4-15 日常変化
その夜、未完成の水鉄砲を完成させる為に、工房に籠った。いつもは一人で籠るのだが、今日は皆で一緒に籠っている。
昼間の家族会議の結果、マリアの癇癪を抑えるためにも作成時の共同作業を行う事にした。
「文句あんの?」
マリアのジト目に笑顔で返す。何にせよ、マリアの情緒不安定は自分の自信の無さが原因だ。なら自信をつけさせれば良い。マリアの秘めた力を引き出してやれば、それが自信になるだろう。
マリアの視る力。見えるではなく、視る。鑑定や本質理解は序の口の筈だ。まだまだ伸びしろがある考えを教え、鍛える事にした。
「そんなに変わるの?私はトンでもは嫌よ。」
「それはマリアの裁量次第だ。」
まあ、どんな能力になるかはマリア次第だし、こればかりは日頃の努力を習慣つける。
話が逸れたので、水鉄砲に戻す。
マリアに図面と実物を見せ、仕組みをしっかりと伝える。力学的の専門用語は必要ないが、この武器が非殺を主として造られている説明をする。
「でも、これが私の能力に何か関係するの?」
「銃は体術を必要としないし、視るを使って狙う事をすれば、命中率も高いと思ったんだよ。」
「弩の時もそうだけど、私に射撃をやらせるのは、そんな理由なのかしら?」
「嫌か?」
「違うわよ!もう、馬鹿!」
マリアが怒ってしまった。正直、女心はわからない。
「いいから、さっさと完成させましょう。」
足りない部品を組み込みながら、水鉄砲の完成を近づける。
マリアの提案で、威力の強弱が出来るように修正している。
水圧、空気圧、運動エネルギー等の調整に時間がかかりそうだが、試射しながら完成に近づけていこう。まあ、あれこれ考えてもトンでも武器にはかわりないんだがな。
テラスとビビは文字の勉強中だ。1つ1つ丁寧に教えるテラスがビビをやる気にさせる。
問題をだし、正解したらしっかり褒め、間違えたら正解を教え反復する。
あぁ、学生時代を思い出す。
ビビもテラスの期待に応えたいが為に必死に勉強を頑張っている。俺の思惑とは違うが、覚えたなら結果は一緒なので構わない。頑張ってもらおう。
★
朝、皆を起こさぬように起きるが、ビビに気づかれてしまう。
「おはよう。」
「はい、おはようございます。」
朝の修練はお休みにし、今日は水鉄砲の試射を行う。
「最低威力から、少しずつあげていこう。ビビはサポートをお願いするよ。」
「はい、わかりました。」
不思議そうに水鉄砲を見るビビ。こんな武器見たこと無い筈だし、仕方がないだろう。
壁に的を作る。木の板の的。
30メートル程離れて構える。
照準。
発射!
パンッ!
銃口から、勢いよく水球弾が発射され、的に当たる。
水浸しの的。威力としては、痛みを感じる程だろうか。これで最低威力と考えると、最大威力はどうなることかと苦笑してしまう。
後、気になること。多少のラグと反動だ。
最低威力でも、しっかりと反動があった。やはり、水圧、空気圧を利用したからだろう。
そしてラグ。0.1秒程遅いか?今は試作品だし、改良していこう。
さて、
「テラスとマリアを起こそうか。勝手に進めたらマリアに怒られるかもしれないからな。」
「確かに、そうですね。」
クスッと微笑みながら、ビビは二人を起こしに行った。
この後、マリアの射撃練習に付き添う事になる。弩の練習をしていたが、拳銃と狙い方に多少の誤差はあるものの、びっくりどっきり武器であることには間違いないので、直ぐに順応してくれた。
「これで最小威力なの?」
「体勢を崩す位の威力だな。怪我もしないし、死にはしないさ。」
「あのね・・・。まぁいいわ。」
呆れるマリア。多分最大威力を想像したのだろう。試しに5割で試射する。
バシュッ!
射撃音が木霊する。反動で体勢を崩すマリアだが、倒れる事はなかった。
「あっぶな!それはそうと、的が壊れたわね・・・。」
「重い正拳一発って所か。気絶させるには丁度良いかもな。」
「ねぇ、本当に大丈夫?」
何を心配してるのか?
「死なない、わよね?」
「これくらいじゃ人は死なんよ。」
「なら、良いけど。」
本番。最大威力を試す。危ないので俺が試射する。的を新しく取り付け、立ち位置で構える。
ボッ!!
身体が一瞬浮く感覚。大型拳銃を射ったような重い反動。
的は残っている。だが、穴が空いていた。
「貫通力があるようだな。」
「馬っ鹿!」
最大威力は普通の拳銃と大して変わらない物だった。マリアも威力に驚愕する。
確かに、水は密度と速度に比例して固くなる。最大威力は金属と同等の固さになるのだろう。
「巨大獣にでも使えば良いだろ?」
「弩があるんですけど?」
「まぁ、あははは・・・。」
笑って誤魔化すが、マリアは耳をつねる。痛いので止めてほしい。
「兎に角、使いながら改良をしていこう。必要なら付属品も造ればいい。マリアは朝夕に練習してくれよ。」
「わかったわよ!まったく。」
呆れるマリアにも見慣れる。精神的に踏ん切りがついたからか、マリアからの追撃はなかった。
今日の観光も中止して、鍛練に励む。ブライアンから水鉄砲の質問があったが、魔法の杖と誤魔化した。ま、無理があるのはわかっている。困惑するブライアンだが、話題を変える。
「今日は足運びを教えてやろう。」
「はい!ありがとうございます!」
チョロい。不謹慎だが、今回は許してもらおう。
ブライアンには、流の簡単な足運びを教える。下半身強化に体幹強化や重心安定を増加させるので、初心者にはもってこいの鍛練だ。
「キツいです。」
「初めはな。」
音を上げるブライアンに発破をかける。足腰鍛えなければ先になんかいけないのだから、今後も鍛練を続ける意味を教える。そして、
「仕事は疎かにしない。わかっているな?」
「はい!勿論でございます!」
初やつだ。ここまで素直な奴はなかなかにいない。今度一緒に飯でも食うか。
ビビの視線が少し痛かったのは気のせいにした。
★
夜の報告として、ロイド男爵が訪れる。
「自警ギルドの連絡で、君に絡んだチンピラ二人が捕まった。どうする?」
「任せる。」
即答の俺に、呆気となるロイド男爵。正直、チンピラ無勢なんかどうでもいい。
「抜剣した奴の仲間だから、重罪になるんだが?君の采配を聞きたいんだがね?」
「だから任せる。好きにしてくれ。」
「そうかい。」
恐喝とか、暴行の償いなんかしないだろうし、犯罪奴隷に落ちて終わりにすればいいさ。
「それより、ゼノスはどうなった?」
「正直言うと難航している。追い詰めているんだけど、口を割らないんだよね。拷問して死なせる訳にもいかないし、持久戦になるだろうな。」
「時間稼ぎか?」
「多分。」
ゼノスの安直な油断はあったものの、奴も実力者なのは間違いない。引き取り人を待っているのだろう。
「ま、気長にやるさ。で、君達はこれからどうするんだい?」
「ここでしばらく過ごす事にするさ。環境に順応してからでも観光は出来るしな。護衛は休ませて良いぞ。」
「環境って・・・。君達の場合、戦力向上にしか見えないんだがね。ブライアンも巻き込んで。」
「失礼な。彼の希望を叶えただけだぞ。」
「やれやれ・・・。」
ロイド男爵の呆れ顔にも飽きてきた。いい加減慣れてほしい。
「折角だ。今度セバスと模擬戦でもしてみたらどうだい?彼も強いよ。」
「なら、ビビにやらせたいな。どうだい?」
「はい!やらせて下さい!」
喜ぶビビ。尻尾をブンブン振っている。
「ビビ君も強いからね、良いと思うよ。あ、やるときは見学するから、勝手にやらないでくれよ。」
「物見遊山か?」
「失礼な!」
ロイド男爵の仕事上、朝一になるのは間違いないだろう。今はゼノスの件もあるし、休む訳にもいかないだろう。
「明日の朝一にお邪魔するか。伝えといてくれ。」
「気が早いね。」
とか言うロイド男爵も笑顔だ。娯楽として楽しみなのだろう。
「わかった。明日の朝一だな。セバスには伝えといておくよ。」
手をひらひらと降りながら、小屋を出るロイド男爵。素早い撤収に明日の期待を感じずにはいられない。
「さ、風呂に入って寝るか。疲れは残したくないしな。」
「お風呂!」
「もうくたくたよ。お風呂で寝ちゃうかも。」
「明日が楽しみです。」
支度する女性陣。俺も風呂を沸かす。
風呂で、テラスと他愛ない会話をし、ビビとはセバスとの模擬戦の対策を考え、マリアにはマッサージをする。オシリをムニムニしたのは愛嬌だ。
明日を楽しみに今日は休む。ビビには頑張ってほしい。マリアにも視るを養ういい機会だな。模擬戦に勝っても負けても反省会をして、今後の対策にしても良いな。うん、楽しみだ。
俺は、明日の予定を思案した。




