SS 翼竜料理
「翼竜って、旨いかな?」
それは何気無い一言から始まった。
先日、森での狩りに横槍を入れてきた翼竜。翼の膜を馬車の天套に利用させてもらったが、肉等は残っている。
「食べた事ないからわからないわ。」
マリアは首を振る。
「私もわかりません。」
ビビも首を振る。
「元々珍しいのかな?」
「そうじゃない?私は初めて見たわ。ヴェルケスでも出回った事もないし。被害も聞いた事がないわ。」
「山脈に巣があると聞いた事があります。もしかしたら、はぐれ翼竜かもしれませんね。」
「ふむ。」
遭遇率が低い。巣は山脈にある。なるほどね。
「折角手にした物だし、食べてみるか?」
俺の言葉にビビの表情が明るくする。尻尾!凄い!
「ま、物は試しね。作ってみましょう。」
マリアも乗り気になったようだ。
「テラスは?」
「うん、良いよー。」
全員の賛成をもらった訳だし、食べてみましょう。翼竜を。
★
街道から外れ、目立たない場所に小屋と納屋を出す。街道で大きい翼竜の解体ショーなぞやって目立つわけにはいかないからだ。無限保管から翼竜を出す。多少は捌いてあるが、形は残っている。血抜きはしっかり行ったが、独特な臭みが辺りを覆う。
臭いに反応したのか、馬達が慌て始めた。怯えているようなので、なだめる。テラスもそれに加わる。ビビも臭みにしかめっ面だ。
「結構臭いわね。下処理が大変だわ。」
マリアは多少平気のようだ。手に俺の黒石ナイフを持ち、捌く手順を考えていた。
先ずは、翼と胴体を分ける。翼には殆ど肉が無く、皮を剥いだら骨が出てきた。分厚く固い、それでいて伸縮性がある。固いゴムのようだ。
「皮は食べられそうにないわね。どうする?捨てる?」
「いや、加工すれば何かに利用出来るだろう。鞄とか縄とか。骨も軽くて丈夫そうだし、乾燥させれば何かの使い道はあるだろう。」
「わかったわ。」
マリアはサクサクと捌いていく。黒石ナイフの切れ味のおかげだ。
胴体の皮も剥ぎ終え、肉が露出する。白身に多少の赤い筋がある。
「鶏肉に近いかしら?」
「そうだな。」
見た目は、だ。
「肉と骨を分けるわ。どんどんやるから片付けてね。」
マリアは大きな肉の塊にナイフを入れる。どんどん肉が離れ骨が出てくる。俺は肉を無限保管に仕舞い片付けていく。
昼間に始めた翼竜の解体だったが、終わる頃には気がつくと夕刻になっていた。
「おわっったー!」
「お疲れ。」
骨となった翼竜を無限保管に仕舞い、マリアを労う。
「遅くなっちゃったわね。今すぐご飯を作るわ。」
「いや、今日は俺が作るよ。翼竜は明日にして今日は魚にしよう。」
「いいの?」
「マリアは休みな。風呂も用意するから。」
「うん、ありがとう。甘えさせてもらうわ。」
翼竜料理にはまだまだ処理が必要だろうし、マリアも疲労している。休んでもらおう。
さて、作るか。
マリアが風呂に入っている間に、俺は魚の蒸し焼きを作った。野菜と塩と多少の調味料で作れる簡単な料理だ。あとはシチューも追加した。具沢山はビビの食欲を考えての事だ。
「では、「「「いただきます。」」」」
俺が作る久々の料理だったが、3人から好評をいただけたので、嬉しくなった。
マリアもこの為に頑張っているのかもな。
マリアに感謝を忘れずにはいられなかった。
★
次の日の早朝、翼竜の肉の加工に入る。今回はモモ肉を少しだけ使う事にした。
「移動も考えて、漬け込みの即席ハムを作るわ。」
「なるほどね。となれば、無限保管は使えないか。」
気づいた事。無限保管の欠点。それは、醸造、発酵に向かない事だ。新鮮を維持し、尚且つ上物に変化させる無限保管だが、腐らせる事が出来ない。つまり、漬物やチーズ、味噌、醤油は無限保管で作れない。
「下茹でして塩漬けするだけだから、そんなに手間じゃないし、場所もとらないから大丈夫よ。」
マリアも色々考えたのだろう。
「テラスちゃんが起きる前には下茹でを終わらせましょう。」
俺と早朝鍛練していたビビも手伝う。
肉を茹でると、灰汁が溢れ出てくる。丁寧にすくい取り下茹でを完了させ、塩を入れた小さな木箱に肉を漬け込む。あとは待つだけだ。
「今日の夜に試食してみましょう。漬け込み具合も知りたいし。」
「楽しみにしてるよ。」
「テラスちゃんを起こして。朝ごはんにするわ。」
木箱は馬車の荷台に置き、俺はテラスを起こすことにした。
★
夜、小屋内。
「では、「「「いただきます。」」」」
夕食は通常の料理に加え、翼竜のハムを追加した。試作とはいえ、手間を加えた一品だ。
切り分けてあるハムを食べる。
「どう?」
ん~・・・。
「臭みはないから食べやすいけど、もう少し漬け込みが必要かも。味は旨いけど、肉がイマイチだな。」
みんなが口に入れる。
「まず!」
「ちょっと、苦い?」
「臭いですね。でも、弾力があって食べごたえがあります。」
三者三様の意見だ。
「翼竜は研究が必要ね。苦味や臭み抜きも必要だし、時間も材料も足りないわ。」
「今回は試作だし、少しだけだから全部食べてしまうか。折角の料理だ。美味しくいただこう。」
「無理、してない?」
「してないよ。美味しいのが出来るまで何度でも付き合うから。」
もう一口食べる。さっぱりしてモサモサしているが、別段不味くはない。
「うん、ありがとう、ごめんね、頑張る。」
マリアが俯いてしまったので、頭を撫でる。テラスは寄り添い、ビビはハムを食べる。
誰にだって失敗はある。しかも初めての食材だ。何回でも挑戦してほしい。
俺とビビで完食。御馳走様でした。
★
皆で風呂に入っている時にそれは起こった。
頭がボーっとする。動悸も激しい。なんか、息子がはち切れそうに膨れている。これは、辛い。
テラス達も何やら異変がおきているようだ。顔を赤らめ、息が荒い。
「何、これ?」
「ふわふわする。でも、なんかうずうずする。」
「・・・・・・。」
切っ掛けはビビだった。
「ソーイチ、さまぁ。」
珍しくビビから求めてきた。いつもは控えているか、求めに応じるのが常だった。
「あの、身体が、熱いのです。あの、その。」
擦り付ける身体の弾力に理性が壊れそうになる。確かに、ビビは魅力的だが、ここまで理性を破壊はしてこない。
「これ、やばいかも・・・。」
「ソーイチ、欲しいよぅ・・・。」
マリアとテラスも欲情している。何故だ?思考がまとまらない。
気がつくと、ビビに迎え入れられていた。激しく動くビビに、俺の理性は飛んでしまっていた。
多分、激しく求めただろう。多分、襲うように欲望をぶつけただろう。気を失うビビに気がつく俺は、慌てて意識を戻すように頬を軽く叩き促す。
「大丈夫か?ビビ?ビビ?」
「ソーイチ様?」
「大丈夫か?痛くないか?」
「はい、凄かったです。とても素敵でした。身体全身にソーイチ様が染み込んだようで、幸せです。」
力ない声で返事をするビビが微笑む。体力あるビビがこんなにも力尽きたのだ。余程の行為だっただろう。
「ソーイチ、つぎ、わたし。」
テラスが求めてきた。さっきのような我を忘れる事は無さそうだが、俺の欲求はまだ満たされていなかった。
「ソーイチさん、私も・・・。」
マリアも寄り添う。軽く触るだけで軽い痙攣をするマリアには今の状態は辛いはずだ。それでも、ビビに当てられたのか、求めてくる。
「激しくしたらごめんな。いま、俺も感情のコントロールがきかない。」
「ソーイチ、おねがい、はやく。」
「私も、やばいかも。」
女性陣の艶声が耳に残りながら、夜がふけていった。
★
「翼竜は封印します。」
朝食時の家族会議、昨日の淫乱行為の原因追及の結果だ。
翼竜の肉に媚薬効果があるとは思わなかった。確かに、はるか昔は蜥蜴が精力増強の漢方薬と出回ったようだが、翼竜も蜥蜴の一種と考えれば、不思議ではない。
ビビとマリアは顔を赤らめ俯いている。テラスは反芻しているようだ。
「ソーイチ、すごかった。」
「はい、幸せでした。」
「私は死ぬかと思ったわ。」
逞しいな。俺はこんなのは御免だ。
「兎に角、翼竜は封印。今後は口にしない。」
マリアは了承したが、テラスとビビは落胆している。そんなにか?!
まあ、俺の気軽な一言が招いた事だから、強くは言えない。
「ソーイチ、あのね、まだ少しだけ気持ちが残っているの。駄目?」
「あの、私も、です。」
「私は平気よ、うん、大丈夫、我慢できるわ。」
本当に逞しい。女性3人に求められるとか、男冥利につきるってもんだ、はは、ははは。
俺にはこの求愛に答える事しか選択肢が残されていなかった。




