4-8 市内観光 その1
あまりにもタイトルが内容と矛盾しておりますので、変更致します。今は仮として未定にしておりますが、決定次第変更致します。
読んで頂いております皆様に困惑を招く行動ではありますが、この物語を続けるために必要な事と判断し、また、未熟な自身の戒めとしました。これからも精進してまいりますので、今後ともこの作品をよろしくお願い致します。
ケルト家で朝を迎える。何時ものように、日の出に合わせ体を起こす。
その気配を察知するのか、ビビも起きる。
「おはよう、ございます。」
「うん、おはよう。」
まだ夢見心地のビビ。服がはだけ、胸やら太ももやらがあらわになってとても艶かしい。朝から眼福である。
テラスの拘束をほどき、ベットを抜ける。動きやすい服に着替えて、外庭に向かう。朝の鍛練だ。
最近の鍛練は、実践形式の乱取り中心に行っている。
お互い短棍を持ち、構える。
棍術は手の延長、体の一部。棍先にまで意識を集中し、打ち込みを始める。
隙の無い流れる円の動き、体捌きを加え球の動きへ昇華させる。間合いに入る棍を捌く。
ビビの動きは滑らかで、延びがある。動きは卵型のような楕円型だが、それはビビの直線の動きが起因している。
突進力がビビの持ち味。そこに球の動きを加え隙を無くす。今の形が出来上がった。
カンカンカカカカン。
突き、払い、お互い棍を打ち込みあう。例えるなら、陣取り合戦のように、相手の球の間合いを潰していく。
ビビは、隙あらば一閃の突きを繰り出す。それを避け、棍を凪ぎる。
カン!
ビビは突いた棍を素早く引き下げ、持ち手を前にスライドさせ、俺の棍を防ぐ。以前のビビは防げなかった凪ぎ。上達が凄まじい。
「やるな!」
俺はおもわず言葉にする。突進力に優れたビビだが、俺は捌きに一日の長がある。だが、それも追い付かれそうだ。
ビビの息が荒い。間合いをとり、一拍置く。
「いえ、まだまだです。」
深呼吸して、呼吸を整えるビビ。みるみると回復していく。
「行きます!」
「来い!」
俺達は打ち込みを続ける。
しばらくして気が付くと、セバスがこちらを静観していた。
「止め。おはようございます、セバスさん。」
動きを止め、セバスに挨拶をする。
「おはようございます、ソーイチ様、ビビ様。」
持っていたタオルを渡してくれた。
「風呂の準備は整えてございますので、朝食の前に汗を流されては如何かと。」
「ありがとうございます。そうさせていただきます。」
なんというか、ごく自然に執事をしているセバス。これが最上位の従者かと思うと、意識の高さに脱帽する。
「朝から騒がしかったですか?」
「いえ、そんな事はございません。」
表情を変えず返答するセバス。まだ動いていないのは、呼吸が荒れているビビの回復を待っているからだ。
「とても素晴らしい棒術を見せて頂きました。お二人は達人でいらっしゃる。」
「いや、上には上がいます。私達なぞまだまだですよ。」
「そうでございますか。お心もご立派でらっしゃる。」
なんか、凄い褒められてるんだけど。いや、仕事上の持ち上げだろう。鵜呑みにしないようにしよう。
「さて、ビビも回復した所だし、私達は風呂で汗を流させていただきます。」
「畏まりました。」
セバスの案内で風呂に向かう。途中、テラスとマリアが来るだろうと付け加える。
風呂で朝の反省会をする。結構これ大事。お互いの印象を言葉にし、今後の対策に繋げる。
ケルト家の風呂は温泉だ。源泉掛け流しのようで、とても贅沢だ。分けてもらいたい。
さて、テラスとマリアも駆けつけてきた。
「おはよー。」
「おはよ。」
「ああ、おはよう。」
「はい、おはようございます。」
挨拶大事である。皆起き揃ったし風呂で今日の予定をたてようとしたが、
「ロイド男爵から観光地図をもらってからにしましょ。」
の一言で保留となった。
「折角の温泉よ。ゆっくりしたいわ。」
「それは同意。」
あまり長湯は出来ないが、天然温泉に浸かるなんて滅多に無いだろうし、満喫させてもらう。
小屋にも温泉装置造るか。貯水槽の改良と水循環炉を造れば、人工温泉造れる筈だ。材料を探すか。
山の地下水を高温で熱するから温泉になる。その仕組みを造れば良い。
あと、試しの実験をする。
「何するの?」
「実験だよ。」
無限保管から砂漠百足の紫水晶をだす。
何故これが、あの砂漠の中にあったか。それを考えて1つの可能性を考えた。
水分を奪う。である。
掛け流しの所に、紫水晶を添える。
どんどんお湯を吸う紫水晶。仮説は当たりのようだ。
「なるほどね。これを利用して、自分のテリトリーを大きくするのね。」
「理に叶った仕様だな。」
紫水晶は水分をどんどん吸っている。沢山吸い込んだ筈なのに大きくならないのが不思議だ。体積もどうなっているんだ?重くもならない。質量保存の法則も完全無視されている。
これはあまり調子にのると大変な事にもなりかねないし、今はこの位で止めておこう。
「さ、朝食の時間になるかもしれないから、上がってしまおう。」
「もう少しだけ入りたいけど、ここ人ん家ね。遅れたら失礼よね。名残惜しいけどそうするわ。」
渋るマリアだったが、諦めてくれて何よりだ。
自分等で用意した服に着替えて、広間へと向かう。
正直、高級旅館に来た気分になったのは言うまでもない。
★
ケルト家全員と顔を会わせ挨拶する。修練の音を響かせ迷惑かけたと思い謝罪するが、
「若い頃のロイドを思い出したぞ。あの時はセバスに稽古をつけてもらっていてな。」
「そうそう。セバスは剣も一流で、あの頃はコテンパンにされてたな。」
「懐かしさもあり、丁度良い目覚ましでしたわ。」
「勘弁してくれ。」
ケルト家は仲が良いようで和気藹々している。ロイド男爵は、過去を弄られ困惑している。夜のイメージと違っていたの違和感を感じる。修練が迷惑でなくて安堵した。
それにしてもセバスの剣術が一流とは。冷静で筋が伸びた姿勢は、ここからきているようだ。
軽めの朝食。パンと卵料理だった。美味かったがちょっと足りない。観光している時に間食しよう。
朝食も終わり、
「では、行ってくる。」
「いってらっしゃいませ、シュタイナー様。」
朝のほのぼの一変、ケルト家が険しい顔つきになる。シュタイナー男爵は自分の仕事場へ向かった。
「セバスよ、予定を聞かせろ。」
「はい、畏まりました。」
ケルト侯爵は自室へ向かう。
「では、妾も失礼しますよ。」
ヒルリー婦人も退室した。
「仕事モードに入ったのさ。はい、約束のブツだ。」
ロイド男爵から地図を渡される。市内観光用の地図で、要所が記載されている。
「ガイドしてあげたいのは山々だが、俺にも仕事があってな。一応注意書もあるから、読んでくれ。じゃあな。」
ロイド男爵は言いたい事を一方的に伝え、退室した。ここで地図を開きたかったが、従者の片付けが出来なくなるので、客室に戻った。
地図を広げ、さて、何処行こう?
「各々候補を1つ挙げるのはどうだ?」
「良いわね。私は高級商店ね。」
「闘技場、ですか?自警ギルドが演習をやっているみたいです。」
「蜜屋がある!行きたい!」
マリア、ビビ、テラスと行きたい候補を挙げた。俺は、
「病院に行ってみたい。」
「はぁ?何故そこ?」
「この世界の治療法や薬の知識を知りたいんだよ。まぁ、工房と迷ったけど、知らない知識を得る方が有用と思ったのさ。」
「あんたらしいわ。」
呆れ顔のマリア。まぁ俺のは確かに観光ではない。
「さ、希望も出したし、順番を選ぼう。」
俺達四人は心を踊らせながら、地図を参考に順番を決める事にした。
★
俺の希望先は最後にした。観光なのだし、楽しくしたい。俺のは勉強な訳だし、女性陣にはつまらないだろう。なので最後。今日中に行けなくても構わないと伝えた。
するとビビが遠慮を始めてしまった。俺が退いたのが裏目になった。ので、
「ビビの闘技場を一番目にしよう。俺も闘技場の建造技術を拝めるし、それなら俺が一番手になるだろ?」
ちょっと苦しいか?いや、かなり、だな。
テラスとマリアにも手伝ってもらい、渋るビビを説得した。闘技場が一番手、昼食を挟み、高級商店と蜜屋、最後に病院となった。
「決まったし、行くか。」
俺達がお暇しようとした時、玄関にセバスがいた。
「御世話になりました。」
「いえ、またいらして下さいませ。宿は予約をしてあります。また、希望に添わないようでしたら、お言いつけ下さいませ。他の宿を準備致します。」
「何から何までありがとうございます。それと1つ伺いたいのですが、大きな音を起てても大丈夫な空地なんかありませんか?」
「空地、ですか?」
少し疑問な表情のセバス。
「はい、朝の鍛練の為なんですが。」
表情が晴れるセバス。俺達の修練光景を目の当たりにいたからだろう。納得したようだ。
「でしたら、この丘のすぐ下にあります空地など如何でしょうか?宿からも近くですし、都合良いかと思います。」
地図を出して場所を示す。
地図上では分かりにくいが、ここの直ぐ近くだし先に行ってみよう。
「ありがとうございます。行ってみますね。」
「お役にたて、光栄です。」
綺麗な礼をするセバス。一々格好いい。
レンとイトは玄関外で待機をしていた。従者の対応に満足しているのか、機嫌が良い。
「馬車は通行出来る路が限られております。よろしければ、従者をつけますが?」
そこで気付く。俺達が観光しているあいだ、レンとイトを何処に預けるか?放置は盗難され論外。宿屋は対応にもよる。ならば、いっそお願いするか。ビビとマリアには従者の格好させなくて済むし。
「そう、ですね。お願いします。ですが、私達が宿にいる間、従者はどうするのですか?」
「奉公の形にします。ソーイチ様が滞在中、屋敷と宿を往復させます。」
それは大変だな。手間もかかるが。
「その位は当たり前よ。宿は近いし、奉公は日の出から日の入りまでだから大丈夫よ。」
マリアが付け加える。なら平気か。
「馬達の面倒をみます、ブライアンと申します。朝の稽古を拝見させて頂きました。とてもお強いのですね。」
青年従者のブライアンが挨拶をする。年は10代半ばだろうか?いや、見た目がそうなだけかもしれない。
「20才までは、普通の成長速度よ。ここから老けるのが遅くなるの。」
マリア解説感謝。
「馬従を承っておりますので、馬の事ならお任せ下さいませ。この子達はとても賢いので、お世話も遣り甲斐があります。」
「宜しく、ブライアン。レンとイトを頼んだよ。」
「はい!お任せ下さいませ!」
さて、移動はブライアンに任せよう。ただ、今さらだがあまりチートを使う訳にいかなくなったが、何とかなるだろう。
馬車に乗り込む。ブライアンは卸者席だ。またそこで気付いたが、荷台に紋章が張り付けられていた。これは、ケルト家の紋章だった。
「ソーイチ様はニール様の使者でございます故、ケルト家に携わる者となります故、紋章を着けさせて頂きました。」
「つまり、ケルト家に恥じる行為は慎め、と言った所ですね。」
貴族の責任を再確認させられてしまった。紋章1つだが、結構重い。
セバスは無言で礼をする。
「では、失礼します。侯爵様、ご家族方々によろしくお伝え下さい。」
「はい、畏まりました。またの来訪御待ちしております。」
ブライアンの合図で、レンとイトが歩みだす。蹄の音が喉かに響く。
今日も良い天気だ。
俺達は心を踊らせながら、空地へ向かって行った。
★
まず、目的地は空地。
移動しながらブライアンと経路計画をたてる。馬従とあり、街の路には詳しく、地図には無い道等も説明してくれた。
空地はすぐ近くにあった。あまり広くはないが、修練には影響はない。宿屋も徒歩半刻以内。すぐ近くだ。
辺りは城壁の残骸らしき物があり、塀となっている。整地はされていない。
「この辺りは、ケルト様の敷地になります。他の貴族様が利用する事はありません。」
つまり、ケルト家に御世話になりっぱなしな訳だ。これなら、ケルト家に滞在していた方が良かったかもしれない。まぁ、今更だ。
「つまり、誰も来ないし、目立たない、と?」
「はい、ケルト様邸館とは別の道ですし、この奥は行き止まりです。誰も来る事は無いでしょう。」
決まりだな。
ここを、我等の、拠点と、する。
小屋を出せる空間はある。修練も出来る。目立たない。もってこいの立地だった。隙を見て小屋を出そう。
「ここで修練されるのですか?」
「そうだね。ここなら誰にも迷惑をかけずに出来るだろう。」
「あの、御迷惑でなければですが、見学してもよろしいですか?」
「ん?」
「あ!いえ、失礼しました!」
何故か慌てるブライアン。進言が失礼になるのか?
「構わないが、興味があるのか?」
「はい!強さに憧れています!私は武も習えぬ身ではありますが、強くなりたいのです!そして、ケルト様のお役にたちたいのです!」
食いぎみに話すブライアン。この年齢的に強さに惹かれる思春期あるあるだな。
「うん、いいぞ。だが、自分の仕事は疎かにしない。いいな?」
「はい!はい!ありがとうございます。」
喜ぶブライアン。自分の希望が通るのは嬉しい事だろう。
「それじゃ、次の場所に行こうか。次は闘技場だ。任せるぞ。」
「はい!お任せ下さいませ!」
気合いの入るブライアン。若いって良いなあ。
「ご機嫌ね。」
「はい、気持ちはわかります。私も同じ様なものですから。」
「かわいい。」
マリア、ビビ、テラスとブライアンの事を言う。かわいい、がよくわからないが、テラスには小動物に見えるのかもしれない。
ご機嫌なブライアンの案内で、俺達は市内観光を開始した。




