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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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SS 翼竜料理


翼竜(ワイバーン)って、旨いかな?」


 それは何気無い一言から始まった。


 先日、森での狩りに横槍を入れてきた翼竜。翼の膜を馬車の天套に利用させてもらったが、肉等は残っている。


「食べた事ないからわからないわ。」

 マリアは首を振る。

「私もわかりません。」

 ビビも首を振る。


「元々珍しいのかな?」

「そうじゃない?私は初めて見たわ。ヴェルケスでも出回った事もないし。被害も聞いた事がないわ。」

「山脈に巣があると聞いた事があります。もしかしたら、はぐれ翼竜かもしれませんね。」

「ふむ。」


 遭遇率が低い。巣は山脈にある。なるほどね。


「折角手にした物だし、食べてみるか?」


 俺の言葉にビビの表情が明るくする。尻尾!凄い!


「ま、物は試しね。作ってみましょう。」


 マリアも乗り気になったようだ。


「テラスは?」

「うん、良いよー。」


 全員の賛成をもらった訳だし、食べてみましょう。翼竜を。





 街道から外れ、目立たない場所に小屋と納屋を出す。街道で大きい翼竜の解体ショーなぞやって目立つわけにはいかないからだ。無限保管から翼竜を出す。多少は捌いてあるが、形は残っている。血抜きはしっかり行ったが、独特な臭みが辺りを覆う。


 臭いに反応したのか、馬達が慌て始めた。怯えているようなので、なだめる。テラスもそれに加わる。ビビも臭みにしかめっ面だ。


「結構臭いわね。下処理が大変だわ。」


 マリアは多少平気のようだ。手に俺の黒石ナイフを持ち、捌く手順を考えていた。


 先ずは、翼と胴体を分ける。翼には殆ど肉が無く、皮を剥いだら骨が出てきた。分厚く固い、それでいて伸縮性がある。固いゴムのようだ。


「皮は食べられそうにないわね。どうする?捨てる?」

「いや、加工すれば何かに利用出来るだろう。鞄とか縄とか。骨も軽くて丈夫そうだし、乾燥させれば何かの使い道はあるだろう。」

「わかったわ。」


 マリアはサクサクと捌いていく。黒石ナイフの切れ味のおかげだ。


 胴体の皮も剥ぎ終え、肉が露出する。白身に多少の赤い筋がある。


「鶏肉に近いかしら?」

「そうだな。」


 見た目は、だ。


「肉と骨を分けるわ。どんどんやるから片付けてね。」


 マリアは大きな肉の塊にナイフを入れる。どんどん肉が離れ骨が出てくる。俺は肉を無限保管に仕舞い片付けていく。


 昼間に始めた翼竜の解体だったが、終わる頃には気がつくと夕刻になっていた。


「おわっったー!」

「お疲れ。」


 骨となった翼竜を無限保管に仕舞い、マリアを労う。


「遅くなっちゃったわね。今すぐご飯を作るわ。」

「いや、今日は俺が作るよ。翼竜は明日にして今日は魚にしよう。」

「いいの?」

「マリアは休みな。風呂も用意するから。」

「うん、ありがとう。甘えさせてもらうわ。」


 翼竜料理にはまだまだ処理が必要だろうし、マリアも疲労している。休んでもらおう。


 さて、作るか。


 マリアが風呂に入っている間に、俺は魚の蒸し焼きを作った。野菜と塩と多少の調味料で作れる簡単な料理だ。あとはシチューも追加した。具沢山はビビの食欲を考えての事だ。


「では、「「「いただきます。」」」」


 俺が作る久々の料理だったが、3人から好評をいただけたので、嬉しくなった。


 マリアもこの為に頑張っているのかもな。


 マリアに感謝を忘れずにはいられなかった。





 次の日の早朝、翼竜の肉の加工に入る。今回はモモ肉を少しだけ使う事にした。


「移動も考えて、漬け込みの即席ハムを作るわ。」

「なるほどね。となれば、無限保管は使えないか。」


 気づいた事。無限保管の欠点。それは、醸造、発酵に向かない事だ。新鮮を維持し、尚且つ上物に変化させる無限保管だが、腐らせる事が出来ない。つまり、漬物やチーズ、味噌、醤油は無限保管で作れない。


「下茹でして塩漬けするだけだから、そんなに手間じゃないし、場所もとらないから大丈夫よ。」


 マリアも色々考えたのだろう。


「テラスちゃんが起きる前には下茹でを終わらせましょう。」


 俺と早朝鍛練していたビビも手伝う。


 肉を茹でると、灰汁が溢れ出てくる。丁寧にすくい取り下茹でを完了させ、塩を入れた小さな木箱に肉を漬け込む。あとは待つだけだ。


「今日の夜に試食してみましょう。漬け込み具合も知りたいし。」

「楽しみにしてるよ。」

「テラスちゃんを起こして。朝ごはんにするわ。」


 木箱は馬車の荷台に置き、俺はテラスを起こすことにした。





 夜、小屋内。


「では、「「「いただきます。」」」」


 夕食は通常の料理に加え、翼竜のハムを追加した。試作とはいえ、手間を加えた一品だ。


 切り分けてあるハムを食べる。



「どう?」


 ん~・・・。


「臭みはないから食べやすいけど、もう少し漬け込みが必要かも。味は旨いけど、肉がイマイチだな。」


 みんなが口に入れる。


「まず!」

「ちょっと、苦い?」

「臭いですね。でも、弾力があって食べごたえがあります。」


 三者三様の意見だ。


「翼竜は研究が必要ね。苦味や臭み抜きも必要だし、時間も材料も足りないわ。」

「今回は試作だし、少しだけだから全部食べてしまうか。折角の料理だ。美味しくいただこう。」

「無理、してない?」

「してないよ。美味しいのが出来るまで何度でも付き合うから。」


 もう一口食べる。さっぱりしてモサモサしているが、別段不味くはない。


「うん、ありがとう、ごめんね、頑張る。」


 マリアが俯いてしまったので、頭を撫でる。テラスは寄り添い、ビビはハムを食べる。


 誰にだって失敗はある。しかも初めての食材だ。何回でも挑戦してほしい。


 俺とビビで完食。御馳走様でした。







 皆で風呂に入っている時にそれは起こった。


 頭がボーっとする。動悸も激しい。なんか、息子がはち切れそうに膨れている。これは、辛い。


 テラス達も何やら異変がおきているようだ。顔を赤らめ、息が荒い。


「何、これ?」

「ふわふわする。でも、なんかうずうずする。」

「・・・・・・。」


 切っ掛けはビビだった。


「ソーイチ、さまぁ。」


 珍しくビビから求めてきた。いつもは控えているか、求めに応じるのが常だった。


「あの、身体が、熱いのです。あの、その。」


 擦り付ける身体の弾力に理性が壊れそうになる。確かに、ビビは魅力的だが、ここまで理性を破壊はしてこない。


「これ、やばいかも・・・。」

「ソーイチ、欲しいよぅ・・・。」


 マリアとテラスも欲情している。何故だ?思考がまとまらない。


 気がつくと、ビビに迎え入れられていた。激しく動くビビに、俺の理性は飛んでしまっていた。


 多分、激しく求めただろう。多分、襲うように欲望をぶつけただろう。気を失うビビに気がつく俺は、慌てて意識を戻すように頬を軽く叩き促す。


「大丈夫か?ビビ?ビビ?」

「ソーイチ様?」

「大丈夫か?痛くないか?」

「はい、凄かったです。とても素敵でした。身体全身にソーイチ様が染み込んだようで、幸せです。」


 力ない声で返事をするビビが微笑む。体力あるビビがこんなにも力尽きたのだ。余程の行為だっただろう。


「ソーイチ、つぎ、わたし。」


 テラスが求めてきた。さっきのような我を忘れる事は無さそうだが、俺の欲求はまだ満たされていなかった。


「ソーイチさん、私も・・・。」


 マリアも寄り添う。軽く触るだけで軽い痙攣をするマリアには今の状態は辛いはずだ。それでも、ビビに当てられたのか、求めてくる。


「激しくしたらごめんな。いま、俺も感情のコントロールがきかない。」

「ソーイチ、おねがい、はやく。」

「私も、やばいかも。」


 女性陣の艶声が耳に残りながら、夜がふけていった。





「翼竜は封印します。」


 朝食時の家族会議、昨日の淫乱行為の原因追及の結果だ。

 翼竜の肉に媚薬効果があるとは思わなかった。確かに、はるか昔は蜥蜴が精力増強の漢方薬と出回ったようだが、翼竜も蜥蜴の一種と考えれば、不思議ではない。


 ビビとマリアは顔を赤らめ俯いている。テラスは反芻しているようだ。


「ソーイチ、すごかった。」

「はい、幸せでした。」

「私は死ぬかと思ったわ。」


 逞しいな。俺はこんなのは御免だ。


「兎に角、翼竜は封印。今後は口にしない。」


 マリアは了承したが、テラスとビビは落胆している。そんなにか?!


 まあ、俺の気軽な一言が招いた事だから、強くは言えない。


「ソーイチ、あのね、まだ少しだけ気持ちが残っているの。駄目?」

「あの、私も、です。」

「私は平気よ、うん、大丈夫、我慢できるわ。」


 本当に逞しい。女性3人に求められるとか、男冥利につきるってもんだ、はは、ははは。


 俺にはこの求愛に答える事しか選択肢が残されていなかった。


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