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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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3-29 リューア伯爵邸晩餐会 その6

 剛!!


 リューア伯爵の腹に剛の一撃を入れる。俺の剛は、震脚の力をそのまま相手に叩き付け、内部に蓄積させる。今の俺ならば、この一撃で人は死ぬ。だが、手応えがなかった。


 チッ!またあれか!


 存在してるが、干渉出来ない状態。あれが邪魔をする。


 リューア伯爵の関節は壊れ、有り得ない動きをする。暗い霧に包まれた腕を捌くに容易いが、触れる度に激痛が走る。


 厄介だな。向こうは干渉出来るか。


 距離を取る。間違いなく存在しているが、干渉出来ない状態。物理は効かないだろう。ビビの渾身の一撃を食らった時は、まだリューア伯爵は暗い霧を出していない。攻め方を変えなければ。


 距離を取ると、衛兵が迫る。此方は物理でも効くが、痛みを感じないようだ。急所を攻めても、無力化出来ない。ゾンビの様だ。


 ならば。


 ビビと合流する。衛兵を一ヶ所に集める算段をする。

「お任せ下さい!」

 棍を凪ぎ払いながら、衛兵を一ヶ所に集め始める。俺も反対側や、テラス達の回りにいる衛兵を突き飛ばす。フリード男爵も投げ飛ばしていた。


 武器を奪い取り、無限保管から蔓の網を出し、衛兵に絡ませる。


 要は動かないようにすれば良いだけだ。


 武器を失った衛兵は手で抜け出そうとする。また千切ろうとしているが、それは無駄だ。俺の特製網だ。千切れはしない。衛兵は沢山動き、益々絡ませていく。


 衛兵はまだいるが、大半は片付いた。武器はフリード男爵やケセト氏に渡す。何故かマリアやアーノさんも持ったが、無理はしないで欲しい。


 さて、リューア伯爵と対峙する。


「ビビはテラス達の護衛。」

「私もお供します。」

「駄目だ!」

 ビビの意見を拒否する。今のビビに、伯爵の相手は分が悪い。残った衛兵を任せるのが妥当だ。

「テラスを任せる。ビビが頼りだ。」

「・・・はい、わかりました。」

 急ぎテラス達に合流するビビ。


 ごめん、ビビ。


 さて、どうする?物理は効かない。触れると激痛。弱点位はあるはずだが・・・。


 つまり、白の世界のテラスの時は楔があった。楔が弱点とすれば、リューア伯爵にも楔のような物があるはず。それを見つけ、掌握すれば打開出来るだろう。


 人として終わった動きをするリューア伯爵。予備動作なく攻撃をしてくる。避けてもじりじりと追い詰められていく。


 テラス側もビビが加入したが、状況不利だ。逃げればいいのに。いや、衛兵を引き付けてくれているのか。フリード男爵が的確に指示を出している。


 任せよう。


 奪い取った盾を投げつける。当たりはするが効果は無い。そう。身体は存在している。干渉出来ないのは何故だ?暗い霧が原因だろうから、霧を掌握するか?いや、無理だ。霞を掴むのと一緒だ。やはり元凶を見つけるしかないか。


 無限保管から棍を取りだし、乱打する。当たるが手応えが無い。当たる瞬間に霧に阻まれている様だ。


 棍から痛みは感じない。これだけはわかった。ならば直接触らずに攻撃を続ける。


 リューア伯爵の霧が圧縮する。


 ヤバイ!危機感地が悲鳴を上げる。


「テラス!防御!」


 その瞬間、霧が爆発四散する。


 ぐぁ!痛ぇ!


 精神防御したが、全身に喰らった。心が削れる。テラス達は、無事か。テラスを中心にドーム状の防壁が展開されていた。だが、皆がダメージを負っている。テラスも次は無理そうだ。


 くそっ!


 弱点だ。そこさえ解れば、全力注げるのに!


「ソーイチさん!奴の中心に黒点!」


 突っ伏しているマリアの言葉だ!


 ならば!!


 棍で、腹回りを凪ぎ払う。まとわりつく霧を払う。

「ビビ!!背から二ノ型、剛!」

「はい!!!」


 リューア伯爵の背に、ビビは剛を入れる。威力が貫通し、腹を抜ける。拍子に見えた。


 黒い石のペンダント?


 その剛の威力に霧も巻き込まれる。

「があああ・・・。」

 霧に触れたビビが悶絶する。拳の剛だったからだ。


 俺は空けた霧の穴に、掌打で剛を突き抜く。


 今しかない!集中!掴んだ!


 身体に暗い何かが掌から蝕んでくる。削られる。


 だが、俺の勝ちだ!!


 


 掌握




 霧が吹き飛ぶ。痛みは消えた。


 掌には、白い石を持っていた。






 倒れたビビの元に向かう。辛い思いをさせてしまった。


「ごめんビビ。大丈夫か?しっかりしてくれ!」

「大丈夫です。ようやく、貴方様のお役に立てました。」

 弱く微笑むビビ。早くテラスの元にいかなければ。


 それが一瞬の油断だった。


 リューア伯爵が有り得ない角度から腰の剣を抜剣して、襲いかかる!



 動きがゆっくりだ。だが、避けられない。身体も動かない。これ、走馬灯か?



 死を覚悟した。



 だが、そこにいたのは、首から上がないリューア伯爵と、ロイド仮伯爵だった。いや、俺には見えた。凄まじく速い斬閃を。


「ロイド・フォン・ケルト!領主に変わり、罪人ボレナス・アス・リューアを成敗した!」


 その姿は勝者の姿だ。


 だが、俺はビビが大事だ。直ぐにテラスに駆け寄る。テラスはビビに回復を抱擁で施す。みるみる顔色が戻るビビに俺は安心した。


 ロイド仮伯爵の回りには逃げ遅れた貴族達が集まっている。完全に美味しい所を持っていかれたが、俺達が生きているから構わない。いや、賞賛なんかいらない。ただ、これで、ヴェルケスが守られれば、満足だ。


 撤退。


 後はロイド仮伯爵に任せよう。


「傷が癒えたら私の所に挨拶しに来い。」

 フリード男爵の言葉。

「はい、正式に謝罪させて頂きます。」

「何の話だ?仕える話か?」

「いえ、命令をしてしまいましたが?」

「何の話だ?知らんな。」

 がはは、と笑いながらフリード男爵と夫人のテリーヌ様が見送ってくれた。

「マリア?無事だったか?心配しガァ!」

 吹き飛ぶルフツ士爵。殴ったのはフリード男爵だった。

「随伴を置いて逃げるとは何事だ!恥を知れ!!」


 ありがとう、フリード男爵!スッキリしました。


 フリード男爵が用意してくれた馬車に乗り込み、市民区に戻る。


「お疲れさん。ソーイチ、ありがとう。」

「ああ、ヴェルケスの救世主だ!ありがとう!」

 アーノさんにケセト氏に賞賛されギルドへと戻る。ビビはまだ目覚めていないが、大丈夫だろう。


ギルドに戻ると、ギルド職員が全員待機して待っていた。いや、それどころか、廻りの商人や案内所の方々もギルド前にいた。

 勝利の報告を皆に告げるアーノさん。熱狂が響く。いや、喚き散らす!

 その絶叫から逃げるように、ギルド裏、小屋前。

「わたし、ビビさんの看病するから、一緒にいる。」

「そうかい?あんたも疲れているんだから、ちゃんと休むんだよ。」

「わかってる、おばあちゃん。」

「ビビが目覚めてから、祝勝会をするよ。明日は皆でギルド集合。では、解散!」


 今は早く休息が欲しい。


 小屋の寝室、柔葉に寝転がり、寝落ちする。今は勝利より、皆の回復が優先だ。


 何かにしがみつき、深い眠りについた。






 良い香り。女性特有の甘い香り。知っている香り。


 目を醒ますと、目の前にマリアがいた。可愛らしい寝息をたて寝ている。


 マリアの香りか。確かに知っているな。リューア伯爵の時に、胸元に詰めてた布で頭を拭かれたからな。


 テラスは背中にしがみつき、ビビは足元にいた。


 動けない。


 脱出が困難な状況だが、ゆっくり抜け出そう。

「ソーイチさん・・・。」

「呼んだ?」


 いや、寝言か?


「う、ん、ん?」

「おはよう。」

「う、ん、おはよう。」





 寝起きが悪いマリアは、今の状況が飲み込めていなかった。

 だか、みるみる顔が赤くなる。羞恥心ならよかったが、違うほうだ。これは、怒りだ。

「落ち着け。今は落ち着け。」

「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」


 頭を叩かないで下さい。痛いです。



 テラスとビビも目を醒ます。

「おはよー。」

「おはようございます。」

「おはよう、テラス。ビビ。二人とも身体は大丈夫か?」

「平気だよ。」

「はい、ご心配お掛けしました。」


 二人とも笑顔で返してくれた。良かった。特にビビは危なかったから心配した。


マリアも少しは冷静になったようだ。今は息を整えようと躍起になっている。マリアらしい。


全員が起床し、お互いを確認する。


「身体も汚れたし、風呂にするか。マリアも入れよ。俺は外にいるから。」

「ん、そうね。ありがとう、お借りするわ。」

「えっ?ソーイチも一緒だよ?」

「はい、今回はソーイチ様も一緒です。」



「無理無理無理。」

マリアは真っ赤な顔で拒否を宣言する。両手をブンブンと降りながら抵抗する。

「何でー、一緒に入ろうよ。」

「私かあいつかの2択でお願いします。」

「皆で一緒も選択肢にあります。」

「恥ずかしいから無理!絶対に無理!」

 流石に女3人姦しいとはよく言ったものだ。だが、傍観してたらこのまま長引きそうだな。そんな訳で、


「多数決!皆で一緒!はい!」

 マリア除いて皆挙手する。

「決まり。風呂沸かすから。」

「わかったー。ビビ、マリアの服を脱がしてね。」

「わかりました、テラス様。」

「やだやだやだやだ。」

「観念なさい。」

「ひー!!」


 良い悲鳴だ。武士の情けに布を貸してやろう。



 小屋の風呂は広い。四人入ってもまだ余裕がある。薪とかいらないし、浄水完備だし、贅沢だよね。


「こっちをみんな!」

「布を渡しただろ?」

「湯船に布はマナー違反よ!」


 律儀と言うかなんと言うか。


「あとさ、テラスちゃんとビビさん、くっつきすぎじゃない?夫婦でもさ、いや、良いんだけどね。」

「こうしてるとね、安心するの。」

「私は嬉しさが勝ります。」

「はいはい、ご馳走さま。」


 マリアの顔が真っ赤なのは、風呂のせいではない。

「でもさ、マリアだけ一人は可哀想。」

「テラス、違うよ。少しだけ距離があるだけで、一緒だよ。」

「そうなの?マリアもくっつくと良いのに?」

「テラスちゃん?何を言ってるの?」


 テラス節も久し振りだな。


「だって、寝てるとき、ソーイチの名前何回もあわわわ?!」

「止めて!ね?止めて!」


 焦りすぎて、隠してないし。スレンダーが丸見えですよ。


 面倒だ。


「キャッ?!」

「マリアはここな。」


 俺の脚の間にした。俺の胸が背もたれの特等席。左にテラス、右にビビだ。


「馬鹿ぁ・・・。」

「嫌か?」

「・・・・・・・。」


 マリアは無言だが、動かなかった。


「今日はマリアだけど、明日は私ね。次がビビよ。」

「私は此処で満足していますので。」

「ダメ。ビビも。」

「はい、テラス様。」

 あらら、ビビまで撃沈させたか。相変わらずテラスは最強だな。


 死闘の後にハーレムか。絶対に生きのびる、という希望が湧くから、男はチョロイ。


「ねぇ、当たってるわよね?」

「まあな。」

「馬鹿ぁ・・・。」


 全身真っ赤にするマリアを見守りながら、皆が生きている幸せを味わっていた。



 捕捉

 今回、マリアがいたため、石鹸さんは活躍しませんでした。


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