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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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4-5 ケルト市 その3


 聖心教皇国エクシリオス祭司グラン・ザズ。


 ケルト市におけるエクシリオス教の中心人物。彼が布教活動を先導している。

 彼が赴任したのは、10年前。亡くなった前任祭司の後釜としてきたそうだ。

 グランは見る間にヒト族の入信を増やしていき、勢力を拡大させた。

 ロイド男爵曰く、

「彼が赴任してからのエクシリオス教は日に日に信者を獲得させている。今は父上の強制入信禁止令で大人しくなったが、ケルト市に住むヒト族の半分はエクシリオス教に入信しているのが現状だ。」

「それって、ケルト市人口の何割だ?」

「3割。前任者の時は1割も満たしていなかったからかなりの躍進になるな。」

「やるな、そいつ。」

「かなりの曲者だ。」


 入信者はヒト族が主流、中には獣族や亜人族もいるのだろうが、差別行動があったようで、反発しあっている。


「何があった?」

「殺人。」

「穏やかじゃないな。」


 その獣族はエクシリオス教に嫌悪感があったようで、入信者に暴行を働いた。結果、狂信者数名に取り囲まれ暗殺されたそうだ。

 ある人物からの情報提供により殺人現行犯は見つかり、犯罪奴隷となり、炭鉱の強制労働となったが、エクシリオス教に責任追求がなく、獣族や亜人族の反発を招いた。


「だが、それは獣族が悪いんじゃないのか?暴行を働いたんだろ?自業自得なんじゃないのか?」

「それが事情あっての行動だったんだよ。」


 獣族への強制入信させる布教活動や、そしてその入信者への扱いには目に余る行いがあったようだ。狂信者の蛮行はこの事のようだ。


「奴隷か?」

「いや、奴隷はちゃんとした職業だ。身分格差による強制労働が問題だ。」


 奴隷は上中下と3段階に分けられる。上は貴族の従者にあたる。中は農奴や市民従者。下は犯罪奴隷、炭鉱等の過酷な強制労働を行っている。

 ここでの共通点は、奴隷の衣食住の保証。つまり、人権が尊重されている事だ。犯罪奴隷に人権とか、と言うかもしれないが、その分最低保証の為、環境は劣悪なのだそうだ。また、雇い主は奴隷の管理徹底が義務付けられている為、不当扱いは禁じられている。だが、例外は存在するし、見えない所で不当扱いをしている者もいるだろう。クコ村人の過去が良い例だ。いや、悪い例だな。

 


「つまり、獣族入信者には人権侵害をしていた、という事か。」

「獣族側はそう主張している。」


 内容は聞きたくないが、察する事は出来る。かなり悪どい事をしたのだろう。


「それで父上の強制入信禁止令が歯止めになった訳さ。」

「成程ね。」


 他の意図もありそうだが、それは聞かないでおこう。多分だが、かなり複雑な事情がありそうだ。


 布教活動を制限されたのだから、エクシリオス教側は不満だろうが、殺人者を擁護なんかしたら、それこそエクシリオス教と、獣族亜人族との争いが起き、被害が出るだろう。それはケルト市としても抑えたい事案であり、エクシリオス教に被害が出れば、王都や皇国も介入してくるであろう。だが、ケルト市にはドワーフとの特殊な条約があり、争いが大きくなり市民決起ともなると、ドワーフの技術が流通されなくなる恐れがある。それは王都も防ぎたい。

 権力は国王にあり、皇国には自重させるようにしたのだろう。皇国も信用を失う可能性があるし、グランに自重させれば済む話なだけに、強制入信禁止令を飲んだのだろう。強制をしなければ良いだけだからだ。


「こんな所か?」

「何がだ?」

「いや、何でもない。次いくぞ。」



 助祭ラフレ・レス。

 彼女はケルト市に長年布教活動している。前任祭司にも支えていた。

 殺人を犯した狂信者の情報は彼女が提供したそうだ。


「罪には罰を。過ちは正すもの。」


 ラフレがこう言って、ケルト侯爵に情報提供をしたとか。いやはや、聖人のような人物だな。


「実際彼女の布教活動は献身的で、孤児院や病院、小さいが学園経営を行っている。市民には人気もある。因みに俺もガキの頃に世話になった事がある。」

「なら、ラフレが祭司のほうがよかったんじゃないのか?」

「俺もそう思ったさ。だが、彼女は「神の御心のまま。」と言ってはぐらかされたよ。」

「皇国事情かもしれないな。」


 大きな組織の事情なんかわからないが、内政者が現場を知らないのは何処も同じだ。


「ラフレは融通はきかないが、聖職者としては立派な人物だ。会いに行っても良いと思うぞ。」

「考えとく。」


 ラフレ・レス、か。エクシリオス教の事でも教えてもらうか。



 エクシリオス教ケルト支部騎士団長ダッド・ゾード。

「脳筋だ。」

「大雑把過ぎる!もっと詳しく脳筋を教えろ。」

「ははっ、君もノリが良いね。」


 ダッドは皇国の聖騎士だ。団長としてグランと同時期にケルトに配属された。


「左遷としか聞こえない。」

「だから脳筋なんだよ、あいつ。」


 団長をあいつ呼ばわりか。まあいい。


 謹厳実直、質実剛健、志操堅固、と大層な人物のようだ。つまり、真面目で堅物な脳筋か。


「ん?なら獣族亜人族とのいざこざにはどう対応したんだ?」

「あいつ、我関せず、を貫いて何もしなかったんだ。此方としては、騎士と戦わなくて済んだから助かった。」

「強いのか?」

「強い。機会があって1度手合わせしたからわかる。お互い様子見しかしなかったがあいつは強い。聖騎士だけはあると言っておくか。」

「そうか。」


 脳筋、か。ちょっと会ってみようか。ロイド男爵にあいつ呼ばわりされているくらいだし、気さくな奴かも知れないし。強い、の言葉にも興味があるが、手合わせする事はないだろうな。此方の手の内晒す訳にもいかんだろ。


「一応聞くが、俺とどっちが強い?」

 リューア伯爵の件で俺の本気は見せている。それを踏まえて聞いてみた。

「君の方が強い、と思える位かな?」

「わかった。気をつける。」


 俺の大概チートを見て、思えるとしか言えないとか。確実ならそんな事は言わない。ダッドの武の懐は深いようだ。


 さて、後は。


 自警ギルドマスター、アパラ。


 民間の武力団体。聞えは悪いが、市外治安維持を行っている。

 その活動は市外で魔獣狩りを行っている。雇われだが、貴族の護衛も行う。ケルト市兵士と違い、フリーランスな為、フットワークが軽いのが特徴だ。また、他領からきた強者がドワーフ自治領の許可証発行までの日当稼ぎをしているようで、それこそ、ヒト族、獣族、亜人族と混成となっている。それをまとめるアパラという人物も一癖ありそうだ。


 自警ギルドは、冒険者ギルドとか、探索者ギルドと同一と考えて良さそうだ。


 どんな奴と聞くと、

「会えばわかる。」

だとさ。説明が適当になってきたな。

「いや、武力系を纏めあげて維持しているから、指導力や行動力はしっかりさしている。性格は大雑把だな。悪い奴ではない。俺達貴族とも旨くやっている。」


 成程。能力は高そうだ。


「ギルマスは貴族なのか?」

「いや、市民だ。実績が権威になっているのは確かだし、それが信用に繋がっているとも言える。」


 ちょっと意外。ヴェルケスの商工ギルドマスターは貴族になったから、本元もそうなのかと思った。



「後、あそこはならず者集まる場所でもある。治安維持とかいっているけど、結構ガラ悪いから気をつけるんだね。特にテラス君とビビ君は。」

「おい、わざとか?」

「勿論、マリア君もさ。もし襲われても、力で返り討ちしても構わないから。奴等は市民やよそ者だが、躾が悪い奴もいる。こういう奴等は権威より力の方が理解するから。」

「わかった。」


 やはりヒャッハーはいるようだ。しかも、俺の妻達に手をだしてきたら・・・、そんな奴等には容赦はしない。死なない程度に殺そう。


「でも、悪い事ばかりじゃないさ。他領や東の森から来たものもいるから、情報が集まりやすいのも利点だね。」

「それは御約束だな。」

「先ずは酒場で情報収集。基本だろ?」


 ゲームや漫画のな。



 商工ギルドマスター、ゼノス。


「げっ?!あいつギルマスなの?」


 今まで空気を読み、会話に入らなかったマリアがつい口に出した。慌てて口を塞ぎ引っ込んだ。


「構わないよ。マリア君はしっているようだし、君の意見も聞かせてもらいたい。」

「は、はい、僭越ながら、発言します。」


 ゼノスの事はマリアも参加した。


 彼は、守銭奴、金の亡者、といった所だが、やはり商才があり、ケルト領を中心に他領でもしっかり稼いでいるようだ。

「1度おばあちゃんに挨拶に来たけど、あいつの腹黒さは目を背けたくなったわ。」

 鑑定か。やはり、マリアの能力は危険人物特定にも役にたつな。ゼノスはヴェルケスの貴族とも繋がりがあり商売をしていて、市民区のアーノさんにも繋がりを持とうとしたようだ。


「商人が腹黒いのは当たり前さ。才覚あるならなおのこと。アーノも多少は利用はしているようだし。お互い様じゃないのか。」

「マリアは本質を言っているんだよ。人格が悪いと言っているんだ。」

「成程。確かに奴は私利私欲に走っているか。だが、それは利用価値がある以上は信用足る人物でもある。金になるなら裏切らない。」

「油断出来ない奴なのはわかった。」


 マリアが何か言いたそうだったが、控えた。後で聞いておこう。



 コンコン。


 扉のノック音。


「失礼します。ニール侯爵様が御呼びでございます。」

 ケルト家従者が伝えにきた。


「おっと時間切れだな。父上の所に行こうか。」

「いや、後1ついいか?」

「手短なら良いよ。」

「街の旨い飯屋を教えろ。」

「ハッハハハ!面白いね君は!父上の謁見が終わったら案内しよう。」

「おう、楽しみにしてやる。」


 席を立ち、俺達はケルト侯爵の元に向かった。


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