4-31 快適な1日
日の出。起床する。今日はビビとマリアと同時に起きた。まだまだ眠たいマリアは、身体を揺らしながら起きる。ビビは目覚めがいつも良いのか、一番早く外に出る。俺もまだ身体は起きていないが、外に向かう。
朝の鍛練を開始する。ビビは拳法の型を、マリアは水鉄砲の試射だ。俺も拳法の型を開始する。
ゆっくりと力強く、尚且つ流れる様に。シンクロするようにビビも同じ動きをする。
汗が滴り落ちる。身体から溢れる熱が、眠気を飛ばす。目が覚めた所で、ビビと乱取りを行う。
今回はゆっくりと正確な動きの乱取りだ。早さはいらない。だがこれが結構な運動量であり、かなりきつい鍛練になる。特に下半身がきついのだ。
ブライアンもレンとイトの世話に来た。やはり中腰の動きで世話をする。慣れてきたのか、初めに比べると、格段に要領よく仕事をこなしている。やはり若さは最大の武器になる。吸収が早い。これなら、この街を出る前には、一の型を教えられそうだ。
朝食の前に風呂に入る。今回の汗の流した量は半端ないからである。テラスも起床し、ビビと共に入る。
マリアは朝食の準備だ。皆で入りたかったが、今回はそれが出来なかった。まあいい。次がある。
「では、いただきます。」
確りとご飯を食べて鋭気を養う。今日の行動予定を決め、それの準備をする。
今日はまず、テラスの髪を隠すウィッグを探す事にした。高級商店ならばそれも売っているだろう。次の行動はそれからにした。
俺の希望だった病院は却下になったので、代わりに高級商店にある目敏い商品を見つけたら、その工房に向かう事にした。
やはり、金属加工の商品に目がいくのは、前の世界の影響だ。それは仕方がない。基本は鉄や銅だが、銀細工もあるので、その制作過程が気になった。
また、武器防具にも目がいく。前の世界にはなかなかに存在しない武器防具だ。これも工房見学したいものだ。
さて、朝食もすんだ事だし、出発としよう。
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先ずは、衣服を購入する。そこにウィッグがあったのは記憶している。金髪が多く、片隅にようやく茶髪や黒髪があった。テラスが黒髪を選択したので、それにする。セミロングのウィッグだ。それを被せて銀髪を隠す。白髪のイメージがあったが、テラス曰く、
「ソーイチとお揃い!」
だそうだ。お茶目である。
「そうだね。」
「よくお似合いです。」
「可愛いわね。」
テンションが上がるテラスに、ビビとマリアがさらに誉める。これで、テラスの銀髪が目立たなくなった。
そのまま、買い物を続行する。必要な日用品は殆ど揃えたので、今回は一級品の調度品を見て回る。
装飾の細かさより、作りが確りとした物に目がいくのは、俺の性格だ。機能重視。これは仕方ないね。
箪笥で、目の引く物があったので、その工房を教えてもらう。後で向かおう。
また、武器防具も見て回る。様々な商品が点在しているが、あまり出来が良くない。鍛造ではなく、鋳造の量産が主流のようだ。武器は耐久力があまりよくなさそうだ。防具は軽装が主流のようで、フルプレートみたいな重防具は、機能よりも美術的な立ち位置のようだ。確かに、こんなフルプレートの防具を身につけたら、機動性がかなり失われるだろう。それこそ、エクシリオス騎士団長のダッドならばあるいは使えそうだが、まあ、人を選ぶのは確かなようだ。
魔法の武器とかを期待したが、そういうのはなさそうだ。ちょっと残念。俺のチートで造る事は可能だろうが、市場に出回っていないかの確認も兼ねていたので、造るのは控えた方が良いだろう。
また、銀細工の店も見て回る。高そうな宝石に、細やかな細工。やはり、値段もそれ相応だ。俺も材料があれば造れそうだが、デザイン力が壊滅的だから、マリアの力が必要になるだろう。ネックレス辺りは造ってみたくなるのは、技工師の性なのかもしれない。なので、デザインの良いものを手に取り、暗記する。冷やかしはあまり良くないので、指輪を3つ購入する。女性陣に身に付けさせる。左の薬指だ。
「えへへ。」
「あ、ありがとうございます。」
「やっぱり嬉しいわよね、指輪をしただけなんだけどね。」
三人とも、ご満悦のようだ。喜んでくれて何より。そのうちお手製を造ろう。
工房へと向かう。敷地が広く、まるで工場のそれは、一つ一つを手分けして大量生産していた。量産品にはあまり興味はない。どちらかというと、一点物を作る職人の方が気になった。案内してもらい、その手際を拝見する。黙々と作業する職人は、細やかな細工を施していた。
見本がないので、頭に設計図があるのだろう。仕事の邪魔をするのは無粋なので、そのまま声をかけずに見学する。
集中力が半端ないのか、俺達の存在に気が付いていない。案内者が職人に声をかけようとしたが、それは制した。
遠目から見ても、造りが確りした物になるだろう。装飾も細やかに、上作が出来ると予想出来る。マリアも鑑定にご熱心で、頭の中で算盤を弾いているだろう。
案内者によると、彼は無口に仕事を黙々とこなす人物との事なので、邪魔になる前にお暇した。深々と礼をする案内者、謝罪をしていたが、別に気にはしていない。完成品は高級商店で見れるのだから、もう一度見て回っても構わないだろう。
気がつけば日が傾き始めたので、小屋へと戻る様に促す。夕飯の準備もあるし、今日は早めの帰宅としよう。
「結構勉強になったわ。」
「それは良かった。俺もデザインの勉強になったよ。」
「綺麗な石があったね。」
「はい、宝石をあんなにふんだんに使う装飾品は初めて見ました。」
「あれの中に偽物あったわよ。どれかわかる?」
「いや、わからんな。偽物があったのか。ならその制作者は余程の贋作者なのだな。」
「何処に行っても偽物はある、と確信しただけでも、私は良い勉強になったわ。」
「偽物と本物の違いって何?」
「稀少価値だな。綺麗にもランクがあるんだよ。」
「そうなの?よくわからなかった。」
「はい、私にもさっぱりです。」
「これはあれね。財布は私か貴方が握った方が良いわね。」
「そうだな。」
馬車の中で歓談する。今日の出来事の感想を話する。楽しさが込み上げてくる。
「それにしても、アレね。テラスちゃんの銀髪を隠しただけで、視線が少なくなったわね。」
「それな。やっぱり銀髪の少女の存在はでかいな。やっぱりしばらくはウィッグを被って隠した方が良いな。」
「頭が痒いよ。それに暑い。」
「それは我慢してくれ。」
「うん。戻ったら脱いで良い?」
「良いよ。」
張り付くテラス。その柔らかな感触を堪能するように、俺も少しだけ身を寄せる。ジト目のマリア。何か言いたそうだが、何も言わなかった。
食料品の買い出しをし、俺達は小屋へと戻る。今日1日がとても充実した日になった。
夕食はシチュー、肉も沢山。ビビがよだれを垂らしそうな顔をする。
「では、いただきます。」
ロイド男爵との報告をしながら、食事をとる。今日は1日平和だっただけに、俺は上機嫌だ。ロイド男爵が俺の話を聞き流す位に。
ロイド男爵からの報告も大した事なく、簡単に報告会が終わる。
買ってきた果実酒を飲みながら、しばらくの歓談。ロイド男爵もご相伴に預かる。
「そういや、ロイド男爵はダッド団長とは仲が良いのか?そんな感じの会話の雰囲気があったぞ。」
「彼とは幼馴染みさ。兄貴分だね。」
だからか。ダッドの会話にロイド男爵を対等に扱うのも頷ける。
「なら、なんでその彼は此方に左遷されたんだ?王国の騎士団員だったんだろ?」
「それはね、彼が脳筋だったからだよ。」
「具体的に。」
「ん~、それは駄目かな。彼にもプライバシーはあるだろ?」
「それもそうだな。失礼した。」
「いいよ。気になるのは仕方ない事だしね。」
彼に何があったかは俺にはわからない。そこまでダッドの経緯を調べるのも好奇心なだけであり、首を突っ込んで、猫を殺す事になるのは避けたい。
「さて、そろそろお暇するよ。もう少しで草原小人との会談があるからね。体調は万全にしてくれよ。」
「わかった。また明日な。」
ロイド男爵が小屋を出る。まったりとした時間が流れる。
風呂に入る俺達。今日は機嫌が良いからか、久々に俺から身体を誘うとそれを包み込む三人の妻達。
テラスは抱擁的に、ビビは情熱的に、マリアは刺激的に。
蕩ける身体になりながら、俺はなお夢見心地になる。テラス達も俺に寄り添う。
また、寝床でも求めてしまう。連続のせいか、マリアが気絶してしまい、反省する事になったが、それだけ俺を受け止めてくれていると思い、そう受け止めた。テラスも左腕から離れない。ビビも足元で身体を丸くした。
今日は特別に良い事があった訳ではないが、充実した1日になった。そのまま、瞼を閉じ、俺は眠りについた。




