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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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4-3 ケルト市 その1


 草原小人との接触より数日、俺達は街道を東へ向かう。

 草原小人の感謝と警告らしき言葉をもらい、草原には深く進入する事を控えた。草原小人の監視の目を確認しているからだ。

 接触したダンデの隠密能力は素晴らしく、俺やビビでさえも中々に気配察知するのは難しい。だが、俺達の監視はダンデではなく、未熟な者が行っているようで、草原から気配や視線を感じる。


 たまたまか?それとも、お前達を監視しているぞ、という自己主張なのか?・・・それは無いか。


 しかしながら、草原小人から何かしらの妨害があるわけでもなく、害は無いので旅路に問題はない。強いて言うなら、小屋を出す場所に困る位だが、夜ならば往来もないし、街道から少しだけ離れた場所に設置すればあまり目立つ事はない。


 ケルト市に着けば、監視の目も無くなるだろう。大した事じゃない。


 テラスとビビは気にもしていないが、マリアは違った。最初は憮然とした表情を浮かべていた。


「監視って、犯罪者扱い?なにそれ。」

「そう言うな。彼等も自分達の土地を守りたいだけだって。」

「なら、砂漠百足の討伐で感謝すれど、監視するっておかしくない?」

「それだけ、草原小人のヒトへの疑心感が強いんだろ。過去のヒトが草原小人に何をしたかわからないが、払拭する事ができない位の暴挙をしでかしたんだろうさ。俺達の妨害をしてこないんだから、気にする事はないさ。」

「でもなんか、ストーカーされてるみたいで、精神的にくるのよ。お前をいつも見てるぞ!ってな感じがして。あああ!もう!気持ち悪い!」


 マリアの誇大妄想にも困ったものだ。


 皆には不安にさせるため言っていないが、もし草原小人が本気を出したら、此方側にも被害は出てもおかしくない。

 ダンデのあの隠密能力。もし俺やビビの気配察知を掻い潜り、暗殺をおこなってきたらと思うと・・・。もし同じ強さの能力を持つ者が、多数連携で襲ってきたらと思うと、無傷ではすまないだろう。いや、最悪の事態も視野に入れるべきだ。

 だがその警戒は、気配で監視をしていると知らせ、俺達を襲う気なし、という主張ともとれるので、俺に出来る事は、刺激しない、が妥当な判断だろう。


「有名税と思えばいいさ。」

「あんたは気楽ね。」


 呆れるマリア。不安があるのなら、沢山会話をして払拭すれば良い。解決策は、ケルト市に到着する、と簡単なのがあるのだから、今後は寄り道をせずにケルト市に向かえば良い。


「まあ、歌でも歌いながら進もうじゃないか。」


 無限保管からギターを出す。テラスの歌声に伴奏をする。


 テラスの美声に酔いしれる。不安を払拭し、勇気をくれる。


「ねぇ、他にも楽器作れない?私も演奏に混ざりたいわ。」

「もしよろしければ、私もお願いします。」

 マリア、ビビも参加したいようだ。

「良いよ。じゃあ、何を造るか希望はあるか?」


 俺達の馬車は、賑やかに東に向かっていった。



 




 あれから、小さな集落に着いた。小麦畑や果物畑が軒を連ねる。ケルト市の領域に入ったようだ。農従が汗水滴ながら、収穫をしている。

 草原小人の監視はなくなった。彼等もまた、1つの仕事を終わらせたのだ。お疲れ様と言っておこう。


 街道の横路から集落に入れそうだが、俺は通りすぎる。

「あれ、寄らないの?」

「今はケルト市が優先。立ち寄る理由もないしな。」

「確かにね。」


 急ぐ旅ではないが、目的地が近くに見えてきている。寄り道せず、向かって構わないだろう。


 集落を通りすぎ、馬車を進める。集落がある以上、ケルト市はすぐ近く。


「さて、そろそろ着替えるか。一応貴族だしな。」

「そういえば、そうだったわ。素で忘れていたわ。」

「荷台も変えるから、目立たない場所を探そう。」


 辺りを見回す。集落の麦畑が、辺りを覆う。目立たない場所が見当たらない。


「無いな。」

「はい、ありません。」


 一面麦畑。高低差はあるものの、目立たない場所を見つけるのは厳しそうだ。あと少しで、ケルト市に着いてしまう。


「仕方がないか。丘上で様子をみながら、ささっとやってしまおう。」


 馬車を停車させ、着替えをする。往来が頻繁という訳ではないが、人目は気にする。


 貴族らしい服に着替える。これはマリアとの共同で造った服だ。見た目立派、動きやすく、丈夫。テラスはおとなしめのドレス。ビビとマリアは高等従者にした。俺としてはビビとマリアの格好には不満があった。妻なのに従者とか、この格好をさせたくなかった。


「不自然さを誤魔化す為よ。貴族なんだから、従者くらい付き従えているものでしょ。それとも本当に従者を雇う?」

「私は気にしません。」

「ビビもマリアもカッコいいね!」


 高等従者は貴族に従える従者。貴族に従っている為に市民より地位もある。


「してもマリア。その胸・・・。」

「うっさい!」


 パット、いや、立体縫製。盛りすぎか!


「ビビさんよりは小さいからいいのよ!」


 胸を多少強調する格好。よくある従者服でもシックでありながら、女性らしさを表現する服装。ビビにはスリットも入っている為、動きやすく改良している。


「人目はあるか?」

「ありません。」

「よし!」


 無限保管から荷台を入れ換える。貴族らしい荷台へと交換した。他の貴族の馬車を参考に、それらしく造った。見映えを重視する貴族らしい荷台。勿論改造済みだ。余り目立つのは好きではないが、今回ばかりは我慢しよう。デザインはマリアだ。


「準備も整ったし、行きますか。」


 馬車に乗り込む。テラスとマリアは中に、ビビが操車席だ。

 ビビが、レンとイトに合図を送り歩ませる。


 ケルト市はすぐ近く。


 俺は、新たな街に心を踊らせていた。





 ケルト市、西大門。


 ケルト市もヴェルケス中央区同様に、大きな塀で囲われている。規模は、ヴェルケスよりも大きく広い。


 大門には数人のヒトが列を成している。入市手続きだろう。

 俺はそのまま列に並ぶのも構わないが、今は貴族。特権階級として、並ぶ事は許されない。これは他の貴族達にも後々迷惑になる行為となる。要は見栄だ。


 こういう場合、大門の脇には必ず貴族専用の門がある筈だ。


 街道を少し外れ、塀に添って進む。やはり小さな門があった。

 開放されている門の側に向かうと、四人の門番が行く手を遮る。


「停車!!」


 二人の門番は長槍斧(ハルバード)を交差させ門の通過不可を表す。


 姿は胸鎧(ブレストプレート)鉄籠手(ガントレット)鉄脛当(グリーブ)の軽装歩兵。鉄兜(ヘルメット)は装着していない。


 残り二人は馬車の横を陣取る。警戒はしているが、長槍斧は立てたままだ。

「この門は高等身分専用門である。平民は大門に戻り入市手続きを行え!」


 俺から溢れる小市民臭を嗅ぎ分けたか?やるな門番!

 と、心の中でボケをかます。見た目は悪くないと思うのだが、市民階級と勘違いされたようだ。


 とりあえず、こんな所で揉め事は御免だ。


 俺は馬車から身を乗り出し、無限保管から取り出した錫杖とケルト家の紋章入りの金袋を門番に見せる。


「私はソーイチ・アオバ男爵。ケルト侯爵様より呼び掛けをいただいた者だ。通過するが構わないか?」


 錫杖と金袋を見て絶句する門番。貴族を表す錫杖にケルト家紋章入りの金袋を見せたのだ。その効果は絶大だ!

 そう、彼等門番達は貴族を一般市民と間違えるという失態を犯したのだ。


 マリア、ドヤ顔やめろ。


「も、申し訳ありません。何卒、ご容赦を。」


 平伏する門番達。震えながら許しを請う。


「何故、私が平民と思ったか、その理由を話せ。」

 この言葉使いには違和感しかない。言っている自分が恥ずかしい。

「はっ!馬車には、貴方様を表す紋章が見当たりませんでしたので、恐れ多くも市民と判断してしまいました。」


 成る程、紋章か。失念してた。


 馬車には紋章なぞ無い。見た目が立派なだけの馬車。彼等は職務に忠実なだけだ。非はない。他の貴族達は立場上はどうするかはわからないが、俺に彼等を責める道理は無い。


「いや、貴様らは職務を全うしたのだ。非は水に流そう。門を通過させてもらうぞ。」


 違和感半端無い!俺にはきつい。


 詫びも考えたが、それでは立場上の面子を汚す事になるだろう。俺は構わないのだが、他の貴族達に疎まれるのは御免だ。謝罪せず、非を許す。これがベターだろう。


「はっ!格別の御配慮、恐悦至極にございます。」


 きつい!つらい!はずかしい!


 とりあえず、門番から通行許可をもらったので、悠々と入市させてもらおう。馬車に乗車し進ませる。

 門番達の敬礼の中、街に入る。


 ケルト市。新たな街に着いた。


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