突きつけるロイド男爵。西の村の村長もあまり良い顔をしない。


「我々は人との繁栄は望んでいない。」


草原小人の主張だ。でも、これはなかなかに厳しい理想ではないのだろうか?


「交流が盛んになれば、食料の確保が確実になります。調べましたが、貴殿方草原小人は狩りが主流と聞きます。それでは、食料の安定は約束されてはいないのでしょうか?我々と交流する事により、食の安定は約束しますよ。」


いつの間に調べた?いや、それがロイド男爵、彼女の仕事だ。


「この交流は、ケルト市ではなく、西の村限定でも構わないのです。草原小人と人が手を結び、次代に託せる世の中にしませんか?」


それはわかるけどね、それを決めるのは向こう側だ。俺達ではない。


「巨大百足の驚異はわかっています。その驚異を取り除くには、貴殿方の地からは必要ですし、対価も得られれば、悪くないかと思いますが?」


黙る草原小人の面々。ダンデはいまだに喋らない。西の村村長も黙る。


西の村としては、草原小人との交流は悪くないだろう。この村はの収穫量はかなりあるのはわかっている。そこに減税ともなれば、余りに余るだろう。その収穫物を草原小人との交流に使えば、村は安泰の一歩を進む。

草原小人もそうだ。不安定な狩りだけではなく、西の村の実りを受けとれば、食の安定は確立される。それだけで、生活が潤うのは当然の事だ。


だが、

「人は信用出来ん。いつ裏切るかわからん。」


ダンデの言葉で、ロイド男爵の提案を却下する。


「では、どうすれば信用されるのですか?」

「論外だ。」


ダンデの主張は変わらない。ロイド男爵の言葉を聞かない姿勢を貫く。これが、草原小人の総意なのかもしれない。


「では聞くが、何故不可侵の約束をしない。それを話せ。」

「不可侵になれば、交流が出来ないではないですか。確りと草原には先住民がいると断言するためには、先ずは交流が大事です。認知、ですね。ケルト侯爵領全体にその草原の安寧を約束するには、それなりの準備もあります。その準備すら認められないならば、此方も約束は出来はしないですね。」


主張が対立する。ケルトに広がる広大な草原は、草原小人の台地と認知させる、という約束をしているのだが、ダンデはそれを信じない。中々に魅力的な提案だと思うのだがな。


難航する会談。いや、ダンデの硬い意志が、この会議を長引かせる。


俺も僭越ながら、ロイド男爵とダンデの間に入る。だが、あまり有効ではなく、更に激化させる事になってしまった。

それでも俺は打開策を模索する。何かしら手はあるはずだ。


「譲歩はしない、か?」

「せんな。」

「それはやはり信用がないからか?」

「そうだ。」

「では、ダンデの信用を得るために働く、のはどうだ?不可侵にばかり目を向けても、信用はかえって得られない。」

「貴様が働く?」

「巨大砂漠百足の主を探す、のはどうだ?もし見つけたら、それを駆逐するだけでも、俺は十分成果があると思うが?」


これは駆け引きだ。驚異である巨大砂漠百足は草原の天敵である。もし、主を探しだし、それが駆逐出来れば、それだけで草原小人の生活が保証される。


「その為には、不可侵の前にやらなければならないから、いるのであれば、教えて欲しい。」

「貴様には関係ない。」


はい、存在の確定頂きました。この会話にロイド男爵も目を光らす。


「つまり、その主は存在するんだね。草原小人も手を出せないくらいの大物が。では、それをケルトが変わって討伐してみせよう。」

「余計な事はするな。これは、我等の問題だ。」


ダンデは断固拒否する。


「そうでもないさ。砂漠化は土の病気だ。その病気が蔓延する前に対策するのは、大地を統治する我等の仕事さ。草原小人が手を出せないのなら、我々がそれをやれば良い。」

「不可侵を忘れたか?!」

「まだ不可侵は締結していない。草原の危機は我等の危機でもあるから、勝手に邪魔するのは構わないだろう?」


意地が悪いロイド男爵。ここを切り口にする気だ。


無言のダンデ。長考に入った。共の草原小人も押し黙る。


ここは待ち、だろう。余計な話をして、思考の邪魔をしたくない。ロイド男爵も飄々としているが、待ちの姿勢に入っている。


「だから、人は信用ならん。」

「君はそればかりだね。新たな先を見ないで、次代の繁栄はないんだよ?」


嫌味か?本当にロイド男爵はいつものままだ。


「ならば、貴様だけ侵入を許可する。」


そう言って、俺を指名する。


「人の大部隊が侵入して、草原を荒らされたらそれこそ次はない。ならば、信用ある人のみ、それだけで討伐してもらう。異論は認めない。」

「では、アオバ男爵がそれを討伐出来たら、信用してくれるのかな?」

「・・・、良いだろう。後見人として、私がついていく。」


ふむ、巨大砂漠百足の主討伐になったか。人を相手にするよりかは、幾分楽だな。


「では、アオバ男爵が主を討伐したら、我等との共存を思案する、で良いかな?」

「不可侵は必ずだ。これ以上の謀略は見過ごせん。」

「それは、今後交流をもって、認知させよう。では、アオバ男爵、任せたよ。」

「気楽に言ってくれる。だが、それはやらせてもらうさ。」

「期待しているよ。」


こんな感じで、三者会談は終了する。気がついたらもう夜だ。草原小人は草原に戻った。我々はここで一晩を明かす流れになったが、

「俺は帰るよ。テラス達が心配だ。」

の一言で、帰宅が決定する。夜の移動は大変危険だが、松明灯してゆっくりの帰宅となった。


あ~、疲れた~。




テラス達を迎えに行き、小屋へと戻る。あー、やっぱりここが落ち着く。


さて、会談の経緯を話す。やはりというかなんというか、


「なんで、化物退治に切り替わるの?意味がわからないわ。」


マリアがぼやく。彼女としては、この結果に不満があるようだ。


「信用を得る為の事だからな。これは、引き受けなくちゃならない事さ。」


俺としては人を相手にするより楽と考えている。討伐だろ?チートを使えるじゃないか。

ビビはこの決定に喜びを表している。うん、尻尾でね。

「では、準備を整える必要がありますね。」

「だな。指名は俺一人だけど、テラス達を連れていっても問題ないだろう。」


俺は淡々と話を進める。マリアが顔を青ざめているが気にしない。


「わ、私も行くの?」


拒否をするマリア。やはり、実践は怖いのだろう。


「なるべく別行動はしないほうが良いんじゃないか?何があるかわからないし。」


俺はその提案を却下する。今回は皆で行動だ。そのほうが守りやすい。


「は~、やだな~。」


なおも拒否するマリア。諦めろ。今回は連れていく。


「テラスはいいとして、ビビは黒狼爪で、マリアは(アリス)を装備な。各々動きやすい格好をするんだぞ。」

「はい!わかりました!」


久々に狩りができ喜ぶビビ、とは対照的に、マリアの表情は暗い。まあ、その、頑張れ。痛い!頭叩くな!


「やってやるわよ!見てなさい!私の本気を見せるんだから!」


なんか、吹っ切れたマリア。まあ、空元気だろうが、暗い表情よりはマシだ。


「明日から行動するから、今日は早く寝よう。良いね、早く寝るよ。」

「わかっているわよ!お休み!」


マリアは直ぐ様就寝した。テラスも今日は大人しく寝るようだし、ビビは黒狼爪を手入れしたら寝るだろう。あまり遅くならないように。


では、おやすみなさい。



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