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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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2-4 なぜこうなった


 イライラする。何に対して?わからん。ただイライラする。怒りはある。不満もある。理不尽極まりない、は違うな。初めから理不尽とご都合だ。それは今さらだ。


「感情を高ぶらせたら、大事なものを見逃すかも知れませんよ。」


 テラスは抑揚無く話す。


 心を読まれているのが、癪に障るのか?違うな。これも今さらだ。


「1つ1つ、疑問を伝えてみては。」


 ムカつく!何故かムカつく!


「では、アオバソーイチが平静するまで、暫く私は黙りましょう。読心もしません。」


 目を瞑るテラス。


 ただただ、俺は心の中で感情を荒ぶらせていた。







「落ち着いた。もう大丈夫だ。」


 時間はかかったが、俺は荒ぶりを抑え込んだ。


「はい。」


 テラスの言葉には、感情は感じられないが、いつもの事だ。


 左目を開き、俺を見る。


 聴きたい事は沢山ある。とにかく、現状把握、強いては今後の対策は必須だ。だからこそ、溜まったものは吐き捨てさせてもらう。遠慮は無しだ。


「はい。私も話せるものは話します。」

「つまり、話せない事もあると。」

「はい。」

「その理由は?」

「話す内容によります。全てを知っている訳ではありません。」

「嘘はつかないな?」

「私は嘘をつけません。」

「その理由は?」

「私の言葉に結果が影響するからです。」

「ん、それは、運命を決める力があるという事か?」

「危険な質問です。黙秘します。」


 確かに、もしテラスに運命を決める力があった場合、この質問の肯定否定どちらも駄目だ。


「すまない、次は言葉を選ぶ。」

「はい。」


 ノーミソカラッポーにして会話したが、尋問になったな。違うそうじゃない。俺は話し合いが希望だ。


「はい、私もです。」


 何故か安堵した。言葉の力?いやそれより、これからの事だ。



「先ずは、地上のテラスの事だ。彼女はどんな存在だ?」

 危険な質問か?いや、危険なら、答えなければ良い。

「地上のテラスは、存在は私と同一です。そして、肉体、精神を持った別の個体です。」


 ん?よくわからん?


「アオバソーイチが私に「テラス」と名付け、極彩の蓮華によって産み出された個体です。」

「つまり、俺が産み出した。と?」

「私の存在を材料にして、を付け足しましょう。」

「存在を材料?」

「はい。」


 何か訳が解らなくなってきた。


「その為にも、アオバソーイチの事を伝えます。」


 ん?聴きたい事だが、そっちから話してくるのか?


「話し合いを希望なら、私も話せる事は話さなければいけません。私の話が終わってから、質問しても良いかと。」

「確かに。」


 納得したが、言葉の力ではない。何となくだがわかる。さっきの結果が云々は、俺の勘違いと理解した。なら、どんな意味が?


「よろしいですか。」

「あ、悪い。」

「はい、では。」



 話が長い、いや、俺の理解不足の為に長くなっので、纏めを伝える。



 俺には5つの力があるとの事。


 集中、解放、掌握、創造 癒しだ。


 白の世界は掌握で俺の世界になった。元は誰のかは黙秘された。これまで、沢山の黙秘があったが、理由は最後に言う。


 白の世界で移動手段として、集中と解放が培われたらしい。肉体、精神、理力(魔力)、思考、等の様々な干渉が出来るらしいが、無限バフと考えれば良いのか?


 そして、創造。これが物作りをする俺にとっては有り難いが、相当危険なものだった。

 一言では、材料があれば何でも創れる。だが、この「何でも」がヤバイ。

 神の力の一端となる、「極彩の蓮華」を器に宿したらしく、材料さえあれば、宇宙すら創れる力があるのではと思った。テラスは黙秘したが、それが証拠だ。チートにも程がある。


 何故、俺に「極彩の蓮華」を宿したのか?それは楔の件が原因である。


 楔が抜けた瞬間、俺の器は崩壊寸前だったらしい。テラスが咄嗟に「癒し」を分けて、事なきを得たが、集中、解放、掌握で強くなった器が、「癒し」で更に強化、巨大になり、「極彩の蓮華」を身に纏えたとなった。若返りはその時の副産物だった。




 力以外にも、テラスの加護、「癒し」を備えた。力ではなく加護だが、力で良いや。

 回復の力だが、4つの力を多大に使っても、直ぐに回復すると言ってた。テラスに負担は無いらしい。


 ここまで来るとこの能力はチート以上のバグと思った。まぁ、オレつえ~!には興味ないので、今後は行動には気を付けよう。



 神の一端になってしまったのか?と思ったが、肉体、精神、がある以上、神属は無いと断言され、安堵した。


 神なんぞ絶対つまらない。と俺は感じている。肉体、精神が無いならば、干渉もない。刺激も創作も無い。生物の概念か無くなるのは御免だ。



 異世界のご都合だが、俺のこんなバグ存在が歪みの原因らしい。


 この辺りから、俺は自分に呆れていた。ご都合すら大した事では無くなっていた。


 そして、黙秘だ。

「私は記憶を奥底に封印しました。直接関わる全てを禁意とし、開口しないようにしました。」

「理由は?」

「黙秘です。」

「それなら、言葉ではなく、行動は?肯定なら頷く、否定なら首を降る、とか?」

「それでしたら、多少は融通が効きます。ですが、直接関わる事は無理です。」

「わかった。」



 禁意。多分危険だからこそ、封印した。と解釈したほうが良いか?


 コク


 あ、何か可愛い。いや、違う。

 つまり、世界が危険になるのか?


 コク


 俺も危険になると、


 コクコク


 何故2回?

 では、テラスが防波堤になっているのか?


「黙秘します。」


 この答えに俺は居たたまれなくなった。この言葉にはテラスの責任の重みが含まれている。

 禁忌としての黙秘と仮定し、肯定も否定も許されない。確実に俺の身に何かがおこる。運命力を持つテラスが、少しでも外敵から逃そうとしているのがわかった。だが、何故そこまでする?助けた義理か?


 辛い。もういい。



「なぁ、俺に何か頼みとかあるか?」


 何故かこの言葉が出た。同情とか哀れみとかではない。何故だ?


「私には感情はありませんので、辛さもありません。ですがお願いならあります。」


 感情ないのに?


「はい、地上のテラスのお願いです。彼女に沢山の風景を見せてあげて下さい。」

「ん?地上のテラスの願い?」

「はい、地上のテラスとは繋がりがあります。思考は読めますので、私ではなく、彼女の願いを叶えてあげて下さい。」

「あぁ、それなら喜んで。」

「ありがとうございます。」


 その表情は笑顔に見えた。


「あ、なら今日だけど、俺が地上のテラスに問い詰めた時、かなり震えていたけど、何故だ?」

「彼女の記憶は、私の一部しかありません。それを話したら、捨てられるのでは、と考えたようです。」


 え?なんで?


「アオバソーイチとの信用を失う事に恐れたのです。」


 いやいや、・・・、いや、確かに平静ではなかったな俺。・・・。


「朝起きたら、また彼女に謝るよ。」

「今、彼女はアオバソーイチに愛感情がありますし、受胎願望もありますから、尚更離別はしたくないのでしょう。」


 うん、今サラっと凄いこと言ったよね。


 この会話って、地上のテラスにも?

「はい、伝わってます。」


 絶句・・・、思考停止・・・。


「どうかされましたか?」

「いや、駄目だよ、それは・・・。」

「そうですか。」


 平静のテラスとは対称的に、俺は困惑した。


 朝は大変だな。


 それだけしか考える事が出来なかった。







 暖かい



 プニッ



 柔らかい



 プニプニッ



 なにこの気持ちいい感触・・・




 目を覚ますと、俺が寝ていた木のベットに、テラスもいた。裸で。俺の腕は胸の膨らみに挟まれ、手は太ももに挟まれていた。

 彼女は寝息をたてながら、しっかりと俺の腕を抱きしめていた。



 驚愕した俺は、腕を離そうとすると、テラスは目を覚ました。


「あ、いや、その、あの。」


 言葉の出ない俺は、ただただテラスの綺麗な裸体を見ていた。

 体を起こしたテラスは、頭を俯いたままだ。顔は見えなかったが、首や耳が真っ赤だ。裸もそうだが、内面をさらされたのだ。恥ずかしくて死ぬ!が適切だろう。


「あ、あの、」


 俺は、言葉を詰まらせたが、テラスをゆっくり抱き寄せ、

「これからも、一緒に、いよう。うん。」


 これが限界だった。混乱?いや、テンパっていた。



 暫く、抱き寄せていた。どうすれば良いかわからなかった。


「はい、いっしょに、いたいです。」


 と小さな声で聞こえた時、二人で照れ笑いをしていた。



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