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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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4-10 市内観光 その3


 今、俺達は穏やかな昼食をいただいている。高級商店が並ぶ地区の一角、ロイド男爵おすすめの店だ。

 ここはケルト市の中央依り北東に位置する高級地区。資本豊かな人々が往来する。治安維持にも力をいれており、兵士の数がやたらと多いのが、治安の良さを示している。馬車は裏の大通りに停車してある。ブライアンは留守番だ。


 この辺りに兵士を配置してるから、自警ギルドが必要になるのか?


 邪推する。資本豊かとなれば、ケルト市の貴族や大商人等、身分や地位の高いヒトになるだろう。税金も多く払っているのだから、防衛に力を入れさせているのかもしれない。


 この辺は当然の行為だな。


 そのおかげで、俺達は穏やかな昼食をいただいているのだから、感謝したほうが良いだろう。


 大机一杯にならぶ料理。どう見ても四人分の量ではないが、殆どがビビの胃袋に入るから問題はない。

 店の従者には、前金に金貨一枚、給仕にはチップを銀貨一枚を渡してある。見栄ではない。食材大量消費がおきるため、仕入れをしなければいけなくなる事を考慮した。金貨一枚。それが結構な金額と思ったのは、給仕の手が震え、支配人と料理長が挨拶に来たからだ。


「貴様らに迷惑をかける。その代金だ。取っておけ。美味い料理を頼むぞ。」


 馴れない言葉使いは仕方ない。その内馴れるだろう。


 そして並ぶ自慢の料理。焼きや煮込みが殆どがだったが、味付けはしっかりしており、ロイド男爵がすすめるのも頷けた。野菜の甘味が効いたスープや香草効かせた肉料理、野菜の酢漬け、卵料理等少ない調味料でも、素材の旨味を生かした料理だ。さて、ビビの胃袋を考えてもまだ足りないので、料理を追加する。鶏肉料理も追加した。ビビの大好物。ブライアンにお土産も忘れない。

 苦笑する支配人。金貨一枚の意味がわかったのだろう。至急人員を手配し、食材仕入を急がせるのが見えた。


 まぁ、消費は経済を回す。発展の道にもなるから、必要分は使っていこう。浪費はしない。


 満足の昼食だった。食後のシャンパンが口腔内を洗い流す。テラスはフルーツジュースだ。

 シャンパンがあったのは意外だった。やはり、果物の加工や醸造は発展していると考えていいな。ただ、流通が行き届いてないだけだ。


 そして、想う。


 満腹はなぜこんなにも人を幸せにするのか?


 至福の時間を微睡む。支配人が頬をひきつり笑顔さえしていなければだが。



「もしや、アオバ男爵でいらっしゃいますか?」

「はい、そうですが?」


 唐突に声をかけられる。若い青年。身整えた格好。後ろに従者も二人いた。貴族であろう。


「私は、この地区を纏める者です。ヤクル士爵です。お見知りおきを。」


 軽い礼。往来で方膝を付く事はしない。


 ヤクル士爵。自己紹介のついでに役職を聞いたが、(マツリ)で流通を携わっているようだ。やはり流通商は美味しい仕事のようだ。せっかくだ、話を聞こう。


 彼は俺の徐爵式に出席していたようで、顔を知っていたようだ。


 ならば、彼にとっては俺の出世は妬ましいだろうと勘ぐる。一般が貴族、男爵の地位、それに侯爵の使者だ。嫉妬の念があってもおかしくない。だが、彼にはそれがないのは話してわかった。


「ケルト侯爵様は、無能者に爵位を徐爵する事など有り得ません。嫉妬は、失礼ながら多少ですが確かにあります。ですが、私も市民からの成り上がりです。市民も功績を挙げれば男爵の目もあると実証していただいたのですから、感謝の念が大きいのです。」


 うん、いい奴だ。だが、正直過ぎるな。計算とも思えない。利用されて捨てられない事を祈ろう。

 俺の徐爵が彼のやる気になったのなら、貴族になったのにも意味がでるものだ。


 軽い挨拶の後、交流を深めた。情報は大事だが、今は他愛ない話で終わらせる。はずが、


「香辛料、調味料ですか?」

「食を豊かにする粉だ。流通を強化してもいいんじゃないか?」

「成る程。」


 ヤクルは真剣に俺の話を聞く。こんなにも素直に聞かれると、此方がペラペラ話してしまいそうだ。


「ん、では、私はこれで失礼するよ。今から妻達の買い物をしなければいけないのでね。」

「そうでしたか。私にお時間を頂きありがとうございました。今度、ゆっくりお話をお聞きしたいのですが、連絡先を聞いてもよろしいでしょうか?」

「今はケルト侯爵様の邸舘でお世話になっているので連絡したいのなら、そこに頼む。」

「は?あ、あの、ケルト侯爵様の邸舘ですか・・・。」


 さて、ヤクルがどうでるか。俺とケルト侯爵のパイプを狙ったのか、それとも俺自信に興味があるのか、ケルト侯爵を無視して俺に連絡を寄越せるか?見ものだ。


 意地の悪い表情にでもなったのか、テラスに頬を摘ままれた。ごめんなさい。


 席を立ち、商店に足を向ける。


 ヤクルの緊張が解けたのを見るに、彼にも賭けがあったのだろう。市民を護る義務を怠らなければ、多少の協力位は出来るだろう。あとは、信用だな。頑張ってもらいたい。


 俺達は高級商店に向かった。





 通りは他と違っていた。ここだけ近代を思わせる並び。ガラス張りの商品展開を始め、総合小売大型店舗、街灯らしき物まであった。


 ある意味異質な街並みとなっている。


 そして、そこは戦場と化した。


 大げさだが、買い物がここまで多いとは思っていなかった為である。マリア曰く、

「必要な物しか、買ってないわよ?」

「いやいや、それにしては買いすぎだろ?無限保管があるからいいが、無かったらどうしてたんだよ?」

「それがあるから、買っているのよ。あとそうね、家財道具も欲しいわね。」

「まだあるのか?なら、造った方が早くないか?」

「あのね、私は、普通の物が欲しいの。普通の!あんたはトンでも造るから、気楽に使えないの。わかる?」


 酷い!ねぇ、酷くない?


「でも、ここは値段が高いけど、何でも揃って良いわね。ヴェルケスもこうなって欲しいわね。」

「アーノさんやフリード子爵なら、上手くやるさ。」

「それもそうね。あ!あれも欲しい!」

「勘弁してくれ。」


 いくらロイド男爵から金貨を大量な貰ったからといっても限度があるだろ。金貨5枚は消えたぞ。


 まだまだ余裕はあるが、金稼ぎの手段がないのだから、散財は止めて頂きたい。まぁ、そのせいか、大分充実した環境にはなるだろう。


 テラスは蜜飴をなめている。御満悦だ。ビビも一緒になってなめている光景が微笑ましい。


 噂を聞き付けたのか、キャッチ的な売り子か来るが、マリアは全てをはね除ける。


「大概駄物しか扱ってないのよ。こういう奴等は。」


 マリアさん、怖い。


「おや、ヴェルケスのアーノの小娘ではないか。」


 気色悪い声が聞こえた。近寄る男性。中年、髪が薄く、身なり良い服装なのだが、太った体格のせいで似合わない。残念な人といえる。


「っ!ゼノス・・・。」

「名前を覚えて頂き光栄。人を覚える知恵は身に付けたようだな。」

 癪に障る言い方をする男。ゼノス。ケルト市商工ギルドのギルドマスター。



 マリアの顔色がみるみる赤くなる。怒気を発し、興奮状態になる。


 デジャブというか何と言うか。


「それで、小娘が何の用で私のシマに来た。偵察か?交渉か?それとも男漁りか?」


 嫌味に脂をのせるゼノス。最後の一言が無ければ穏便に済ませたものを。


 マリアの前にでて、ゼノスに問う。


「貴様は誰だ?」


 勿論、わざと聞く。


「貴様こそ誰だ?小娘の小飼か?それとも、悪趣味な性癖の持ち主か?」


 この後の反応が楽しみになる。


 錫杖をだす。


「私はアオバ男爵。ケルト侯爵様の使者であり、マリアは私の妻だが?」

「はっ?・・・戯れ言を。小娘が男爵の妻?ふっ、有り得ん!」


 お?嘘つき呼ばわりか?


「まあ良いわ。久々な顔を見て機嫌が良い。ゆっくり偵察なり交渉なりするが良い。」


 立ち去ろうとするゼノス。


 勿論、逃がさない。


「待て!貴様、私の質問に答えてないぞ。それとも私を詐欺師扱いしてただで済むと思っているのか?」

「え?あの?何の、事ですか?」


 腕を掴み、逃亡を阻止する。


「悪趣味な性癖の持ち主なのか、私は?」

「誰がその様な事を、ぐぁっ!」


 握りを強くする。骨が軋む音が聞こえる。


「答えろ!貴様は誰だ!」


 激痛に俺の声が聞こえていないのか、痛がるばかりに身を捩る。


 腕を離し胸ぐらを掴み寄せる。

「私にこんな事をして、ただで済むと・・・。ぎぐぅ・・・。」

「これで最後だ!貴様は誰だ?」


 威圧をかける。脂汗を垂れ流し、言葉を詰まらせるゼノス。混乱しているだろう。


「ぜ、ゼノスと、申します。」

「職は?」

「しがない、商店を、しております。」

「ほう?商工ギルドに同じ名を持つ者がいるが、同名か?」


 固まるゼノス。脂汗が滴り、気持ちが悪い。


 この騒動に兵士が駆け付けて来た。早い対応に驚いたが、近くにいたのだろう。


 身分を証し、事情話す。勿論、不敬罪だ。それは重罪を意味する。


「ゼノス、年貢の納め時だな。」


 兵士の言葉。ゼノスに信用はまるでないようだ。商店の店員や通行人に笑顔がある。かなり悪どい事をしていたようだ。

 気になる事は、ロイド男爵の話と少し違う事だが?貴族には金の信用があったという事なのだろうか?


「では、アオバ男爵、失礼します。ゼノスには相応の罰が待っております。」

「任せた。」

「はっ!」


 連行されるゼノス。歓声があがり、皆が俺を称賛する。こんなにも喜ばれるとは。ゼノスはかなりの悪人だったのだな。マリアも笑っていた。


「あいつ、死刑になったぞ。良いのか?」

「構わないわ!ヴェルケスの時にも散々だったから、良心の呵責なんかないわ。いいざまよ!」

「なら良い。」


 本物の悪人だった。呵責がないのが証拠だ。


 その後大変だった。


 商店の方々からの数々のお礼を渡される事になった。その量は大量で、断るのも悪いのでありがたくいただこうかと思ったが、マリアの助言もあり、貴族とのパイプを狙った奴がいたので、全部断る事にした。


 これが賄賂か。商魂逞しい。


 そのかわりに、必要な物を買う事にした。



 時間もかかり、本日の観光はここで終了となった。


 病院には行けなかったが、明日にでも行ってみよう。


 俺達は歓声の中、宿に向かう事にした。


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