3-35 ヴェルケス旅立準備
「昨日はお楽しみだったかい?」
「おばあちゃん!!」
朝から、賑やかな朝食を取っている。アーノさんは相変わらず、マリアをからかっている。
昨日の告白からの、マリアの初夜。アーノさんとしても喜びがあるのだろう。
「マリアが素敵すぎました。」
「ばっ馬鹿ぁ!」
痛い痛い、肩を叩かないで下さい。
その光景に、アーノさんは微笑む。
「肩の荷が1つ降りたよ。まぁ、楽しみも増えたしね。」
「楽しみ、ですか?」
アーノさんに問う。旅に出る寂しさならわかるが?
「ひ孫だよ。早く見たいもんさね。」
その言葉にマリアが全身を赤くする。
出産は女性の誉れだったか。いや、根本的に次代の子を見たいのだろう。
「孫を、マリアを頼んだよ。」
アーノさんの真剣な眼差し。
「はい。」
俺も真剣に返す。
マリアが小言で馬鹿馬鹿言っているが、目線を合わせ微笑むと、俯いてしまった。
「私もソーイチのこども欲しいよ。」
「あ、あの、私も、子が、欲しいです。」
テラスの要望に、ビビもつられる。
「あんた達も私の孫さ!子供が出来たら必ず帰って来るんだよ!」
優しい言葉だ。今、俺達は家族になった。
「さて、仕事に行きますかね。」
「行ってらっしゃい、おばあちゃん。」
貴族になり、忙しくなったアーノさん。その健脚は勇ましく外へと向かった。
ヴェルケスを守る。リューア伯爵の悪政を粉砕し、交易流通の自由を勝ち取った。たが、これで終わりではない。大変なのはこれからだ。交易が盛んになり、流通が盛んになる。活気も増し、人口も増えるはずだ。それに比例して、作業量も増える。今後は効率化や連携が重要になるはずだ。フリード子爵もヴェルケス太守として、豪腕を振るうだろう。貴族間の駆引きに負けるような柔な精神力でもない。期待しよう。
「さて、俺達は準備の前に、家族会議をしよう。」
準備の確認作業だ。必要な物を揃えるに大事な会議。テラス、ビビ、マリア共に頷き、これからの準備作業に入った。
★
旅立に必要な事を決める。
先ずは、移動手段だ。
「馬車。購入しましょう。」
マリアの一言で決まった。徒歩でも構わないのだが、テラスとマリアの体力を考慮した。
「金貨ある?結構高いわよ。」
「100枚はあるな。ロイド男爵から貰った。」
以前、中央区に入る時に貰った金袋。重たいと思ったら、100枚程入っていた。
「ロイド男爵も太っ腹ね。3枚前後で一般のは買えるわ。」
結構高い?馬が高いのか?
「飼い葉や水、塩の購入もあるから忘れないようにしましょう。」
購入はテラスとビビとマリアに頼む。良い馬を見つけて欲しい。
荷車部分は俺が徹底的に改良しよう。
戦闘、防衛手段。
「マリアにも、多少の自衛はしてほしい。」
「私、武器は持った事もないわよ。」
それはわかる。マリアは戦闘素人だ。前衛や中衛は無理だ。後衛での指揮と攻撃手段を提案する。
「弩を造るから、沢山練習してくれ。」
「えぇ~?やらなきゃ駄目?」
「暗ならまだしも、野盗や獣には対応は必要だろ?」
なるべくマリアもテラスと同様に戦闘参加はしないようにするが、もしもの保険は必要だ。
今まで、野盗には遭遇していないが、会わないという事はないと思っている。
「わかったわ。ゲームで培った知識をフルに活用するわよ。」
ん。先ずはその知識から壊す作業からだな。しごいてやる。
「テラスには盾だな。盾攻撃は考慮しないから、後衛のマリアの援護に当てよう。」
「わかった。可愛いのが良い。」
「デザインはマリアに言ってくれ。マリア、これは本気出して良いぞ。」
「またトンデモ作るの?辞めてよ、心臓に悪いんだから。」
「その時は、沢山甘えて癒されるさ。」
「も、もぅ・・・。」
マリアの頬が赤くなる。腕を捻っているが気にしない。
食料。
「狩りですね。」
「はいはい。それで良いわ。小麦や調味料は購入しましょう。鍋や料理雑貨も必要ね。」
「腕が鳴ります。」
ビビが嬉しそうだ。黒鋼槍の改良も視野に入れよう。
小屋の改良。
「見た目もそうだけど、中身の改良が必要だわ。」
「そうか?」
現在の小屋は1LDKに風呂とトイレがある。広さは12畳程だ。
「部屋を追加したいのよ。マスタールームとゲストルームの2部屋よ。リビングで雑魚寝は辞めましょう。」
「ゲストルームは?」
「女には必要なの!」
プライバシーか?まあ、改良は簡単だが、見た目を考えると造り直しになる。
「今は中身だけにしよう。小屋はセーフハウスみたいなものだし、機能重視にしたい。」
「セーフハウスって。殆ど小屋で生活した人が何を言ってるのよ。」
確かに。居住区はリビング位しか使わなかった。だって落ち着くし、風呂あるし、テラスとビビとキャッキャウフフしてたし。
「部屋の増築は検討する。狭い寝室用にするけど良いか?」
「何で?」
「場所はなるべくとりたくない。面積で場所限定ができてしまう。」
「わかったわ。移動拠点ですものね。」
マリアの了承を得た。トイレと反対側に2部屋造ろう。
とりあえず、これくらいで終了する。今日は馬車購入予約と弩を造る事にした。マリアに合わせるので、腕力を量る。力比べみたいな要領だ。何故かテラスとビビも参加したので、同じように比べる。
テラスは殆ど無い。マリアは一般女性並、ビビはかなり強い。俺を片手で持ち上げたのには驚愕した。
「力がついたかもしれません。」
型の修練の成果だ。全身の筋肉を調べてみても、飛躍的に向上し、尚且つしなやかさを兼ね備えていた。
戦闘民族、恐るべし。
ビビは嬉しそうだ。
「ビビばっかりずるい。私も!」
「わ、私は、いいわ、うん、いいから。」
すがるテラスに、ツンデレマリアにも全身チェックをする。テラスは触れられた感触に惚け、マリアはチェック中、小さな痙攣をして、終わると息を荒くしていた。
「今は準備が先。馬車はお願いするから。」
「う、うん、任せて。」
マリアが息を整えた。テラスは寂しそうな目をしたが、今は辞めておく。夜にいっぱい相手をしよう。
お互いに行動を開始した。
★
弩を造る。構造は簡単だが、マリアが使う、と考えれば話は別だ。
女性の力で引き絞りを簡単に、尚且つ弱弓にはならず、また再装填も早くしたい。
材料を探す。竹の様なしなりのある材料。弓本体にする。台座は無限保管にある木で構わない。蔓はリューア伯爵の時に無くなったので、弦の材料も必要だ。金具も造るので金属もいる。
結構大変だな。
弩にした理由。弓は練度が必要だが、弩は比較的早く扱える。構造的に的を射やすい。戦闘素人のマリアには、後衛からの援護を主にする為、弩が合うと判断した。
中央区には弩が売られていたが、出来の悪さに愕然した。形は従来型だが、材質が悪い。これが一般的と考えても、マリアに装備させる気にはなれない。誤射の危険性がある。改良して、練習用にしよう。銀貨30枚程で買えた。矢も30本購入。矢尻のみ劣化鉄の安価のにした。銀貨3枚程した。
金属、鉄や鋼はあったので、購入する。金貨1枚で、結構な量を蓄えた。
序でに鉄鋼炉があるかと聞くが、ケルト市から流通と聞いたので、ケルト市では見学させてもらおう。
基本的に木材が主になる弩。狩りの序でに探してみようと考えた。
予定変更。小屋の改修に入る。2部屋追加は半日程で完成させた。木材を組み上げ、杭で固定する簡単なお仕事だった。内装は後にしよう。無限保管に入れ出しも忘れない。馬の為の厩舎も造る。これは連結させずに、個別に造る。
「チートね。」
「全くだ。」
帰ってきたマリアが唖然としていた。短時間に造ったからだろう。
「馬車はバッチリよ。テラスちゃんとビビさんのお墨付きももらったわ。」
「お馬さん、可愛かった!」
「とても上物です。」
テラスはわかるが、ビビの言い方が怖い。食べないよ?
木材が尽きたので、明日は狩りになる。夕食に提案した。ビビの食欲を考えると、普通の量では足りないし、ビビの精神衛生も考慮した。
「何処かに、巨大獣がいる森とかないか?」
「南、かしら?兵士が危険と近寄らないから、もしかしたらいるかもね。」
マリアが答える。
「深い森だからね。遭難したら大変さ。」
アーノさんが補足する。
「明日は皆で南に行って狩りをしよう。マリアは実践の空気をみてもらうだけで良いから。」
「マジで?」
「その方が都合が良い。誰にも見られないからな。」
俺のチートに、ビビの戦闘力なら、大概は大丈夫だ。群れで襲う獣だったら、退却すればいい。空中に逃げればいいのだから。
「あんたなら大丈夫だろうさ。でも、無理はするんじゃないよ?」
「わかってます。命大事、ですね。」
「そうだよ。わかっているじゃないか。」
狩りは危険だ。普通なら。だが、俺達は普通ではない。知識、経験もある。油断さえしなければいい。
「ビビ、明日の活躍期待してるよ。」
「はい!任せて下さい!」
ビビは嬉しそうだ。尻尾が千切れんばかりに振っている。
「この格好で森か・・・。やだなぁ。」
薄着、ミニスカのマリア。確かに、麻痺していたが、その格好はナンセンスだな。
「ズボン履けばいいだろ?」
「はっ?女がズボンかい。変人扱いされてしまうよ。」
アーノさんが答えた。女はズボンを履かないのか。
「男がスカート履くのと一緒よ。」
なるほどね。文化の差か。
「虫除けとかないし、気が引けるわ。」
「お留守番するか?」
「むっ!それは嫌!一緒に行くわよ。」
「決定だな。」
マリアの意思も聞いたし、今日はゆったりしよう。ビビは興奮していたが、頭を撫でて落ち着かせる。
「楽しみです。」
ビビの言葉に、期待感と恐怖感を感じたのは、気のせいにした。
★
「風呂の改良も視野に入れようかな?」
「何で?十分よ。」
何気ない一言にも、マリアは反応する。右腕に寄り添うように寄りかかっている。テラスは左腕に密着し、ビビは脚の間にいる。うなじがとても素晴らしい。
「急拵えだからな。もっと手を加えたい。」
「そう?でも、それを言ったらキリがないわよ。」
確かにそうだな。優先順位は低めにしていいだろう。ケルト市に着いたら考えようかな。
「私は明日の準備をするから先に上がるわね。」
「その前にしたい事あるけど良いか?」
「ん?何?」
マリアをうつ伏せで寝かせる。裸なので、恥ずかしそうにしていた。
手に取るは、オリーブヤシのボディクリーム。背中や肩、腕にお尻と全身に刷り込む。
「・・・・・・・・・。」
マリアは艶かしい吐息をたてる。小さな痙攣に合わせ艶声をだす。
仰向けにすると、顔を紅く高揚させていた。首筋、胸や腹、太もも、足と刷り込んでいく。
終わると、マリアは脱力感を醸し出していた。
「ソーイチさん・・・。」
俯きながら、上目使いのマリア。足を開き、俺を招こうとしている。
マリアを抱き締め、それに答え愛し合う。
「ソーイチ、私も。」
「あの、ソーイチ様、私もよろしいですか?」
「勿論だよ。テラス、ビビ、おいで。」
テラス、ビビと愛し合う。朝のお預けなのか、マリアの様子に触発されたかは関係なかった。ただ、愛し合った。
今、小屋は、愛情と温もりに包まれていた。




