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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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3-36 ヴェルケス旅立準備 その2

 ヴェルケス市、南の森、奥深く。


 俺達四人は狩りの為に、道の無い森で獲物を探索していた。


 ビビは軽装になり、肌を露出させている。感知力の妨げになるからだろう。手には棍を持っている。黒鋼槍の封印を解こうとしたが、ビビが珍しく意見をした。

「私は、この棍にしたいです。」

 神妙なビビに無理矢理、黒鋼槍に持ち変えさせる気はないので、ビビの希望通りにした。

 逆にマリアは装備を固めた。とは言え、外套を羽織っただけだが、スカートはキュロットに改良したようだ。既製の弩を背負わせ、俺達についてくる。

「ね、ねぇ。休憩しましょうよ。結構歩いているわよ。」

「ん~、斜面を抜けたら休憩にしようか。」

 今回はチートを使わず、歩いての散策をしている。マリアに狩りの雰囲気と、実情を肌で教える為だ。

 やはりというか、マリアは疲労しているようだ。なだらかな斜面が続いていたせいだろう。

「マリア。がんばろ!」

 テラスが激励する。外套を羽織い、マリアの隣を歩く。テラスに疲労はないようだ。足取りが軽い。だが、はしゃぐ様な事もしない。ゆっくりと、テンポ良く、歩いていた。


 坂を登頂する。樹木は鬱蒼と繁っているが、平面にでた。時間も昼になるし、ここらで休憩にする事にした。


 周りの樹木を伐採する。小屋のスペースを確保して、仮拠点にした。


「やっと一息か。疲れたわ。」

 脚を広げ、座るマリア。キュロットの隙間から下着が見えている。

「お昼にしようか。ビビは周囲の警戒をしてくれ。確認が終わったら戻ってくるんだよ。」

「はい、わかりました。」

 ビビはその場から離れ、森に入る。

「俺達は昼食準備。マリアは回復してからで良いぞ。」

「今はそうさせてもらうわ。」

 疲労に身を包むマリア。テラスが寄り添っているから、すぐに回復するだろう。


 焚き火し湯を沸かす。簡単なスープを作った。無限保管から、持ってきた弁当を出す。


 ビビも戻り、皆で昼食をとった。


 気持ちが良い。青葉の香りに、爽やかな風、天気も良い。狩りを忘れ、ピクニックに来たようだ。弁当は、タコスの様な具材を小麦の皮で包んだ物だ。ビビ用にも沢山作ってある。肉、野菜をトマトソースで味付けした。結構いける。


「美味しいわね。元気が出るわ。」

「それは良かった。」


 マリアが上機嫌になる。


「ソーイチ様、あちらに。」

「うん、いるね。」


 気配察知で確認する。確かに何かいる。


「な、何?」

「マリアは待機。危ないと判断したら小屋に退避。テラスはマリアの援護。」

「ちょ?!」

「獣さんだ。良く見ておくんだぞ。」


 視線を隠れている獣に向ける。ビビの表情がにやけているのが怖かった。



 獣が突進してきた。少しだけ大きめな猪だ。かなりのスピードで向かってきたが、ビビがカウンターで、棍を突き込む。剛だ。しっかり武器でも剛が出来るようになっていた。

 倒れる猪。ビビの一撃が強烈だったのだろう。


 だが、


「まだ、いるな。」

「はい!います!」


 奥にある大きな気配。多分親玉だ。突進を考え、斜線を小屋から反らす。テラスとマリアは小屋の陰で見守っている。


 巨体が迫る。俺に向かって来た。

 巨体猪の眉間に剛の掌打を撃ち込む。その直線上には、猪の重心を貫通させる。倒れ込む巨体に身を逸らす。




「流石はソーイチ様です。」

「うん、ビビも良い一撃だったよ。」

 ビビの頭を撫でて誉める。微笑みと尻尾が嬉しさを表していた。


 2体の猪に手を合わせ、無限保管に放り込む。大きいがまだまだ足りない。


「ね、ねぇ、今の魔獣じゃなかった?」

「そうなのか?」

「あんな大きな猪がいるなんて、知らなかった。」

「街暮らしじゃわからない事もあるさ。魔獣はどうあれ、大きな獣は狩りをしても大丈夫だ。森は大きいし、少しだけ間引きの意味で狩っておこう。」

「え?まだ狩りをするの?」

「当たり前だろ。これじゃ足りない。」

「・・・・・・。」

 絶句するマリア。危険を肌で感じたのだろう。

「大丈夫だ。守るから。」

 マリアの頭を撫でる。青ざめた表情が薄れていく。

「う、うん。わかった。でも!無理は駄目よ!」

「わかっている。」


 テラスの頭を撫でて話す。

「マリアを頼むよ。」

「うん、わかった!」

「ありがとう、テラス。」


 昼食途中の襲来だったので、昼食に戻る。マリアの愚痴やビビの意見に耳を傾け、穏やかな時間を過ごした。







 あれから、ビビと二人で森に入り、狩りをする。テラスとマリアはお留守番にした。今回はチートを使い、大きく移動する為だ。俺のチートについてこれるビビだからこその判断。焚き火は絶さぬようにしてあるので、煙が目印になり、遭難もない。


 結果として、大量だった。牛を初め、樹豚、鳥等と巨大獣を沢山狩れた。凶暴化した様な獣がいたが気にしない。暗の気配がなかったからだ。河も見つけ、魚も多目に捕る。虹鱒や鮭みたいな魚だったが、かなりの大きさに驚いた。無限保管に入れる。


 ビビを沢山褒め、撫でる。尻尾が可愛い。

 帰りはビビをお姫様ダッコして空中から帰る。赤面して俯くビビが可愛かった。


 今日は小屋で一泊する。野宿の練習を兼ねている。とは言え、設備は整っているから、大した事はしなくても良い。


「お帰り、ソーイチ、ビビ。」

「ただいま。」

「ただいま帰りました。テラス様、マリア殿。」

「はい、お帰りなさい。怪我は無い?」

「大丈夫だよ。心配ない。」

「そ、そう?ならいいわ。」


 なぜ挙動不審になる?


「ソーイチ、ギュー!」

 抱きつくテラス。ビビのダッコが羨ましかったか?

 ビビを降ろし、テラスを包容する。暖かく柔らかいテラスに癒される。

「マリアも。」

「う、うん。優しくね。」

 意味がわからないが、優しく包容する。マリアは頭を俺の胸に擦り付ける。


「さ、ご飯にしよう。今日は樹豚にしようか。マリアに食べさせたい。」

 ヴェルケスで、樹豚は出回っていない。これの旨さを味わってほしい。

「やった!ご馳走だ!」

 テラスは喜び、ビビは涎を垂らしそうにしていた。マリアは首を傾げていたが、一口食べ、あまりの旨さに目を輝かせていた。

「何これ!目茶苦茶美味しい!」

「塩だけでもやっぱり旨いな。生姜と醤油とにんにくがあれば、もっと旨いだろうな。」

 豚の生姜焼きを思い出す。俺の好物の1つだ。

 テラスもハムハム食べ、ビビは凄い勢いだ。焼き方している俺の方が追い付かない。


 満腹になり、外で微睡む。マリアがお茶を用意してくれた。

「なんか、落ち着くわ。初めは結構怖かったのに、今は回りの静けさに落ち着く。」

「案ずるより産むが易し、かもしれないが、一応油断はするなよ。」

「むぅ、馬鹿!」

 怒られた。何か変な事でも言ったか?

 テラスがマリアの耳元でぼそぼそ呟き、マリアが赤面する。無敵テラスが現れたようだ。

「星、綺麗だな。」

 皆で星を見上げる。光り瞬く星が散らばり、空を魅力的にする。箒星の様なガス状の尾ひれがより幻想的にする。


 言葉もなく、ただ星を見上げていた。


「今日は休もうか。お風呂にしよう。」

「うん!お風呂!」

 服を脱ごうとするテラスを止め、小屋に入った。俺達は野宿を忘れ、ただ、今の幸せを堪能していた。







 次の日、全員で森に入る。

 小屋は無限保管に入れ出発。テラスの導きのままにその方角を目指す。

 今回はチートを使う。テラスは俺が、マリアはビビが、各々担ぎ移動する。

 目標は、上空で見た巨大樹のようだ。


 巨大樹は樺の木のようだ。翌檜とも呼ばれている木。あまりにも立派な木なので、神木なのかもしれない。

 俺は手を合わせ、回りの木々を分けてもらうと御願いする。代わりに、昨日の樹豚の血や骨の粉を辺りに振り撒いた。


「ありがとうってお礼してるよ。」


 テラスが言う。木の声を聞いたのだろう。テラスならあり得るので、ありがたく貰っておく。


 廻りに檜の様な巨木が列なっていたので、伐採する。そして、見事な(クヌギ)を見つけた。


「まさか、椚があるとはね。」


 薬樹。樹皮は漢方薬になる。葉は堆肥と万能の樹木だ。ありがたく使わせてもらおう。


 木の性質として、硬く密度が高い。粘りもある。求めていた木だ。


「ありがとう、テラス。」


 テラスを抱き締める。やはり、テラスの導きにはいつも驚かされる。


「えへへ。」


 照れるテラス。抱き締めが強くなり、顔を隠した。




 お昼を食べ、一息。散策し、果物や木の実も見つけたので、採っておく。


「ねぇ、あっちなんだけど・・・。」

「はい、私も気になってました。」


 ビビとマリアが同じ方向を見る。多分、ビビは感覚で、マリアは視て感じたのだろう。


「行ってみるか。」


 皆で向かう。ほんの僅かだが、生臭い臭いがした。


「池?」


 目の前には緑に濁る池があった。結構大きい。山の水場なのだろう。だが、生臭い。


「いますね?」


 ビビが構える。テラスとマリアは後方に下げ、様子を見る。一応弩は渡しておいたが、気休めだ。


 池から飛び出すは、巨大な物体。良く見ると、鯰のようだ。長い舌を伸ばし、襲いかかる。蛙みたいにも見えてきた。


 果敢に飛び出すビビが、鯰に剛の一撃を入れる。だが、力が滑るようで、効果が十分に伝わらない。


 その時、上空から何かが襲ってきた。


 翼を閉じ、急降下するそれは、鯰よりも大きく、大きな爪で鯰を掴もうとする。


「横取りか?させるかよ!」 


 俺は空間を足場に飛び上がり、大きな顎を蹴りあげる。


 翼竜(ワイバーン)にも見えるそれに一撃を入れると、体制を崩し、大地に転がる。

 ビビはその瞬間に、爪の剛を頭に叩き込む。だが、まだ意識があるようで、翼竜はのたうちまわる。

 無限保管から黒石ナイフを取りだし、空間断絶を意識し、頭と首を切り離した。


 鯰は逃げるように池に戻るが、マリアの矢が背の一点に刺さる。


「あ、当たった!」


 マリアには悪いが、その程度ではダメージではない。だが、刺さるという事は。


 ビビを抱え跳躍、鯰の上空から一撃を同時に入れる。マリアの矢が刺さる場所。背骨の急所だ。


 池に潜る形になってしまったが、鯰も狩る事が出来た。だが、臭い。


「だ、大丈夫?」

「大丈夫。風呂入る。小屋出す。」


 余りの臭さにマリアは近寄らない。テラスは気にせず近寄るが、我慢してもらった。ビビは臭さに気持ち悪そうにしている。


 翼竜と鯰を獲得した。だが、その喜びよりも、今は風呂に入りたかった。



 石鹸さんはいつも大活躍だ。



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