3-25 リューア伯爵邸晩餐会 その2
実寸は工房で行われた。
「私とおばあちゃんのは、頭に入っているから良いとして、3人のは直ぐにでもやるから。」
先ずは俺からだった。繋ぎは厚手だが、そのままで計った。
「結構絞まった身体なのね。お腹も出てないし。」
まぁ、鍛えてますから。これでも体型は崩さないようにしているし。けど、こういう時の女性は平気で身体をペタペタ触るよね。逆だと訴えられるんだがな。
「次はテラスちゃんだから、あんたは外に出て。」
ですよね。少し位は見たいんだが。
「やっぱり?」
「当たり前!女性のサイズを計る時に、男がいて良いわけ無いでしょ!」
睨むマリア。予想通りの反応だったから、逆に安心するとか。
「私は別に気にしないけど?」
「はい、私もですが。」
テラスとビビはそう言うが、
「駄目よ!たとえ愛しの旦那様にでも、女には秘密にするものもあるわ。」
今のマリアは無敵だな。いや、自棄なんだが。この場はマリアの言う事を聞こう。
「んじゃ、外で待ってるから。終わったら声をかけてくれ。」
「わかったわ。」
少し寂しい顔をするテラスとビビを尻目に、工房を出る。
少々時間が空いたので、型でもやるか。鍛練も大事だしな。
あれから、工房から聞こえるマリアの悲鳴?奇声?があったが、気にせずに鍛練する。
しばらくして、青い顔したマリアが工房から出てきた。何となく察した。
「一緒に風呂に入っただろ?今さらじゃないのか?」
「うるさい!今、世の不公平を呪っているんだから!」
まあ、テラスとビビのサイズを計ればそうなるわな。ルックスも兼ね備えているし。
「ドンマイ。」
あのね、無言で腹を殴るの止めてくれない?
「私は今から型紙の作成するから、あんたはアクセ作って。デザインは置いてあるから。でも、気合いは入れないでね!あんたの場合は適当で丁度良いから。」
「わかった、気を付けるよ。マリアも気を付けろよ。」
俺のチートとマリアの鑑定の相性は抜群だ。伝説級を創れるのは、余りにも危険だからだ。
「わかっているわ。じゃ、任せたわよ。」
ギルドに戻るマリア。さて、俺もやりますか。
工房に戻り、マリアのデザインを見る。やっぱりマリアのセンスは良い。例え安物でも、出来映えでかなり良物になる。
「ねぇ、ソーイチ、なんでマリアはあんなに騒いだの?」
「何故でしょうね?」
うん、まず服を着ようか。すてきなステキが素敵だよ。
テラスにワンピースを着せる。ビビの服もセパレートからシャツとスカートに変化している。二人ともマリアのお下がりだが、胸元は改良に苦労の後が見える。
二人を抱き締め、安らぎを貰う。
「マリアの事は気にしなくて良いよ。二人の綺麗さにびっくりしただけだから。」
「そーなの?」
「そうだよ。」
女性の見栄は仕方ない。いや、見栄はなくてはいけない。そのお陰で、女性はいつも美しくいてくれるのだから。
「俺はマリアから頼まれた仕事をするから、二人共手伝ってくれ。」
「うん!」
「はい、わかりました。」
テラスはわかるが、ビビが嬉しそうだ。
「ソーイチのお手伝いが嬉しいんだよ。」
「はい、お役に立ちたいです。」
そういえば、ビビは型の鍛練ばかりだったから、寂しかったかもしれないな。二の型も大体出来てきたし、これからは朝夜の修練だけにしよう。テラスとビビの頭を軽く撫でる。二人共嬉しそうだ。ビビの尻尾も久し振りだ。
「じゃ、テラスは材料運び、ビビは窯に火を着けて温度を上げて。」
「うん、わかった!」
「はい、わかりました。」
さて、造りますか。
俺は袖を捲り、材料運びを始めた。
★
正装6着を5日で作るハードワーク。普通は無理。だが、やらなければいけない。
初日は実寸からの、型紙作成。マリアが前からデザインを貯めていたからか、難なくクリアする。徹夜はしたようだが、ルフツ士爵の布が届くまで休んでもらおう。俺?アクセサリー造りは終わっている。スピード重視で簡素デザインだったから半日で完成させた。チートのお陰である。
2日目、ルフツ士爵からの大量の布が届いたので、裁断からの縫製を始める。ルフツ士爵には軽く挨拶だけして、マリアは作成を急いだ。ルフツ士爵の寂しい背中が哀愁漂う。ドンマイ。
裁断はビビが担当。俺用の黒石ナイフを使ってもらう。テラスは型紙のまち当て担当。俺とマリアは縫製を担当する。スピード重視でサクサクと終わらせよう。たが、俺はチートがあるからいいが、マリアのスピードは尋常じゃない。日頃の蓄積した技能が成せる技だろう。
4日目にはほぼ完成で、後は微調整だけになった。マリアが言うには、
「刺繍とか面倒がないから、これくらいは簡単よ。立体はあんたのチートのお陰かしらね。」
だそうだ。今回ばかりはマリアも俺のチートに感謝しているようだ。
晩餐会前日。完成した正装のお披露目になった。因みに、無限保管に入れたので、見た目も機能も抜群だ。
主役のアーノさんはマーメードドレス。赤を基調に黒のラインが入っている。胸はふくよかに、腰は細く、脚が長い。
「また不思議なデザインだね。腰が細く見えるよ。」
「おばあちゃん、綺麗よ!」
姿見で確認するアーノさん。満更でもないのは女性ならではと言える。え?鏡?勿論造りましたよ。
俺はタキシード。髪も整え、髭も剃った。
「馬子にも衣装。」
「誉め言葉だ。」
マリアの冷やかしだが、完成度は満更でもないようだ。
「ソーイチ格好いいよ。」
「はい、とても良いです。」
テラスとビビに誉められるのは嬉しいが、彼女達の眩しさには敵いませんよ。
テラスは黄色のフレアドレス。全体的にフワフワの可愛いデザインがとても良く似合う。胸元が大胆に開いていて、セクシーでもある。
ビビは藍のフォーマルドレスで、ロングタイトのスカートに長めのスリットが入ってふとももがけしからん。全体的にタイトラインで胸元も強調している。
「テラスもビビも綺麗だよ。」
「ほんとー、嬉しい!」
「ありがとうございます。」
テラスは抱きつき、ビビは尻尾を振っている。
マリアは橙のフレアドレスだ。胸は盛っているが、背中がかなり開いていて魅力的だ。
「何?」
「いや、綺麗だな。」
素直な感想に、真っ赤になるマリア。
「流れは冷やかしでしょ!恥ずかしいじゃない!」
誉めたのに、腕を叩かないでください。
ケセト氏は燕尾服とは渋い選択だが、まだ戻っていないので待機中だ。
「髪のセットは明日するし、アクセとの組み合わせをしましょう。おばあちゃんがメインなのを忘れないでね。」
今回のアクセサリー作成はスピード重視なので品質は普通だが、高級に見えるようだ。
「これ、価値は安いけど、見た目付加で値段が上がるわね。」
「そうなのかい?高級品に見えたよ。」
「材料費は全部で銀貨1枚程度ですよ。」
「あんた、贋作師にもなれそうだね。」
アーノさんの眼が恐い。大丈夫ですよ、詐欺はしませんから。
女性が光り物が好きなのは共通のようだ。ビビは戸惑っているが、姿見を見て驚いていた。
本番は明日だ。女性陣に緊張は無い。大丈夫、上手くいくさ。
和気藹々の女性陣を眺めながら、明日の成功を祈った。




