4-17 風呂での珍事
かぁ~、染みるわぁ~!
俺達はご厚意、というか褒美には風呂をいただいている。天然温泉の大浴場。ロイド男爵の吸収で持っていかれた力も回復するってもんだ。
「やっぱり、温泉は良いわね。」
「はい、家のお風呂も良いですが、こちらは別格です。」
「きもちいい。」
テラスさん、もっかい言って。
今は柔らかな感触と温泉を堪能している。本日の特等席はビビだ。俺を背もたれにし、くつろいでいる。
左にテラス、右にマリアが寄りそう。幸せ感触です。
「ねぇ、あんた、本当に疲れてんの?」
「ロイド男爵には結構持っていかれたが?」
「だって、ねぇ、それ・・・。」
あのね、疲れていても、魅力爆発攻撃をいただいてるんだし、しょうがないじゃないか。一部は元気になるってもんだ。
「それだけみんなが魅力的なんだって。」
「え?あ?せあ?その?・・・馬鹿!」
「あは、マリア、照れてる。」
そっぽを向くマリアが可愛らしかった。
主役のビビを抱き締める。
「お疲れさま。セバスは強かったかい?」
「はい、強かったです。あの勝負も紙一重でしたし、ソーイチ様の日々の指導のお陰です。ありがとうございます。」
「それはビビの努力さ。誇っていいよ。」
「いえ、まだまだです。私はまだまだと知りました。今後も御指導お願い致します。」
「いいよ。ビビが望むなら。」
抱き締めるとビビも返してくる。大きな双丘の感触が堪らないのは仕方ない。
「ソーイチ様が望むのでしたら、私はいつでも・・・。」
あ、うん。そうなるよね。でも、ここは他人の家だからね。自重しないとね。
戸が開く音。湯気の霞から誰かがはいってくる。
「どうだい?家の風呂は格別だろ?」
「よき勝負でしたよ。ほほほ。」
入ってきたのは、ロイド男爵とヒルリー婦人だ。臆面なく真っ裸ではいってきて、隠しもしない。
唖然とする俺。ヒルリー婦人の羞恥心の無さは知っていたが、ロイド男爵もとは驚きだった。因みに、ロイド男爵は女である。胸は殆ど無い。
「運動後の風呂は気持ち良いよねぇ。」
「本当に。贅沢の極みですわ。」
完全スルーか。俺がいるのに動じないのは流石と言おう。一部の興奮も収まったのは至極当然だ。
「あの、ソーイチさんが入っているんですけど?」
「構いませんわ。女は殿方に肌を見せる生き物でありましょう?」
「俺は男みたなものだし、今さら女を出す気はないよ。」
あ、うん。まるで興奮しない。マリアさん、腕をつねるの止めて下さい。
「セバスに勝ったビビには、皆が絶賛していたよ。あの人は若い頃、王国でも五本の指に入る位の実力者だったそうだし。今は引退して、父上に支えているが、腕は錆び付いていない筈だし、父上が称賛するのは当然さ。」
「ほほほ、セバスに勝てる者がいるとは思ってませんでした。ビビよ、大義でしたよ。」
「はい、ありがとうございます。」
困惑するビビ。急に来ては絶賛してだ。しかもペースは向こう。仕方ない。
「ロイドは鍛練が足りないのではなくて?」
「姉様、相手が悪すぎますよ。」
「ほほほ、そうでしたね。」
胸を大胆に見せつけながら会話をする二人。状況的にはエロい筈なのに、まるで興奮がないのは、彼女達に羞恥心が無いからだろう。
羞恥は興奮の香辛料とは、例えとしては失礼かもしれないが、妙に納得してしまう。
そして語り出すヒルリー婦人。
「彼は、セバスは、強者を待っていたのですよ。」
セバスの人生を。
★
彼は強かった。負けることはなかった。剣の才覚は天から頂き、少年期でも、大人を負かせていた。
天才と持て囃され、彼は更なる頂きを目指す。
大陸最強。
彼はそれを目指した。
青年期、王国を練り歩き、王都では、王の側近の目にとまり、聖騎士に抜擢される。
これが彼の目標を遠ざけた。
武は天才であれど、智は並みである彼は、度重なる政略に利用され、何人もの貴族や家族を殺害することになる。
心は荒み、人間不振となる。そして、夢を忘れた。
中年期。彼は王の側近の命令で、森の探索をすることになる。だが、それは側近の罠であり、暗殺計画であった。
彼は初めて逃げた。撤退などではなく、逃げた。冑を棄て鎧を棄て、剣を片手に森を駆け抜けた。
追っ手を倒しても指名手配され、戻れば死刑になり、敵は同僚だ。彼には逃げる事しか出来なかった。
森を抜け逃げきった彼は遠い地を目指す。山脈を抜けた東の森。そこなら追っ手は来ないと判断した。
問題は、抜け方。
ドワーフのドラゴンロードを使うには、ケルト市から許可証が必要。彼は手配が廻っていると思い、登山という強行にでる。
金銭が無く準備は整えられず、剣を売る。これが結局足になる。
彼は捕まる。ケルト侯爵に。
「貴様の真意を聞かせろ。」
「私は裏切られたのです。」
「聖騎士を殺しただろ?」
「同僚を殺してはおりません。」
「卿には殺傷許可が降りておるぞ。」
「口封じでございます。」
「ほう?ならば貴様の話を聞こう。」
彼は話す。罪を。殺しの罪を。利用され棄てられ殺されそうになった事実を。
「貴様は何故聖騎士になった?」
「強くなれると思ったからです。」
「貴様は何故貴族を殺した?」
「反逆罪と割りきっておりました。」
「貴様は何故同僚に殺されなかった?」
「死にたくなかったからです。」
間
「貴様は聖騎士として重罪の逃亡罪を認めた。貴様は犯罪奴隷となる。だが事実の確認まで、勾留とする。以上だ。」
彼は九死に一生を得た。
後日、彼は死んだ。ケルト侯爵の報である。
「貴様はこれからセバスと名乗り、儂の従者となってもらう。時が来たら貴様は儂の為に死ね。良いな。」
「畏まりました。」
「だが、褒美として死ぬ前に、貴様には強者と闘わせてやる。腕を鈍らせるな。」
「恐悦、至極で、ございます。」
★
長い語りだった。
セバスの人生にはそんな過酷な事があったと理解する。
「以来、セバスは父上様の護衛兼執事ですわ。そして、強者が現れましたわ。それに負けた。実力で。セバスは、来るべき日の為に死ぬ覚悟を持つ剣士に戻るでしょうね。」
「時間はかかったけどね。セバスの夢は叶わなかったけど、破った理由が自分より強い者なら、諦めもつくだろう?」
それはわかる。だが、
「確かにな。なぁ、それで、王の側近って誰だ?」
「沼だよ、そこは。君は来ては行けない。」
「そうですわね。そこはケルト家の問題ですわね。貴方は関わらないほうが良いと思いますわ。それに、貴方には守るべき人がいるでしょう?危険に晒される行為はお止めなさい。」
目線を変える。その先には床に寝そべるテラスとマリアがいた。のぼせたのだ。ビビが介抱している。
「セバスの晴れやかな顔。この世に悔いは無いのでしょうね。」
「後はタイミングを見計らって、行動か。まだまだ先になるだろうけど、準備はしておいたほうが良いかもしれないな。」
「それは貴方の仕事よ、ロイド。」
「わかってますって。」
二人は話す。ケルト家の今後を。俺には声を出すことも出来ない。彼等には彼等の意地があるだろう。
「何故俺に、このような話を?」
「何故かしらね?きっとセバスの晴れやかな顔をさせた褒美、かしら?」
「大丈夫。ケルトは潰れないし、セバスも死なせないさ。父上は大袈裟なんだよ。」
本当に?対策をたてているからか?フラグじゃないのか?
「さて、上がりますか。俺のフルヌードを見たんだ。吸収の件はチャラにしてくれよ。」
「あらロイド、それでは安いわね。一晩くらい相手してもよろしいのではなくて?」
「それはない。」
俺も無い。
「では、ごきげんよう。料理長が食事を準備はしておりますから、貴殿方も早くあがるのですよ。」
「それはありがとうございます。」
「ふふふ。」
妖淫なヒルリー婦人があがる。彼女等の着替えが終わったら俺達も上がろう。
それはともかく、
「床、気持ち良いか?」
「ヒンヤリ気持ちいい。」
「お水、頂戴。」
「脱衣場で休ませますね。」
「任せた。」
テラスとマリアの介抱が先だったのは言うまでもない。




