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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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4-4 ケルト市 その2


 ケルト領ケルト市。領主ニール・フォン・ケルト侯爵が住まう領都。この地を起点にケルト領の政治を行っている。領都だけあって、街の規模は大きく、人口はヴェルケスよりも多そうで、かなりの賑わいをみせている。

 街並みは、古都を想像させるかのような石造りの建物が目立つ。木材建築や石材との複合建築も目にしたが、わりかし新しい建築なのであろう。中央部に向かうにつれ、石造り建築物が増える。

 通りの整備もしっかりと石畳を敷き詰めてあり、振動は気になるが、走行に問題は無い。


「これからどうするの?」

「先ずは、ケルト侯爵に謁見しよう。多分情報は伝わっていると思うから、寄り道せず会いに行くほうが無難だろう。」


 マリアの質問に答える。ケルト侯爵もそうだが、ロイド男爵もいるのだ。警戒とまではいかなくとも、油断はしないようにしよう。


「ケルト侯爵の用事が終わったら、観光しようか?」

「うん!」

「はい、楽しみです。」


 テラスとビビは喜びをあらわにする。俺も、新たな街は楽しみたい。知識、技術、様々な歴史や文化を知る事が出来るし。


 目指すは中央、目立つ大館がある場所に向かう事にした。





 大館前、門の前にいる衛兵に通過許可をもらい、門をくぐる。やはり止められたが、錫杖と金袋で万事解決。俺達の来訪は伝わっていたようで、市民と間違える事はなかった。たが、


 紋章も考えるか・・・。


 たとえ一代限りの栄誉貴族だが、貴族なのは間違いない。貴族は元より、俺の無知で市民に害を為すのは心苦しい。この辺りは、ロイド男爵と相談だな。


 厩舎に馬車を停める。ケルト家の従者に預けたが、レンとイトがそっぽを向いてしまった。俺達になつくのは構わないが、他のヒトに拒否感剥き出しは止めてほしい。


 直ぐに戻るから、安心して待っていてくれ。


 言葉に出しはしないが、意思は通じたようで、素直に従者の指示に従ってくれた。従者も、轡や無口が無いのには戸惑っていたが、

「丁重に指示を出せば言う事を聞くから。」

 と声をかけると、手綱を引きながら厩舎に誘導してくれた。


 大館の大扉。正面玄関をくぐる。その先には、見知った人物が待っていた。

 

「ずいぶん遅かったな。」

「時間指定がなかったからな。悠々とさせてもらったよ。」


 ロイド男爵が出迎えてくれた。


 ロイド男爵。

 ヴェルケス市、リューア伯爵の件で関わった人物。イケメンの異世界人。ケルト侯爵の息子となっている。男装しているが、中身は女性。飄々としているがかなりの策士。多分だが、ケルト侯爵の懐刀だろう。


 握手をし再会を祝う。だが、俺は警戒を怠らない。掌に意識を集中させる。


「今回は使わないんだな。」

「なんの事だ?」

「とぼけんなよ。譲爵の時、吸収(ドレイン)を使っただろ?あの程度の精神疲労で、俺が睡魔に襲われる事は無いんだよ。」


 譲爵後の体調変化。俺にはどうしても違和感しかなかった。単なる緊張で、疲労困憊なぞしないし、今の俺は尚更あり得ない体になっている。

 二度の握手。これが俺の疲労困憊にさせた原因と導き出した。


「言っている意味がわからないな。」

「それでも構わないが、お前が素直に話せば良し、話さないなら、俺に不信感しか抱かせないぞ。」

「そう言われてもね、わからない事をわかるとは言えないだろ?」

「そうかい、そういう事にしてやるよ。」


 表情は笑顔のままに少しだけ強く握り威嚇する。


 手を離し、話を続ける。


「それで、ケルト侯爵様に挨拶をしたいが、多用なのか?」

「まあ、な。君らが来たのは伝えたから、終わり次第呼ばれるさ。ここじゃなんだし、部屋で待とうか。」


 後ろに控えた従者が前に出る。


「此方でございます。」


 にこやかで丁寧な接客をうけ、俺は多少の動揺する。正直、少しだけ苦手意識があるからだ。


「あ、はい。」


 間抜けな声を出し、マリアに小突かれる。これが地だ。仕方がない。


 案内された部屋は、ロイド男爵の私室のようだ。従者がお茶と菓子を運び、退室する。

 お茶、紅茶のように透き通る飴色、菓子はクラッカーだった。


「まぁ、くつろいでくれ。多分、呼ばれるまで時間もかかるだろうから。」

「そうさせてもらうさ。」


 長椅子に座り、くつろぐ。左にテラス、右にマリア、後ろにビビが立っている。

 従者の格好のままのビビとマリアだが、ロイド男爵は俺達の事も知っているし、構わないだろう。ビビには椅子を用意した。


「やはりと言うか、マリア君もハーレム入りしたんだね。どうだい、旅は?」

「はい、ソーイチさんには良くしてもらっています。」

「ふ~ん。良く、ね。」


 言い方!にやけているロイド男爵に察したのか、いつもの誇大妄想か、顔を紅くして俯くマリア。マリアのいじられ体質は健在だ。


「あまりからかうなよ。」

「ははっ、ゴメンゴメン。アーノのやりとり見ていたから、つい、ね。」


 フォロー虚しく、マリアは違う意味で顔を赤くした。八つ当たりで腿をつねるな!


「さて、何してようか?」

「折角だ、この街の事を教えてくれよ。用事が終われば、観光するし。」

「ん?俺の事は聞かないのか?」

「それはさっき聞いただろ。後は、お前が自発で言うだけだ。」

「俺としては結構だが、その返しはズルいね。」

「ズルさ結構。」


 ロイド男爵の苦笑に、俺は胸を張る。駆け引きとまではいかないが、やられっぱなしは癪だからな。


「なら、街の事を話そうか。」


 ロイド男爵は呆れた顔で話してきた。




 ケルト市。

 人口10万人程の大都市。産業は石材や鉱石、鉄鋼といった土木が主流。だが、一番の強みは、やはりドワーフとの繋がりだろう。ドワーフ自治領の管理を任されているため、ドワーフ製の銀細工や武器防具の流通を一手に引き受け、財を成している。

 隣領からは不満もあるだろうと思案するが、ドワーフ側からの条件により、ケルト家のみと流通を許している。

 過去、ヒト族の横暴に耐え兼ね、ドワーフ族は山脈に引きこもってしまった。自治領入り口には超巨大な鉄門があり、難攻不落となっている。

 王国としては、ドワーフの技術は手にしたい。だが、使役する事は不可能になってしまった。そこで交渉となるのだが、失った信用の回復は容易でなく、断絶状態が続いたのだった。

 ある時、一人の青年がドワーフとの交易を可能とした。それがケルト家。今の侯爵の祖先だ。

 どのような手段を使ったのかわからないが、その青年とドワーフの条件が、ケルトのみと交易する事だった。

 王国としては、ドワーフの技術が流出するので、願ってもない事だった。他の貴族の反対をおしきり、ケルトにドワーフとの交易を許可。条約締結する。

 この功績にケルトは貴族の仲間入りを果たし、流通を一手に引き受けるようになった。


 勿論、他の貴族からの反発や妨害工作、賄賂、様々な策を弄してきた。それら全てをはね除け、ケルト家はドワーフ交易独占を維持する。

 今では、様々な功績により、侯爵家となり、街は大都市となった。

 王国最南東のケルト領。王国と一番離れた立地が逆に繁栄するという皮肉を感じずにはいられなかった。


 話をケルト市に戻そう。

 ケルト市の立地もあるせいか、様々な人種が生活している。

 殆どかヒト族だが、獣族や亜人族もいるのは、ドワーフ自治領から流れてきたのだろう。また、他の領から貴族や商人はひっきりなしに訪れている。旅が珍しい土地なのだが、やはり、流通の大事さがわかる者は、金の匂いに惹かれるのだろう。


 人口が多い為、様々な政策もおこなっている。

 治安維持の自警ギルド。商売管理の商工ギルド。教育の為に学園もあるそうだ。寺子屋のような民間委託から、公立学園まであるとは。なかなかに善政している。市の案内所も多数に設置したらしい。マリアのアイディアを真似したのだろう。

 そして、失念していた職業。


 宗教。


 ヒトに倫理を教える大事な職種。まぁ、倫理や道徳の枠を越え、中には過激な思想や、戦争道具にしてしまう事もあるが、ヒトに大きな意思の力を持たせ、生きる糧にする。ヒトの最古の職業の1つ。


 ヴェルケスには、主だった宗教は見当たらなかった。マリア曰く、

「思想で腹は膨れない。神に祈る前に畑を耕せ。」

と、アーノさんが叱咤していたそうだ。強すぎだろ。

 ヴェルケスには、豊穣の神を祭る祠はあるそうだが、思想的宗教は除外していたようだ。


 さて、ケルト市には思想的宗教はある。

 

 それが聖心教皇国エクシリオス。


 ルーズゲート王国に吸収されているものの、その権威は絶大で、王国の5割はエクシリオス教に入信している。

 平和と慈愛。神と同じ姿であるヒトこそ、選ばれた者であり、世界を平和と慈愛に満たす。がスローガンのようだ。


 国王を崇拝しないのか?の疑問に、ロイド男爵は、

「民衆は国王を支持し、神は崇拝する。権力は国王が上だが、エクシリオス教に権威があるのは事実。ま、絶対王政に宗教は必要だろ?」

「つまり、人心掌握に一役買っているのが、エクシリオス教な訳だ。」

「ご明察。」


 集団をまとめあげるのに、神は格好の道具になるのは歴史が証明している。国王の権力は、エクシリオス教の権威があってこそなのかもしれないな。


 ケルト市には、エクシリオス教の教会があり、民衆や貴族に布教活動をしているようだ。だが、あまり広まっていないようだ。


 ドワーフ自治領の管理を任されているためか、他の貴族と平等な立場をとるため、ケルト家が入信していないのもあるが、獣族や亜人族を差別する傾向があるエクシリオス教は人気が無いようだ。一部狂信者の蛮行もあるという。


 そのへんは、異世界だろうと一緒だな。


 信仰するのは構わないが、絶対的な崇拝になると視野が狭くなり、違う思想を持つ者を敵とみなしてしまう。何事もいき過ぎは良くない。


 エクシリオス教の権威は絶大でなので、民衆の反発はない。というか出来ない。ケルト侯爵の強制入信禁止令の発令により、エクシリオス教の極一部は静かになったようだ。たが、ケルト家を害敵とみなしたのは間違いないな。


「これまたえらい担架切ったな。他貴族からの圧力とか大丈夫なのか?」

「それは、君に心配される事はないよ。こっちにも考えあっての行動だからな。」

「成程、納得した。」

「具体的に聞かないんだ?」

「聞いてもわからんよ。」


 俺は手を左右に降り、自分の意思を見せる。


「まぁ、観光するなら、エクシリオス教には注意するんだね。普段は大人しいけど、冒涜者には容赦ないから。」

「一応聞くが、俺の貴族権力は通用するか?」

「祭司や助祭、騎士団長には効かないかな。一応同等権威としているし。でも、他は大丈夫だな。」

「騎士団もあるのかよ。」

「そりゃあるさ。自衛は基本だろ?」


 きな臭いったらありゃしないな。


「何か因縁吹っ掛けられたら、俺の名前を出しな。大概は引いてくれるさ。貸しにしてやるよ。」

「なら、吸収の件でチャラにしてやるよ。」

「ははっ、君も貴族がなんたるかわかっているようだね。」


 弱味は見せるな!だろ?わかっているよ。


「さて、ざっと話したけど、質問あるかい?」


 俺は沢山ある質問を整理し、ロイド男爵にぶつける事にした。今回ばかりは中途半端は危険と思ったからだ。


「沢山あるけどいいか?」

「前言撤回、は出来ないかな?」

「駄目だね。貴族たるもの言葉には責任持てよ。諦めて、俺の質問に答えな。」

「やれやれ、父上の呼び出しが待ち遠しいよ。」


 苦笑するロイド男爵は、俺の質問に渋々と付き合ってくれた。



 中途半端ですみません。説明回はまだ続きます。

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